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2022/08/17

<インタビュー>初来日公演がソールドアウト、ホリー・ハンバーストーンが幸せを感じるときは

 イギリス生まれ、現在22歳の新進シンガーソングライター、ホリー・ハンバーストーンにインタビュー。ルイス・キャパルディやオリヴィア・ロドリゴの前座を務め、7月21日に行われた初の単独公演はソールドアウトと、早くも日本のファンの心をつかんでいる。ミュージック・ビデオや楽曲の雰囲気からは、クールでどこか寂し気な印象があったが、当の本人は、観光でほぼ徹夜に近い状態ながら、まったく疲れを見せず、取材部屋に入った瞬間、その場の雰囲気を明るくさせた。姉から借りたというボトムス、そして腕の17、脇腹に入れたハローキティのタトゥーも嬉しそうに見せてくれた。

――この1~2年、世界中でプレイしていますが、ステージから見て反応がいい曲、演奏していて楽しい曲はどの曲ですか?

ホリー:一番ライブで好きなのは「Deep End」です。妹(ホリーは4姉妹の3番目)がメンタルヘルスですごく落ち込んでいた2020年の頭にリリースした曲で、「大変な思いをしているあなたをちゃんと理解してあげられないけど、いつもそばにいるよ。大好きだよ。」っていう気持ちを込めて書いた曲なんです。この曲はライブでも結構、重要な場面になっていて、オーディエンスの反応もいいですし、演奏するのも好きです。あと、未発表曲をプレイしているときのお客さんの反応を見るのも楽しいですね。

――妹さんは「Deep End」について、どう思っているんでしょうか?

ホリー:妹がどう思っているかは正直わからないけど、たぶん嬉しかったんじゃないかなと思います。メンタルヘルスの問題は社会現象にもなっているので、もっと声に出してみんなで話し合うべきなんじゃないかと思っていて。なぜかというと、誰もが自分の身近な大事な人がそういう辛い思いを抱えているからです。そして、それを見ていて辛いという体験もしていると思うんです。自分が大切に思っている人が苦しんでるのを見るのは、辛いことじゃないですか。

 私は時々、会話でうまく気持ちを伝えられないことがあって、曲にしたほうが思ってることを伝えやすいんです。言葉にするとぎこちなくなってしまうことも曲にするとスムーズに相手に伝えられます。この曲をシェアしてから、いろんな人から、親友や家族にこういう思いを抱えている人がいるから感謝しているっていうメッセージをもらっているので、この曲を書いて良かったと思いますね。

――伝えたいメッセージをリアルに書いたことで、より多くのリスナーに届いたのかもしれないですね。

ホリー:いろんな状況に当てはめることができますし、そのほうがいいと思って書いた結果、いろんな人が共感できたんだろうなと思います。音にもこだわっていて、その時に感じたことをサウンドで表現しました。初めて買ったギターがバリトンギターで、すごく深い音を出すんです。なぜかそのバリトンギターを演奏していると、妹のことがちらつくんですよね。そのバリトンのサウンドと妹の状況にインスパイアされた曲だとも思います。

――「The Walls Are Way Too Thin」はどういう構想で書いたんでしょうか?

ホリー:ロンドンに引っ越したばかりの時のことです。私の実家はロンドンから2時間くらいの本当にちっちゃい村にあって、ある日突然、引っ越そうと思って、特にプランもないまま一晩で準備して次の日にはもう出発してました。引っ越した先が複数の人が暮らすアパートで、周りには知らない人ばかりだし、大都会に行くのも初めてだったから、すごく寂しくなってしまって。孤独を感じたというか。ロンドンが自分の居場所、ホームっていう感じが全くしなかったんですよ。部屋にいても壁が薄いから、アパート内で起きてることが全部聞こえてきて、それがすごくストレスになっていたんですけど、スタジオに行くことで発散できたんです。スタジオで曲作りをすることが自分にとっての安心な場所だったんですよね。

 ちょっと変だなと思うのは、自分は悲しみのどん底にいたときに書いたのに、どちらかというとポジティブな響きがあるように思うんです。ポジティブなポップチューンになったことで、この曲を聞いた人たちを元気付けられるのがいいですね。

――それはこの曲を聞くと、なぜか元気になりました。歌詞に<The same old sad songs(おなじみの昔の悲しい曲)>と出てきますが、お決まりの曲があるんでしょうか?

ホリー:あります! 子供の頃からよく聴いてたアーティストから最近の曲まで、必ず聞く悲しい曲があって、聞くと安心できるんですよ。母がレディオヘッドの大ファンで、レディオヘッドって憂鬱なムードに最適ですよね。あとはダミアン・ライス。悲しい気分のときに聞くには最高です。最近のアーティストだと結構女性シンガーソングライターが多いですね。グレイシー・エイブラムスとかフィービー・ブリジャーズ……いい意味で悲しい曲を書く達人ですよね。

――最近はどんなときに幸せを感じましたか?

ホリー:今まさにハッピーな気分です! 日本に来れたことももちろん、ライブのチケットも売れて最高にハッピーです。姉が日本に住んでいて、数か月ぶりに会うことができました。昨日は空港まで迎えに来てくれて、私たち姉妹は仲がすごくいいので離れてる期間が長いと辛いんですけど、滞在中はずっと彼女と一緒に過ごせるのですごく嬉しいです。


Interviewed by Mariko Ikitake
Photos by Yuma Totsuka


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