2022/07/30 12:00
4月からスタートしたStray Kidsのワールドツアー【Stray Kids 2nd World Tour “MANIAC”】の最終公演が、7月27日に東京・国立代々木競技場第一体育館で行われた。
韓国、日本、アメリカを回り、再び日本の地に戻ってきたスキズの姿は全国の映画館、そしてBeyond LIVEの生配信を通して世界中に届けられた。約3時間半のライブでカバーも入れると、実に31曲というボリュームで、前日のプレファイナルの疲れを全く見せつけないパフォーマンスで、STAY(ファンの愛称)を魅了した。
期待が高まるステージは米ビルボードで1位に輝いた韓国最新EP『ODDINARY』の収録曲「MANIAC」で幕開け。ここ最近のスキズを象徴する緑色にライトスティックが点滅し、それが会場全体を埋め尽くすのと同時に、ステージ頭上から巨大な緑色の目のようなセットが下がり、8人が登場した。バックスクリーンに映し出されるのはラボのような場所で、何やら研究が進んでいるように思えたが、映像は人気のない街やマルチバース、そして爆発でも起こったのか、先程まで動いてたラボが燃えさかっている。ネジが浮かび、ラボも火が消えない中、幸運の前兆を意味する白い鳥たちが舞うシーンもあり、深い意味がありそうだ。
センターステージに移動した8人はそのまま「VENOM」に進むと、長い手足を活かして、クモのようなポーズで曲の世界観を表現。気づけばメインステージには、メカスパイダーの足が何本も設置され、ミュージック・ビデオにも登場する巨大なクモが怪しげな雰囲気を瞬時に作り出した。キョロキョロと動くセンサーとクモの足が8人を支配しているようで、オーディエンスをも襲いかかる存在感があった。
オリジナルはバンチャンとヒョンジンのユニット曲である「Red Lights」では、レースに見立てた鎖がステージを覆うクモから伸び、メンバー8人の首にかかっている。MVでは愛の毒から抜け出せない心情を表現するこの曲で大人なイメージを出していたが、このステージでは8人がクモの僕であり、生気を吸い取られる操り人形のようにも見えた。ライティングも映像も赤と緑がメインで、すでにこのスタートナンバー3曲で完全に彼らの美しさに飲み込まれたのは筆者だけではないだろう。
しかし、先程までこちらに鋭い目を向けていた同一人物とは思えないほどフレンドリーで優しい「ただいま~」が、会場中に広がっていた衝撃と興奮をパチンと割り、STAYは配られたクラッパー、そしてライトスティックで高まる感情をアピール。「こんなに熱い反応をくれたら、緊張しちゃうね」(バンチャン)、「今日もプリンを食べて超ごきげんなリノです!」、「リノさんの喜ぶ顔を横で見ていたら、僕もごきげんになりました」(ハン)、「顔はまだ幼いけど、STAYを守るいい男になります」(アイエン)、「実は真夏の日差しのような熱い男のフィリックスです」(ここでメンバーたちが「熱い熱い!」と煽る)、「昨日からあだ名が部長になりました。Stray Kidsの末っ子バンチャンです」(本当は最年長)、「カメラにハマったけどSTAYにドハマり中の今日もカッコいいヒョンジンです」、「皆さんにいつも甘えたい、甘えん坊のワンちゃん、スンミンです。今日は目があったら、よしよししてください」、「今日もちゃんと運動してきました。みんなの個人トレーナー、チャンビンです」と、メンバーそれぞれのツボを押さえた挨拶に、会場は笑顔が止まらなかった。
日本オリジナル曲「ALL IN」で自由にステージを移動するメンバーたちは、一緒にジャンプしたり踊ったりするSTAYに手を振り、交流を楽しんだ。「District 9」を経て、ブレイクでは本ツアーのストーリーを表す映像が映し出される。重力に逆らう水が入ったグラスを手にするリノ、食事が並ぶ長テーブルに置かれたワインのグラスに怪しげな緑色の液体を注ぎ込むうちに自分を失っていくハンと彼の手を掴むスンミン、スタジオで音楽機材を動かすも音が見つからず次第に狂いだすバンチャン、赤い部屋に置かれた全身鏡の中の自分に取り憑かれていくヒョンジン、テレビゲーム中にメカのクモを見つけ、それを手に取るチャンビンとアイエン、そして極め付けはフィリックス。手首に繋がるグリーンの管の先にあの巨大なクモがおり、「Do you want to be ODDINARY?(奇妙で普通になりたい?)」と問いかけるのだ。
このODDINARYは奇妙(odd)と普通(ordinary)を足した造語で、米ビルボードのインタビューでバンチャンは「奇妙であることは普通なんです。もし、自分のことで変だと思うことがあれば、それを隠したり、不安になったり神経質になったりする必要はないと思うんです。奇妙で普通のままでいよう(Stay oddinary)!」と説明。まさに、マニアックで自分らしくいることが彼らの最新作のテーマなのだ。
レザー素材の衣装にチェンジしたスキズは「Back Door」で再びステージに。「Charmer」「Lonely St.」と最新ミニアルバムの収録曲に続くのは、ヒョンジンのアップからスタートした「Side Effects」だ。<モリアプダ(頭痛い)>の有名なフレーズに合わせて8人は踊り狂い、最後にはクモのシルエットが映る。しかし、ここでクモへの反抗と思われるもがきを見せて暗転した。
