2021/06/26 12:00
6月23日発表のHot 100では、相変わらず新曲とロングヒット曲が入り乱れているが、比較的安定した位置をキープしているのがback numberの「怪盗」だ(【表1】)。今週は7位だったが、チャートインはすでに4週目。6月2日発表のHot 100で3位、その後4位、5位と少しずつ順位を下げてはいるものの、大幅に下降する気配はない。むしろ、他の楽曲の動き次第によっては再浮上する可能性も秘めている。
この曲は4月からスタートした日本テレビ系のドラマ『恋はDeepに』の主題歌だ。ドラマに関しては賛否両論のようだが、今もドラマのタイアップというのはヒットのきっかけとしては申し分ない。back numberはこれまでにもドラマや映画の主題歌として数多くヒットを出しているので、この「怪盗」に関しても期待は高い。
ただ気になるのが、「怪盗」はフィジカルのCDをリリースしていないということ。その分、ダウンロードとストリーミングでポイントを稼いでいるというのが実情だ。また動画再生数やラジオのオンエア回数なども手伝い、4週連続ベスト10内という結果を生んでいるのはさすがといえる。しかし、フィジカルのCDをリリースしていれば、もっと上位を狙えたのではないかという見方もあるだろう。
2020年10月にリリースされた前作のシングル「エメラルド」もドラマのタイアップで、こちらも配信のみのリリースだった。ただし、「エメラルド」はHot 100での最高順位は7位にとどまっている。さらに1999年2月リリースの「HAPPY BIRTHDAY」もドラマの主題歌だったが、こちらCDリリースもあり、最高位は2位を記録している。こうして比較すれば、CDリリースされた「HAPPY BIRTHDAY」に軍配が上がるかもしれないが、今回の「怪盗」も配信のみで「HAPPY BIRTHDAY」と同じ2位という結果を出している。だから一概にどちらが正解ともいい難い。もちろん「怪盗」もCDがリリースされていれば瞬発力はあったかもしれないが、それがどこまでの結果になったのかはなんとも言えないところがある。
back numberがストリーミング配信に本格的に参入したのは2019年末からで、他のアーティストに比べると少し遅い。そう考えると、ようやく彼らのファン層とストリーミングの相性が合ってきたからこその、「怪盗」の結果ともいえるだろう。今後はいかにロングヒットにつなげていくのかが課題だろうが、そこはストリーミングをメインに動画再生数、カラオケなどのポイントが鍵を握る。ストリーミングを軸にどこまで展開できるかは、CDといったん決別した彼らの、大きな課題となるだろう。
Text:栗本斉
◎栗本斉:旅&音楽ライター、選曲家。レコード会社勤務の傍ら、音楽ライターやDJとして活動を開始。退社後、2年間中南米を放浪し、現地の音楽を浴びる。その後フリーランスとして活動した後、2008年から2013年までビルボードライブのブッキングマネージャーに就任。フリーランスに戻り、雑誌やライナーノーツなどの執筆や音楽評論、ラジオやストリーミングサービスにおける構成選曲などを行っている。
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