2023/09/15 17:00
7月15日から約2か月にわたって全国9都市で開催された【billboard classics 山崎育三郎 Premium Symphonic Concert Tour 2023 ―PRINCIPE―】。9月9日、東京のサントリーホールでついに千穐楽を迎えた。先日このサイト上において、7月26日に東京国際フォーラムで開催された1回目の東京公演の模様を少しだけお伝えしたが、今回は最終公演の模様を全パートにわたってお伝えする。
山崎育三郎 シンフォニックツアー2023。各地で完売続出の長期ツアーの千穐楽公演が、9月9日土曜日の夕方、東京・赤坂のサントリーホール大ホールで開催された。当夜の共演者はお馴染み、指揮者の栗田博文、そして、ツアーで山崎を支え続けてきたピアニストであり音楽監修も務めた宗本康兵、そして東京フィルハーモニー交響楽団というメンバーだ。
山崎いわく、「サントリーホールは、ミュージシャンにとっての武道館、ミュージカル俳優にとっての帝国劇場、そして高校球児にとっての甲子園」であり、音大出身の山崎にとって「このステージで歌えるのは最高の栄誉」と、聴衆に熱く語っていたのが印象的だった。さらに精鋭のフルオーケストラにも恵まれたこの公演がいかにすごいことかを実感せずにはいられなかった。
17時の開演とともに、まずはオーケストラ演奏によるメドレー形式のオーバーチュア(序曲)。満場の客席を夢とロマン、愛と苦悩に満ちたミュージカルのファンタジックな世界へと誘う。そして、スカイブルーの爽やかなプリンスらしい衣装をまとった山崎が登場。まずは『モーツァルト!』から「星から降る金」と、『エリザベート』から「愛と死の輪舞」の2曲を披露。コンサート冒頭とは思えないほどにドラマティックで迫真の歌声を聴かせる。まるで一本のミュージカル作品全体が繰り広げられているかのような時空間を超えた濃密な時の流れが感じられ、早くも聴衆を異次元の世界へと誘った。
2曲のソロを終えると、山崎は「千穐楽だからすごく気合いが入っている」と楽しげに意気込みを語り、会場の雰囲気を一気に和らげる。そして、11月23日にTBSチャンネル1(CS放送)での放映が決定しており、会場には20台以上のカメラが入っていることを伝えると、客席へと向かってステージを降り、早くもファンサービス。
続いては、今年、山崎が主演した新作のミュージカル『ファインディング・ネバーランド』から、「マイ・イマジネーション」、「足もとが揺れるとき」、そして「ネバーランド」の3曲。何があろうとも信念を曲げることなく、力強く前を向いて歩いてゆく主人公 バリの姿と山崎の真摯な歌声とが見事にオーバーラップする。人生の苦難や孤独を語る憂いに満ちたバラードの数々を一途に歌いあげる姿に、この作品に込める山崎の思いの大きさが感じられた。
今回の全国ツアーのもう一つの話題は、9都市10公演でそれぞれ異なる10人の女性ゲストが出演することだ。千穐楽のこの日は山崎の先輩でもあり、『ミス・サイゴン』や『レ・ミゼラブル』などでも共演経験のある新妻聖子。ハープが奏でる軽やかなイントロとともに新妻聖子が登場すると、『ミス・サイゴン』から、「世界が終わる夜のように」をデュエット。山崎のロングトーンの甘い歌声によりいっそう艶が感じられ、ラブソングらしさがつのる。一方、新妻は若々しさあふれる力強い思いを一つひとつの言葉に込めて高らかに歌いあげた。
曲の後のMCコーナーでは、山崎との軽快な先輩後輩トークで会場を沸かせ、トークを終えると続いてもデュエットでディズニー実写映画『美女と野獣』から主題歌「美女と野獣」。両者一節ずつ歌ったところで、今年のツアー恒例となったプリンス山崎による“お姫様抱っこ”を披露(毎公演、山崎は「美女と野獣」の曲中でゲスト一人ひとりを“お姫様抱っこ”し続けたのだ!)。鮮やかな黄色のドレスをまとった新妻が軽やかに山崎の腕の中に包み込まれる瞬間が、何とも可憐で美しかった。
清涼感に満ちた新妻との共演を終えると、山崎が再びソロで、同じく『美女と野獣』から「ひそかな夢」。第1部のフィナーレにふさわしい、ひときわスケールの大きな歌唱に会場中から盛大な拍手が贈られた。手の届かないところ行ってしまう美しい娘を思いながらも、再び共に迎える愛の夜明けを夢見ながら力強く歌い上げる、その痛いほどの切なさが会場の聴衆の心をとらえてやまなかった。
後半第2部は、いきなり指揮者 山崎育三郎の登場。「Congratulations」を堂々と振る山崎のバトンテクニックのキレと鮮やかさはなかなかだ。
続いて山崎には珍しく、学生時代に愛唱していたというクラシックのレパートリーから2曲。ヴェルディのオペラ『リゴレット』からあの有名な「女心の歌」に続き、トスティの歌曲「Ideale(理想の女)」では、イタリア語の発音の色っぽさと語り口に客席も夢見心地の様子。歴代の名テノール歌手たちが歌い紡いできたこの歌曲は、まさに山崎の美声にこそふさわしい。
