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2022/01/11

山崎あおい「素敵な仕事をさせて頂いているなぁ」鈴木愛理、稲場愛香、アンジュルムなどハロプロ界隈の楽曲制作、最新アルバム『√S』について語る

 ハロプロ中心に作家としても大活躍中のシンガーソングライター・山崎あおいへ7年ぶり7回目のインタビューを敢行。華々しくメジャーデビューするも音楽の道を諦めかけた時期から再起し、安倍なつみ、稲場愛香、鈴木愛理、アンジュルム、Juice=Juice、つばきファクトリー、宮本佳林などの楽曲を手掛けたことでソングライティングの才能を評価され、自身の原点に立ち返った全曲傑作の最新アルバム『√S』完成に至るまでの物語。ぜひご覧頂きたい。

◎山崎あおい『√S』リリース記念インタビュー

<「可哀想な時期」アイドル全盛でSSWが取り沙汰されなかった時代>

--メジャーデビュー直後から全6回にわたってインタビューさせて頂いていましたが、こうして再びお話を伺うのは7年ぶりということで。メジャーから離れてどれぐらい経ちますかね?

山崎あおい:2016年にリリースしたアルバム『Rinkle-Rinkle』を最後にビクターエンタテインメントから離れて、翌年に所属事務所だったヤマハからも離れたので、5,6年経ちますね。プロ野球選手が戦力外通告されるテレビ番組を観て「私もこういう風になるのかな」ってすごくビクビクしていたんですけど、いざ離れるときになったらあそこまで悲壮感に襲われることもなく、「5年ぐらい頑張ったんだなぁ」ぐらいの感じでした。

--初めてのインタビュー(https://bit.ly/3sN8DDe)で「今年売れる。来年、確固たる地位を築く。」みたいなことを仰っていたんですけど、当時は「売れなきゃいけない」みたいな想いが強かったですよね。

山崎あおい:当然、売れるものだろうと思っていたんです。メジャーデビュー=華々しい世界に飛び込むイメージだったので、メジャーデビューしてもなお泥臭い感じが続くとは思っていなかったし。でも、徐々に「意外とこういう感じなんだな。何千枚ぐらいの世界なのか……」と理解していって、ビクターから離れるタイミングでは自分の位置とかも分かっていたので、青天の霹靂みたいな感じではなかったです。

--YUIさんに憧れてシンガーソングライターになってメジャーデビューしたわけですが、2010年代の前半ってちょうどCDが売れなくなって、アイドル以外のヒット曲も激減していった時期じゃないですか。そこで結果を残す難しさってありましたよね。

山崎あおい:客観的に見て「可哀想な時期だったな」と自分でも思います(笑)。ちょうどアイドルの全盛期だったじゃないですか。それもあってシンガーソングライターやバンドが取り沙汰されない時期にデビューしちゃったので。でも、私がメジャーから離れたあとにシンガーソングライターが増えてきたから、ちょうど不運な時期だったのかなって。

--そんな自分がここまでアイドルに楽曲提供する人生を送るとは、その当時は思っていないですよね。

山崎あおい:いやぁー、思っていなかったです。アイドルは元々好きだったから「1曲ぐらい書いてみたいな」とは思っていたんですけど、こんなにもアイドルと関わらせてもらうことになるとは(笑)。でも、すごく嬉しいです。

<音楽を諦めなかった理由~ハロプロ研修生北海道feat.稲場愛香の衝撃>

--特にハロー!プロジェクトのアイドルへの楽曲提供が多いですけど、最初にハロプロ界隈で作詞作曲したのは、なっち(安倍なつみ/モーニング娘。初期メンバー)さんの「嘘つき」だったんですよね。

