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2023/06/09

<ライブレポート>【SUGA | Agust D TOUR 'D-DAY' in JAPAN】でSUGAが明かした気持ち「次に日本に来る時は7人で」

 Agust D名義でソロ活動をしているBTSのSUGAが初めてのソロ・ジャパンツアーを開催した。6月2日~4日の3日間にわたって、神奈川・ぴあアリーナMMで開催されたこの公演は、ライブビューイングとオンライン配信も含めて、日本のみならず全世界に向けて公開された。その最終日のライブの模様をレポートする。

 会場に雷鳴が轟き、スクリーンに雨が映し出されると、ステージの奥から仰向け状態でSUGAの体が担ぎ込まれてくる。そんな衝撃的なスタートを飾ったライブは1曲目の「Haegeum」から凄まじい熱気に包まれた。韓国の伝統的な弦楽器ヘグムと“解禁”という韓国語の2つ意味を持つこの曲で、SUGAは客席に向かってというよりも、ただステージを歩き回り、想いを吐き出すかのように高速でラップを叩きつける。

 黒い民族衣装を羽織っての「Daechwita」では一転、打ち鳴らされるドラムのリズムに合わせて弾むように体を動かし、客席に向かって拳を突き上げ「一緒に!」とコールを要請。ライブ序盤からSUGAというアーティストが持つ内と外、両極端な二面性とその幅の広さを感じさせた。興奮冷めやらぬまま始まった「Agust D」では怒涛の“速射砲ラップ”で会場を圧倒。かと思えばインタールードでは「最後の公演です、全力で行きます!」と流暢な日本語で会場の熱気をさらに煽る。「give it to me」まで一気に畳み掛け、会場をSUGAの世界観に染め上げていく。

 「BTSのSUGAとしては初めてお見せするステージをたくさん準備しました。楽しみですか?」と尋ねると、会場からは大きな歓声が沸きあがる。その声を聞き、笑みを浮かべながら「叫べ」とつぶやくと、歓声はさらにひときわ大きくなる。そんな中、アコースティック・ギターをチューニングし始めるSUGA。彼が持つギターは韓国らしい花の螺鈿細工が施され、ボディにはメンバー全員のサインと応援メッセージも。中央には大きな字で「キム・テヒョン ファイティン ユンギ(ハートマーク)」(ユンギはSUGAの本名)と書かれているのが目につく。そんな世界に1つしかないギターで奏でられたのは、「Trivia 轉 : Seesaw」。最後、囁くように歌われる切ない一節に、会場からはSUGAを呼ぶ声が。

 ステージ下に作られたアメリカン・ヴィンテージ風な部屋で歌われた「SDL」は、スクリーンに映し出された彼の歌う姿が、まるで古いブラウン管で見ているような錯覚に陥る構成。続く「People」では曲のポイントでもある<Why so serious?>の1フレーズを観客が自然と歌いだし、切々と歌われるメロディと歌詞は物悲しいけれど、ステージにいるSUGAと客席のARMYとのつながりがはっきりと感じられる曲に。そのせいか、曲のラストでSUGAが客席を見上げ、腕を突き出し微笑んだのが見えた。「みなさん一緒に歌いましょう」と言って始まった「People Pt.2 (feat. IU)」では、本来はIUが歌っている部分を代わりに客席に任せ、結果沸き起こった大合唱に、思わずサムズアップ。

 「では、もう一度雰囲気を変えてみましょうか」と言って始まったのは、ジャジーなピアノにSUGAのラップがリズミカルに絡み合う「Moonlight」。息つく間もないラップと、メロディアスなボーカルの両極を味わえる難曲を笑顔で歌ってみせたかと思えば、「Burn It (feat. MAX)」ではステージでジャンプしながら会場を真っ赤に燃え上がらせる。普段はひょうひょうとしているように見えるSUGAだが、そんな彼の内面にある燃え盛る炎が垣間見えるステージだった。

