2022/11/10 17:05
2022年で歌手活動5周年を迎えた東山奈央。それを記念した5大企画の第5弾にあたるアルバムリリースツアー「Welcome to MY WONDERLAND」の千秋楽公演が11月3日にパシフィコ横浜・国立大ホールにて行われた。9月にリリースされた同タイトルのアルバムを引っ下げての今回のツアーはアルバムと同じく「テーマパーク」をコンセプトに、まるでアトラクションのようなさまざまな仕掛けで会場や配信で見ているファンを楽しませた。
舞台は雨上がりの日、虹のふもとにゲートが開く幻のテーマパーク「レインボーワンダーランド」。降り続いた雨も止み、晴れ渡る青空が広がるのと同時に幕が上がり、レインボーカラーの衣装に身を包んだ東山が「さあ!いっくよ~!」と元気よくステージに飛び出してくる。「ウェルカム・トゥ・レインボーワンダーランド!」のイントロに合わせて「ぺん!ぺん!」と客席をあおる姿もかわいらしく、ダンサーの4人が掲げる大きなフラッグもステージをより華やかなものにしていた。また、バンドメンバーの衣装もスーツ姿に蝶ネクタイとテーマパークのキャストのようで、セットやモニターの映像も含めた隅々までこだわり抜いた演出に見ている側もすっかり東山の作る世界観に引き込まれてしまう。とはいえ、楽しい一日はまだまだ始まったばかり。テーマパークでいえば、まだエントランスに立っただけなのだ。2曲目の「イマココ」からは東山に連れられてパークの中へと足を踏み入れ、一緒に冒険を繰り広げていくことになる。
「シャンプーリンス」ではテーマパークの中が泡に包まれるような演出で、リラックスしたかわいい雰囲気に。歌詞の「男の子の悩みも聞いてあげるよ」の部分に合わせてバンドマスター・キーボードの伊賀拓郎が「腰痛い」と書かれた紙を上げ、それに東山が「休んでください」と答える小ネタ的なやりとりも一瞬だが見逃せないポイントだった。「シアワセリクエスト」ではモニターに映ったシルエットの人物が恋人役となり、東山とデートするような演出も。「冷めない魔法」では5曲目にして早くもランチタイムになり、ステージはレストランへと様変わり。東山はMUSIC VIDEOの演出さながらにテーブルに座って、友達役やウェイトレス役に扮したダンサーと共に息のぴったり合ったパフォーマンスを見せてくれた。さらにレインボーワンダーランドのマスコットキャラクター「にじペン」もステージに登場。東山とも仲の良いところを見せ、この幸せな時間がずっと続くかと思われたのだが……!?
突如として暗雲が立ち込めてきて、パークに雷鳴が鳴り響く。慌てて避難する東山だが、逃げ遅れたにじペンはひとりその場に取り残されてしまう。「誰か~、いませんか~?」と右往左往しているところに近づいてくる足音。ホッとするにじペンだったが、その足音の主はヴィランズ(悪者)だった……! にじぺんはそのままヴィランズに捕らえられ、どこかに連れ去られてしまう。すると、入れ替わるようにしてダークカラーの衣装にチェンジした東山が姿を現す。クールな表情で「クラクラ」や「Lost Thorn In My Side」を歌い上げる姿は、まさにヴィランズの女王ともいうべき風格と妖艶な雰囲気を漂わせていた。「クラクラ」から東山のライブでは恒例のダンスパートに突入するが、ソロライブでヘッドセットを装着してのパフォーマンスは今回のツアーが初めてとのこと。そのチャレンジの甲斐あってか、ダンスのキレも表情の作り方もこれまでより何倍もパワーアップしているように見受けられ、特にEDMサウンドに振り切った全編英詞の楽曲「de messiah」ではパシフィコ横浜の大きなホールがその瞬間だけダンスフロアに変貌したかのようだった。そんな熱狂の後の「硝子の夜」ではステージに紗幕が下ろされ、紗幕に映し出された映像と東山奈央が重なり合う幻想的な演出となった。今回のツアー公式ペンライトは楽曲に合わせて自動的に光が変化する自動制御型となっていたが、この時間は消灯され、その暗闇がまた幻想的な空間を生み出していた。
前半戦が終わってのインターバルではガラッと雰囲気が変わり、鼓笛隊に扮したバンドメンバーが客席の通路をパレードのように練り歩く。それぞれ楽器を鍵盤ハーモニカ、ウクレレ、バンジョー、スネアドラムなどに持ち替えて、ヴィランズに支配されていた会場の空気を一瞬にして陽気な方向に変えていった。再び衣装を着替えた東山もステージに戻ってきて、歌うのは「Brand New Show」。ここからは楽しいショータイムの始まりだ。
ひと息ついたところで、ライブ前半を振り返る東山。「♪シャンプーリンス、シャンプーリンスと言っていたのが、遠い昔の出来事のよう」という言葉の通り、開演してからわずか1時間ほどの間に怒涛の展開を繰り広げてきた。そんな高ぶった気持ちを落ち着けるかのように「1曲、心を込めて歌いたいなと思います」と言って、キーボードの静かな伴奏と共にゆっくりと歌い出す。その歌は、バースデーソング。この日、11月3日に誕生日を迎えたドラムの弦ちゃんこと直井弦太へのサプライズがここで行われた。感極まって涙ぐむ直井の前にケーキが運ばれてくると、そこにはバンド名である「レインボードッグス」の文字が。実は直井だけでなくレインボードッグスのメンバー全員が2週間以内に誕生日を迎えているということで、一気にお祝いしよう!という二重のサプライズになっていたのだ。サプライズ大成功で大喜びする東山と、会場を包み込むファンからの大きな拍手。そこにアットホームで温かい空気が生まれて、ほっこりとした気持ちにさせられた。
