2023/05/26
RYTHEMが、5月21日に東京・Zepp Diver Cityにて、デビュー20周年記念ライブ【楽しさを運ぶ幸せのリズム便】を開催した。
高校の同級生だったYUIとYUKAによって2002年に結成されたRYTHEMは、ちょうど20年前となる2003年5月21日にアニメ『NARUTO』のEDテーマ「ハルモニア」でデビュー。約7年間の活動を経て、2011年2月27日にZepp Tokyoで行われたワンマンライブをもって解散。YUIはNeat’s(新津由衣)、YUKAはyucat(加藤有加利)として、それぞれがソロ活動を行なっていたが、2021年5月21日に再結成を発表し、2023年3月から4月にかけては、全国7か所をまわるコンサートツアー【RYTHEMふたりツアーVol.1~ゆいゆかのハモり旅~】を開催。記念すべきデビュー日にして、12年ぶりとなるZeppのステージで開催された本公演には、この日を待ち望んでいたファンが全国から集結し、チケットはソールドアウトとなっていた。
ステージ上には、同日に発売されたデビュー20周年記念ベストアルバム『RYTHEMの世界』のアーティスト写真で使われていた巨大な鳥かごが置かれており、開演前の場内には鳥のさえずりが流されていた。ネジを巻き直したオルゴールの音色とともに、YUIとYUKAの声で「私たちは世界中にウタのタネを撒きました。太陽と踊り、雲に黄昏、星と奏で、雨に学び、月と話し、森へ帰り。あの日の続きをあなたと……」というプロローグが語られた。ステージの明かりは七色に輝き、背景の空には太陽が昇り、雲が浮かび、“夢と現実の間(夢現)にある無限”の音物語をYUIとYUKAにしかない独特のハーモニーで紡ぐ“RYTHEMの世界”が幕を開けた。
バンドメンバーに続き、互いに肩を寄せ合うと大きな翼を持った鳥になる真っ白の衣装に身を包んだ二人がステージに登場すると、観客からは温かい拍手が沸き起こった。ステージ中央で向かい合って目と息を合わせた二人は、風に運ばれる孤独な“綿毛”と“ウタのタネ”が重なる「一人旅シャラルラン」でライブをスタートさせた。続く「ハルモニア」では、キーボードを弾くYUIとアコギを奏でるYUKAの二人が一つとなり、長く歌い続けることで知られる鳥の“ミソソザイ”となって、“幸せを届けにどこまでも”歌を届けるというRYTHEMのテーマを獲得。再びハンドマイクとなった「風船雲」ではYUIが右手の翼、YUKAが左手の翼を広げて“カモメ”のように大地から飛び立ち、「てんきゅっ(ニューサマー便)」では<磁石のようにきゅっと引き寄せられて>という歌詞を体現するかのように密着して歌うと、観客も<そのリズムを/一緒にきざもう>という歌詞に合わせてご機嫌なクラップを鳴り響かせ、楽しく賑やかなムードのなかで第一幕は締めくくられた。
最初のMCでは、YUIが「この日を待ち焦がれて、ずっとワクワクしながら、再始動してからの2年間を歩んできました。今日、本当に皆さんにお会いできることを楽しみにしてまいりました。ようやく会えましたね」と笑顔で挨拶すると、YUKAは満員の会場を見渡し、感慨深そうに「幸せだね」と口にした。太陽に変わって月が浮かび、星が瞬いた第二幕では「願い」「蛍火」という切ないラブストーリーが情感豊かに語られた。そして、YUIが「この歌はYUKAに宛てた手紙のような曲だったんだけど、今は“ゆいゆか”のテーマソング。20年の思いを込めて、一緒に歌おう」とYUKAに呼びかけると、YUKAは「うん」と頷き、ずっとそばで同じ夢を追いかけて歩いていきたいという思いを込めて、力強く熱唱。10年前と変わらない緩やかなMCを挟み、「皆さんともうちょっと距離をギュッと近くなりたいので、二人だけで歌わせていただきます」と語り、第三幕では“二人だけのお部屋”をテーマにしていた先のツアー【ゆいゆかのハモり旅】を再現。「車輪の下」「Song for you」と歌を届け続ける決意を込めた楽曲で、明と暗、光と影、太陽と月という相反する2面性を合わせたようなハーモニーを響かせると、YUKAがギターをピアニカに持ち替えた「小麦色のラブソング」では温かくノスタルジックなムードで会場を満たしたが、「ライブでみんなと育ててきた大切な曲です」と語った「無題」でムードは一転し、誰もいない森の奥深くのような静寂がもたらされた。
