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2021/09/19

<ライブレポート>空白ごっこ、新たな魅力を見せた初の企画ライブ【全下北沢ツアー】完走

 空白ごっこが、自身初の企画ライブ【全下北沢ツアー】のツアーファイナルを、9月12日東京・下北沢CLUB251にて開催した。

 空白ごっこは、2019年にボーカルのセツコ、コンポーザーの針原翼、koyoriの3人で結成された音楽ユニット。下北沢にスタジオを構え、これまで5曲のデジタルシングルと1枚のEPをリリースしてきた。活動の中心はインターネット上で、今までメディアでの顔出しは一切なし。そんな彼らの初ライブおよび初企画ツアーが、今回の【全下北沢ツアー】だ。

 本ツアーは、<コロナ禍の今だからこそ、下北沢から音楽が発信されていることを示したい>というメンバーの思いから企画された、下北沢の老舗ライブハウス10か所を巡る“全下北沢”なツアー。ファイナルの舞台となるCLUB251は、1993年にオープンした歴史あるライブハウスで、空白ごっこにとっても、ユニット結成前にセツコとkoyoriが共にステージに立った、思い出の地である。

 ツアーファイナルの対バンゲストには、空白ごっこと同じく男女3人組であるシナリオアートが招かれた。ミドルテンポの四つ打ちが浮遊感漂う「アダハダエイリアン」からライブはスタートし、続けて、ピアノのイントロが躍動的な「サヨナラムーンタウン」へ。ハヤシコウスケ(Vo./Gt.)とハットリクミコ(Vo./Dr.)による力強いツインボーカルや、ヤマシタタカヒサ(Ba./Cho.)のメロディアスながらもドライブ感のあるベースライン、一筋縄ではいかないトリッキーな楽曲が、初見が多そうなこの日のオーディエンス(注:ゲストが発表される前からこの日のチケットは完売していた)の視線を釘付けにする。

 後半は、ツインボーカルのかけ合いが緊張感溢れる「エバーシック」、マスロック的なアプローチの「ナナヒツジ」、ハットリがキーボードを演奏した「ホシドケイ」など、さまざまなスタイルで3ピースの可能性を見せていく。「こんな息苦しい世の中だけど、いつか何もなかったかのように笑いあえるその時まで歌い続けたいな、という曲をやります」(ハヤシ)と、ラストソングには「スターサイドシンドローム」を披露。ずしんと体に響くシンセベースが心強さを感じさせる、直球勝負な一曲でこの日のステージを締めくくった。

 セットの転換が終わり、クイーンの「ファット・ボトムド・ガールズ」をBGMに、空白ごっこのボーカル・セツコとバンドメンバーがステージに登場。セツコがマイクスタンドを握ると、ハイハットのカウントからオープニング・ナンバー「運命開花」へ突入する。原島直輝(Gt.)、國友晃司(Ba.)、komaki(Dr.)、棚橋“EDDY”テルアキ(Key.)による猛々しいサウンドと、それに負けない存在感を放つセツコのボーカルが、力強くライブの幕開けを告げる。「はじめまして、空白ごっこです」と軽く挨拶し、「ストロボ」では疾走感溢れる演奏に乗せ、鬼気迫る歌唱でオーディエンスを圧倒。サビでは拳を突き上げて、フロアのテンションをさらに焚きつけていく。

 ツアーが無事最後まで完走できたこと、そしてこの日集まってくれたオーディエンスに感謝を伝えるセツコ。続けて、1st EP『A little bit』に収録の「リルビィ」を、ハンドマイクに持ち替え、吐息交じりに歌い上げる。4曲目の「だぶんにんげん」と5曲目の「ピカロ」では、ウィスパーボイスとパワフルな歌声を使い分け、楽曲の持つ緊張感を巧みに表現。時おり無鉄砲さをも感じさせるセツコのボーカルワークは、ヒリヒリとした魅力に満ちており、見ているだけでもぞくぞくしてくる。

