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2022/05/04 20:30

<ライブレポート>デビュー40周年の野宮真貴が魅せる “オルタナティブ・ポップスの女王”としての姿

 デビュー40周年を迎えた野宮真貴のアニバーサリー・ライブがビルボードライブ東京・大阪で開催された。4月20日には、ニューアルバム 『New Beautiful』 をリリース。ここでは、アルバムの収録曲「おないどし」をデュエットした横山剣(クレイジーケンバンド)をゲストに迎えた4月29日のライブレポートをお届けする。

 満員の客席から大きな拍手に包まれ、鮮やかなグリーンのドレスに赤いハットを身につけた野宮真貴が登場した。ビルボードライブは、2年前に開催した【野宮真貴、還暦に歌う。~赤い口紅の女と黒いサングラスの男たち~】以来となる。この10年はホームグラウンドと言っていいほどライブを重ねてきたが、40周年という節目のステージは、最新作に収録された「Portable Love」から始まった。これは1981年にソロデビューした野宮真貴が、中原信雄と鈴木智文と組んだユニット=ポータブル・ロックの新曲でもある。「そういえば、私たち解散してなかったよね」という野宮の一言で、このたび再集結。「今日はデビュー曲から最新アルバムまでを皆さんと分かち合いたいと思います」というMCを挟み、ポータブル・ロックの80年代屈指のナンバー「アイドル」へと続く。80sニュー・ウェイヴの雰囲気を醸すサウンドが今、また新鮮に響く。 “渋谷系の女王”と呼ばれる以前の彼女のルーツをこうして聴けるのも40周年ならではのお楽しみ。

 野宮真貴は、1981年、ムーンライダーズの鈴木慶一のプロデュースにより、デビュー。その記念すべきデビュー・シングル「女ともだち」も披露された。当時は、ショートカットの“ニュー・ウェイヴの歌姫”だった彼女。その後、ポータブル・ロック~ピチカート・ファイヴを経て、再びソロとなり、独自のキャリアを築いてきた。そして、今年、40年の時を超えて、鈴木慶一に作曲・プロデュースを依頼した新曲「美しい鏡」を80sの匂いを醸しつつドリーミィに聴かせてくれた。その「美しい鏡」の作詞を手がけた佐藤奈々子は、野宮のソロデビュー・アルバム『ピンクの心』に収録された「トゥイギー・トゥイギー」も作詞・作曲。後にピチカート・ファイヴでカヴァーし、海外で圧倒的な人気を誇る曲となった。ここでは「私を世界に連れていってくれた曲です」と、「トゥイギー・トゥイギー」を歌い、80s、90sを現在へ鮮やかに繋げていく。

 ビルボードライブの野宮真貴のステージでは恒例のお色直しタイム(衣装替え)では、「東京は夜の七時 (feat. Night Tempo)」が流れ、デビューから現在までの貴重な写真が次々とスクリーンに映し出された。目まぐるしく変わるファッション、ヘア&メイクの七変化も野宮真貴のアイコニックな魅力のうち。白いミニドレスに着替えた彼女の華やかな存在感はいまも唯一無二。ステージの彼女を撮影できる写真タイムも楽しいひとときを演出していた。

 「歌う「おしゃれ手帖」」は、ピチカート・ファイヴ解散後に再びソロになったアルバム『DRESS CODE』(2004年)からのナンバー。〈おしゃれを愛して 気分盛り上げて さあ はじけよう〉という彼女のポリシーを見事に歌詞に仕立てた今は亡きエディター、川勝正幸への想いを込めて歌った。