そして、ピアノ演奏が第三幕の終わりと第四幕の始まりをつなぎ、バンドがステージに戻るとともに、「Circulate」でRYTHEMの二人は鳥籠の中に入り、かなりの至近距離で向き合い、見つめ合って歌唱。<2人の空気の中で2人に溶けていく>と繰り返されるフレーズによって幻想的な雰囲気となるなか、歌詞に出てきた“回転木馬”は、続く「万華鏡キラキラ」で“万華鏡”となってキラキラと回り始め、二人の力強い歌声によって、夜の森を抜け、夜明けが到来。声出し解禁となった観客とのコール&レスポンスを楽しんだ後の「Life Tree」「あかりのありか」「メロディ」では、二人の弾む歌声に合わせて、観客が手を左右に振り、手拍子を鳴らして盛り上がると、YUIとYUKAは再開を祝うかのようなグータッチを繰り出した。
会場が一体となった第四幕を経て、最終幕を前にYUIが10年前に解散を決めたときの心境と再結成に至った思いをゆっくりと語り出した。
「私たちは中学生のときに出会い、幼なじみとして、大親友としての時を過ごしました。多摩川のそばで声を合わせて一緒に歌う日々は、まさに【楽しさを運ぶ幸せのリズム便】という今日のライブタイトルそのものでした。毎日が楽しくて、毎日が幸せで、魔法みたいな時を過ごしていました。それが、いろんな方の愛あるサポートと応援とお力添えによって、RYTHEMとして、世界中に“ウタのタネ”を届ける旅に出ることになりました。すごく感謝の募る毎日でしたが、20歳を超えて、大人の道を歩んでいくなかで、RYTHEMというお仕事の場所が“ゆいゆか”の友情という面では違う形になってしまって、私たちは距離を置くようになってしまいました。それがすごく寂しくて。RYTHEMの歌の真ん中には愛情があって、温かいもので満ち溢れている音楽を届けたいとずっと願っていたのに、一番大事な愛情を見失ってしまった。だから、私たちは、RYTHEMを一度真空パックするみたいに解散という道を選びました。そこから、お互いにソロの音楽を続けながら失ってしまった愛情を探し、忘れてしまった友情を取り戻す旅に出ました。この10年という期間に、私たちは“ゆいゆか”として、もう一度友情を取り戻せたし、音楽を作る、歌うことに対して、もう一度素直な気持ちで向き合うことができたんです。愛情のパワーがグッと貯まったなと思ったときに、もう一回、ゆかと声を重ねてハモりたいという気持ちになりました。そして、もう一度、手を握って、肩を寄せ合って、二人で歌の道を歩み直そうと思いました」
再始動する際にファンに向けて書いたという最新曲「再愛」で“僕の中に生きる君”と“君の中で生きる僕”を重ねた二人は、バンドメンバーと観客による合唱に乗せて、緑の本を開いて朗読。<光が生まれ 闇が生まれた>と「ハルモニア」の歌詞の引用に続き、「私たちは繋いだ手を一度、離しました。だけど、一人では歌えないウタがありました。一人ではわからない愛がありました。互いの違いを慈しみ、互いを思いやり、一つとなって、楽しさを運び世界中に幸せを届けられるように歌います」と重ねた声で誓った。そして、ベストアルバム制作時のファンのリクエスト投票で1位を獲得した「ホウキ雲」で観客一人ひとりの心の中に浮かぶ雲を晴らすかのような歌声を響かせ、二人で一つの鳥となり、世界中に楽しさと幸せを届けた旅の物語は感動的なエンディングを迎えた。
アンコールの「三日月ラプソディー」ではドラムに合わせてクラップが起きるなかで、ミュージカルのフィナーレのような大合唱も実現。そして、ラストナンバーは12年前と同じく「自由詩」だった。前回のZepp Tokyoでは別れの歌となったが、この日は新たな始まりの歌として響き渡り、最後にマイクを通さずに生声で「またここから一歩ずつ歩みを進めていくので、ご一緒していただけたら嬉しいです」と声を上げ、3時間近くに及んだRYTHEM劇場は幕を閉じた。こうして振り返ってみると、あらためて彼女たちの楽曲は20年という時を経ても全く色褪せることなく、エバーグリーンな輝きを湛えていることを再確認させられたライブでもあった。
Text:永堀アツオ
◎公演情報
【楽しさを運ぶ幸せのリズム便】
2023年5月21日
東京・Zepp Diver City
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