2023/01/23
例年のように年が明けると、Billboard Japanのチャートには年末の音楽番組による影響が現れてくる。特に注目に値する番組は、やはり『NHK紅白歌合戦』だ。視聴率の低迷や演出の良し悪しのような批判もあるようだが、それでも国民的な大晦日のテレビ番組としては代表的なものであることは間違いないし、そのステイタスもまだまだ健在といえる。
今回その恩恵を受けたアーティストというと、Vaundyを挙げないわけにはいかないだろう。単独での初出場はもちろんだが、milet×Aimer×幾田りら×Vaundyとして登場したシーンもインパクトが大きかった。その結果、ソロで歌った「怪獣の花唄」が、2023年1月11日公開のBillboard JAPAN 総合ソング・チャート“JAPAN HOT 100”では3位、次週の1月18日公開分でも4位と、大ヒットを記録しているのだ(【表1】)。
そもそもこの「怪獣の花唄」は、2020年5月にリリースされたVaundyのファースト・アルバム『strobo』の先行配信曲として発表された。ただその時はあくまでもチャート圏外。それほど注目されていたわけではなかった。しかし2021年に入って「不可抗力」など他の楽曲のヒットと共にじわじわとストリーミングが伸び始め、同年4月頃からカラオケの歌唱数も少しずつ増えていくようになる。そして2022年の10月あたりからJAPAN HOT 100の50位以内に入るようになってから、ロングヒットの様相を見せた。
このような派手な動きではないが地道にポイントを稼いでいる楽曲は、起爆剤となるきっかけがあると俄然強くなる。「怪獣の花唄」はまさにそういうタイプのヒットの典型的なものといえるだろう。年が明けてから、これまでも好調だったストリーミングとカラオケだけでなく、ダウンロードや動画再生数も急上昇。また、JAPAN HOT 100の集計には入らないがアルバムの方でも大きな動きがあった。Hot Albumsにおいてフィジカルの売上数も大きな動きを見せており、Vaundy自体のバリューやステイタスが一気に一段階ステップアップしたといってもいだろう。
すでにVaundyは音楽ファンの間ではトップクラスのアーティストに成長していたが、紅白での「怪獣の花唄」で圧倒的なネームバリューを得ることができた。おそらくこの曲はしばらく上位を推移しながらロングヒットとなるのではないだろうか。そして、そのロングヒットの間にさらに大きなヒットを生み出すことができれば、間違いなく音楽シーンにおいてゆるぎない地位を築き上げることができるに違いない。
Text:栗本斉
◎栗本斉:旅&音楽ライター、選曲家。レコード会社勤務の傍ら、音楽ライターやDJとして活動を開始。退社後、2年間中南米を放浪し、現地の音楽を浴びる。その後フリーランスとして活動した後、2008年から2013年までビルボードライブのブッキングマネージャーに就任。フリーランスに戻り、雑誌やライナーノーツなどの執筆や音楽評論、ラジオやストリーミングサービスにおける構成選曲などを行っている。
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