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2021/09/21

<ライブレポート>早霧せいな、デビュー20周年を記念して一夜限りのスペシャルイベント開催

 元宝塚歌劇団雪組のトップスター早霧せいな。退団後も、舞台やテレビドラマの出演、そしてコンサートと、ますます活動の幅を広げつつある。2021年は早霧の舞台デビュー20周年。9月18日、早霧自身の誕生日というこの日に、東京・渋谷のBunkamura オーチャードホールで華麗に【SEINA SAGIRI 20th ANNIVERSARY CONCERT “SOMEWHERE”】が開催された。

 台風が接近しつつあったその日、東京・渋谷のオーチャードホールは熱気に包まれていた。女性ファンが圧倒的に多いこともあり、ホワイエも、ホール客席も土曜夕方にふさわしいグラマラスな華やかさに満ちていた。

 ブルーのライトに彩られたステージに全身ホワイトのパンツスーツ姿の早霧せいなが颯爽と登場。ステージがひと際、明るく輝く。冒頭から、早霧自身が名付けたという公演タイトルと同タイトルのオリジナルの新曲「SOMEWHERE」を力いっぱい熱唱する。「思いのむくままに歩んできた20年。これからもずっと変わることなく、どこにでも行ける、何にでもなれる――そんな自分でいることをずっと大切にしてきたい」と、20年を振り返っての早霧の想いや希望が込められた、この日にふさわしい楽曲だ。

 「20周年記念アニバーサリーコンサートへ、ようこそおいで下さいました。同じ空間にいるひとときを目いっぱい楽しみましょう」。一曲歌い終えると、早霧は全フロアのファンをねぎらう。続いて、早霧が好きだという懐かしの昭和のヒットソングを三曲続けて披露した。

 パナマハットを粋にかぶり、バックダンサーを従え、優雅に踊り、歌う、中森明菜の「飾りじゃないのよ涙は」。そして、工藤静香のあの伝説のヒット曲「嵐の素顔」、続いて、「勝手にしやがれ」と、スペシャルイベントの幕開けにふさわしいセレクションだ。「勝手にしやがれ」では、早霧らしいフェミニンで洗練されたキザさが、ご本家ジュリーよりもカッコいい! と感じさせるほどだった。

 「皆さん、ペンライトがキレイだ~」。その爽やかなカッコよさからは想像もつかないほどの威勢のよさと気さくさが魅力的だ。「声は出せませんが、それぞれの思いはペンライトで表現してくださいね~」と、宝塚時代から長年連れ添ってきたファンたちに優しく語りかける。「ホントは…歌いたくない、踊りたくないんです。でも、ファンの皆さんとの時間は共有したいんです…!」と、早霧。コミカルな本音トークでファンとの対話は続く。客席とステージの一体感が伝わってきて何ともイイ感じだ。

 「では、ここからは皆さんにとっても想い出の曲をお聴きください」と、宝塚時代の懐かしい作品から数曲のメドレー。一曲目は、『NEVER SAY GOODBYE―ある愛の軌跡―』から主題歌の「NEVER SAY GOODBYE」。ステージ空間も、落ち着いたピンクゴールドやシックなシルバーに染まり、早霧は愛の追憶をしっとりとした大人の情感で歌い上げた。

 続いては、『ロミオとジュリエット』より「僕は怖い」。若さゆえに、ふとよぎる茫漠とした恐怖感に苛まれながらも、その心の揺れを繊細に、ロマンティックに歌い上げたのはさすがだ。何度も何度も繰り返される「僕は怖い」という一節。感情の高まりの振れ幅が印象的だった。

 日本物を演じることの多い宝塚歌劇団雪組。早霧も凛々しい和装姿で数々の主役を演じてきた。続いては、その中の一作、『星逢一夜(ほしあいひとよ)』からのナンバーと、『るろうに剣心』より「不殺の誓い(殺さずのちかい)」。前作品では、切ない想いを美しく、繊細に歌い上げる早霧と、歌声にピタッと寄り添うバイオリンソロとの一節が印象的だった。「不殺の誓い」では、まさに「殺さずの誓いの印(しるし)」というフレーズに込められた決意が客席に力強く響き渡った。

 懐かしの宝塚メドレーも終盤に。ここで、一気に曲調が変わり、あの『ルパン三世』のテーマに突入。早霧がバックダンサーを従えて華麗に一節歌い上げたところで、スペシャルゲストの望海風斗が登場。望海は2021年4月に宝塚歌劇団を退団したばかりだ。もう一人の元トップスター登場にさらにステージの迫力も増し、客席の熱気も最高潮に。最後に二人そろって、「男の美学~」と歌われたが、まさにダンディズムの極致というにふさわしいステージングだった。