 「いよいよお待ちかねのゲストをお呼びしたいと思います」と、スパム春日井率いるロマンティックスの演奏する「タイガー&ドラゴン」にのって横山剣が登場。2人は共に1960年生まれ。デビューしたのも1981年という同期生。2年前の【野宮真貴、還暦に歌う。】でも共演したが、やはり、この当代きっての洒落者2人のオン・ステージは華がある。今回の40周年のステージでは、横山剣が作詞・作曲し、小泉今日子と中井貴一がTVドラマの劇中歌として歌った「T字路」をデュエット。大人の愛らしいラブソングを歌える貴重なヴォーカリスト同士の共演で、客席もますます華やいでいく。4月29日の「肉の日」とかけて、「スキヤキ・ソング」が歌われたのは、ピチカート・ファイヴ、CKBファンにとっては嬉しいサプライズだったに違いない。ピチカートのラスト・アルバム『さ・え・ら ジャポン』(2001)に、横山剣がゲスト・ヴォーカルとして参加した小西康陽によるこの曲をまさかライブで聴けるとは! 肉料理が次々と並ぶユーモラスでナンバーを、パンチを効かせて歌いのめす横山剣と「イイネッ!」ポーズをキメる野宮真貴のカッコイイこと! 以前から同い年をテーマにした曲を横山剣にリクエストし、40周年にようやく実現したのが、最新アルバムの先行シングルとなった「おないどし」。野宮は、トワ・エ・モア「或る日突然」のような友だちから恋人に発展する歌をイメージしていたが、出来上がってきたのは「友だち以上、恋人未満」の歌詞だったとか。横山いわく、「サステナブル、持続可能な関係」の同い年の男女のやりとりを、今夜はライブで味わえた。「気分を出してもう一度」、「シンデレラ・リバティ」「これは恋ではない」などの2人にまつわる曲名や、同い年の共通体験が歌詞に盛り込まれているのも心憎い。甘酸っぱいロマンチックな歌に加え、マスクを付けてのチーク・ダンスでもおおいに観客を沸かせた。

 後半はピチカート・ファイヴの「陽の当たる大通り」から。最新作ではタイのインディー・ポップスター、Phum Viphuritとのコラボ・セルフカバーに挑み、シティ・ポップ・アレンジにアップデートされたヴァージョンが話題となった名曲だ。ブームとなっているシティ・ポップを渋谷系としてプレゼンテーションしていく新たなトライも新鮮だった。

 「ソフトロック的でエバーグリーンな素敵な曲で、2022年の渋谷系ソング」と紹介されたのが、ピチカート・ファイヴのオリジナルメンバーの高浪慶太郎が作曲・編曲を手がけ、カジヒデキが作詞をした新曲「大人の恋、もしくは恋のエチュード」。新旧の曲を取り混ぜながら、時代を超えてポップに聴かせてしまうのは彼女のヴォーカルの魅力に他ならない。「愛する人の幸せを願う希望のラブソングです」というMCをはさみ、ピチカート・ファイヴの人気曲「メッセージ・ソング」を歌い、本編は幕を閉じた。

 アンコールでは、ゴージャスなシルバーのドレスで登場。「スウィート・ソウル・レヴュー」を歌い始めると、客席からは自然と手拍子が起こり、大きく手を振る観客も続出し、コロナ禍で長く見られなかった幸福な光景が広がった。「すべてのミュージシャン、スタッフ、ファンの皆さんに」と、ファンキーでグルーヴィーな「サンキュー」を披露。ラスト・ナンバーはGLIM SPANKYの松尾レミが子供の頃から憧れていた野宮真貴にプレゼントした新曲「CANDY MOON」だった。この40年の歩みを濃縮したアニバーサリー・ライブは、そのポップアイコンとしての存在感をあらためて確認できた夜だった。“ニュー・ウェイヴの歌姫”としてデビューし、“渋谷系の女王”となり、40年の時を経て、時代やジャンルをクールに昇華した稀代のヴォーカリスト、野宮真貴。「世界中の名曲、世界のミュージシャンとの新曲を歌い継いでいくのが私の使命」と自ら言う通り、これからも“オルタナティブ・ポップスの女王”として、ますます輝いていくに違いない。

Text: 佐野郷子
Photo: Yuma Totsuka


◎公演情報
【野宮真貴 40th Anniversary Live】
2022年4月24日(日)Guest:松尾レミ(GLIM SPANKY)
大阪・Billboard Live OSAKA ※終了
2022年4月29日(金)Guest:横山剣(CRAZY KEN BAND)
東京・Billboard Live TOKYO ※終了
2022年4月30日(土)Guest:鈴木慶一、カジヒデキ
東京・Billboard Live TOKYO ※終了

◎配信情報
【Billboardライブ『野宮真貴 40th Anniversary Live Guest:横山剣(CRAZY KEN BAND)』】
ライブ配信日時:4月29日(金)Rakuten TVにて配信 ※終了
見逃し配信:4月29日(金) 21:25~5月6日(金) 23:59
視聴チケット:3,500円(税込)
販売期間:4月11日(月) 12:00~5月6日(金) 21:00