Billboard JAPAN


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2024/02/15

<ライブレポート>松崎しげる/八神純子/大黒摩季/小柳ゆき/石崎ひゅーいが夢の競演 ビルボードクラシックスフェスティバル東京公演密着レポート

 ジャンルや時代を超えて愛され続ける名曲の数々、圧倒的な歌唱と、華麗で壮大なフルオーケストラの響きが生み出す極上の音楽体験。シリーズ9年目を迎える【Daiwa House presents billboard classics festival 2024】が、2月4日に東京・すみだトリフォニーホール 大ホールで幕を開けた。初参加のメンバーや新たな試みを加え、さらにパワーアップしたフェスティバルの内幕とは。リハーサルへの密着取材と出演者コメント、そして当日のライブレポートをいち早くお届けする。

 本番2日前におこなわれたリハーサルは、都内のホールを借り切って出演者が全員集合、すべての楽曲をほぼ本番通りにさらっていく。指揮者・齋藤友香理と東京交響楽団が譜面をチェックする姿は真剣そのもの、しかし時折笑い声が起きるなど雰囲気はとても良い。出演者同士も和気あいあい、八神純子と大黒摩季が楽しそうに語り合ったり、大黒摩季と小柳ゆきがハグの挨拶をかわしたり。男性陣では石崎ひゅーい、そしてフェスティバル初登場となる松崎しげるが、本番さながらの熱唱で盛り上げる。これは素晴らしいコンサートになると誰もがそう確信したリハーサルを終えた出演者に、【ビルボードクラシックスフェスティバル】への思いと、フルオーケストラと共演する喜びについて語ってもらった。

◎八神純子
私のキャリアのスタートは【ヤマハポピュラーソングコンテスト】(1974年)で、そのあとに【世界歌謡祭】に出て、武道館でオーケストラと共演したんですが、その感動が忘れられなかったんです。まるで音の湖の中に浸るようなイメージで、プロになるとか、有名になるとかよりも「オーケストラで歌いたい!」と思ったんですね。最初の頃は、訓練されたオーケストラのみなさんがずっと私の歌をチェックしているように感じて、恐怖心もあったんですが、そのうちに考え方が変わって、「私の歌が指揮をするんだ」と思うようになってから、緊張感を超える喜びが私の中に存在するようになりました。

今回歌う「明日の風」という曲は、東日本大震災の被災地でも何度も歌ってきましたし、今年は能登の地震があったので、この曲を歌う意味がもっと重くなったと思っています。「みずいろの雨」は、作詞をされた三浦徳子さんが昨年お亡くなりになった
こともあって、絶対に歌いたかった曲です。

【ビルボードクラシックスフェスティバル】は大好きなステージなので、呼んでいただいてとても嬉しいです。お客様へのメッセージは、「ぜひ生音に耳を傾けてください」ということですね。人はどうしてもスピーカーから出る音を聴いてしまうんですが、耳をすませば絶対にステージの音が聴こえてくると思うので、私と一緒にそれをぜひ感じていただきたいなと思います。

◎大黒摩季
母がカラヤンが好きで、ベルリンフィルのレコードが家にあったり、ヴァン・クライバーンの「英雄ポロネーズ」を聴かされたり、幼い頃からクラシックが身近にありました。私も3歳からピアノを習っていましたし、それはとても自然なことだったんですが、ロックの世界でクラシックが好きとか、譜面が読めるとか言ったら、勘にさわる方が多いみたいで(笑)。わざわざ言っていなかったんですが、デビュー20周年くらいの時に「そろそろいいかな」と思って、その話をし始めたら、ビルボードクラシックスさんが誘ってくださったんです。私にとってオーケストラと一緒に歌うのは、リフレッシュやリペアという感覚があるので、いつもすごく楽しみにさせてもらっています。

今回の選曲は、みなさん、とにかく歌が素晴らしい人たちばかりなので、私はお客様サービスに徹しようと思って選びました。ヒット曲を制限時間いっぱいに入れてメドレーにして、「ら・ら・ら」も一緒に歌っていただいて、最もお客様に近いステージングをしようと思っています。お客様は、丸腰で来てほしいですね。ストレス満載でもいいので、とりあえず来ていただければ、帰りには心の鎧も勝手に取れて、柔らかくなって帰れると思いますよ。みなさん、背中を押してくれる力強い歌声ばかりで、たくさん力をもらえると思うので、大黒はその合間で笑かしたりくすぐったり、潤滑油としての役目を果たしたいと思います(笑)。