 MCでは、コンポーザーの針原翼との馴れ初めや、今回のツアーで初めて人前に立つことへの葛藤など、自身の思いを赤裸々に語る。「ハリーさん(針原)が『一緒に音楽やりましょう』って言ってくれた時、自分には特技もないし、居場所なんてないと思っていたけど、ここが居場所になるかもしれないと思ったんです。それから3,4年が経とうとしていて、支えてくれる方々やお客さんに出会って、ここが居場所でいいんだなって改めて感じています」と涙ながらに語ると、客席からは自然と拍手が巻き起こった。

 「手上げてくれてたり、拍手してくれたりしてくれるのが本当に嬉しいです。今やっとスタート地点に立てたと思っているので、これからも成長を見守っていただけたらいいなと思います!」と再び感謝の気持ちを伝え、ライブは後半戦に突入。ピアノの音色がエモーショナルな気持ちを掻き立てる「19」では、先ほどのMCでセツコの緊張がほどけたのか、ステージとフロアの距離がぐっと近くなった印象を受けた。ここまでのライブでも十分、空白ごっこの魅力は伝わってきていると思っていたが、この時、セツコの歌は見て聴いてくれる人がいてなお一層輝くのだと実感した。今後ライブを重ねていき、さらにオーディエンスとの信頼関係を築けていけたら、きっとすごいことになるのではないだろうか、と予感した一幕であった。

 まくし立てるようなメロディを痛切な表情で歌い切った「雨」、今年の夏を振り返りながら始まった「なつ」と、アップテンポな楽曲を立て続けに投下した後は、空白ごっこ屈指のダンスナンバー「キザな要素が足りない」へ。手拍子をしたり手を左右に振ってみたりしながら、ノリノリでフロアを煽るセツコ。そして本編ラストは、7月にリリースされたばかりの最新曲「ハウる」で、エネルギッシュにフィニッシュを飾った。

 アンコールでは、セツコとバンドメンバーがツアーTに着替えて再登場。「全10回、いろんなパフォーマンスができて、いろんな人の顔が見られて、すごく嬉しかったです」とツアーを振り返り、10月にリリースされる2nd EP『開花』より、未公開の新曲「プレイボタン」をしっとりと歌い上げた。「最後は盛り上がっていきましょう!」と、エンディングは底抜けにアッパーなパンクチューン「リスクマネジメント」で完全燃焼。頭を振り乱しながら最後の力を出し切らんと全力で絶唱するセツコ。終演後は、「【全下北沢ツアー】ありがとうございましたー! またねー!」と客席に向かって大きく手を振りながら、ステージを去っていった。

 これまでインターネットを中心に活動してきた空白ごっこが、また新たな魅力を見せてくれた【全下北沢ツアー】。2nd EP『開花』のリリースを機に、彼らの音楽がさらに多くの人に届くことを願いたくなるような一夜だった。

Photo:鈴木友莉


◎ツアー情報
【全下北沢ツアー】
2021年7月22日(木・祝)東京・下北沢ERA
2021年7月24日(土)東京・下北沢GARAGE
2021年7月31日(土)東京・下北沢DaisyBar
2021年8月7日(土)東京・下北沢SHELTER
2021年8月15日(日)東京・下北沢mona records
2021年8月21日(土)東京・下北沢CLUB Que
2021年8月24日(火)東京・下北沢BASEMENTBAR
2021年8月29日(日)東京・下北沢MOSAiC
2021年9月4日(土)東京・下北沢440(four forty)
2021年9月12日(日)東京・下北沢CLUB251

◎リリース情報
EP『開花』
2021/10/20 RELEASE
<初回限定盤>CD+DVD
PCCA-06060 2,750円(tax in.)
<通常盤>CD ONLY
PCCA-06061 2,200円(tax in.)
<PSCS限定盤>CD+DVD+Goods
SCCA-00117 3,850円(tax in.)

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