2023/03/22
韓国出身アーティストのキム・ヒョンジュンが、2023年3月17日に東京・LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)にてアンコール特別公演【桜が咲く季節、僕らの卒業式、またね】を開催した。
同公演は3月11日、12日に大阪で2日間開催されたワールドツアー【22/23 KIM HYUN JOONG WORLD TOUR “The end of a dream” in Japan】追加公演とは異なる趣向の内容で、アンコール含む全23曲をほぼすべて日本語詞で届けるという、まさに日本のファンへの愛情に満ちたプレミアムなライブとなった。
ステージの幕が上がると、黒のタンクトップに銀のスパンコールのブルゾンを羽織ったヒョンジュンが、5人編成のバンドを率いて登場。学校のチャイムの音が響き、前日にリリースされたばかりの日本シングル『花路』のカップリング曲「チャイム」を1曲目に届ける。高揚感と切なさを併せ持つ同曲をやわらかい笑顔を浮かべながら歌唱すると、「Save Today」では彼が歌い出すと同時に客席からは盛大なシンガロングが起きる。そのリアクションを受けて彼も「Stay here」で客席にマイクを向けるなど、観客との歌を通じたコミュニケーションを楽しんだ。
ヒョンジュンはファンの表情を時折確認しながら、自力で日本語の長尺MCをする。そして「なるべく韓国語より日本語でしゃべろうと思う」と、楽曲同様に観客の馴染み深い言語で思いを伝えたいという意志を明かした。「大きな声で、大きなアクションでお願いします」と呼び掛けると、ヘビーなロックバラード「Wake me up」や壮大なミドルナンバー「Your Story」を披露。自身も観客に求めるように大きな声、大きなアクションで歌い続ける。歌い終えた後は息を切らしながら「次が最後の曲です」「お疲れ様でした」と告げるなど、お茶目なジョークで笑わせた。
「四季」で感傷的なムードを高め、「月と太陽と君の歌」では心にそっと寄り添うボーカルで魅了すると、口笛と軽快なステップで妖艶な世界観を表現する「Cappuccino」を境にアッパーなセクションへ。「B.I.N.G.O」ではイントロから晴れやかなシンガロングが巻き起こり、ヒョンジュンもジャンプに興じ積極的に観客を煽るなど、より一体感を強固にする。その後も真っ赤なライトがワイルドなムードをさらに高めた「HOT SUN」、刺激的なバンドサウンドと迫力あるボーカルが目覚ましい「Super Fire」とパッションに満ちたステージを展開し、曲終わりには客席に背を向け、両腕でたくましいガッツポーズを見せた。
「PURE LOVE」と「LOVE SONG」で真摯な愛情を歌に込めた彼は、「久しぶりの2曲どうでしたか?」と観客に問いかける。そして日本語で歌う理由について通訳を通じて詳細に語り、「完璧じゃないけど日本語で歌います。大切な愛をくれる皆さんに、僕も愛を伝えたいです」と日本語で続けると、客席からは大きな拍手と歓声が湧いた。
英語詞曲「Song for a dreamer」ではアコースティックな音色にのせて美しい高音を響かせ、じっくりと曲の中に入り込んで歌う「Wait for me」は身体を振り絞りながら声を張り上げる姿も鬼気迫る。その後のMCによると同曲を歌うと今は亡き友人のことを思い出すとのことで、「友達の人生の分まで僕が生きていけたら……」と言葉を詰まらせるシーンも。「“寂しい”も愛ですよね」と語った後に「これもひとつの愛ですよね」と告げシンガロングパートのアカペラから「THIS IS LOVE」へ。彼の渾身の力が込められた歌声にのせて、観客も大きな歌声を彼に届けた。
ソロ活動を始めて13年経ったことに触れた彼は、自分がファンにとって満足してもらえる存在なのか、正しい選択してこられたのかどうか心配になる瞬間があると本音を明かす。だが観客からの声援は今歩いている道は間違っていないと言ってくれるような感覚があり、気持ちが安らぐと告げた。最後に「完璧じゃないけど、いい人になります」と笑顔を見せ、本編ラストはポップパンクナンバー「Good-Bye」。ナチュラルかつ晴れやかな空気感で包み込んだ。
アンコールの1曲目には、桜を彷彿とさせるピンク色の紙吹雪が降り注ぐなか最新日本シングルの表題曲で藤井フミヤが作詞を手掛けた「花路」を歌唱。さらに歌詞を一言一言噛み締めるように「風車 <re:wind>」を歌うと「これからも皆さんにいい音楽と美しい物語を届けます」と意気込みを語り、B’zが提供したロックナンバー「HEAT」をこの日の最後に選んだ。
歌い出しから客席で大合唱が起き、エネルギッシュな同曲を通じて再度強い結束を結ぶと、大歓声のなかで「皆さんのおかげで胸がいっぱいです。韓国に帰っても今日のことを思い出して生きていきます」とあらためて感謝を露わにする。客席からライブタイトルにも使われている「またね」という言葉が次々に飛ぶと、彼もバンドメンバーと肩を組んで「またね!」と頭を下げ、再会を誓った。「日本語で届けること」を何よりも重んじたアンコール特別公演。ヒョンジュンの日本のファンへの深い愛情を感じられるひとときとなった。
Text by 沖さやこ
Photos by (C) 株式会社Birdman / 2023 HENECIA Co.,LTD.
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