再び映像に切り替わると、先程のストーリーの続きが始まる。そこではまさに、ODDINARYでいることを選び、自分の道を見つけた8人の姿があった。予想していなかったのか、手首のチューブを勢いよく抜くフィリックスを目の前にしたクモは恐れをなして、そそくさと逃げていく。これ以降、ステージにクモが登場することはなく、8人が支配から脱却したことが想像できる。
水墨画を背に優雅にヒョンジンが舞い、4人のバンドメンバー(バンチャン曰く彼らがソリクン(韓国語で音の達人))が登場すると、チャンビンの高速ラップへ。そして「俺様の名前はなんだ」からの「君の名前が思い出せない!」「あの人は誰?」「忘れたくない人」「忘れたくなかった人」「忘れちゃダメな人」「忘れていい人」「知らない人」「君の名前は~!」「ソ・チャンビーン!」という『君の名は。』のくだりで会場を沸かして、「Thunderous」へ。MVに出てくる韓国の歴史宮殿にいるような感覚に見舞われ、堂々とした彼らの音楽スタイルに自然と体が揺れた。重なるサウンドがノンストップ感満載の「DOMINO」と「God’s Menu」がアジアンテイストで立て続けに披露され、会場のボルテージは一気に上がった。
「どんな好きがチーズですか?」という前日公演で言い間違えた部分をこの日はそのコメントを面白く活用しながら始まった、こちらもタガが外れたクレイジー味がマニアックな「CHEESE」とマッシュアップ「YAYAYA + ROCK」で、ヘッドバンギングとデスボイスがマッチするロックステージが繰り広げられる。
この日はメンバーによるカバーも展開。ヒョンジンはColdeの「WA-R-R」、チャンビンは『覆面歌王』で披露していたTablo「TOMORROW ft. TAEYANG of BIGBANG」、スンミンは自身の好きなJ-POPであるOfficial髭男dismの「Pretender」、そしてハートとイケイケなサングラスをかけたリノとアイエンはJ.Y. Park「Honey」を披露と、いつもと違う歌唱力を証明した。
世界ツアーの一環ではあるが、「CIRCUS」や「Scars」といった日本オリジナル曲も披露され、日本のSTAYとのより特別な繋がりを感じさせた。特に「CIRCUS」を収録する今年6月発売のJAPAN 2nd Mini AlbumはBillboard JAPAN総合アルバムチャートで自身初のトップを飾った作品で、JAPAN 2nd Single『Scars / ソリクン -Japanese ver.-』も自身最多初週シングルセールスを記録。コロナ禍で思うような活動ができなかったものの、それと反してファンと人気が拡大したことは、こういった功績や今回の国内6公演で計6万人を動員したことからもわかる。
STAYたちからのリクエストとサポートに感謝を伝えるために、『CIRCUS』から日本オリジナル曲「Your Eyes」の丸ごとプレゼントがあった。そして「Hellevator」からの「TOP -Japanese ver.-」では天国と地獄という対の世界で一糸乱れぬダンスを披露し、<Listen to this 勝戦歌!>の呼び声で「Victory Song」、ツアーTシャツにカジュアルダウンした「FAM」、疲れ知らずを証明したアッパーソング「MIROH」で本編は幕を閉じた。
アンコールで再びステージに立ったスキズは、会場そして世界のSTAYに真心を届けるエンディングMCに突入。しかし、ここでSTAYからのサプライズが待っていた。おかえりムービーと、会場を埋め尽くす青色の「おかえり」ボードに圧倒されたメンバーたち。STAYからの愛を受け取った8人はそれぞれ日本語と時折、韓国語、英語で長文の挨拶をした。
最後はピンク色に染まった「Star Lost」、そして紙吹雪が舞った「Haven」でステージの隅から隅まで渡り歩き、STAYと最後の交流を楽しんだ。「皆さん、ありがとうございます。Stray Kidsはまた来ますからね。約束!」というリーダーの言葉に早くも胸が高鳴る。
Text by Mariko Ikitake
Photos by田中聖太郎写真事務所
◎セットリスト
【Stray Kids 2nd World Tour “MANIAC” in JAPAN】
2022年7月27日(水)東京・国立代々木競技場第一体育館
1. MANIAC
2. VENOM
3. Red Lights
4. Easy
5. ALL IN
6. District 9
7. Back Door
8. Charmer
9. Lonely St.
10. Side Effects
11. Thunderous
12. DOMINO
13. God’s Menu
14. CHEESE
15. YAYAYA + ROCK
16. Waiting For Us
17. Muddy Water
18. CIRCUS
19. Scars
20. Your Eyes
21. Hellevator
22. TOP -Japanese ver.-
23. Victory Song
24. FAM
25. MIROH
26. Star Lost
27. Haven
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