◎石崎ひゅーい
普段はバンドや弾き語りでの演奏が多いので、フルオーケストラの中で歌うのは、異次元に来たような感覚ですね。壮大な音の中で歌えるというのは、単純に高揚感があるし、いつもありがたいなと思って歌わせてもらっています。

過去の【ビルボードクラシックスフェスティバル】で印象に残っているのは、マエストロの柳澤寿男さんとご一緒させてもらった時に、息が漏れるというか、感情が溢れる瞬間が何度かあって、歌いながらマエストロや演奏者の表情を見た時に、ぞわっとしたの覚えています。僕が作った歌を一生懸命に伝えようとしてくれている姿を感じられて、とてもスペシャルな体験でした。今回のマエストロ・齋藤友香理さんも、エモーショナルな指揮をされる方だと聞いているので、すごく楽しみにしています。

僕のセットリストは、来てくれる方々に喜んでもらいたいなと思って選んでいるんですけども、「邂逅」は槙原敬之さんに書いていただいた曲で、世代を超えていく歌だと思っているんですね。【ビルボードクラシックスフェスティバル】で歌われる曲はそういう曲ばかりだと思っていて、「僕が歌い継いでいかなくちゃ」という勝手な使命感があるので、そういうところにも注目していただければと思います。普段とは違った、演奏を含めた歌の世界観を存分に楽しんでいただきたいなと思いますし、僕も世代や時代を超えていくような歌を精一杯歌おうと思います。

◎小柳ゆき
フルオーケストラならではのダイナミクスが本当に心地良く、私自身もその中に身を置きながら歌わせていただけるので、【ビルボードクラシックスフェスティバル】はいつも、素晴らしいご褒美だなというふうに思っています。アレンジも、オリジナルとはだいぶ違ったものに生まれ変わらせていただいて、毎回とてもやりがいがあって楽しいですね。普段のライブとはまた別の心地良さを感じています。

一昨年にカバーアルバム『RARE TASTY』をリリースしていて、その中から「Cry Baby」(Official髭男dism)を歌わせていただきますが、フルオーケストラでアレンジしていただいたらどういうふうになるのかな?というのがとても楽しみです。あとは「be alive」と「あなたのキスを数えましょう~You were mine~」と、みなさまに知っていただいている楽曲を歌います。お客様は、とにかく素晴らしいフルオーケストラの、音の波というものを体に感じて、身を任せていただければと思います。私自身にとっても、フルオーケストラでお届けできる機会はなかなかないので、非常に貴重な時間なんですね。たぶんほかの出演者の方々も、ご褒美だと思ってらっしゃるんじゃないかな?と思うので、【ビルボードクラシックスフェスティバル】には末永く続けてほしいですし、これからもよろしくお願いします。

◎松崎しげる
フルオーケストラで歌うのは、歌い手冥利に尽きることですね。小学生の頃からずっと、ハーモニーの素晴らしさというものを感じながら音楽を聴いてきて、【世界歌謡祭】(1975年)に出た時も、武道館のステージでオーケストラの音の重なりが、体にまとわりつくような心地よさを感じて、歌い手がスポンジケーキだとしたらまるでデコレーションのように、おいしいケーキにしてくれる感じがあったんですね。それからはいつも、「自分の愛する音楽は本当はこうなんだ」というものを、オーケストラと一緒に歌う時には思います。今回、それが実現するのがとても嬉しいし、久々にワクワクしていますよ。

「ただそれだけ」は、1969年に南米のチリの音楽祭で歌った曲で、「愛のメモリー」は1976年に【マジョルカ音楽祭】で歌った曲。どちらもフルオーケストラに合っている曲だと思って選びました。「素肌物語」もフルオーケストラをイメージして作った曲で、日本のメロディにはあまりないようなハーモニーやコード進行の良さがあって、音楽好きにはたまらない曲だと思いますよ。

お客様には、ハーモニーの渦の中に自分がいるという、歌い手の僕が感じるのと同じことを感じてくだされば、隅々まで楽しめると思います。しかも東京公演の会場(すみだトリフォニーホール)は錦糸町でしょう? 子供の頃、学校に通っていたところで、地元で歌っている感覚になりますね。もちろん兵庫公演も楽しみだし、ぜひ見に来ていただきたいです。

