2023/08/22 10:30
オリヴァー・アンソニー・ミュージックの「リッチ・メン・ノース・オブ・リッチモンド」が1位に初登場した、今週の米ビルボード・ソング・チャート。
オリヴァー・アンソニー・ミュージック(本名クリストファー・アンソニー・ランスフォード)は、米バージニア州出身のシンガーソングライターで、工場で勤務していた経歴をもつ異色の新星。「リッチ・メン・ノース・オブ・リッチモンド」は実質上のデビュー曲で、ランクイン、首位獲得いずれも自身初の快挙を達成した。
8月11日に正式にリリースされた「リッチ・メン・ノース・オブ・リッチモンド」は、今週の集計期間中(8月11日~8月17日)にセールスが147,000、ストリーミングは1,750万回を記録して、デジタル・ソング・セールス・チャートで1位、ストリーミング・ソング・チャートでは4位に初登場した。メインのラジオ局ではまだプロモーションされていないが、それでも今週553,000回のエアプレイを記録している。
バージニア地域でレコード会社未契約のアメリカーナ、もしくはカントリー系のアーティストにスポットを当てるYouTubeアカウント「radiowv」で8月11日に投稿された動画は、わずか10日で3,000万回以上の再生数を記録しているが、ヒットの引き金となったのはTikTokで、無名の新人ながらすでに150万人以上のフォロワーを獲得している。
「リッチ・メン・ノース・オブ・リッチモンド」は、インフレや税金、教育や福祉問題などアメリカにおける現代の問題点をとりあげたテーマが、同じフラストレーションを感じる多くのリスナーに支持されSNSを中心に話題を集めた。制作はオリヴァー・アンソニーが単独で行い、プロモーション等のプロデュースはradiowvの共同設立者であるマネージャーのドレイヴン・ライフが担当している。
オリヴァー・アンソニー・ミュージックは、これまで米ビルボードのいずれのチャートにもランクインしたことがなく、初のランクインで初登場1位獲得という史上初の記録を打ち立てた。Hot 100にはじめてランクインした曲が1位に初登場したのは、ゼイン、バウアー、キャリー・アンダーウッド、ファンテイジア、クレイ・エイケンに続く6組目だが、ゼインはワン・ダイレクションの楽曲、バウアーとファンテイジアはHot 100以外のチャート、キャリー・アンダーウッドとクレイ・エイケンは出身番組『アメリカン・アイドル』でのコラボレーション曲がそれ以前にランクインしたことがあり、いずれのチャートにもランクインしたことがないのは、オリヴァー・アンソニー・ミュージックが初のアーティストとなる。
ソングライター、プロデューサーのクレジットが単独の自主制作曲が1位に輝いたのは、昨年の3月に達成したグラス・アニマルズの「ヒート・ウェイヴス」(フロントマンのデイヴ・ベイリーが担当)以来、約1年5か月ぶりで、ソロ・アーティストとしては、2017年12月に1位を獲得したエド・シーランの「パーフェクト」以来、約5年8か月ぶりの首位を獲得した。
なお、自主制作曲として1位を獲得した史上初のタイトルは、映画『リアリティ・バイツ』のサウンドトラックに収録されたリサ・ローブの「ステイ」(1994年)で、この曲のヒットを受け彼女はその後Geffen Recordsと契約をしたが、オリヴァー・アンソニー・ミュージックは現在のところレーベルとの契約等は検討していないという。
「リッチ・メン・ノース・オブ・リッチモンド」はカントリー・ミュージックにカテゴライズされていて、今週のカントリー・ソング・チャートでも同時に首位を獲得した。
Hot 100とカントリー・ソング・チャートの両チャートを制したのは、3週間前に達成したジェイソン・アルディーンの「トライ・ザット・イン・ア・スモール・タウン」に続く史上23曲目で、2023年ではモーガン・ウォレン「ラスト・ナイト」を含む3曲が2つのチャートで1位を獲得している。
オリヴァー・アンソニー・ミュージック「リッチ・メン・ノース・オブ・リッチモンド」(2023年)
ジェイソン・アルディーン「トライ・ザット・イン・ア・スモール・タウン」(2023年)
モーガン・ウォレン「ラスト・ナイト」(2023年)
テイラー・スウィフト「オール・トゥー・ウェル(テイラーズ・ヴァージョン)」(2021年)
テイラー・スウィフト「ウィ・アー・ネヴァー・エヴァー・ゲッティング・バック・トゥゲザー」(2012年)
ローンスター「アメイズド」(1999~2000年)
