2023/06/01
2023年5月27日~28日、LUNA SEAが東京・武蔵野の森総合スポーツプラザでバンドのこれまでのキャリアを詰め込んだ“ベストライブ”を開催した。本稿では【A Show for You】と題された28日の公演の模様をお届けする。
会場が暗転すると、スクリーンにバックステージで円陣を組むメンバーの様子が映し出される。“気合い入れ”の様子が生で中継され、会場の空気も引き締まる。メンバーが一人ずつステージに登場すると、久しぶりの披露となった「LOVE SONG」でライブが始まる。アコースティックなイントロから徐々に厚みのあるバンドサウンドへと変化していく優しさ溢れる楽曲だ。今回のツーデイズはLUNA SEAにとって約3年ぶりとなる“声出し解禁ライブ”という特別な意味を持っているが、今日も早速1曲目で大合唱が発生。2020年春以降にライブシーンが直面してきた苦難を振り返るとより一層、感慨深い瞬間だった。
暖かくスタートしたのもつかの間、次にスタートしたのは1stアルバム『LUNA SEA』から「PRECIOUS...」。爆発的かつどこかクールなエネルギーを放つ初期の名曲に会場は瞬時にボルテージが上がっていく。その後も「STORM」や「DESIRE」とヒットシングルを畳み掛けてくる。LUNA SEAならではのドラマチックな疾走感やメロディーセンスの素晴らしさを改めて実感する。情熱的な「Thoughts」を終えると、割れてしまった真矢(Dr)のスネアを取り替えるというハプニングも発生したが、RYUICHI(Vo)が「クラッシャー:真矢!」とユーモラスなフォローでそれを盛り上がりに変えた。この辺りの対応力や余裕もさすがだ。
続く「IN MY DREAM (WITH SHIVER)」では当時のミュージックビデオをVJ演出に取り入れ、過去と現在のLUNA SEAの共演が実現。煌びやかでポップなサウンドに合わせて客席も手を降り一つになる。「久しぶりの曲」という紹介を経て、スクリーンの演出が教会のような映像に切り替わると始まったのは1998年以降披露されていなかった「WITH」。J(Ba)の奏でる印象的なリフをはじめ、楽曲の荘厳な雰囲気が会場を染めていく。非常にレアな選曲に、客席からも大きなどよめきが聞こえたのが印象的だった。
その後、RYUICHI、SUGIZO(Gt/Vn)、INORAN(Gt)の3人が「THE BEYOND」のアコースティックバージョンを披露。SUGIZOのヴァイオリンをはじめ、より優しさに満ちた音像のアレンジが沁みる。
続いて真矢が和楽器と共に登場し囃子を演奏。和太鼓からドラムセットへ移ると、パワフルなロックドラムを軸に電子ビートを組み込むなど、多彩なフレーズを展開していく。発想はもちろん、彼のドラマーとしてのクリエイティブさが大いに反映されていた。SLAVE達が真矢の名前を呼ぶという恒例のコール・アンド・レスポンスは今回も取り入れられていた。真矢は「ライブの主役はお前たちの熱い想いだぜ!めちゃめちゃ感動してます」と語るなど、ファンの熱意を絶賛した。
Jが次に登場すると、声出しを最大限に活用したロックでライブの熱量が詰まったベースソロを披露。Jは「強制じゃねえ。声がちっちゃい奴もいる。声の出し方を取り戻している奴もいる。それぞれのペースで、それぞれのスピードで燃え上がってくれ!」と賛否があるであろう久しぶりの声出しに対しても配慮を見せた。バンド側も当然賛否がある決断だとは理解しているだろう。正解が無いからこそ難しい判断なのだが、だからこそこういった細かいフォローこそが重要だと感じさせられた言葉だった。
リズム隊のソロコーナーを経て、そのまま力強く疾走する「TONIGHT」から終盤のブロックに突入する。音の海に漂うような心地よい壮大さを持つ「宇宙の詩 ~Higher and Higher~」で美しいハーモニーを響かせたと思ったら、そこから「TRUE BLUE」、「ROSIER」と長年LUNA SEAのライブを支えてきたヒットナンバーや定番曲を畳み掛ける。やはりこの2曲が生み出す熱量は特に凄まじく、会場の盛り上がりは最高潮に。そして、その熱を心地よく冷ますかのように、本編のラストとして演奏されたのは、絶品バラード「I for You」。メンバーも「この曲で俺たちを知ってくれた人も多い」と語る名曲で感動的にステージを終えた。
