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2023/11/22 09:00

【2023年 米ビルボード年間アルバム・チャート】モーガン・ウォレン首位獲得、テイラー・スウィフト/シザが続く

 2023年の米ビルボード・アルバム・チャート“Billboard200”は、米テネシー州出身のカントリー・シンガー=モーガン・ウォレンの『ワン・シング・アット・ア・タイム』が年間1位に輝いた。

 『ワン・シング・アット・ア・タイム』は、2021年にリリースした前作『デンジャラス:ザ・ダブル・アルバム』から約2年ぶり、3枚目のスタジオ・アルバムで、1位に初登場した3月18日~6月3日付まで12週連続で首位を独占して、2週間後の6月24日~7月8日付まで3週間首位をキープした後、10月14日付で14週間ぶりに返り咲き、通算16週間の首位を獲得した。

 16週間の首位獲得は、2011年から2012年にかけて通算24週をマークしたアデルの『21』以来の最長記録で、自身の記録としても前作『デンジャラス:ザ・ダブル・アルバム』(2021年1月23日~3月27日付)が達成した10週を大きく上回り、自己最長記録を更新している。

 カントリー・アルバムが年間チャートで首位に立つのは、2021年に自身の『デンジャラス:ザ・ダブル・アルバム』が達成して以来2年ぶりで、別のアーティストの記録では、2009年の首位をマークしたテイラー・スウィフトの『フィアレス』以来14年ぶり、男性アーティストではガ―ス・ブルックスの『ローピン・ザ・ウィンド』がトップに立った1992年以来、31年ぶりの快挙となる。

 男性カントリー・シンガーのアルバムが2作連続で年間TOP10入りするのは、ルーク・ブライアンの『テイルゲイツ&タンラインズ』(2012年 年間6位)と『クラッシュ・マイ・パーティ』(2013年 年間7位、2014年 年間10位)が達成して以来で、2作連続で年間1位を獲得したのは史上初の快挙。2021年の年間1位を獲得した前作『デンジャラス:ザ・ダブル・アルバム』は、2022年の年間3位、そして今年も5位にランクインして、3年連続のTOP10入りを果たした。同じアルバムが3年連続で年間TOP10入りするのは映画『サウンド・オブ・ミュージック』のサウンドトラック(1965~67年)以来となる。

 また、2018年4月にリリースしたデビュー・アルバム『イフ・アイ・ノウ・ミー』も、2020年の年間チャートで29位、2021年が36位、2022年が35位、そして今年も34位に4年連続でTOP40入りした。

 男性カントリー・シンガーの活躍が目覚ましかった2023年は、モーガン・ウォレンの他にもザック・ブライアンの『アメリカン・ハートブレイク』が年間8位に、3作がTOP10にランクインしている。

 ザック・ブライアンは、週間チャートでも最新作『ザック・ブライアン』(2023年9月10日~16日付)が2週連続で首位を獲得して、本作からのシングル「アイ・リメンバー・エヴリシング feat. ケイシー・マスグレイヴス」もソング・チャート“Hot 100”で自身初の首位を獲得するなど、大活躍の1年だった。TOP20には、年間チャートで8位にランクインした大ヒット曲「ファスト・カー」を含む、ルーク・コムズの『ゲッティン・オールド』(週間最高4位)も20位にランクインしている。

 続いて年間2位には、テイラー・スウィフトの『ミッドナイツ』がランクインして、昨年の4位に続き2年連続でTOP10入りを果たした。

 テイラーは、これでデビュー作『テイラー・スウィフト』から本作『ミッドナイツ』まで、10枚すべてのオリジナル・アルバムを年間TOP10入りしていて、そのうち『フィアレス』、『スピーク・ナウ』、『レッド』、『1989』、『ミッドナイツ』の5作が2年連続で年間TOP10にランクインするという大記録を樹立した。

1st『テイラー・スウィフト』2008年 年間5位
2nd『フィアレス』2009年間1位、2010年 年間7位
3rd『スピーク・ナウ』2010年 年間9位、2011年 年間2位
4th『レッド』2012年 年間4位、2013年 年間2位
5th『1989』2014年 年間3位、2015年 年間1位
6th『レピュテーション』2018年 年間1位
7th『ラヴァ―』2019年 年間4位、2023年 年間9位
8th『フォークロア』2020年 年間4位
9th『エヴァーモア』2021年 年間4位
10th『ミッドナイツ』2022年 年間4位、2023年 年間2位

 『ミッドナイツ』からは、「アンチ・ヒーロー」(週間最高1位)が年間4位、「カルマ feat. アイス・スパイス」(週間最高2位)が27位、「ラヴェンダー・ヘイズ」(週間最高2位)が32位にランクインして、週間チャートでは3曲がTOP2、年間チャートでは3曲がTOP40にランクインしている。

