2013/02/20
“ポスト・エイミー・ワインハウス”の呼び声高い、噂の英国人女性シンガー・ソングライター、ナタリー・ダンカンが、デビュー・アルバムを引っ提げて2月18日、ビルボードライブ東京にて初来日公演を行なった。話題のアーティストの出演とあって、まだアルバム・リリースから一週間経っていないにも拘わらずほぼソールドアウトの入りで、会場は始まる前から独特の空気に包まれていた。
そんな中、バンドと共に颯爽とステージに登場した彼女は、いきなりアルバム・タイトル曲でもあり彼女の名声を一気に高めた「デヴィル・イン・ミー」で演奏をスタート。そのブルージーでエモーショナルなヴォーカリゼーションが放つヴァイヴによって、瞬時にビルボードの空気を変えてしまう確かな歌唱力は破格の才能を感じさせるに充分だった。
ステージ上にはピアノを弾きながら歌うナタリーの他、曲によってアコースティック・ギター、ウッド・ベースと持ち換えるギタリストとベーシスト、グロッケンシュピール(鉄琴)兼任の女性バッキング・ヴォーカリストにドラマーという5人編成で、ほぼアルバムのアレンジに忠実な演奏で次々とテンポ良く歌い進めていった。曲によってジャズやゴスペル、トラッド、レゲエもありと音楽性は多彩ながら、ジャズでもR&Bでもロックでも、どのジャンルでも一流のシンガーとして通用するに違いないと思わせるしなやかで力強くもある歌声が持つ、ただ器用なだけではないシンガーとしての傑出した訴求力=資質に驚かされたのは筆者だけではないだろう。
そんなステージを観ながら思ったのは、何かと比較されるエイミー・ワインハウスとの相違点で、ピアノの才能や作曲能力も含め、ナタリーはしっかりとした音楽教育を受けたミュージシャンだということと、同じソウル/R&Bをベースにしながらも、ロック色を前面に打ち出していたエイミー・ワインハウスに対し、ナタリーはジャズ、トラッド色が強いオーセンティックな女性シンガーだということだ。ただ個人的には、オリジナル曲の素晴らしさを認めつつも、YouTubeで見ることが出来るローリング・ストーンズの「ギミ・シェルター」やジミ・ヘンドリックスの「エンジェル」のような、分かり易いロックの名曲カヴァーを一曲でもいいから歌って欲しかったし、そうすればまた随分と印象も違ったのではないかと思う。次回は是非、アマチュア時代にウェスト・ロンドンのクラブで歌っていたというロック名曲のカヴァーで、ロック・オヤジ達も喜ばせて欲しい。例えばリタ・クーリッジが40年前のデビュー作でカヴァーしていたニール・ヤングのカントリー・バラード「アイ・ビリーヴ・イン・ユー」のようなナンバーも、彼女の歌で聴いてみたいとふと思った。
TEXT:保科好宏
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