2022/10/31
米津玄師が新曲を発表するなら、チャート上位になるのは当然。誰もがそう思っているに違いない。2022年10月12日に配信リリースされた「KICK BACK」も、10月19日公開のBillboard JAPAN 総合ソング・チャート“JAPAN HOT 100”で初登場1位を記録した。翌週の10月26日公開のHot 100では惜しくもOfficial髭男dismの「Subtitle」に次ぐ2位となったが、それでも決して勢いがダウンしたわけではない(【表1】)。
米津玄師には「Lemon」に代表されるように長くヒットし続ける楽曲が多い。もちろん楽曲の良さは必須条件だが、彼の場合はロングヒットするための伏線をしっかりと仕込んでいるのも特徴といえる。「KICK BACK」に関しては、まず話題のアニメ『チェンソーマン』のオープニングテーマという大きなタイアップがついているということ。そして、この曲の共同編曲に、King Gnuの常田大希が参加しているのも話題性が高い。高速ビートとテンションの高い濃密なアレンジは、この天才二人のタッグによる賜物といってもいいだろう。さらに面白いのは、10月25日に公開されたMVにも常田大希がゲスト参加していること。しかもコミカルな劇画的な内容で、そこで演じている二人の姿には思わず笑ってしまうほどだ。それと、「KICK BACK」の歌詞にモーニング娘。の「そうだ!We're ALIVE」の歌詞の一節を引用したことも少し前に話題になっている。「KICK BACK」は、とにかくこのような“ネタ尽くし”だらけといっていい一曲なのだ。
その結果、この2週のチャート・アクションにおいて、Twitterのポイントは2位と6位という結果になっている。米津玄師の場合、ダウンロードやストリーミングは圧倒的な強さで、マスコミからの注目度も高いためラジオのオンエア回数も申し分ない。ヒゲダンをはじめとする強豪たちは多数いる中で、総合的に考えるとTwitterの後押しは非常に大きいといえる。この後もプロモーションの仕込みなどで、ロングヒットは確実といってもいいのではないだろうか。
その上、チャート・アクションのピークは、実はまだこれからだ。というのも、11月23日にはフィジカルのCDリリースが控えているからだ。しかもCDは通常盤だけでなく、DVD付とチェンソーネックレス付の3種類があるため、これらについても話題になるに違いない。アニメも3か月続くのでリリースと絡めた手厚いプロモーションも予定されているはずで、しばらくチャート上位を騒がしてくれるのは間違いないだろう。
Text:栗本斉
◎栗本斉:旅&音楽ライター、選曲家。レコード会社勤務の傍ら、音楽ライターやDJとして活動を開始。退社後、2年間中南米を放浪し、現地の音楽を浴びる。その後フリーランスとして活動した後、2008年から2013年までビルボードライブのブッキングマネージャーに就任。フリーランスに戻り、雑誌やライナーノーツなどの執筆や音楽評論、ラジオやストリーミングサービスにおける構成選曲などを行っている。
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