2021/12/04
毎週続々と新曲が届けられるこの時期。2021年12月1日公開のBillboard JAPAN総合ソング・チャート“JAPAN HOT 100”では、上位の入れ替わりも激しくなってきた。ここでは7位に急上昇してきたあいみょんの「ハート」に注目してみたい(【表1】)。
あいみょんのチャート・アクションは、3年前の大ヒット曲「マリーゴールド」の頃と比べると微妙に変化してきている。というのも、あの当時はストリーミングが突出していたが、その反面フィジカルの動きは鈍かったからだ。また、マスコミの反応も後追いという印象が強く、ユーザー層もかなり偏っていたのではないだろうか。
しかし、「マリーゴールド」のヒット以降、テレビアニメ『クレヨンしんちゃん』のタイアップとなった「ハレノヒ」の効果もあって、ファン層がコアからファミリー層にまで大幅に広がった。そのため、それまで反応がいまひとつだったフィジカルのCDが売れるようになったため、チャートのポイント構成も徐々に変化していき、バランス良くどのカテゴリでもコンスタントにポイントを獲得できるようになったのだ。この動きは、タイプは少し違うが、アニメのコアファンの反応から一般的なファン層へ移行していったLiSAなどにも似ている。
あいみょんの今回の新曲「ハート」は、そういった意味では、ここ最近のオーソドックスな動きを踏襲している。まず10月20日には先行でダウンロードとストリーミングで配信がスタート。その配信タイミングの前煽りで、ラジオのオンエアをしっかり稼いでいる。ただし、この配信解禁直後の10月27日公開分のJAPAN HOT 100では27位、翌週11月3日公開分でも20位と初動はゆるやかだ。その後約1か月かけて、ストリーミングがじわじわと上昇してきたタイミングでフィジカルのCDをリリース。その結果、ベスト10圏内へと送り込むことができている。このやり方は、他のアーティストでも行っているヒットの作り方であり、そのフォーマットであいみょんは結果を出せるようになってきたといえるだろう。
こういった戦略は、アーティストや楽曲によって考え方は変わるだろう。チャート上位の常連アーティストでも、敢えてフィジカルを出さないことにこだわっている場合もある。アーティスト・イメージやターゲットの囲い込みのやり方によってもリリース戦略も変わるだろう。いずれにせよ、あいみょんにとっては、全方位で底上げし、最終的にはストリーミングでロングヒットというやり方が今の彼女にとってベストなのだろう。この後のチャート・アクションでどこまで長くチャートインできるか注目したいと思う。
Text:栗本斉
◎栗本斉:旅&音楽ライター、選曲家。レコード会社勤務の傍ら、音楽ライターやDJとして活動を開始。退社後、2年間中南米を放浪し、現地の音楽を浴びる。その後フリーランスとして活動した後、2008年から2013年までビルボードライブのブッキングマネージャーに就任。フリーランスに戻り、雑誌やライナーノーツなどの執筆や音楽評論、ラジオやストリーミングサービスにおける構成選曲などを行っている。
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