2013/04/02 18:00
共に70年代から関西の音楽シーンを牽引してきたギタリスト 有山じゅんじ、山岸潤史によるユニット 有山岸が演歌歌手 香西かおりを迎え、異色のコラボ 有山岸香(ありやまぎしか)を結成、3月31日 ビルボードライブ大阪にてスペシャル・ライブを行った。
定刻過ぎ、ステージにゆるりと姿を現す3人。まずは数々のアーティストに歌い継がれるジェリー・ゴフィン&キャロル・キングによる名スタンダード「ウィル・ユー・ラヴ・ミー・トゥモロー」から。カジュアルなデニム・ファッションに身を包んだ香西の、優しくリラックスした歌声とブルージーで温かみのあるギター&コーラスが会場を包み込んでいく。予想通り、その相性は抜群。演歌のみならず、ポップス、民謡、歌謡曲まで幅広く歌いこなす香西をヴォーカルに迎えた一夜限りのスペシャル・ライブ、果たして何がプレイされるのか…オーディエンスの期待は高まる中、そのギター競演が有山岸のライブでも定番となっている「悲しい色やね」のカヴァーや、山岸の母のお気に入りナンバーで、ぜひ香西に歌って欲しかったというレス・ポール&メリー・フォードの「ヴァイア・コン・ディオス」、カーペンターズによる歌唱で世界的にヒットした「スーパースター」、そして香西の代表曲「無言坂」と、ジャンルはおろか、時代や海をも越えた名スタンダードの数々が演奏されていく。「帰りたい 帰れない」と力強く歌われるお馴染みの名フレーズに、2本のギターが紡ぎ出す哀愁の旋律が絡み合う、ブルース・アレンジの「無言坂」は、改めて“演歌=日本のブルース”論を提唱したくなる完璧なフィーリング。それは曲の終わりを待たずして客席から思わず拍手が沸きあがるほどだった。
「無言坂」の演奏が終わったところで、改めて「ええ歌やなぁ…」とつぶやく有山。さらに、こんな歌を聴いたら飲まないわけにはいかないだろうと、やけに説得力のある言い訳とともに手元に運ばれてきた酒をぐいっと飲み、ついに本調子が出た(?)という有山のリードでショーはエンディングに向かって加速。本編最後となった青森県の民謡「南部俵積み唄」では、これぞ真骨頂といった香西の圧倒的な歌唱に競い合うかの如く、2人のブルースマンが日本の伝統的なリズムを刻み込んでいく。日本の歌心と情熱迸るブルース・ギターがクロスオーヴァーする瞬間!これぞライブの醍醐味といった迫真のパフォーマンスに思わず胸が震える。
盛大な拍手に迎えられてのアンコール、「ほな、買い物いくよっ!」という香西の威勢のいい掛け声とともに浪速のスタンダード「買物ブギー」を再構築した有山×上田正樹による「買い物にでも行きまへんか」の演奏スタート…と、ここで、有山が突然「トイレ行きたい~!」と、まさかの演奏ストップ&一時退席。残された2人はやや戸惑いつつも、アットホームなオーディエンスの雰囲気に後押しされ、「いい曲だからもう一回やっとく?」と「ヴァイア・コン・ディオス」をリプレイ。リラックスムードの中で、再び奏でられる珠玉のメロディーに心酔しているうちに、有山がステージに復帰し何食わぬ顔で(笑)演奏を再開すると、「もう40年やっております。」という有山の前口上から、今度こそ「買い物~」へとなだれ込み、最後は有山のナンバー「抱きしめよう」の優しいハーモニーを会場いっぱいに響かせてショーを締めくくった。
3年の歳月を経てようやく叶ったという異色のユニット 有山岸香。未知なるコラボレーションへの期待を胸に会場へと駆け付けたオーディエンスはもちろん、この夜を心から楽しんでいる彼ら自身の笑顔が何よりも印象的で、ほろ酔いにも似た、なんともほんわかした気分で会場を後にした。いつの日かまた、浪速が生んだ奇跡のブルース・ユニットにお目に掛かれるのを楽しみに待ちたい。
◎公演情報
日時:2013年3月31日(日)
会場:ビルボードライブ大阪
more info:
http://billboard-live.com
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