◎齋藤友香理
【ビルボードクラシックスフェスティバル】で、ライブでしか味わえない瞬間のオーラをオーケストラ、アーティスト、観客のみなさんと共有できるのはとても貴重なことだと思っています。私が目指しているのは、曲の情景が浮かぶ演奏で、アーティストの方の思いも汲み取りつつ、たとえばオーケストラの出す和声が変化する時に、ちょっと色っぽくしてみたりとか、楽器によって「ここが自分の見せどころだ」というものもあるので、そういうところに気を配ったりとか。そこは私も目くばせしつつ、それぞれが主体的にやっているのが、オーケストラの醍醐味だと思います。

つまり、伴奏ではないんですね。アーティストの方には、大なわとびを回して「どうぞ、飛んでください」と言えるような感じができると、一番いいんだろうなと思っています。飛びやすいタイミングを見計らうのは毎回違うんですけど、そこが楽しみでもありますし、オーケストラのみなさんもよく合わせてくださるので、本当に私はオーケストラを信頼しています。

ポップスのファンの人たちがオーケストラを聴く機会は、あまりないと思うので、【ビルボードクラシックスフェスティバル】は末永く続けていただきたいですね。これがきっかけになって、今度はクラシックのほうに足を運んでいただきたいですし、続けながらどちらの層も広げていく、私もその橋渡しの一人になれたらいいなと思います。

 その2日後、2月4日の日曜日、満員の観客で埋まったすみだトリフォニーホール大ホールでの【Daiwa House presents billboard classics festival 2024】は、指揮者、アーティスト、そして観客の思いが一つに重なる、素晴らしい音楽体験になった。

 マエストロ・齋藤友香理の指揮する東京交響楽団が奏でる、各出演者のヒット曲をアレンジしたOvertureに続いて、一番手に登場したのは八神純子。シックなマーメイドドレスに身を包み、1978年の大ヒット「みずいろの雨」は情熱の管楽器と哀愁の弦楽器が奏でるラテンのリズムに乗せて、デビュー曲「想い出は美しすぎて」はロマンチックなボサノバ調で、あの頃と変わらない美しいハイトーンを響かせて観客を魅了する。

「2024年がこんなふうに明けて、音楽を聴くことがどれだけ素晴らしく貴重なことか、あらためて痛感しています。私たちの気持ちがここで一つになりますように、最後までごゆっくりお楽しみください」

 出演者を代表して能登半島地震への思いを語りながら、音楽のもつ力を全身で表現する圧巻のパフォーマンス。ティンパニやドラムの力強く前進するリズムが印象に残る壮大なバラード「明日の風」まで、3曲を歌いあげて一番手の重責を見事に果たしてくれた。

 鮮やかなピンクのドレスに輝くティアラ、大黒摩季が現れた瞬間にステージがパッと明るくなった。ヒット曲「熱くなれ」「あなただけ見つめてる」「チョット」「夏が来る」を詰め込んだヒットメドレーを歌いながら手拍子を求め、それに応えて観客もペンライトを掲げたり拳を振り上げたり、クラシックのコンサートにはありえない盛り上がりを作ってしまう、これが大黒摩季のスタイル。軽妙なトークで笑いを誘いつつ、ベット・ミドラーのカバー「The Rose」は真心こめてしっとりと、そして「一緒に歌いませんか!」と呼びかけて、ラストは観客全員を巻き込んだ「ら・ら・ら」の大合唱。原曲のロックテイストを豊かなオーケストラアレンジに置き換えた、リズミックな演奏もばっちり決まった。

 ここで【ビルボードクラシックスフェスティバル】としての初の試み、スペシャルコラボレーションが実現する。八神純子を呼び込み、二人で歌う「My friend My proud」は、八神が大黒と歌うために昨年作ったという大切な曲。ずっと憧れの存在だったという八神とのデュエットに、思わず目頭を押さえる大黒。美しい涙と美しい歌声に彩られた素晴らしいシーンを、齋藤友香理と東京交響楽団が強く優しい音でしっかりと包み込む。

 休憩をはさんで第二部は、石崎ひゅーいのエネルギッシュなステージから始まった。ロックのライブのように青と赤のライトが激しく明滅する中、オーケストラのダイナミックなスピード感に乗って「さよならエレジー」を歌う石崎を、満場の手拍子が熱くサポート。槇原敬之による提供曲「邂逅」は、リスペクトしあう二人のアーティストの心の交流がうかがえる名曲で、前向きに歩んでゆく行進曲のようなオーケストラのアレンジも素晴らしい。3曲目「虹」は菅田将暉に提供した大ヒットのセルフカバーで、はにかみながらも「知っていたら一緒に歌ってください」と告げ、フルパワーで歌いきる。自由奔放でエモーショナルなシンガーソングライターと懐の深いオーケストラ、ある意味異色の組み合わせだからこそ生まれる、確かな魅力がここにある。