山崎あおい:楽曲提供自体も初めてのことで、スタッフさんから「書いてみない?」って提案して頂いて、それで書かせてもらったんですけど、その当時は作家として活動していくヴィジョンもなかったから「これをライフワークにしていくんだ」みたいなことも思っていないし、出来たものをお渡ししただけで終わってしまって。でも、自分の曲を誰かに歌ってもらうこと自体初めてだったし、しかも小学生時代からテレビで観ていた安倍なつみさんへの楽曲提供だったので、すごく嬉しかったですし、不思議な感覚でもありましたね。ただ、そこから今の状況に繋がっていくとは全く思っていなかったです。

--楽曲提供の仕事が増えていく一方で、シンガーソングライターとしての活動を続けていく想いはメジャーから離れても変わらなかったんですか?

山崎あおい:迷っていました。メジャーから離れるか離れないかぐらいの時期が大学卒業タイミングでもあったので、シンガーソングライターとしての活動は大学時代の良い思い出として終わらせて、そこからちゃんと収入のあるキャリアを築くみたいな(笑)そういう方向転換もアリなのかなと思って、就活は一応したんです。それで某D社の面接に行ったんですけど、その日に38.9度ぐらいの熱を出してしまって、具合が悪すぎて何も喋れない状態で。ずっと下を向いて耐えていることしか出来なかったんです。でも、そこで「これは神のお告げだ。就活を辞めろという啓示だ」みたいな(笑)。

--「そっちの道へ向かってはいけない」と(笑)。

山崎あおい:「そっちの道はあなたに向いてないよ」ということなんだなと。その日を境に「なんとか音楽で頑張っていこう」と思うようになりました。で、自主制作をスタートさせたかったんですけど、どういうやり方をすればいいかも分からないし、元手もないし。そんな時期にYUIさんをプロデュースしていた近藤ひさしさんとお会いさせて頂いたんです。そこで「現状こんな感じで、作家にも挑戦したいと思っているんですよね」みたいな話をしたら、今の事務所のビーイングを紹介してくれて、そこから本格的な作家活動がスタートしたんです。

--では、今の所属事務所はビーイングなんですね。

山崎あおい:シンガーソングライターとしてはフリーなんですけど、作家としてはビーイングに所属することになって。で、最初はひさしさんの紹介で、ハロプロ研修生北海道feat.稲場愛香さんに「北海道だから北海道の作家で作るのがいいんじゃないか」みたいな流れで「ハンコウキ!」という楽曲を書かせて頂いたんです。そこで「歌うまいなぁ」とビックリして。難しい曲を作っちゃったかなと思っていたら難なく歌いこなしていて、元々ハロプロの皆さんは歌が上手い印象だったんですけど、それにしても凄いなと思いました。

<鈴木愛理との出逢い~アイドルと自身の楽曲メカニズムの違い>

--それからどの辺で作家として軌道に乗ったんでしょう? 僕の印象的には、鈴木愛理さんとの出逢いがターニングポイントだったのかなと。

山崎あおい:今もまだ軌道に乗った感じはしないんですけど、別にお金持ちになったわけでもないから常に不安なんですが(笑)、たしかに愛理ちゃんとの出逢いは大きかったです。愛理ちゃんが℃-uteを解散してちょうどソロ活動をスタートしたタイミングだったんですけど、あの時期の私の運は神懸っていたと思います。ハロプロ研修生北海道feat.稲場愛香さんへの楽曲提供も私が北海道出身じゃなかったら実現していなかったと思いますし、愛理ちゃんもたまたま同じ大学で、ソロになったタイミングでたまたま出逢ったんですよね。

--愛理さんにインタビュー(https://bit.ly/3zkNLEv)させて頂いたとき「あおいちゃん家で曲を作っている」と伺って、そんなに近い距離感で制作しているなんて仲良しだなぁと思ったんですよ。