 VCRを挟んで、顔まで覆ったグレーのダンサーたちの中から真っ白な衣装のSUGAが「Interlude: Shadow」を歌いながらステージに登場。心の中に秘めた想いと怖れ、きれいなだけではない本当の気持ちを綴ったこの曲のラストは、取り囲んだダンサーたちが絶え間なくスマホのシャッターを切るというものだった。さらに「BTS Cypher PT.3 : Killer」、「BTS Cypher 4」と続けざまに火力の高いラップを叩きつけ、会場を両手で扇動する。「UGH!」ではヘッドバンキングを見せながらも、SUGA特有のシニカルな言い回しがクールなラップで魅せる。「Ddaeng」のタイトルの意味は、日本語ではクイズに外れた時の「ブー」という音と同じ意味を持つ韓国のオノマトペ。「HUH?! (feat. j-hope)」までをメドレーでつなぎ、この公演の中でももっともハードでアグレッシブなステージを見せた。

 MCでは「メンバーがいなくて、一人で歌うとすごくさびしいですね」とポツリ。「でも、みなさんが一緒に歌ってくれて本当によかったです」と笑顔を見せると、会場からは再び歓声が沸き上がる。SUGAの先導で「BTS Cypher 4」のサビを会場中が一緒になって大合唱する場面も。続く「Life Goes On」ではピアノを弾きながら、感情を吐き出すように歌うSUGAが。前のパートで歌われた攻撃力の高いラップ曲とは異なり、この曲で歌われるのは、「これから先、会えなくなる日が続いても、僕を忘れないで」という願い。タイトルでもある「Life Goes On」のリフレインで終わるこの曲のラストでSUGAが見せた表情が胸を締め付けた。

 故・坂本龍一さんとの出会いの映像を挟んで歌われた「Snooze」は、2人のコラボ曲。The Roseのボーカル・ウソンのやさしい声とSUGAの力強いラップが重なり合うこの曲は、夢見る人を励ます応援歌であり、自身に言い聞かせているようでもある。「Polar Night」まで、SUGAという人の思想、考え、想いが詰め込まれたラップが続き、あらためてアーティストとしての幅の広さ、思考の深さに感じ入る。

 しかし楽しい時間はあっという間。「明日も会いたいですね」と寂しそうにしながらも、「最後のステージを楽しみましょう。準備はいいですか?」としっかり会場を盛り上げてから、ライブはいよいよクライマックスへ。「最後の曲です」と言って歌われたのは、同じフレーズが繰り返される中でサビに向かって徐々に高揚していくドラマティックなメロディが印象的な「AMYGDALA」。最後にはすべてを出し尽くしたかのようにステージに倒れ、客席のARMYの歓声を聴きながら、ライブが始まった時と同じように、仰向けのままステージから連れ去られていった。

 アンコールではTシャツにダメージジーンズというカジュアルな出で立ちでステージに登場すると、炎が燃え盛るステージの上で「D-Day」がスタート。ふと会場を見て満足げな笑みを見せると、ステージを下りて観客の目の前へ。手を出そうかやめようかARMY相手の駆け引きも楽しく、そんな遊び心を発揮しているうちに歌詞を飛ばし、苦笑する一幕も。

 「本当に、本当にありがとうございました。今日みなさんが送ってくれた応援、忘れません」と日本語で感謝の気持ちを伝えた後、いよいよこの日最後のパート、「INTRO : Never Mind」がスタート。語りかけるように、独り言のように始まるこの曲を少し咳き込みながら、想いをいっぱいに詰め込んで、客席に向かって手を伸ばし、サビの客席の大合唱には満足そうにうなずいていた姿が印象的だ。「ぶつかるくらいならもっと強く踏み出せよ」という歌詞で終わるこの曲はライブの最後を飾るにふさわしいと思っていたら、監視カメラの映像のようにいろんな角度から撮られたSUGAの姿がスクリーンに映し出される「The Last」では嵐のようなラップを叩きつけ、別れを惜しむ間もなく、両手を振ってあっけなくステージを去っていった。ライブ中、「次にまた日本でライブをする時は7人で公演します」と語っていたSUGA。再びBTSの7人が揃うその日までの重しとなるような、彼らしいライブだった。

Text by 尹秀姫
Photos by BIGHIT MUSIC

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