2023/06/27
tofubeats「水星 feat. オノマトペ大臣」のPVに参加、SONYウォークマンの公式モデルになるなど鮮烈なデビューを飾った2012年。あれから11年の時を経てシンガーソングライター・仮谷せいらが、初の単独公演【仮谷せいら 1st Oneman Live & 30th Birthday Special】を6月16日(金)代々木LIVE STUDIO LODGEにて開催した。
<“夜の太陽”と化した仮谷せいらの光の歌声>
仮谷せいらのワンマンライブを長年待ち侘びていたファンが大集結し、超満員となった会場。lui veroがオープニングアクトで温めたステージへ現れた彼女は、生バンドと共に「We Should Dance!今こそ踊れ歌え」「宇宙一のフロアをSHAKEして明日へDunk!」とまるでこの瞬間の為に生み出されたかのようなダンスナンバー「シュドゥダン」を披露し、一瞬にしてハッピーグルーヴ全開の音楽空間を創造してみせる。かねてより太陽みたいな女の子だなと感じていたが、同曲のフレーズにもある通り“夜の太陽”と化した彼女は、会場中を眩い歌声で包み込んでいった。
「改めましてこんばんは、仮谷せいらでーす! 凄い人だ! ビックリしました。今日は私の30歳になる誕生日でして、ワガママを言ってお集まり頂いて。ありがとうございます! あの曲やこの曲やいろいろと仮バン(仮谷せいらバンド)と演奏していきたいと思います。よろしくお願いしまーす!」と緊張しながらもゴキゲンな彼女は、その後も「皆さん、これを聴きに来たんじゃないかと思うぐらい人気のある曲を」と「ZAWA MAKE IT」でシンガロングを生んだり、続く「HYPE」「HOME」でもキラキラしたアーバンなサウンドと歌声で会場を揺らし続けていく。
<「ワンマンって楽しい!」その音楽人生を全肯定する光景>
その様子を見ながら、何ゆえに今日までワンマンライブを行わなかったのかと思ったりもしたが、2022年に初のアルバム『ALWAYS FRESH』もリリースし、ここまで約10年のキャリアの中で制作してきた名曲たちを一斉に披露できる贅沢な状況。しかもコロナ禍で封印されていた観客の声出しが解禁されたタイミングで開催できたことを考えると、ベストなタイミングだったのかもしれない。事務所(アゲハスプリングス)に入って10年目の初ワンマン。仮谷も「ワンマンって楽しい!」と大満足の様子だった。
また、このライブにはアーティスト仲間も多数来場しており、その中のひとり。天野なつとそのマネージャーからもらったというチョコレートカステラをもぐもぐしながらトーク。そんなアットホームな空気の中で彼女は「懐かしいなと思いながら聴いてください」と「フロアの隅で」「いつか忘れるなら」をポップにエモーショナルに歌い上げ、それに呼応するようにオーディエンスの熱量も自然と高まり、きっと彼女がいつしか涙した日を切り取ったのであろう「いつかあの日 泣いた場所って 笑えるくらい泣けばいい」というフレーズに涙するファンの姿も見受けられた。
こうして客席側の心も完全に開かせた仮谷は、間髪入れずに「ここから後半戦!」と「Nayameru Gendai Girl」「Odora Never Cry」「水星」「Nobi Nobi No Style」といったキラーチューンばかりを畳み掛けていき、会場が一体となったコール&レスポンスやシンガロングも響き渡り、彼女の約10年にわたる音楽ストーリー、もっと言えば30歳に至るまでの人生は何も間違っていなかった──そう証明するような爆発的にポジティブな光景と音楽を生み出していった。
<仮谷せいらの本音──歌い続けてきた理由とも取れる心の声>
「私、本当のことを言うのがすごく苦手な人間なんです。でも、ライブはすごく楽しくて、ステージとお客さんでアイコンタクトを取ったり、物販で皆さんとお話するのもすごく大好きで。そんなライブをしていく中でめちゃくちゃ良い楽曲を書いて頂きました」と話すと、自分を今日まで支えてくれたみんなへの「君といるその時間が何よりも大切で──」そんな想いを込めた「話をしようよ」をひとりひとりに届けるように歌い上げる彼女。さらには、前述のMCにも通ずる仮谷せいらの「本音」を披露し、これまでひとりの女の子として歌手として生きてきた中での葛藤をすべて曝け出し、その上で「愛されたから 忘れたくない まだ終わりたくない そんな気持ち今も残ってる」と今日まで歌い続けてきた理由とも受け取れる心の声を最後に伝えると、彼女は笑顔でステージをあとにした。
<「自分が生きる為に音楽をしていた」そして──>
もしかしたら彼女は自身の影を隠すように“夜の太陽”を懸命に演じていたのかもしれないし、ゆえに彼女の楽曲はどんな曲調でもキラキラした輝きが加えられていたのかもしれない。しかし、その音楽たちが仮谷せいらの背中を押し続けてきたのは間違いなく、その姿にファンやリスナーもポジティブな力を受け取ってきた。そして──
アンコールでのMC。「ちょうど二十歳のときに今の事務所に入って。CDを出したり、ライブもすごくたくさんやってきたんですけど、この10年は本当に必死で。どこか歌とか音楽というものを自分の為にやっていたような10年間だったなと思っていて。皆さんに励まされてライブをしたり、皆さんに期待して頂いてリリースできたり、自分主導じゃなくて皆さんにめちゃくちゃ助けられながら、自分が生きる為に音楽をしていたなと振り返ったときに思いました。なので、ここからは今までもらったものを皆さんにお返ししたい。私の音楽や歌声で皆さんのことを助けたいし、人の為に音楽をしていけたらいいなって。今、歌いながら思っていました! もしかしたら帰ったら変わるかもしれんけど(笑)」
このMCからも分かる通り、彼女は初ワンマンで光も影も惜しみなく体現してみせたことで、一切の偽りない正真正銘の“夜の太陽”となった。そんな大好きなみんなを照らす光として歌い届けてくれた楽曲たちは、いずれも会場中を笑顔でいっぱいにしていく。そして「一緒に音楽をつくってほしい」とオーラスに披露した「Colorful World」では、ここに集いしすべての人たちの世界をカラフルに変えていくような、仮谷せいらにしか成し得ない、天井知らずに明るい“Change the World”をみんなと体現してみせた。なんて眩しい音楽空間なんだろう。
そんなスペシャルすぎる30歳の誕生日を体験した彼女は、これからさらなる輝きを表現できるアーティストへなっていくはずだ。仮谷せいらの音楽人生における本編はここから。ぜひ今後の活動に注目してほしい。
取材&テキスト:平賀哲雄
◎ライブ【仮谷せいら 1st Oneman Live & 30th Birthday Special】
2023年6月16日(金)代々木LIVE STUDIO LODGE セットリスト
01.シュドゥダン
02.Midnight TV
MC
03.ZAWA MAKE IT
04.HYPE
05.HOME
MC
06.フロアの隅で
07.いつか忘れるなら
MC
08.Nayameru Gendai Girl
09.Odora Never Cry
10.水星
11.Nobi Nobi No Style
MC
12.話をしようよ
13.本音
En1.大人になる前に
En2.MYC
En3.Colorful World
関連記事
最新News
関連商品
アクセスランキング
インタビュー・タイムマシン
注目の画像