柔らかくポップでチャーミングな音楽性とキャラクターで人気急上昇中、町田で生まれ育った新進気鋭のラッパー＆トラックメーカー・ぜったくん。11月3日、渋谷WWW Xにて自身初となるワンマンライブ【Good Feeling!!!】を開催した。

＜「今日は僕ん家に遊びに来たみたいな感じで」豪華ゲストも集結＞

　自宅のベッドルームをイメージしたというステージと、記念すべき1stワンマンライブに居合わせようと駆け付けた満員のオーディエンス。自身のラジオ番組『ゼタラジ』発のキャラクター・芋羊羹先輩のゆるくて笑える前説を受けて、そこへ盟友・SUKISHA（b）、久保佑太（dr）、タケウチカズタケ（key）、KO-ney（mpc）、キミカ（cho）といった豪華バンドメンバーを従えてステージに登場したぜったくんは「皆さん、調子どうですかー？ 良さそうッスねぇ。よろしくです」と鼻炎ラブソング「Man Say Bien」を最初に披露。オシャレで緩やかで愛らしい世界に会場を染め上げると、すかさず暖かいベルの音色と共に「Gaming Party Xmas」を軽快に歌い上げ、途中「今日はみんながダブダブ（渋谷WWW X）に来るらしい！」とゴキゲンな替え歌も交えながら、一足早いクリスマスパーティーを演出していく。

　「お越し下さいまして、ありがとうございます。（今日のワンマンライブに向けて）体力を作って参りまして、すごく作ったつもりなのに疲れがすごい（笑）。今日は僕ん家に遊びに来たみたいな感じで、僕がベッドの上で皆さんが床みたいな。そんな感じで楽しんで頂ければなと思います」と観客をさらにリラックスさせながら、まさしくベッドルームで仲間同士で戯れているようなフレンドリーなグルーヴを「sunday sunday」で生んでいき、その後もひたすら味噌つけてキュウリ食べたくなる「味噌つけてキュウリ食べたい」や、ステージから「ちょっと、あの子に電話をかけてもいい？」とLINE電話で「今ちょうど渋谷でワンマンやってるから歌いに来ない？」と女性シンガーソングライター・kojikojiを呼び出しての「Midnight Call（feat. kojikoji）」、各界で絶賛されている女性アーティスト・さとうもかとのドリーミーなデュエット「sleep sleep」、この日誰よりも高いテンションでお祭りムードを生み出したラッパー・kou-keiとの「温泉街」などなど多種多様すぎるユーモラスな楽曲群を堪能させてくれた。

＜盟友・SUKISHAにもらい泣き──優しすぎた音楽空間＞

　そんなどこを切り取ってもハートフルでホープフルで心地良い、文字通り【Good Feeling!!!】な初ワンマンライブ。敢えてハイライトをひとつ選ぶのであれば、ぜったくんもバンドメンバーも次々泣き出してしまったアンコールだろう。本編はハンドマイクでのラップ＆ボーカルに終始していたぜったくんだが、自身でギターを弾きながらのアコースティックライブを展開するべく、その準備の為にMCを盟友・SUKISHAにバトンタッチ。すると「私の不肖の弟子・ぜったくんのワンマンに来て頂いてありがとうございます。それこそ、あの、ちょっと、本当、あの……泣いちゃうからやめよう」と感極まってしまい、久保佑太が「さっきもソデで、喋ったら泣いちゃうかもと言ってた」とフォローを入れると「だって、デビュー曲、ウチでレコーディングしてんだもん！」と子供のように泣き出してしまう。そのぜったくんとの歴史と純粋さを感じさせる涙に心打たれたオーディエンスは拍手喝采。

　「意外と涙脆いんです」このSUKISHAの涙に心打たれたのはファンだけではなかったようで、ぜったくんも「ちょっと、S君（SUKISHAの愛称）にもらい泣きしてしまいそうです……」と声を震わせ、そんなウェットなムードの中で母親について語り始める。「母親から「とても今日は日和が良いですね。今日ライブ頑張ってね」とLINEが入りまして。そのあとに続いた文章が「11月3日は私たち夫婦の結婚記念日でもあり、結婚して3年後に上京した日でもある」と言われて。もうなんか、道すがら泣いちゃって。わたくしの両親にも温かい拍手を」もちろん客席からは優しい拍手が贈られた。そんな愛に溢れすぎたくだりからの「090（アコースティック）」が心に沁み渡らないはずがないわけで、ぜったくんの声とギターはもちろん、そこで鳴る音のすべてが優しすぎてもらい泣きしてしまうファンの姿も見受けられた。

＜演者がここまで次々と涙を溢れさせるライブは初めて観た＞

　そして【Good Feeling!!!】最後の1曲となった「NiGHT SHiFTER」では、会場中のすべての人々の愛がスパーク。メンバーの歌声と演奏からも、オーディエンスのハンドクラップからも想いが溢れかえってしまい、気付けばステージ上や客席の至るところでボロ泣きする人が続出。心を揺さぶられるライブはこれまで幾つも観てきたし、ファンが泣きじゃくってしまうようなライブも多数体験してきたが、演者がここまで次々と涙を溢れさせるライブは初めて観たかもしれない。これがぜったくんの生み出す音楽の力か。

　「夜の闇を貫く街頭になりたい」とエモーショナルに歌い上げていたぜったくんだが、この日はもう完全に「夜の闇を貫く街頭」になっていた。仰々しいトラックやリリックで圧倒するタイプのアーティストではないけれど、ぜったくんの音楽はいつでも無理なくそこにハートフルに鳴り響いており、ゆえにこれだけナチュラルに、ぜったくん自身にとっては想定外だったかもしれないが、誰もが感涙する音楽空間を創り上げることが出来たのだろう。無名だった時代から自分の音楽を諦めずに届け続け、その苦労は前述のSUKISHAとのやり取りでも物語られていたが、それがすべて報われた瞬間だったのではないだろうか。居合わせたすべての人が生涯忘れないであろう優しい夜。

　その夜を共に創り上げたメンバーたちを見ながら「すっごい涙してる！」と笑っていたぜったくんの表情もめちゃくちゃ優しかった。

取材＆テキスト：平賀哲雄
撮影：中村里緒　@orz_____rio

◎ぜったくん 初ワンマンライブ【Good Feeling!!!】
2021年11月03日（水）渋谷WWW X セットリスト：
1.Man Say Bien
2.Gaming Party Xmas
3.sunday sunday
4.Bad Feeling
5.MoShiMo
6.味噌つけてキュウリ食べたい
7.Midnight Call（feat. kojikoji）
8.爪
9.タクロク
10.なんて日だ
11.sleep sleep（feat. さとうもか）
12.Amy
13.Parallel New Days
14.温泉街（feat. kou-kei）
15.Catch me, Flag!!?
En1.090（アコースティック）
En2.NiGHT SHiFTER