 また、2019年発表した7thアルバム『ラヴァー』も今年の年間9位にランクインさせていて、本作もブランクはあるが2年間でTOP10入りを果たした。年間チャートでの連続ランクインは多数達成してきているが、同じ年に2作を送り込んだのは昨年『ミッドナイツ』(4位)と『レッド(テイラーズ・ヴァージョン)』(5位)がランクインしたのに続く2度目の快挙。

 『ラヴァー』は、今年大成功を収めた【The Eras Tour】の反響と、6月20日に正式なシングルとしてリリースした「クルーエル・サマー」(年間18位)のヒットにより再ブレイクを果たし、4年ぶりの年間TOP10入りを果たした。ツアーの反響を受けては、過去にリリースしたその他のアルバムも再ヒットを記録して、『フォークロア』が12位、『1989』が16位、『レピュテーション』が21位、『エヴァーモア』が29位にそれぞれ年間TOP30入りしている。

 なお、今年7月にリリースした再録版『スピーク・ナウ(テイラーズ・バージョン)』は同月の週間チャートで2週間1位を獲得したものの、年間チャートでは11位どまりで、惜しくもTOP10入りを逃した。昨年の年間5位にランクインした『レッド(テイラーズ・ヴァージョン)』は、今年17位にランクインしている。

再録アルバム
『フィアレス(テイラーズ・バージョン)』2021年 年間33位
『レッド(テイラーズ・ヴァージョン)』2022年 年間5位、2023年 年間17位
『スピーク・ナウ(テイラーズ・バージョン)』 2023年 年間11位

 今年は、再録アルバム第4弾の『1989(テイラーズ・バージョン)』も週間チャートで2週間1位を獲得したが、集計期間最終日の2023年10月21日付より後、11月11日付で1位に初登場したため、今年の年間チャートにはランクインしなかった。本作は、初週で今年の週間最大ユニット1,653,000を記録していて、来年の年間チャートでは上位にランクインする可能性が高い。

 続いて年間3位にはシザ『SOS』がランクインして、自身初の年間TOP10入りを果たした。

 『SOS』は、1位に初登場した2022年12月24日付~2023年3月4日付まで、非連続で通算10週間の首位を獲得。R&B/ヒップホップ・アルバム、R&Bアルバムにカテゴライズされる作品としては、2016年5月~10月に非連続で13週を記録したドレイクの『ヴューズ』以来、女性アーティストの作品としては、1991年3月~5月に11週連続を記録したマライア・キャリーの『マライア』以来の最長記録を達成した。

 女性R&Bシンガーのアルバムが年間チャートでTOP10入りするのは、ビヨンセの『レモネード』が4位、リアーナの『アンチ』が5位にランクインした2016年以来7年ぶりで、初めて年間TOP10入りした作品としては、2011年の9位にランクインしたリアーナの『ラウド』以来12年ぶりの記録となる。

 『SOS』からは、「キル・ビル」が年間3位(週間最高1位)、「スヌーズ」が年間9位(週間最高2位)にTOP10入りして、その他には「シャート」が51位(週間最高11位)、「ノーバディー・ゲッツ・ミー」が77位(週間最高10位)に計4曲がランクインした。

 『SOS』のヒットを受けて、2017年にリリースしたデビュー・アルバム『コントロール』もロングランを記録して年間チャートでは28位にランクインしている。

 続いて年間4位には、ドレイクと21サヴェージのコラボレーション・アルバム『ハー・ロス』がランクイン。週間チャートでの首位獲得は、1位に初登場した2022年11月19日付の1週のみだったが、集計期間終了まで49週間TOP30にランクインするロングヒットを記録した。

 ドレイクの年間TOP10入りは、以下に続く7作目、通算9回目のランクインで、過去10年間では前述のテイラー・スウィフトに次ぐ2番目、男性アーティストとしては最多記録を更新している。2年連続でTOP10入りした前作『サーティファイド・ラヴァー・ボーイ』は、今年のチャートでも上位をキープして年間27位に3年連続でTOP30入りした。

『テイク・ケア』2012年 年間3位
『イフ・ユーアー・リーディング・ディス・イッツ・トゥー・レイト』2015年 年間4位
『ヴューズ』2016年 年間2位
『モア・ライフ』2017年 年間5位
『スコーピオン』2018年間2位、2019年 年間6位
『サーティファイド・ラヴァー・ボーイ』2021年 年間5位、2022年 年間9位
『ハー・ロス』2023年 年間4位

 21サヴェージは、2019年の年間18位(週間1位)を記録した『I Am > I Was』を上回る最高位を更新し、2作目のTOP20入りと初の年間TOP10入りを果たした。

 本作からは「Rich Flex」がアルバム1位に初登場した2022年11月19日付で最高2位をマークして、年間チャートでは14位にランクインするヒットを記録している。

 昨年の年間アルバム・チャートを制したバッド・バニーの『Un Verano Sin Ti』は、今年に入ってからも上位にランクインして年間チャートでは7位にランクイン。英語以外の言語をメインとしたアルバムが年間チャートでTOP10入りするのは、映画やミュージカルのサウンドトラックを除くと本作が初が快挙で、2年連続のランクインも初めての記録となる。

