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2022/05/20 12:00

<ライブレポート> 空白ごっこ、自身最大キャパで観客と遊びつくした初ワンマン終幕

 空白ごっこが、5月14日にワンマンライブ【空白ごっこ 1st ONEMAN LIVE 『PLAY ZONE』】を東京・渋谷WWW Xにて開催した。

 同公演はタイトルの通り、空白ごっこにとって初のワンマンライブ。チケットはソールドアウトしており、時世的にも1m四方に区切られたブロック内で距離を取っての観覧となっていたとはいえ、後方までいっぱいの人が詰まった会場は、まさに“満員御礼”という光景だった。本稿では、そんな同公演の模様をレポートする。
 
 バンドメンバーが登場すると、オープニングムービーとして、背後のスクリーンに渋谷のスクランブル交差点の映像が映し出された。じつに1st EP『A little bit』のジャケット写真と同じ風景だ。そこから歩くように視点が移動していき、渋谷WWW Xの前にたどり着いたところでムービーが終わると、高揚感を煽るイントロへと繋がる。イントロの途中でセツコ(Vo)が現れ、先のEPのリード曲「リルビィ」を歌い始めると、会場の温度が一気に上がった。続く「ピカロ」では、セツコの手振りにあわせて会場もハンドクラップが起こり、ステージとフロアに徐々に一体感が生まれていくのが感じられた。

 ひと段落つくと、「初のワンマンで、緊張してるのが伝わってると思うんですけど、暖かい目で見てください」と、歌唱中の繊細な雰囲気とは一転、セツコが愛嬌たっぷりの笑顔で観客に声をかける。

 5曲目「ふたくち」では、セツコが座った状態で歌唱がスタート。俯いて、ひと言ずつ噛み締め語りかけるような歌い方に、観客もどんどん引き込まれていく。また、座った状態では照明で彼女の顔に影が落ちて見えない状態から、2番で立ち上がり、一気に顔に明るく光が入る演出には息をのんだ。続く「19」は、バックにミュージックビデオのアナザーカット映像が流れる中でスタート。間奏中には楽しげに踊り、サビでは大きく手を挙げ、客席に無邪気な笑顔をみせる姿がキュートだった。

 ふたたびMCに入ると、「ここにいる数百人みんなが、私のこと好きってことでしょ?」と、改めて会場いっぱいの観客の数に驚きをみせるセツコ。「2019年の12月から2年半活動してきて、やっとワンマンができる曲数が集まってきました。そのあいだ、メッセージをくれたり、曲を聴いてくれていた人たちのおかげ」「声をかけてもらって、最初は好奇心、遊び半分でやっていた活動が、今は生活の主軸になっていて。みんなのこと、大事だなあって思ってます」と、念願のワンマンライブ開催への感謝を語った。

 「それでは、1曲目に投稿した曲を歌います」との宣言のあとに披露されたのは、空白ごっこの“始まりの一曲”である「なつ」。ここまでの楽曲で披露したような吐息まじりの儚い歌声とは違い、アクセントをはっきりつけた、荒削りに感情を吐き出すような歌唱で、表現力の幅を見せつけた。

 そして、ステージを彩る小道具の紹介へ。「これ、しめちゃん(示村俊人/Ba)が作ったんだよ!」と、シャンプーハットをかぶった恐竜のオブジェのほか、公演タイトル【PLAY ZONE】にかけてメンバーらが作成したというアイテムを、セツコが手にとって一つひとつ紹介していく。それぞれの制作者へ制作意図を(時には舞台裏に突撃してまで)インタビューしに行く、彼女のフリーダムな行動で和やかな雰囲気に。「これね、ちゃんと紹介しないとプロデューサーに怒られるから……」とこぼし、声は出せないながらも笑いが起こった。