山崎あおい:最初は「君の好きなひと」という楽曲を私が作詞作曲して提供させて頂く形だったんですけど、それ以降の愛理ちゃんに書かせてもらっている楽曲はほとんど共作という形で、それこそ家に来てもらって「なんかサビが物足りないよね」とか言いながら一緒に曲を作っていて。それも私にとっては新鮮だったんですよ。私が先生みたいな感じでレクチャーしながら曲を作るなんてそれまでやったことがなかったので。でも、愛理ちゃん以降、そういう作り方をする機会が結構増えましたね。なので、愛理ちゃんには本当に感謝です。来年2月にリリースされるアルバム『26/27』にも2曲ほど書かせて頂いているんですよ。

--アンジュルム、Juice=Juice、カントリー・ガールズ、つばきファクトリーなどグループの楽曲も手掛けていますが、自分の楽曲とは制作のメカニズムはまた変わってくるわけですよね?

山崎あおい:全然違いますね。特にグループの楽曲を作るときはコンセプトありきというか、メロディーでも歌詞でもそうなんですけど、例えば「ファンクの曲を作ろう」とか「こういうメッセージを伝える曲にしよう」というところからいろいろ肉付けして書いていくんです。でも、自分の曲はもう一筆書きみたいな感じで、Aメロ、Bメロ、サビと「うん、OK。はい、OK」ってポンポンポンポン書いていく。私の曲は私が「OK」と言えばOKだし、メジャーから離れて以降は「別に売れなくてもいいや」みたいな(笑)。もちろん売れたらうれしいんですけど……

--要するに「売れる為に作る」「大衆向けに書く」といったマインドが削られていったということですよね。

山崎あおい:そうですね。今はあんまりそこを期待している人もまわりにいないし、そこに責任もないし、本当に「思いついたままに書いて、好きなことをやろう」という意識なので、そこについては悩まなくなりました。「この言葉じゃちょっと伝わりづらいかな」とか「コンセプト、ボヤけたなぁ」とかあんまり思わない。でも、楽曲提供になるとそうじゃないので、街鳴りしてパッと引っかかるようなフレーズを考えるのはもちろん、メンバーの方がインタビューでその曲について質問されたときに「こう答えたら格好良く感じてもらえそうだな」みたいなところまで綿密に想像しながら書いています。だから、毎回難産(笑)。でも、楽しいです。例えば、アンジュルムに提供させて頂いた「Uraha=Lover」。最後の「ほっとしてるくせに」というフレーズを佐々木莉佳子ちゃんがライブで歌っていたんですけど、歌い終える瞬間の表情が本当に素晴らしくて!「あ、こういう表情で歌う曲だったんだ!」と。私の想像を超えた解釈でパフォーマンスしてくれていて、そういう瞬間に感動しては「素敵な仕事をさせて頂いているなぁ」と思うんですよね。

<今の山崎あおいだから実現できた原点回帰アルバム『√S』>

--ちなみに、作家としてアイドルに提供した楽曲が注目されている中で、「シンガーソングライター・山崎あおいの楽曲も聴いてほしい」と思ったりすることはないんですか?

山崎あおい:「聴いてくれたらいいな」とは思うんですけど、一昨日ぐらいにエゴサしていたら「山崎あおいさんってシンガーソングライターだったんだ?」みたいなツイートを見つけて。私の曲を聴いたことがない人がいるのは全然分かっていたんですけど、私がシンガーソングライターで歌っていることすら知らない人もたくさんいるんだなって。でも、そこで「あ、まだまだ頑張る余地あるな」と思いました。そういう人も聴いてくれたら、もう少し自分自身の活動だけでもまわるようになるのかなと思ったりして、逆に希望があるなと感じています。

--そういう人たちにもぜひ聴いてほしいアルバム『√S』が完成しました。お世辞抜きで全曲傑作、あらゆる角度から琴線に触れてくる一枚だと思います。歌い手としての進化も感じ取れましたし。

