2021/12/17
斉藤朱夏が12月10日、パシフィコ横浜国立大ホールにて【朱演2021『つぎはぎのステージ』】を開催した。今年8月にリリースした1stアルバム『パッチワーク』を引っ提げてのこのライブ。当初予定していた大阪公演は政府による新型コロナウイルスワクチンの大規模接種会場の延長により中止となってしまったが、この日は予定通り開演。会場はこの日を心待ちにしていたファンの熱気で充満していた。
開演すると、ステージに現れた斉藤が「ワンピース」のサビ部分をアカペラで歌い始めた。<天才なんかじゃないし 才能もないし>と自らが書いたフレーズを会場全体に響き渡らせる。やがてバンド演奏が合流すると、会場全体が一気に華やかに色づいた。たった一人で歌っていた彼女に対して、力強く支えるバンド・メンバーたちがいることで、途端に世界が輝き出す。この始まり方こそが斉藤朱夏という等身大の魅力を持った存在のリアルな姿を表していたように思う。続いて「くつひも」と「恋のルーレット」を披露。照明がカラフルに切り替わり、バンド演奏とのコンビネーションもより深まっていった。
歌い終えると「こんばんは、斉藤朱夏です! みんな元気?」と話し始めた。感染防止対策の観点から客席側から大きな声を発することはできないが、代わりに盛大な拍手が鳴り響く。「2021年にやり残したことはない? もしあったら私が全部受け止めるのですべて投げてください。そのぶん私もアツい気持ちをぶつけるので覚悟しておいてよ!」と丁寧にコミュニケーションを取っていく斉藤。そのファン思いな姿勢に温かい拍手が送られていた。
続いて「あめあめ ふらるら」を歌唱。雨の日が舞台の曲のため、途中で朱色の傘を持って雨を演出するなど、楽曲の見せ方にも工夫が感じられる。この曲を歌い終えると、次の曲「パパパ」とのあいだにすばやく衣装チェンジ。真っ赤な生地に様々な柄の布が当てられた”パッチワーク”式の衣装が印象的だった。間髪入れずに「ぴぴぴ」を歌う。ステージ後方に光り輝くミラーボールが出現し、会場がキラキラとしたダンス・ホールへと一変する。スカ調のアップ・テンポなこの曲で会場の温度がぐんと上昇していくのを感じた。
そして次に斉藤は、「ここにいるみなさんと出会えたことが運命だと思います。そんなみなさんにこの曲を届けます」と言って「36°C」と「よく笑う理由」を歌唱。ゆったりとした曲調の曲を、身体を揺らしながら体全体で表現していく。特に低い音程を吐息混じりで歌う際に、彼女の思いの強さが伝わってくるようだった。今回のアルバムの制作中に”色んな自分”や”不器用な自分”に気づけたという彼女。ふと“居場所がない”と感じることもあるという。しかし、この公演で改めて自分の居場所を再確認し、「ここにいる君が私の生きる原動力です」と力強い口調で宣言した。
その後、「ヒーローになりたかった -Acoustic ver.-」と「セカイノハテ -Acoustic ver.-」をアコースティック編成でしっとりと歌い上げる。ギターの繊細な爪弾きと美しいピアノのタッチに、彼女の真っ直ぐな歌声がよく絡み合っていた。この2曲の後、会場から送られた大きな拍手に思わず感極まって泣きそうになる一幕もあった。
続いてバンド・メンバーを一人ずつ紹介した後、勢いよく「しゅしゅしゅ」へ突入。タオルを持った彼女がステージを縦横無尽に駆け回る。会場全体がタオルを振り回し、一体感が漂っていた。さらに「Your Way My Way」では客席を赤と青の2チームに分かれ、曲中に斉藤の旗の合図に合わせてコール&レスポンスする取り組みが行われた。終盤のこの2曲で会場のボルテージはMAXに。
そして本編ラストは「またあした」。軽快なリズムを声を弾ませながら歌い上げ、最後に大きく「ありがとう!」と言ってステージから掃けていった。アンコールは「もう無理、でも走る」からスタート。歌い終えると「私は今日楽しみました! 今日というこの一瞬を、ただただ君と生きたいがために立ってます。ライブがなくなってしまうと正直、生きがいがなくなってしまう」と本音を話した彼女。会場からは惜しみない拍手が送られていた。最後は「声をきかせて」を歌唱。「勝手に孤独だって思っていた私に、こんなにも多くの仲間がついてきてくれて、私は幸せです」と言って会場を後にした。
バンド・メンバーやファンなど、彼女が多くの人々に支えられている存在であることが終始伝わってくる公演であった。本公演はMUSIC ON!TVにて放送されることが決定している。また、ライブハウスツアー【朱演2022 LIVE HOUSE TOUR『はじまりのサイン』】の開催も決定した。今後の彼女にも注目だ。
Text by 荻原梓
Photo by Viola Kam[V'z Twinkle]
◎公演情報
【朱演2021『つぎはぎのステージ』】
2021年12月10日
神奈川・パシフィコ横浜国立大ホール
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