 リリースが集計期間終了後の10月13日だったため、今年の年間チャートにはランクインしていないが、最新作『Nadie Sabe Lo Que Va a Pasar Mañana』も10月28日付のチャートで1位に初登場して、『Un Verano Sin Ti』に続き2作連続の週間チャート1位を獲得した。

 英語以外の言語で構成されたアルバムでは、今年『Nadie Sabe Lo Que Va a Pasar Mañana』の他にもTOMORROW X TOGETHERの『The Name Chapter: TEMPTATION』(2月11日付)、カロルGの『Mañana Será Bonito』(3月11日付)、前述の『★★★★★ (5-STAR)』(6月27日付)、NewJeansの『Get Up』(8月5日付)、Stray Kidsの『ROCK-STAR』(11月25日付)の計6作が週間チャートで首位を獲得して、史上22作中の首位獲得数最多記録を更新した。

 3月11日付で1位に初登場したカロルGの『Mañana Será Bonito』は、今年の年間チャートで19位にランクインしている。

 『アメリカン・ハートブレイク』(8位)、『ラヴァー』(9位)を挟み、年間10位にはトラヴィス・スコットの最新作『ユートピア』がランクインして、年間チャートでは2018年の7位、2019年の8位に2年連続でランクインした前作『アストロワールド』に続く2作目、3回目のTOP10入りを果たした。

 『ユートピア』がリリースされたのは今年の7月28日で、1位に初登場した2023年8月12日~9月2日付まで4週連続で首位を獲得。集計期間終了まで11週間TOP10にランクインした。リリースから集計期間終了までの期間はわずか3か月弱という短い期間だったが、初週496,000ユニットという高記録を打ち出し、4週連続で15万ユニットを突破したことで、年間チャートでは10位に見事TOP10入りした。

 週間チャートでの首位獲得は、2ndアルバム『バーズ・イン・ザ・トラップ・シング・マックナイト』(2016年)から3作連続、ジャックボーイズ名義のコンピレーション・アルバム『ジャックボーイズ』(2019年)を含めると4作目のNo.1タイトルとなる。

 今年の年間ソング・チャート“Hot 100”では、ヒップホップ・ソングが勢いを振るわずTOP30にわずか3曲しかランクインしなかったが、アルバム・チャートではTOP10に3作、TOP10以下にもリル・ベイビーの『イッツ・オンリー・ミー』が13位、同じくリル・ベイビーの『マイ・ターン』が24位、ドレイクの『サーティファイド・ラヴァー・ボーイ』が27位、ケンドリック・ラマーの『グッド・キッド、マッド・シティー』が30位に、TOP30に7作がランクインした。

 R&Bアルバムでは、昨年の年間10位にランクインしたザ・ウィークエンドの『ザ・ハイライツ』が今年も14位に、2年連続でTOP20入りを果たしている。また、年間チャートで7位にランクインした「ダイ・フォー・ユー」のリバイバル・ヒットを受けて、収録アルバム『スターボーイ』も年間23位にランクインして、2017年の3位を獲得して以来6年ぶりのTOP30入りを果たした。

 昨年の年間チャートで7位を記録したハリー・スタイルズの『ハリーズ・ハウス』も、今年は15位に2年連続でTOP20にランクイン。ベテラン勢では、エルトン・ジョンのベスト盤『ダイアモンズ~グレイテスト・ヒッツ』が18位、1977年2月に発表したフリートウッド・マックの『噂』がTikTokのバイラル・ヒットにより25位にそれぞれTOP30入りを果たした。

 今年も上位にランクインした作品はいずれもストリーミング数が高いアルバムだったが、CD、アナログ盤、カセットテープのフィジカルによる売上もチャートには大きく反映していて、グッズの封入やカバー・アート違い、期間をずらしてフィジカルをリリースするなど、様々な戦略でチャートの上位を狙うアーティストが多かった。また、上位にランクインしたアルバムからは、いずれもヒット・シングルが輩出されていて、トラックによるユニットもアルバムのヒットに大きく貢献している。


Text:本家一成

◎【Billboard 200】2023年 年間チャートTOP10
1位『ワン・シング・アット・ア・タイム』モーガン・ウォレン
2位『ミッドナイツ』テイラー・スウィフト
3位『SOS』シザ
4位『ハー・ロス』ドレイク&21サヴェージ
5位『デンジャラス:ザ・ダブル・アルバム』モーガン・ウォレン
6位『ヒーローズ&ヴィランズ』メトロ・ブーミン
7位『Un Verano Sin Ti』バッド・バニー
8位『アメリカン・ハートブレイク』ザック・ブライアン
9位『ラヴァー』テイラー・スウィフト
10位『ユートピア』トラヴィス・スコット

集計期間:2022年11月19日付~2023年10月21日付チャート

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