 歌い終えると、望海が「ちぎさん(早霧の愛称)、お誕生日おめでとうございま~す」と元気いっぱいにエールを贈る。ここからは、宝塚の盟友同士の微笑ましいトークが繰り広げられた。「二人で歌っていると、舞台での“だいもん(望海の愛称)”との距離感がよみがえってきて・・・、歌の力って素晴らしいですよね」と、早霧。それに応え、「チギさんの隣にいられるだけで幸せでーす」と、どこまでも明るい望海の一言がさらにステージを盛り上げる。

 ここで、もう一曲。デュエットで、早霧の退団公演『幕末太陽傳』から「朝陽の向こう』と「今、旅立とう」と、新たな門出をともに祝い合う二人の力強い歌声が心に響く。すると、早霧がふと退場。望海にステージを譲る。望海のソロで『るろうに剣心』からフィナーレナンバーの「流浪人剣心」。良く響く明るい音色の歌声が会場いっぱいに響き渡る。ダンディな二人の男役による夢のようなシーンを締めくくるにふさわしい艶やかな歌い納めだった。

 望海と入れ替わりで、再び赤いジャンパー姿の早霧が登場。ポップに決めた装いでSMAPの「SHAKE」。速いビートのダンスのキレもさすがだ。続いては、郷ひろみの名曲「2億4千万の瞳」。バックダンサー6人とともに舞台を縦横無尽に使ってのダイナミックなダンスパフォーマンスもあり、メリハリのきいたステージングに目を奪われた。

 セットリスト最後を飾る一曲は、気志團「ワンナイトカーニバル」。曲中、エキサイトした早霧は、歌いながらも客席に熱いメッセージを贈る。「アニバーサリーコンサート楽しんでるかい? なかなか会えない日々だけど、みんなの想いを受け取った!」と、早霧も20thアニバーサリー用の特製ペンライトを持って舞台を駆けめぐる。客席と完全に一体化した最後のナンバーを歌い終えると、割れんばかりの拍手を贈る客席に向かって「最高の時をありがとうございました~」と、ひと際、愛情あふれる笑顔を見せた。

 鳴り止まない拍手に応え、しばらくして早霧が再びステージに登場。自らのステージを振り返るように語りだす。「早霧せいなとして走り出してあっという間。とても濃厚なものを感じています。そんな濃厚さの中にあるジュワーっと届く想いを次の曲に込めたいと思います」と、JUJUの「やさしさで溢れるよう」に」を披露。つねに支えてくれたファンへの想いと感謝の気持ちを、早霧はこの歌に載せて客席に贈り届けた。

 「最初に聴いてもらった『SOMEWHERE』は、一回だけじゃもったいない。本当に、本当に最後の曲。ぜひ聴いて下さい」と、冒頭のオリジナルの新曲をリピート。20年の時を経て、早霧がこれからの道をどのように歩んでゆくのか――この曲をもう一度繰り返すことによって、早霧自身、大好きなファンに向かって誓いを立てるかのようだった。“SOMEWHERE オリジナルTシャツにデニム”のパンツというシンプルな姿でステージに立ち、素直な思いでこの一曲を歌いあげる早霧の姿がとても印象的だった。

 最後のナンバーが終わると、全員の出演者がステージに集い、早霧にサプライズのバースデーソングのプレゼント。客席も一体となって、早霧の“20歳”の誕生日を、そして、新たな第一歩への門出を祝った。一夜限りのスペシャルイベントにふさわしい心温まるエンディング。それは、早霧に約束された華麗なる第二幕の始まりであることを告げるかのような希望に満ちあふれたワンシーンだった。

Text by 朝岡久美子


◎公演情報
【SEINA SAGIRI 20th ANNIVERSARY CONCERT “SOMEWHERE”】
2021年9月18日(土)
東京・Bunkamuraオーチャードホール
1st Stage START 16:00 / 2nd Stage START 19:30
出演:早霧せいな 
Special GUEST:望海風斗
バンドマスター(Pf.)・アレンジ:宗本康兵
バンド:
Dr. 守真人
Ba. 真船勝博
Gt. 高木大丈夫
Key. 前田雄吾
Vn. 真部裕
Vc.Tp. 西方正輝
Sax. Fl. Cl. 竹上良成
主催・企画制作 ビルボードジャパン(株式会社阪神コンテンツリンク)
後援 米国ビルボード 
協力 イマージュエンターテインメント、TEAM SS

◎番組情報
『SEINA SAGIRI 20th ANNIVERSARY CONCERT “SOMEWHERE”』
早霧せいな20周年コンサート、WOWOWで放送決定
放送日:12月放送予定
収録日:2021年9月18日(土)
収録場所:Bunkamura オーチャードホール
出演:早霧せいな
https://www.wowow.co.jp/info/info.php?info_id=7536&which=0

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