2021/12/09
TrySailが9月にリリースした最新アルバム『Re Bon Voyage』を引っ提げ、全国6都市を巡るツアー【LAWSON presents TrySail Live Tour 2021 “Re Bon Voyage”】を開催した。本稿では11月13日の東京ガーデンシアター2日目公演について記述する。
アルバムのタイトルは“Re”と“Bon Voyage”を組み合わせた言葉で、ファンに向けたプレゼントという意味で“Re Bon=リボン”ともかけているという。ステージ上には中央に吊り下げられた巨大リボンを筆頭に、アルバムの世界観とリンクするモチーフが散りばめられ、視覚的にも特別なギフト感が伝わってくるプロダクションとなっていた。
ライブでの盛り上がり必至なナンバーも感傷的なバラードも取り揃えた『Re Bon Voyage』は、これまでも多彩な音楽性にチャレンジしてきたTrySailが、そのバラエティの許容量を最大限に生かし、さながらテーマパークのように1曲1曲でまったく違う聴き応えを与える意欲作だった。昨年デビュー5周年を迎え、本来であれば安定期ともいえるタームに突入して然るべき彼女たちも、未曾有のパンデミックが世界を襲い、とりわけ音楽をはじめとするエンタメ・シーンに強烈な逆風が吹いた2020年は、活動の停滞を余儀なくされた。そんな空白の1年間を経て、今年春に久しぶりのライブ活動を再開、そしてリリースされた今作は、自分たちの可能性を一つずつ試すことが楽しくてしょうがない新人のデビュー・アルバムのような、フレッシュでアグレッシブなエネルギーに満ちた1枚だ。
そんなTrySailの最新モードがパフォーマンスにも余すことなく反映されたのが今回のツアー。巨大リボンが引き上げられ、その後ろから姿を現した3人は、アルバムの表題曲であり、コロナ禍でなければ客席から合いの手も飛び交いそうなライブ・チューン「Re Bon Voyage」でショーをスタートさせる。<0か100なら0選べる勇気持って>と歌うこの曲は、心機一転して再スタートを切ったTrySailの今をストレートに切り取ったナンバーという意味でも、今回のライブの露払いにピッタリな選曲だ。続く「バン!バン!!バンザイ!!!」ではオーディエンスのクラップが、3曲目の「adrenaline!!!」ではスカパンクの底抜けにポジティブな疾走感が、そして何より3人のつんのめり気味ともいえるパワフルな歌声が、加速度的に会場の熱量を膨らませていく。MCでは麻倉ももが「出てきた瞬間からみんなの熱気がすごくて」、雨宮天が「バンザイソウルがびしばし伝わってきた」、夏川椎菜が「この3曲で“大団円なのでは?”と思った」とそれぞれに手応えを語っていた。
「みんなでクラップをして楽しみたい」とオーディエンスを煽り、力強いバンド・サウンドを鳴らしたポップ・パンク「Favorite Days」、3人のバイタリティ漲るボーカリゼーションとシンセの音色がカラフルに交わる「sewing dream」、ピュアで端正なエレクトロ・サウンドと優し気な歌声のハーモニーが美しい「whiz」。作品のリリースを重ねるたび、特定の音楽ジャンルにとらわれない表現という、声優アーティストならではの強みをアピールするTrySailだが、そこに3人のシンガーとしての成長は不可欠だし、その成長度合いが身をもって体感できるのもライブの醍醐味だ。
軽快なステップと共に見事な歌声リレーを繋いでいく「オリジナル。」を経て、幽玄なイントロダクションに導かれて始まった「モノラル」は、ストリングスを主体としたナンバー。それぞれ上手、下手、中央に位置取り、順番にスポットライトを浴びながら歌う3人が、終盤にかけてステージ中央に横並びで集結し、最後はユニゾンでクライマックスを迎える展開もドラマティックな一幕だった。続く「うつろい」で幻想的な世界観をさらに深めると、アニメ『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝 2nd SEASON -覚醒前夜-』エンディング・テーマの最新シングル「Lapis」へ。何よりもこの曲はフルサイズで、そして編集された音源ではなく生の歌唱で聴くべき1曲で、それぞれの担当パートでは個性強めのアプローチなのに、ユニゾンのパートでは完全に調和するという、この3人の魔法のようなボーカル・ワークを堪能することができる。
クラップ&ストンプを煽るインタールードを経て、後半戦はハードなロック・ナンバー「誰が為に愛は鳴る」でスタート。勢いそのままシームレスになだれ込んだのは「Free Turn」で、ショーはさらに加速していく。<ふざけあっても ぶつけあっても/ここにしかない一秒だから>と歌う「この幸せが夢じゃないなら」が、徐々にフィナーレへ向かっていくライブの名残惜しさを漂わせつつ、ブラスとピアノが跳ね踊る「未来キュレーション」では高揚感もしっかり演出。
その後の「CODING」と「マイハートリバイバル」のメドレーのような接続は、この日のハイライトと言っても差し支えない瞬間だった。特に『Re Bon Voyage』収録曲の「マイハートリバイバル」は、TrySail屈指のお祭りソングとして、ライブでの披露を楽しみにしていたファンも多かったはず。3人のパフォーマンスもとにかく自由奔放で、本編ラストを飾った「Good Luck Darling」と共に「Baby My Step」や「adrenaline!!!」に並ぶ、ライブの鉄板キラー・チューンになりそうな予感だ。
オレンジ色の温かな光の中で届けられた「ひだまりの場所」で始まったアンコール。それでも最後は笑顔のギフトで締めくくるべく、ラフでカジュアルなメンバー同士のコミュニケーションでも楽しませた「Baby My Step」、3人がステージ端のギリギリまで乗り出し、客席に感謝を伝えた「君となら」でショーはエンディングへ。6年間の活動に裏打ちされたパフォーマンスの経験値と、まだまだ地平性の如く広がっている未来の可能性、どちらも平等に兼ね備えた今のTrySailには、まさしく「ボン・ヴォヤージュ!」という言葉を贈るのが相応しい。
Photo by 江藤 はんな ( SHERPA+ )
◎公演情報
『LAWSON presents TrySail Live Tour 2021 “Re Bon Voyage”』東京公演
2022年11月13日(土)
東京ガーデンシアター
<セットリスト>
1. Re Bon Voyage
2. バン!バン!!バンザイ!!!
3. adrenaline!!!
4. Favorite Days
5. sewing dream
6. whiz
7. オリジナル。
8. モノラル
9. うつろい
10. Lapis
11. 誰が為に愛は鳴る
12. Free Turn
13. この幸せが夢じゃないなら
14. 未来キュレーション
15. CODING
16. マイハートリバイバル
17. Good Luck Darling
<ENCORE>
1. ひだまりの場所
2. Baby My Step
3. 君となら
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