2022/11/05
【眉村ちあきの音楽隊‐Episode 2‐】が、10月30日渋谷・LINE CUBE SHIBUYAにて行われた。
眉村ちあきが、兼松衆(Key)、越智俊介(Ba)、小西遼(Sax)、吉田雄介(Dr)、qurosawa(Gt)という布陣で結成したバンド・眉村ちあきの音楽隊。音楽隊として2度目となる本公演は、音を全身で楽しむような眉村の姿が普段以上に印象的な公演であった。
ステージを覆い隠すように幕が降りた状態の開演前。定刻、眉村が幕の前に登場すると、盛大な拍手に包まれながら「ピッコロ虫」の冒頭を朗々と歌う。歌い終えると同時に幕が開いてバンドサウンドが響き、壮大にライブをスタート。ライブ序盤からフルスロットルで伸び伸びと歌い上げていくと、自由なソングライティングが光る「Individual」に突入。ラップやゴスペルといった、様々なジャンルからの影響を感じる歌唱を展開ごとに盛り込みながら、楽しそうに歌いあげていく。続く「おばあちゃんがサイドスロー」はタイトルのネーミングこそ奇抜だが、そのクールな歌声はどこかR&Bを彷彿とさせる歌い回し。バンド隊のソロも盛り込みながら聞きごたえ満載な展開で楽しませると、カントリー調の「愛でほっぺ丼」へ。眉村のセンスが光る言葉と多彩な展開、そしてそれを演奏するスキルフルなバント隊の音色でオーディエンスの身体を揺らしていく。
挨拶を挟み、「この現場はどう動いてもいいの。想像してみて?前に動いてみたり、後ろに動いてみたり」と話すMCは段々とメロディーを帯びていく。そして、「踊り方は自由!俺達にはディスコがあるじゃん!」と「なまらディスコ」、明るいサビが彼女の屈託のない笑顔のような楽曲「顔ドン」へ。どんな曲調でも「どう動いてもいい」という言葉を体現するように思いのままに身体を動かしていた眉村。そういった、純粋に音やリズムを楽しむスタンスが老若男女のオーディエンスにも伝播し、自由な空間を作り上げていた。
バンドメンバーと作り上げる見せ場も印象的。qurosawaと2人で披露したのは「奇跡・神の子・天才犬!」。2人で声を合わせながらタイトルのフレーズを歌う様子は童謡のような温かさがあったが、その歌詞は〈ここは僕の最終地点じゃない〉〈馳け回ることを馬鹿にするアイツにだけは負けないぞ〉と力強い決意が滲んでいた。続いて兼松とともに披露したのは「おもてなし子」。「自分を蔑ろにしがちじゃん?謙虚な人って。それも分かるけど、週4くらいは自分のことを優先してねっていう曲」と前置きして演奏されたこの楽曲は、そんなメッセージを伝えるように抑揚あるキーボードとともに迫力満点の歌声を響かせる。
再びバンド全員が揃い「本気のラブソング」、「やさいせいかつ」と華やかな楽曲を続けた眉村だったが、その後口を開いた彼女はメタルバンドを思わせるどすの聞いた声色で「血と骨って何から出来てるか知ってるか?肉だよ。肉を食べないと骨とか血とかいろいろができないってわけだ」とのこと。「俺たちはみんなに肉を食べてほしくてこの曲を作った。肉食おうぜ!」と咆哮し、ロックチューンの新曲「肉喰え」で圧倒する。そして、「なにもできない日があってもいいよね」という言葉から続いた「DEKI☆NAI」では、ネガティブな感情も包み込むようにふくよかに歌い上げる。衣装を変えたのちには新曲「秘密の恋」で大人びた歌詞を情熱的に歌い上げ、多彩な引き出しで魅了した。
また、ファンの間ではおなじみとなっている彼女の即興力ももちろん顕在。歌詞を本公演の意気込みに変えながら歌った「夢だけど夢じゃなかった」でオーディエンスを楽しませたあとは、バンド体制では初となる東名阪ツアーを発表。そのツアーへの思いを歌に乗せたフリースタイルタイムへと続き、バンド隊の指揮を取りながら臨場感たっぷりに楽曲を構築した。「なんでもありっていいよね」とフリースタイルを堪能した眉村はオーディエンスにも自由にするように伝え、「でもそれはそれで難しい人もいるよね。あとで指図するね。それまではそこらへんを漂う魚です、魚。分かった?」と自由なMCを繰り広げる。「そんな曲フリかよっていう曲をやります、『悪役』」とタイトルコールをすると、思わずオーディエンスからも笑いが漏れた。しかし歌い始めると歌姫なのだから、そのギャップの大きさには驚かされる。
「大丈夫」で〈今ここにいる私は少なくともすごく楽しかったよ〉と歌い本編を終えた眉村は、アンコール1曲目「冒険隊~森の勇者~」では客席から登場。感染対策のため、花笠を被りアクリルシートを垂らすことでフェイスシールドのようにしていたが、客席の合間を縫うようにして駆け回りステージに戻った眉村は「みんな尊いぜ!みんな近くで息をしてた!生まれてきてくれてありがとう!」と大感激。「そういう、尊くてたまらん!っていう曲をやります」と「Lovely days」を温かく歌う。そして「最後の曲です、わけわからなくたって身体動かそう!」と「旧石器PIZZA」でフィナーレ。オーディエンスの拳が挙がった熱狂のフロアには金テープが舞い、会場が華やかに彩られていた。
「同じ空間で息ができて幸せでした!」と話し、ステージを去っていった眉村。音楽を全身で楽しんでいた彼女と、生き生きと演奏を奏でたバンド隊、その音色に導かれるように自由に音楽を体感したオーディエンス。各々が各々のやり方で音楽を楽しんだ、幸せな一夜であった。
Text:村上麗奈
Photo:樋口 涼
◎公演情報
【眉村ちあきの音楽隊‐Episode 2‐】
2022年10月30日(日)
渋谷・LINE CUBE SHIBUYA
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