2024/07/04
ENTHが、5月29日にライブツアー【3rd Full Album “ENTH” Release Tour “Doggy Walky”】の東京公演をSpotify O-WESTで開催した。
ENTHは3月27日、セルフタイトルアルバムをリリース。それに伴い、4月15日から対バン形式のレコ発ツアーを実施している。ツアー5公演目となる本公演でバンドはThe BONEZとPaleduskと共演。3バンドともフルハウスのO-WESTで熱演を繰り広げた。
この日のトップバッターはThe BONEZだ。Beastie Boys「Sabotage」を出囃子にステージに現れた4人が、最新アルバム『Yours』のオープニングナンバー「Love song」を投下するや、フロアでは無数のクラウドサーフが発生。さらにそのフロアを「金払ったのはお前らだろ? 楽しんでいけ!」と挑発しながら、このバンドならではの緩急自在のプレイを見せつけながら、T$UYO$HI(Ba.)とKOKI(Gt.)が時に立ち位置を逆転させるなど、ステージ狭しと闊歩し、またZAX(Dr.)が立ち上がりながらクラウドのシンガロングを煽る「Numb」を続けて、O-WESTのボルテージをいきなりピークへと押し上げてみせる。
その後もJESSE(Vo./Gt.)の「新曲やっていいっスか?」「知ったフリできるか、お前ら!」の声とともに未発表曲「Get up Kids」をドロップすれば、すし詰めのオーディエンスは、まさにJESSEの言葉どおり、さも聴き慣れた曲かのように高速ブラストビートに合わせて踊りまくっていた。そして直後のMCで「今日出てくるバンドはけっして利口な人たちではないと思います」とコミカルに切り出しつつもコロナ禍にあってそれでもライブを実施する道を模索した当時の自身とENTH、Paleduskに触れつつ、ドラマチックな「Thread & Needle」、ストレートなパンクナンバー「SUNTOWN」「New Original」を連発して、ENTHの新譜リリースを祝福した。
2番手・Paleduskのライブはセットチェンジ中も収まらない熱狂の中、オープニングSEとして流れ出したEminem「Lose Yourself」でスタート。曲が進むにつれステージに現れたTsubasa(Gt.)、DAIDAI(Gt.)、BOB(Dr.)はそのトラックに合わせてEminemをセッション。そこにKaito(Vo.)が合流すると、あらためて、シンセサイザーの複雑な単音リフの応酬からボトムヘヴィなラウドロックへとなだれ込む「SUPER PALE HORSE」で自身のライブをキックした。
Paleduskは2月21日にEP『PALEHELL』を発表。バンドとENTHは今回の公演を2バンドにとってのレコ発ライブと位置づけており、事実、この日の彼らのセットリストは同作の収録曲を中心に構成されていた。ライブ序盤、バンドはO-WEST天井のミラーボールが乱反射する中、先出「SUPER PALE HORSE」と「NO!」という新譜収録の凶暴なエレクトロコアチューンや、エモーショナルなメタルコアを下敷きにしつつもどこかスタイリッシュな、2022年発表の楽曲「SLAY!!」、BOBとシーケンスが高速ビートを繰り出す新譜曲「BLACK ICE」をパフォーマンス。The BONEZに負けず劣らぬクラウドサーフの嵐を巻き起こすと、以降も最新ナンバーの数々とライブのキラーチューンの数々を織り交ぜたステージを展開する。
Kaitoの「新曲やろうか」のひと言ののちには、楽器隊の凶悪なアンサンブルとKaitoとオーディエンスがシンガロングするポップなメロディのミスマッチが面白い「PALEHELL」、わずか3分弱のうちに正調ハードコア、ジャズ、ドリルンベースと自在にジャンルを横断しまくる「AREA PD」、高速2ビートナンバー「TRANQUILO!」を3連発。またも最新楽曲と過去の楽曲をつづら折りにすると、終盤にはゴスペルやスウィングをハードコアに翻案した「I'm ready to die for my friends」、パーカッシブなビートに乗せて、ステージ中央のお立ち台を占拠したDAIDAIが流麗なギターソロが光る「RUMBLE」、ブラストビートとキャッチーなメロディが絡み合う「Q2」を畳みかけ、最新EP収録曲すべてを惜しげなく披露したところでWレコ発パーティでの自身のライブを締めくくった。
この日のホストにして主役・ENTHのステージは乾杯からスタートする。バンドとともにステージに現れたバニールックの男性スタッフが手にしたトレイにあったテキーラを勧めると、ダト・ダト・カイキ・カイキ(Ba./ Vo.)となおき(Gt.)はショットグラスを手に。2人が“バニーボーイ”とともにショットグラスを煽り、バニーがステージをあとにすると、3人はダトの「よっしゃ始めようか」の声を合図に「I'm the Fool」で自身のステージをスタートさせる。
レゲエやスカと接近した1980年当時のパンクロックを思わせるこの曲ののち、またも登場した“バニーボーイ”と乾杯すると、バンドはその表情を一変させる。ライブアンセム「ムーンレイカー」と新譜収録の「Urge」という2つの高速ツービートナンバーでフロアのクラウドサーフやモッシュ、そしてシンガロングを誘ったかと思えば、同じく新譜の中の1曲「SCUM DOGS FART」では重心をうしろに置いたダンサブルなビートを効かせてオーディエンスを踊らせてみせる。タクミの繰り出す切れ味のいいビートに乗せてダトとなおきがユニゾンでヘヴィなリフを聴かせる「"EN"」「”TH”」「LOVE ME MORE」や、スカパンク仕立ての「Gentleman Kill」、なおきのインプロビゼーションのようなギタープレイが目を引く「P.T.E」、オールドスクールなハードロックを思わせるアレンジとギターソロが印象的な「HANGOVER」、ルーズなメロコアライクな「A FLY(dedicated to RELAX ORIGINAL®)」、高速ツービートパンク「BLESS」を連発。変幻自在なセットリストながら、満員のフロアはバンドのプレイにビビッドに反応し、大きな熱狂を生み出していた。
そしてライブ最終盤ではまたも様相が大きく変化。途中、ダトが先のJESSEの言葉に呼応するかのようにコロナ禍当時の苦闘を振り返るMCを挟みつつ、バンドは「Will」「Get Started Together」「DEPART」「TEARS」とドラマチックかつロマンティックな楽曲群を響かせる。さらに最後の最後にはまたもそれまでの展開を裏切るかのように「Bong! Cafe' au lait! Acoustic guitar!」という攻撃力抜群の1曲でフロアをこの日一番の熱狂の渦に包み込んで、この日のスリーマンライブの幕を降ろしてみせた。
なお【3rd Full Album “ENTH” Release Tour “Doggy Walky”】は2部制で展開されている。現在ENTHはその前半戦“1st Half”として、名古屋club QUATTROを皮切りに7月2日の福岡・The Voodoo lounge公演まで全国36箇所をまわっている。7月10日からは宮城・Sendai macana公演を皮切りに全国18都市を回る後半戦“2nd Half”を実施。さらに9、10月にはファイナルシリーズと題して、大阪、東京、そしてバンドの地元・名古屋でもライブを開催する。いずれも、強力な対バンを迎えて行われる予定なので、ぜひ今後の情報をチェックしてみてほしい。
Text by 成松哲
◎公演情報
【3rd Full Album “ENTH” Release Tour “Doggy Walky”】
2024年5月29日(水)
東京・Spotify O-WEST
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