 そんなお茶目なMCから一転し、次はロックチューン「天」が繰り出される。シャウトするようなサビ、また回転する赤いライトに包まれて歌うセツコの姿はロック・スターのようだ。その勢いの中、代表曲「運命開花」のイントロが流れると、会場のボルテージが一気に上がる。観客も大きく手を突き上げ、ステージの熱い演奏に応えていた。

 まだまだ興奮冷めやらないフロアを見つめると、おもむろに、「実は今日のワンマンのために、曲を書いてきました」と、自身が制作したという新曲の存在を明かすセツコ。「私たちの曲はネガティブな言葉を使っていることが多いと思うけど、今回の曲もそう。でも、勘違いしてほしくないのが、私は前向きな気持ちで(この曲を)書いたのね」「今まで、過去の嫌なことは『ないもの』としてきたけど、自分の人間的な成長もあって、向き合える気持ちになったというか」と、曲が生まれた背景について、自分の言葉で懸命に伝えようとする彼女の姿に、全員が釘付けになっていた。

 披露された新曲「ポジフィルム」は、先のMCの通り、歌詞は自らの感情を切実に吐き出すような楽曲だ。サビの嗚咽のようなブレスも、聴いていてとても切ない気持ちを煽る。しかし、フロアをまっすぐに見つめ全身で気持ちを伝えようと歌うその姿には、吐き出す言葉の奥に、前に進むための決意が滲むようだった。しっとりしたムードで新曲を終えると、「最後の曲です!」とセツコの明るい声が響く。ダンスチューン「ハウる」が繰り出されると雰囲気が明るく一転し、観客も自然に手振りやハンドクラップをしつつ各々ビートに揺られ、会場はハッピーなムードに包まれた。

 アンコールでは、バンド紹介のボルテージのままラウド調の「リスクマネジメント」へ。バンドメンバーも観客を煽り、セツコもヘッドバンキングをするほどの激しいグルーヴの上に、キュートな歌声が乗るギャップが彼女たちらしい。続く「ストロボ」では、会場を見渡すセツコの目がとても優しく満足げで、なによりこのライブを彼女自身が“遊び”つくしたことが感じられるようだった。

 演奏が終了すると、セツコの「うちのボスをお呼びしたいと思います!」との声で、メンバーのkoyori、針原翼が登場。koyoriは「こんな大勢の人の前で喋るの初めて」と、会場の規模に感極まったのち「あの日歌を聴かせてもらった女の子がこんなになって……感動した!」と、セツコとユニットの成長への想いを述べる。続いて紹介された針原は、「空白ごっこの楽曲は結構バラバラだったりするけれど、それでもひとつにまとまっているのはセツコちゃんが歌うからだと思う」「(自分たちには)見えないグルーヴがあるのかな」とユニットへの愛を語った。

 最後には、“帰りの挨拶”と称して壇上のメンバー全員で手を繋ぎ大きくお辞儀。まさに大団円という光景で、ライブは幕を下ろした。

 終演後、突然スクリーンが明るくなると、7月31日に初の主催サーキットイベント【下北沢フェスごっこ2022】、そして8月より初のワンマンツアー【空白ごっこ ONEMAN TOUR 2022 halo】の開催が発表され、会場は驚きと喜びのムードに包まれた。初のワンマンを終えた空白ごっこは、次なるステージでどのような姿を見せてくれるのだろうか。

Text by Maiko Murata
Photo by Aoi Haruna(superbly inc.)


◎公演情報
【空白ごっこ 1st ONEMAN LIVE 『PLAY ZONE』】
2022年5月14日(土) 東京・渋谷WWW X

【下北沢フェスごっこ2022】
2022年7月31日(日)
会場:東京・下北沢MOSAiC、下北沢SHELTER、下北沢WAVER、下北沢Club 251、下北沢Queほか

【空白ごっこ ONEMAN TOUR 2022 halo】
2022年8月28日(日) 愛知・ell.FITSALL
2022年9月4日(日) 大阪・心斎橋JANUS
2022年9月16日(金) 東京・渋谷CLUB QUATTRO

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