あまりにハッピーな気持ちになりすぎたせいで忘れそうになっていたが、ヴィランズが登場するブロックの前に捕まったにじペンはいまだ戻ってこないまま……。何とかステージに帰ってきて元気な姿を見せるも、体にはぐるぐるとロープが巻きつけられたままとなっている。そんなにじぺんを助けるために、「さよならモラトリアム」の曲中で「にじペン救出チャレンジ」に挑戦することに。今回のお題は「バルーンアート」で、60秒以内にバルーンアートで魚を作れたら成功となる。これは難題かと思いきや、自信をもってスイスイと作り出す東山。出来上がったバルーンアートは魚に見えなくもない……?くらいの絶妙な完成度だったが一応(?)成功となり、見事にじペンも救出されたのだった。
こうして自由の身となったにじペンが回すルーレットで決まった本日の日替わり曲「灯火のまにまに」が発表されると会場は歓喜に包まれた。ここから「ワゴン」「グー」とさらにライブは盛り上がっていくが、気づけば閉園の時間は刻一刻と迫ってくる。そんな寂しさは東山自身も感じていたようで、だからこそ「今、この瞬間が尊いな」という思いをもってこの日のライブに臨んでいたという。その気持ちを込めて歌った「Magic hour」で夕暮れ時の遊園地に思いをはせ、「あの日のことば」「サファイア・タウン・トワイライト」と、だんだんと日が沈んでいく。そして本編ラストは東山自身が作詞・作曲した「OVER!!」で盛大に締めくくられた。「OVER!!」では千秋楽だけのスペシャルサプライズとして、曲のアウトロを自身のオリジナル曲「Rainbow」とシンクロさせた特別なアレンジが披露された。
アンコールはライブの定番曲「群青インフィニティ」からスタート。「群青インフィニティ」といえば「うぉーうぉーしようぜ!!」が合言葉だが、客席のファンは声を出せない代わりにペンライトの動きで「うぉーうぉー」の気持ちを東山に届ける。さらにアンコールのMCでは、本編ラストで披露した「OVER!!」がアルバムに収録された音源よりもアウトロが長いアレンジとなっていたことと、そのアレンジが横浜公演にて初披露だったことを語った。
「この5年間の集大成がこのステージかもしれないけど、もっともっとみんなと虹の向こう側の景色も見ていきたい。そんな願いを込めて『OVER!!』のアウトロは(初めて自身で作詞・作曲した)『Rainbow』のサビと重なり合うように作っていました。その親愛の気持ちを、無事にツアーを全部回りきることができたら、千秋楽でお披露目しようと思って今日やってきました!」
「5th ANNIVERSARY」と銘打って始まった今回のツアーだが、千秋楽の横浜公演はゴールであり、これからへ向けての新たなスタート地点でもあった。「これからも、虹の向こう側、一緒に見てくれますか?」の問いかけに、観客は大きな拍手で応える。そんな「虹の向こう側」への第一歩として、本公演のライブBlu-ray発売とオフィシャルクラブ会員限定ライブ「にじかいっ!! Vol.3」の開催という2大情報が発表され、会場が一段と湧き上がる。その興奮の余韻も冷めやらぬまま、「アンコールで歌おうと強く思っていた」という「歩いていこう!」「Growing」の2曲を披露。最後は会場の全員と一緒になって踊る「にぱにぱタイム」を楽しむ「君の笑顔に恋してる」でツアーは大団円を迎え、寂しさと、それ以上に大きな充実感をもってレインボーワンダーランドは閉園となった。
Text by 仲上佳克
Photo by 高田 梓
◎公演情報
【東山奈央 5th ANNIVERSARY TOUR「Welcome to MY WONDERLAND」】
2022年11月3日(木・祝)パシフィコ横浜・国立大ホール
<セットリスト>
OP.After the Rain -instrumental-
01.ウェルカム・トゥ・レインボーワンダーランド!
02.イマココ
03.シャンプーリンス
04.シアワセリクエスト
05.冷めない魔法
06.クラクラ
07.Lost Thorn In My Side
08.de messiah
09.硝子の夜
10.Brand New Show
11.さよならモラトリアム
12.灯火のまにまに
13.ワゴン
14.グー
15.Magic hour
16.あの日のことば
17.サファイア・タウン・トワイライト
18.OVER!!
- encore -
19.群青インフィニティ
20.歩いていこう!
21.Growing
22.君の笑顔に恋してる
ED.After the Rainbow -instrumental-
https://jvcmusic.lnk.to/welcometomywonderland_LIVE
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