 真っ赤な衣装を身にまとい、オーケストラの作り出す豊かな音の波に乗ってヒット曲「be alive」を歌い出す、小柳ゆきの第一声に誰もが息を呑む。右手でリズムを取りながら、振り絞るように歌い上げる声に込めたたくましい生命力が圧巻だ。さらに「ケンカの歌です」と紹介して、Official髭男dismのカバー「Cry Baby」の、4ビートを貴重とする激しいリズムと難解なメロディを完璧に歌いこなす。ラストはもちろんNo.1大ヒット「あなたのキスを数えましょう~You were mine~」で、歌詞の持つ切なさと悲しさ、歌手の持つ情熱、オーケストラの奏でる華やかさと壮大さが三位一体となって、素晴らしい音楽空間が実現する。まさに「ここでしか聴けない歌」だ。

 いよいよ、最後の出演者の出番が来た。トリを飾るのは、【ビルボードクラシックスフェスティバル】初登場となる松崎しげるだ。黒のスーツに赤のチーフ、粋なファッションに身を包み、ジャズのビッグバンドを思わせるアレンジに乗せて1曲目「素肌物語」を歌う立ち姿に、男の色気が匂い立つ。ジョビンを思わせる優雅なボサノバ・アレンジの「ただそれだけ」では、マイクのコードを持ってぐるぐる回す、お茶目なパフォーマンスで喝采を浴びる。もちろん歌声は、誰もが知っているあの松崎しげる。パワフル、ワイルド、セクシー、すべてを兼ね備えた本物のシンガーだ。「こんなに贅沢なハーモニーの中で歌えるのは、歌い手冥利に尽きます」。クライマックスは誰もが知る代表曲「愛のメモリー」で、74歳という年齢が信じられないハイトーンを響かせ、オーケストラとぴたりと息を合わせたエンディングと共に湧きあがるこの日一番の拍手。千両役者の十八番、圧巻のパフォーマンスだった。

 最後にもう1曲、松崎しげる、小柳ゆき、石崎ひゅーいの3人で歌うスペシャルコラボ歌唱曲「また逢う日まで」は、言わずと知れた尾崎紀世彦のカバー。「キヨ、見てるか?」と天を指しながら歌う松崎の万感に、年若い2人が唱和する。名曲が生んだ名場面に、演奏が終わっても熱い拍手が鳴りやまない。そしてグランドフィナーレは八神純子、大黒摩季を迎え入れ、マエストロ・齋藤友香理を加えた6名のラインナップ。東京交響楽団をねぎらい、能登半島地震への募金を呼びかけ、近い将来の再会を誓って手を振る、誰の顔にも満足げな笑顔が浮かんでいる。

 クラシックとポップスの架橋として、進化を続ける【ビルボードクラシックスフェスティバル】に、今日また刻まれた新たな1ページ。このページがどんどん増えて行くことを期待せずにはいられない、思い返すたびに心が温かくなる素敵な時間だった。

 兵庫公演チケットは、一般発売中だ。

Text by 宮本英夫
Photo by 金井恵蓮


◎公演情報

【Daiwa House presents billboard classics festival 2024】
2024年2月4日(日)東京・すみだトリフォニーホール 大ホール OPEN 16:00/START 17:00 ※終演
2024年2月21日(水)兵庫・兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール OPEN 17:45/START 18:30

出演:松崎しげる、八神純子、大黒摩季、小柳ゆき、石崎ひゅーい

指揮:齋藤友香理
管弦楽:
【東京】東京交響楽団
【兵庫】大阪交響楽団

チケット:
S席9,800円(税込)
A席7,800円(税込)
※全席指定・未就学児入場不可
※枚数制限:お1人様各公演1申込(最大4枚まで)のみ

注意事項
※チケット購入の際は、必ず公式サイトに掲載の注意事項をご確認の上、チケットをお求めください。
<ご来場のお客様へのお願い:https://billboard-cc.com/notice/

公演公式サイト:
https://billboard-cc.com/bbcf2024/


<主催・企画制作>ビルボードジャパン(阪神コンテンツリンク)

<特別協賛>大和ハウス工業株式会社
<後援>米国ビルボード

◎公演に関するお問合せ
【東京】キョードー東京 0570-550-799 (11:00~18:00/土日祝10:00~18:00)
【兵庫】キョードーインフォメーション 0570-200-888(11:00~18:00/日祝休)

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