2022/04/11 12:00
何度も言及してきているが、ほぼ配信のないジャニーズ系アーティストにとって、Billboard JAPANのようなCD売上だけではない複合的なチャートは非常に不利だ。圧倒的な数のコアファンを抱え、CDの売上枚数では群を抜いていても、他のポイントで稼ぐのが難しいからである。
そんな状況下においても、結果を出すのがジャニーズの強さだ。2022年4月6日公開分のBillboard JAPAN 総合ソング・チャート“JAPAN HOT 100”では、Snow Manの「ブラザービート」が堂々の首位に輝いた。ラップを全面的に取り入れたアッパーな楽曲のキャッチーさも手伝って、King GnuやAimerといった強豪を抑えられたのはさすがとしかいいようがない。
とはいえ、やみくもに売上だけで勝負したわけでなはい。綿密に発売日までの盛り上がりを作っていることがわかる。最初に告知が始まったのは2月3日で、映画『おそ松さん』の主題歌ということが発表された。この時点で、Twitterのつぶやき数が急上昇して2月9日公開分のTwitterの指数が26位を記録している。そして、大きなアクションとなったのが、発売に先駆けて3月2日に公開されたミュージック・ビデオだ。3月9日公開分のJAPAN HOT 100における動画再生数では圧倒的な1位。総合でも57位を記録し、初チャートインとなった。そして、MVの再生数を後ろ盾にしつつ、フィジカルの発売日を迎えて首位となったのだ。
ここでの大きなポイントは、MVを動画プラットフォームで公開したことだ。サブスク解禁していないSnow Manにとっては、それに代わるものでもあり、ここで事前に盛り上げることでフィジカルにもつながる。また、MVがあることによってTwitterやその他SNSでの拡散にも必ずつながっていくし、それよってコアファン以外にも届きやすくなる。配信未解禁を逆手に取り、事前の盛り上がりを動画プラットフォームに集約したことは大きいだろう。このサイクルがうまく回れば、配信のない楽曲でもチャンスが生まれるのだ。
ただ無事に首位を獲得したとはいえ、まだまだ課題は大きい。他のアーティストのロングヒット楽曲は、やはりストリーミングの力あってこそだ。そこにSnow Manを始めとするジャニーズのアーティストがどう切り込んでいくのか、今後の動きに注目したい。
Text:栗本斉
◎栗本斉:旅&音楽ライター、選曲家。レコード会社勤務の傍ら、音楽ライターやDJとして活動を開始。退社後、2年間中南米を放浪し、現地の音楽を浴びる。その後フリーランスとして活動した後、2008年から2013年までビルボードライブのブッキングマネージャーに就任。フリーランスに戻り、雑誌やライナーノーツなどの執筆や音楽評論、ラジオやストリーミングサービスにおける構成選曲などを行っている。
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