2023/05/03
Cö shu Nieが、4月28日に【A cöshutic Nie Vol.3 in Billboard Live TOKYO】を東京・ビルボードライブ東京にて開催した。
ビルボードライブでは「A cöshutic Nie」と名乗り、普段とは異なるアレンジで新しい魅力を見せてくれるCö shu Nie。ビルボードライブ3度目のオンステージとなる今回も、そのスペシャルなパフォーマンスで会場いっぱいに集まった観客を魅了した。2ステージで行われたこの公演のうち、本稿では1stステージの模様をレポートする。
暗転したステージの上に、まずは静かに中村未来(Vo. / Gt.)とサポートの和久井沙良(Pf. / Key.)のふたりが登場。ステージぎりぎりまで集まった観客には、中村も思わず「近っ!」と驚きの声をあげる。そして「ごきげんよう、“A cöshutic Nie”です」と挨拶し、ピアノの流れるようなメロディから「Lamp」がスタートした。そしてもうひとりのメンバー、松本駿介(Ba.)とサポートの工藤誠也(Dr.)をステージに呼び込むと、「夢をみせて」へ。柔らかく、触れると溶けてなくなってしまう雪のような中村の繊細な声と、しっかりした響きで曲を支えるベース&バスドラの低音のバランスが心地よく響いた。
中村が「今日は『フゥ~!』って言っていいらしいよ?(笑)」と客席に笑いかけると、横乗りのビートに艶のあるボーカリゼーションが映える「iB」「アマヤドリ」と続く。自然と体を揺らす観客も増え、会場の温度が少しずつ上がっていくのが感じられた。
ピアノとベースの超絶技巧で魅せた「undress me」、破壊的なベースのメロディとアグレッシブなシンバル、その上に乗るピアノの音色すら不穏に響く「絶体絶命」、そしてコロコロと拍子を変える混沌の中に、中村のハイトーンが一本芯を通るように突き抜ける「asphyxia」と重なると、その圧巻のパフォーマンスに客席からは大きな歓声があがる。そして、「(ビルボードライブ東京のステージに)最初(に立ったとき)は無観客、配信ライブでした。そこから前回、そして今回と、一歩ずつ歴史を作っていけてる気がして本当にうれしいし、それを観に来てくれてるっていうのがうれしいです。今日は本当にありがとうございます」(松本)「(今回の公演で)この4人の演奏で作ってきたものは、今日で一旦おしまいやと思うとさみしいんですけど……心に刻み付けていきたいと思います」(中村)とそれぞれがこの公演への思いを明かしたあとは、未音源化曲「雨」へ。少し照明の落ちたステージ、また詞の〈しとしと〉との表現にぴったりな、クリーントーンのエレキギターと粒立ったビート、時に激しさを増すピアノが情景を盛り立てていた。
「たぶん、みんなが思ってるより、私もしゅんす(松本)もみんなに会えるこの空間をすごく特別に思っていて。大阪と東京、2か所だけやったけど、また新しいスタートを切れたような、新しい気持ちでみんなの顔が見られたことが、すごく愛おしく思うし……幸せに思います」「みんながこうやって、『会いたい』と思って会いに来てくれることを、すごくうれしく思っています。ありがとう。私たちも特別な思いでみんなに会いに来ました」と中村が語ると、インディーズ3rdミニ・アルバム収録曲「海へ」がスタート。この〈海〉とは、穏やかで、静かで、雄大なものの象徴だろうか。これまでになく美しく淡く聞こえるピアノに乗せて、吐息のようなハイトーンボイスがかすかに、確かに響いていく。そのさまに観客も呼吸を忘れ聴き入っていた。
そして、「みんなで歌いたいと思って作った曲があります。一緒に歌うことで、心が通じ合うような気がして……一緒に、この曲を完成させてください」と中村が客席へ一礼すると、始まったのは「gray」。曲終わりでの「歌ってくれた人ー?」との問いかけには大きな拍手が返り、ふたりも「やったー!」と無邪気に喜び、あたたかいコミュニケーションが生まれた一幕も。
「miracle」では、直前に中村が告げた「それぞれの特別な人を思い浮かべながら聴いてください」との言葉にふさわしく、歌詞で吐露される切実なまでの“愛情”をピアノがやさしく包み込む。ピンスポットで照らされる中村の神聖な雰囲気が、それをより崇高な響きに高めているようだった。そして、跳ねるようなビートと色鮮やかなサウンドの「butterfly addiction」で雰囲気を変えると、「give it back」へ続く。ラストサビではステージ背面の幕が開き、六本木の夜景を背に、スッと透き通るような中村のハイトーンが伸びていった。
ここでおもむろに、約1年ぶりとなる新曲のデジタル・リリース、9月からのロックセットでの全国ツアー【Cö shu Nie Live Tour 2023 -unbreakable summer-】の開催、そして2024年秋に新作アルバムをリリース予定であることを告知すると、観客も惜しみない拍手を送り、興奮を隠せない様子をみせた。
「こういうあったかい空間をずっとずっと積み重ねて、一緒にみんなと歩んでいきたいなって思っています。みんなもそうであればうれしいな」「一瞬を大切に積み重ねていくって曲。みんな心で歌って、唱えてほしいです」と語って披露された「青春にして已む」は、先の決意を踏まえて聴くと、より声とメッセージが強度を増して聴こえてくる。ラストサビでは中村も歌いながら会場を見渡し、曲で何度も繰り返される〈僕ら〉。最後は、「孤独な夜を一緒に超えていけるように」作ったという「迷路~序章~」「迷路~本編~」の祝祭感すら感じる壮大なサウンドで、約90分のステージを締めくくった。
響きやトーン、質感を自由自在に操る中村の圧倒的なボーカリゼーションと、それを支えつつ独特なメロディとグルーヴを生み出す松本のベース。音源でもありあまるほどに発揮されているふたりの魅力が、特別編成でまた新鮮に、時にシックに伝わってくるようなステージだった。
Text by Maiko Murata
Photo by 鳥居洋介
◎公演情報
【A cöshutic Nie Vol.3 in Billboard Live TOKYO and OSAKA】
2023年4月9日(日) 大阪・ビルボードライブ大阪
2023年4月28日(金) 東京・ビルボードライブ東京
※Co shu Nieの「o」はウムラウト付きが正式表記
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