客席からアンコールを求める声はすぐに生まれ、どんどん大きくなっていく。翌29日がバンド結成日だったことにちなんで「ハッピーバースデー」を交えたコールが発生していたのも印象的だった。メンバーがそれに応え、再登場すると大歓声が会場に響き渡る。「俺たち、本当に帰るべき場所に戻ってきたよね!次のナンバーはみんなと作った曲だからさ、この歌を(一緒に)歌える日が来たことを、トンネルの出口を共に抜けたことを本当に嬉しく思っています!」というRYUICHIの言葉から始まったのは、コロナ禍に制作・リリースされた「Make a vow」。メンバーそしてSLAVE達がステイホーム期間中に各々の自宅等で撮影した映像がスクリーンに投影される。この3年間を“共に”乗り越えてきたこと、そしてやっとこの曲を“共に”歌うことが実現できていること。まさに希望に満ちた美しい光景だった。
続くMCでは真矢がユーモアを交えつつ、こうして声出しライブが久しぶりに実現できたことへの想いや感謝を伝えた。また、今回の公演の数日前に感染対策ルールが撤廃され、声出し時にマスク着用が任意となったことについて、様々な意見がファンから寄せられた事に触れ、「皆が、LUNA SEAが一番大事だから、自分の感じ取ったこと、そして想いを貫き通してきたってことだよね。だから、今後の新生LUNA SEAも、色々な考え方があっても俺たち5人がまとめて皆にいい景色を見てもらうから。頼むからずっとずっとずっと、ついてきてくれよな!」とどんな意見も受けとめた上で共に上を目指すという意思を伝えると、SLAVE達から歓声と拍手が沸き上がった。
そこからはアンコールにふさわしい怒涛の展開となった。色褪せない爽やかさを持つ「BELIVE」、そしてLUNA SEAのライブには欠かせない大団円曲「WISH」で大合唱を次々と巻き起こし、会場にはこのままライブが終わりに向かうフィナーレの空気が漂っていた。そんな中RYUICHIが、翌日29日に目黒鹿鳴館にてLUNA SEAがフリーライブを行うことをサプライズ発表する。日程、そして場所に対する驚きで客席のざわめきが止まない。「もっともっと進化するために、原点に返ってライブハウスを一丁やってみようと思ってるんだよ!」という言葉は頼もしいとしか言いようがない。
急なサプライズによる嬉しい動揺が収まる暇もなく、最後の曲「LOVELESS」が始まる。「たくさんの物語がこの曲から始まりました」とRYUICHIが紹介したように、通常はライブのオープニングナンバーとして演奏されることが多い曲なだけに、イントロで歓喜の声が会場中から響き渡る。まさしく始まりを感じさせる壮大なサウンドはいつ聴いても引き込まれるが、今日のパフォーマンスは特に新生LUNA SEAの新たな一歩を象徴するものだったように思う。
公演のタイトル【THE BEST OF LUNA SEA 2023】の通り、このバンドの良さが徹底的に詰め込まれた素晴らしいステージだった。直近の3年間を乗り越え、メンバーの口からは未来やそれに対する決意の言葉が多く届けられた。前述の真矢がファンに向けた言葉や、SUGIZOの「未来永劫コロナウイルスはいると思うので、その中でどうやって音楽ができるのか、どうやってエンタメが生まれるのか、どうやって皆と繋がれるのか。これからも一緒に模索しながら歩んでいきましょう」という言葉にはLUNA SEAに限らず多くのアーティストがコロナ禍で経験してきた苦悩が反映されていると思う。彼らのこの力強い言葉で、翌日に鹿鳴館で発表された『MOTHER』と『STYLE』のアリーナツアーを初め、これからのLUNA SEAがより一層楽しみになった。
Text:Haruki Saito
Photos:田辺佳子
◎公演情報
【THE BEST OF LUNA SEA 2023「A Show for You」】
2023年5月28日(日)東京・武蔵野の森総合スポーツプラザ
<セットリスト>
1. LOVE SONG
2. PRECIOUS...
3. STORM
4. DESIRE
5. Thoughts
6. IN MY DREAM (WITH SHIVER)
7. WITH
8. THE BEYOND(Acoustic Version)
Drum Solo
Bass Solo
9. TONIGHT
10. 宇宙の詩 ~Higher and Higher~
11. TRUE BLUE
12. ROSIER
13. I for You
EN
14. Make a vow
15. BELIEVE
16. WISH
17. LOVELESS
関連記事
最新News
関連商品
アクセスランキング
インタビュー・タイムマシン
注目の画像