そして、いよいよ山崎オリジナル楽曲の世界へ。まずはNHKの大河ドラマ『西郷どん』から、「西郷どん紀行~道しるべ~」、そして、今年も大いに話題になった高校球児へのエールソング「栄冠は君に輝く」、そして、山崎作詞・宗本作曲による「誰が為」の3曲。表現のスタイルこそ違うが、どの楽曲も大志を抱いて挑戦し続ける力強い戦士たちの姿を思い起こさせるものだ。情熱に満ちた歌声が会場に響きわたる。特にコロナ禍で甲子園に出場できなかった高校球児に捧げられた「誰が為」では、時に10代の若者たちの心に寄り添い、語りかけるような山崎のあたたかな語り口が、聴き手の心をも癒してくれるかのようだった。
次のパートでは、山崎が舞台やTVドラマの撮影を通して子役たちとのふれあいの中であたためてきた2曲、「エンベロープ」 と 「にじ」。TVドラマ『リエゾン』の主題歌でもある「エンベロープ(コブクロ作曲)」では、「いつか君が光を描く日まで…」という一節に込められた一つひとつの言葉が聴く者の心にストレートに響きわたる。ある種の環境から疎外されてしまった生きづらさを感じる子供たちに寄り添い、包み込む優しさ——ここに愛にあふれた山崎の歌の原点と魅力、そのすべてがある。
そして、いよいよ最後のパート。ここからは山崎自らの希望で観客全員総立ち状態でのセッションとなった。「千年トラベラー」、「僕のヒロインになってくれませんか?」と、ビートの利いたグルーブ感あふれる楽曲で会場が一体となって熱狂の渦へと突入。「僕のヒロイン~」では、再び新妻も登場し、切れの良いダンスと歌でボルテージもマックスに。
そして、千穐楽公演のラストを飾る1曲――「I LAND」。エッジの効いたビートが残り少ない時間を一刻一刻と密度濃く満たしてゆく———。客席の熱気も最高潮に達したところで再び客席の間に降りて熱唱。山崎が体全身でダイナミックにマンボのリズムを刻むととにかくカッコいい。
熱狂冷めやらぬまま幕が閉じると、大喝采に応えて再び山崎登場。アンコールの 「On your side」を歌い終えると、最後の最後に山崎にとって「一番大切な楽曲の一つ」という森山直太朗作曲「君に伝えたいこと」でこのツアーを締めくくることを宣言。「大切な人を思い浮かべながら聴いてください」と告げながらも、山崎自身もかなり思いを募らせていたようだ。再び客席と山崎が一つになっての感動的なフィナーレ。
歌い終えた後、何度も何度も客席に向かって深々と一礼する山崎の姿が美しい。会場のファンが指につけたジュエルライトの幻想的な光が、よりいっそう愛にあふれた空間をあたたかく彩る。それでも客席から離れることのない聴衆に、最後は山崎一人が舞台に登場し、「これからもみんなをワクワクさせて、幸せにしちゃうからついてきてね~!」と明るく一言。
冷めやらぬ余韻に後ろ髪を引かれながらも、山崎の“メッセージ”を胸に山崎が立つ新たなステージへの希望を抱きつつ、それぞれが幸福に満ちた面持ちで帰路に就いた。
text:朝岡久美子 photo:石阪大輔
◎公演情報
【山崎育三郎 Premium Symphonic Concert Tour 2023 ―PRINCIPE―】※全公演終演
2023年7月15日(土)OPEN 16:00 / START 17:00 北海道・札幌文化芸術劇場 hitaru
ゲスト:明日海りお
2023年7月23日(日)OPEN 16:00 / START 17:00 福岡・福岡サンパレス ホテル&ホール
ゲスト:木下晴香
2023年7月26日(水)OPEN 17:30 / START 18:30 東京・東京国際フォーラム ホールA
ゲスト:濱田めぐみ
2023年7月29日(土)OPEN 16:00 / START 17:00 兵庫・兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール
ゲスト:涼風真世
2023年8月5日(土)OPEN 16:00 / START 17:00 岡山・岡山シンフォニーホール 大ホール
ゲスト:昆夏美
2023年8月11日(金祝)OPEN 16:00 / START 17:00 長野・長野市芸術館メインホール
ゲスト:シルビア・グラブ
2023年8月13日(日)OPEN 16:00 / START 17:00 愛知・愛知県芸術劇場 大ホール
ゲスト:島田歌穂
2023年8月20日(日)OPEN 16:00 / START 17:00 広島・上野学園ホール(広島県立文化芸術ホール)
ゲスト:夢咲ねね
2023年8月23日(水)OPEN 17:30 / START 18:30 大阪・フェスティバルホール
ゲスト:和音美桜
2023年9月9日(土)OPEN 16:00 / START 17:00 東京・サントリーホール 大ホール
ゲスト:新妻聖子
出演:山崎育三郎
音楽監修・ピアノ:宗本康兵
※広島公演は宗本康兵に代わり清野雄翔がピアノを担当。
編曲監修:山下康介
指揮:
[7月15日~8月5日]田中祐子
[8月11日~9月9日]栗田博文
管弦楽:
[7月15日]札幌交響楽団
[7月23日]九州交響楽団
[7月26日、8月11日、9月9日]東京フィルハーモニー交響楽団
[7月29日、8月20日、8月23日]大阪交響楽団
[8月5日、8月13日]セントラル愛知交響楽団
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