山崎あおい:私、喉を1回壊したんですよ。メジャーから離れる前後ぐらいで完全に壊してしまっていて、ポリープとか外傷的要因は一切なかったんですけど、まともに歌えなくなって、最終的に喋り声も上手く出せなくなっちゃったんです。でも、去年ぐらいに発声を治してくれる整体を見つけて行ってみたら、パッと治ったんです。私、絶対に人前で泣いたりしないんですけど、その整体の先生と話しながらボロボロ泣いちゃったんですよね。無意識に抱えていた良くないモノを吐き出せたことで、脳の途切れていた回路が繋がった感覚もあって。それからは普通に喋れるようになって、歌もわ歌いやすくなったから、今回のアルバムは自分の中での基準を上げてテイクを選ぶことが出来たんです。

--そんなストーリーも経て完成させたアルバム『√S』、自身ではどんな作品に仕上がったなと感じていますか?

山崎あおい:今回は原点回帰をテーマにしたかったんです。青春時代に聴いていたYUIさんがセルフカバーアルバムを出したり、テイラー・スウィフトがポップ路線から一転して急にカントリーに戻ったり、そういう原点回帰の波に自分も飲まれていく感覚があって。2022年でデビュー10周年になるんですけど、やっぱり10年ぐらい経つと昔の自分を受け入れるようなターンに入るんですよね。あと、それこそ作家活動でたくさんお仕事させてもらえるようになって、自分の名義で歌う活動を背水の陣で必死に頑張らなくてもよくなったので、いったん落ち着いて何も考えずに、たとえ収益がゼロであっても、自分の好きな曲をゆっくり作りたいなって。もう1回そういう気持ちでアルバムを作ってみたいなと思ったんですよね。それで「ストリングスを生で絶対入れたい」とか自分がやりたいことも実現できたし、デビュー前の高校生の頃からお世話になっていたスタッフさんに「もう1回、ディレクションしてほしいんですけど」ってお願いして、その人にミュージシャンも集めてもらって、安心できるメンバーで制作することも出来ましたし、その結果、大満足のアルバムが完成しました。

--何もかも今の山崎あおいだからこそ実現できた作品なんですね。歌詞の内容的にも、今だからこそ描けた楽曲群なんだろうなと感じました。

山崎あおい:そうですね。今回はわりと抽象的な歌詞になっていて。タイトルで「こういうことを歌っています」と分かるような曲は「Mr.Birthday」くらいしかなくて。そういう抽象的なところでOKを出すって、関わる人が多いメジャー時代には難しかったと思うんですよね。「影を踏む」という曲は本当に暗くて深刻なテーマを歌っているんですけど、これもメジャーだったら「刺激が強すぎる」みたいな理由でリリースを止められていたと思うんです。でも、今は自分で決められる環境にいるから世に出すことができた。そういう意味でも、今の私だからこそ作れたアルバムだと思いますね。

--では、最後に、このアルバム『√S』リリース以降のヴィジョン、今後の夢や野望がありましたら教えてください。

山崎あおい:伏線回収になっちゃいますけど……(笑)。

--なんでしょう?

山崎あおい:来年売れる。再来年、確固たる地位を築く。

--デビュー当時から変わらぬ野心(笑)。期待しています!

取材&テキスト:平賀哲雄
取材時期:2021年12月

◎リリース情報
アルバム『√S』
2021/12/15 RELEASE
初回限定盤(DVD+カレンダー付)PECF-9037 4,950円(tax in.)
通常盤 PECF-3262 2,750円(tax in.)
収録曲:
01.まっさら
02.Prima
03.離れないの
04.Mr.Birthday
05.影を踏む
06.I'm yours
07.サボタージュ
08.花咲くを待つ
09.ともだち
10.一緒にいるから好き、たぶん
DVD(DISC 2)収録内容:
1.スペシャルコンテンツ MC☆AOI「えっとね~。」
2.Live in the kitchen. /「I'm yours」「ともだち」
3.Music Video /「まっさら」「 I'm yours 」ディレクターズカットver.

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