ケニー・ロジャーズ&ドリー・パートン「アイランド・イン・ザ・ストリーム」(1983年)
エディ・ラビット「恋のレイニー・ナイト」(1981年)
ドリー・パートン「9 To 5」(1981年)
ケニー・ロジャース「レイディ」(1980年)
グレン・キャンベル「哀愁の南」(1977年)
C・W・マッコール「コンボイ」(1975~76年)
ジョン・デンバー「アイム・ソーリー」(1975年)
グレン・キャンベル「ラインストーン・カウボーイ」(1975年)
ジョン・デンバー「すばらしきカントリー・ボーイ」(1975年)
フレディ・フェンダー「涙のしずく」(1975年)
B.J.トーマス「心にひびく愛の歌」(1975年)
チャーリー・リッチ「朝やけの少女」(1973年)
ボビー・ゴールズボロ「ハニー」(1968年)
ジミー・ディーン「ビッグ・バッド・ジョン」(1961年)
マーティー・ロビンス「エルパソ」(1959~60年)
ジョニー・ホートン「ニューオーリンズの戦い」(1959年)
同じ年に複数曲が両チャートで1位を獲得したのは、1981年にエディ・ラビットの「恋のレイニー・ナイト」とドリー・パートンの「9 To 5」が達成して以来、約42年ぶりで、3曲は史上最多記録。また、両チャートで初登場1位を獲得したのはテイラー・スウィフト「オール・トゥー・ウェル(テイラーズ・ヴァージョン)」に続く史上2曲目で、男性ソロ・アーティストとしては初の記録を達成した。
上記23曲のうち12曲は1973年から83年の10年間で達成していて、当時カントリー・ソングがメジャーだったことがわかるが、今年も3曲が両チャートを制する等、米国におけるカントリー・ソングの需要が高まっている。
今週のTOP3は、2位がルーク・コムズの「ファスト・カー」(6週連続)、3位はモーガン・ウォレン「ラスト・ナイト」がランクインして、TOP3をカントリー勢が独占した。TOP3をカントリー・ソングが独占するのは、3週前の8月5日付に続く史上2回目のチャートアクションとなる。
先週最高位を更新したテイラー・スウィフトの「クルーエル・サマー」は、3位から4位にダウン。レマ&セレーナ・ゴメスの「カーム・ダウン」も4位から5位に順位を下げたが、エアプレイ・チャートでは9週目の首位を獲得(8,590万回)、アフロビーツ・ソング・チャートでは今週首位獲得週を史上最長の51週目に更新した。
6位は、先週に続きオリヴィア・ロドリゴの「ヴァンパイア」が同位をキープ。また、今週10位には新曲「バッド・アイディア・ライト?」も初登場していて、TOP10に2曲をランクインさせている。
「バッド・アイディア・ライト?」は、9月8日にリリース予定の新作『ガッツ』から「ヴァンパイア」に続く2曲目のシングルとして8月11日にリリースされ、初週ストリーミングが1,970万回、エアプレイが530万回、セールスは4,000をそれぞれ記録して、今週10位に初登場した。
TOP10入りは「バッド・アイディア・ライト?」が以下に続く6曲目で、その6曲いずれもTOP10に初登場している。
1位「ドライバーズ・ライセンス」(2021年)
3位「デジャヴ」(2021年)
1位「グッド・フォー・ユー」(2021年)
9位「トレイター」(2021年)
1位「ヴァンパイア」(2023年)
10位「バッド・アイディア・ライト?」(2023年)
TOP10その他は、ガンナの「FukUMean」が先週の5位から7位、デュア・リパの「ダンス・ザ・ナイト」が7位から8位、ニッキー・ミナージュ&アイス・スパイスの「バービー・ワールド(with アクア)」も8位から9位にそれぞれランクダウンした。
Text: 本家 一成
※関連リンク先の米ビルボード・チャートは8月25日以降掲載予定となります。
◎【Hot 100】トップ10
1位「リッチ・メン・ノース・オブ・リッチモンド」オリヴァー・アンソニー・ミュージック
2位「ファスト・カー」ルーク・コムズ
3位「ラスト・ナイト」モーガン・ウォレン
4位「クルーエル・サマー」テイラー・スウィフト
5位「カーム・ダウン」レマ&セレーナ・ゴメス
6位「ヴァンパイア」オリヴィア・ロドリゴ
7位「FukUMean」ガンナ
8位「ダンス・ザ・ナイト」デュア・リパ
9位「バービー・ワールド」ニッキー・ミナージュ&アイス・スパイス with アクア
10位「バッド・アイディア・ライト?」オリヴィア・ロドリゴ
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