2021/10/06 15:00
ロック・ポップス界を牽引するアーティストたちとオーケストラの競演による【Daiwa House presents billboard classics festival 2021】が、9月25日に西宮・兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホールで、同29日に東京・Bunkamuraオーチャードホールで開催された。
6年目を迎える今年のビルボードクラシックスフェスティバルは、稲垣潤一、大黒摩季、大原櫻子、小柳ゆき、柴田淳、鈴華ゆう子(from 和楽器バンド)、中島美嘉、新妻聖子、May J.の9人のアーティストが集結。指揮・演奏は、西宮公演を伊藤翔・大阪交響楽団、東京公演を栁澤寿男・新日本フィルハーモニー交響楽団が務めた。
柴田淳と大原櫻子は西宮公演のみに出演。2人とも本シリーズ初登場となる。2021年にデビュー20周年を迎える柴田淳は、「未成年」でライブをスタート。歌詞の心象風景とオーケストラの音色が繊細に重なり合い、胸に迫るほどの臨場感を醸す。その余韻を残しながら、「嘆きの丘」「いくじなし」へ。涼やかで透明感のあるボーカルが、秋の始まりを思わせる。
黄色のドレスに身を包んだ大原櫻子は、「STARTLINE」で瑞々しい歌声を響かせ、会場は一気に明るいムードに。自ら「オーケストラで歌いたかった曲」と紹介したミュージカル曲「Fly Fly Away」では、表現力の豊かさと眩しい煌びやかさに引き込まれる。そして最後は、「ちっぽけな愛のうた」でステージを締めくくった。
東京公演のトップバッターは、May J.。おなじみの「Let It Go」で、華やかにコンサートの幕が開ける。「今日は最後まで楽しんでいってください」という挨拶の後は、バラード曲「My Star~メッセージ~」を披露。切なくも芯のある歌声に思わず聴き入り、五感が研ぎ澄まされる。さらに、ポップオペラソング「Time To Say Goodbye」ではオペラの歌唱アプローチを駆使し、ボーカリストとしての豊潤な魅力を放っていた。
続いては和楽器バンドとして活躍する鈴華ゆう子。ロックバンドでボーカルを担当しつつ、実は音楽大学出身の鈴華は、この日の新日本フィルの演奏者に同級生がいることを明かし、「ホームに帰ってきたような気持ち」と笑顔を見せる。「Starlight」「Dark Spiral Journey」「カンパニュラ」という幅広いタイプの楽曲の中で、ポップス、詩吟といった歌唱を自在に取り入れながら、管弦楽との絶妙なコラボレーションで楽しませてくれた。
稲垣潤一は、「ドラマティック・レイン」をオープニングで披露。重厚なオーケストラのアレンジに芳醇なボーカルが映え、サビへと盛り上がっていく。その展開はまさにドラマティックで、会場中が不思議な高揚感に包まれる。一方「夏のクラクション」は、爽やかな調べの中にも哀愁をにじませ、ほろ苦い世界観へ誘う。また、ラストの「雨の朝と風の夜に」ではハートフルな雰囲気を味わい、前半が終了した。
後半の最初を飾るのは、真っ白なドレス姿が艶やかな中島美嘉。1曲目「花束」は、歌い出しのハイトーンボイスが印象的なミディアムバラードだ。切々と語りかけるようなボーカルスタイルとシンフォニックな音色が共鳴し、歌の情景を彩る。「雪の華」では、儚なげに響くメロディーと優美なオーケストラの演奏によって、壮大でしんしんとした雪のシーンが浮かんでくるようだった。
新妻聖子は、冒頭の「ラ・マンチャの男」から、その伸びやかな歌声で会場の空気をグッと引き寄せる。超高音のホイッスルボイスも、澄み渡る美しさで、圧巻。実に堂々とした佇まいだ。その後も、自身が出演するミュージカル『ボディガード』の劇中歌唱曲「I WILL ALWAYS LOVE YOU」、オペラのアリア「Nessun Dorma」と続き、振り幅のある奥深い表現で観客を魅了した。
小柳ゆきは、「be alive」の壮麗なイントロとともに登場。歌のストーリーを丁寧に紡ぐ細やかさ、そしてダイナミックさを交えながら、抑揚の効いたボーカルを聴かせる。デビュー曲「あなたのキスを数えましょう」でも、情感の込もったパワフルさで圧倒。オーケストラとセッションしているような刺激的なパフォーマンスに、客席からは大きな拍手が湧き起こった。
トリを務めたのは、大黒摩季。瞬時にして、場を明るく弾けた空気にする存在感には脱帽だ。メドレーの1曲目「DA・KA・RA」から手拍子が起こり、オーディエンスの熱気も一気に上昇!「あなただけ見つめてる」では、「手を上げていきましょう」という呼びかけとエネルギッシュな歌声に呼応するように、観客が力強く腕を振り上げる光景も。さらに「ら・ら・ら」では、サビに合わせた手の振りで、会場全体に強い一体感が生まれた。
フィナーレでは、鳴り止まぬ拍手の中、3回のカーテンコールに応えてくれた出演者の面々。この日のアーティストたちは、今の状況下でステージに立てること、生で音楽を奏でられることの喜びを口々に語っていた。そんな演者のひたむきな思いと、「苦難な時代だからこそ、音楽を生で体感し、その空間をみんなで分かち合いたい」と切望する観衆の熱量が、鮮やかに符合したコンサートだった。
Text by 水白 京
Photo:
西宮公演 山本成雄
東京公演 (株)フォトスタジオアライ 新井秀幸(JPS)
◎公演情報
【Daiwa House presents billboard classics festival 2021】
2021年9月25日(土)
兵庫・兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール
2021年9月29日(水)
東京・Bunkamuraオーチャードホール
出演:(50音順)
【西宮】稲垣潤一、大黒摩季、大原櫻子、小柳ゆき、柴田淳、中島美嘉
【東京】稲垣潤一、大黒摩季、小柳ゆき、鈴華ゆう子(from和楽器バンド)、中島美嘉 、新妻聖子、May J.
指揮・管弦楽:
【西宮】伊藤翔指揮 大阪交響楽団
【東京】栁澤寿男指揮 新日本フィルハーモニー交響楽団
主催・企画制作 ビルボードジャパン(株式会社阪神コンテンツリンク)
特別協賛 大和ハウス工業株式会社
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