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2021/06/18 20:00

ブリット・アワード新人賞の20歳、グリフが新作ミックステープについて語る「普遍的な概念をパーソナルな物語に」

 UK出身のシンガー・ソングライター、Griff(グリフ)が6月18日、最新ミックステープ『One Foot In Front Of The Other /ワン・フット・イン・フロント・オブ・ジ・アザー』をリリース。これを受けて、日本のリスナーに向けたオフィシャル・インタビューが到着した。

 2019年7月にWarner Recordsとの契約を発表した彼女は、わずか1時間で制作したという1stシングル「ミラー・トーク」をリリースし、BBCやBillboardをはじめとするメディアで高評価を獲得。その後もロンドン、ニューヨーク、ロサンジェルスといった各地でソールドアウト公演を行い、2020年7月には英国作曲家協会が主催する『アイヴァー・ノヴェロ賞』で新人賞にノミネート、HONNEやゼッドらともコラボし、メイジ―・ピーターズとともにカバーしたテイラー・スウィフト「Exile」を自身のYouTubeで公開すると、テイラー本人も「最高のプレゼント」と太鼓判を押すなど、次々とホットな話題を提供し続けている。




 2001年1月21日生まれ、現在20歳の彼女は、中国人とジャマイカ人の両親のもとに生まれた。自身の子供時代について彼女は、「一般的にアジア人の文化って“努力して目標を達成しなさい”、“失敗は許されない”という感じで。でも、ジャマイカの文化はのんびりしていて、子供時代はその二つの文化がしょっちゅうぶつかり合っていました。どういうわけか、父と母は今でも一緒ですけど(笑)」と振り返る。また、12歳のときに始めたという曲作りについては、「兄がちょっと曲作りを始めるようになって、父にLogicっていうプログラミングのソフトウェアを買ってもらった」ことがきっかけだったという。

 「私は歌うのがすごく好きだったから、Logicで自分の歌にハーモニーを乗せて、それを重ねていって。それがとても楽しくて、ヴォーカルをアレンジしたり、曲をカバーしたり。そのうちドラムやコードもヴォーカルに重ねるようになって、独学で音楽プロデュースを学んでいった。でも、女子がやるってすごく珍しいことなんだって後から知って」

 地道に努力を続けた彼女だが、自身の音楽活動については「隠れてやっていたから学校の友達は誰も知らなかった」といい、「プロデューサーと一緒に曲作りをしていても、仕事になるかは自信がなかったんです。アジア人の親を持つ人にありがちな話で、音楽を仕事にするのはすごく難しいと思っていたんです。レコード契約を結ぶ直前まで、大学に行こうと計画していました」とデビュー以前の葛藤を振り返った。

 しかしデビュー以降、順調なキャリアを歩み、業界内からも熱視線を集める彼女は今年、イギリスの最も名誉ある音楽の祭典式『ブリット・アワード』で、これからの成功が期待されるアーティストに贈られる<Rising Star Award>を受賞する快挙を達成。「正直、ちょっと非現実的でした。ここ1年はずっとロックダウンで、あまりイベントがなかったから夢みたいで。ベッドルームから外に出たのも久しぶりだったのに、アリーナ会場のステージ上でアワードを受け取って泣きそうになりました」とそのときの感慨を語った。




 新作『One Foot In Front Of The Other』は、「人間関係や大人になることについて感じていることを表現」した作品だといい、グリフ自身が綱渡りに挑戦しているジャケットのアートワークについても、「一歩踏み出すたびに落ちちゃうかもしれないっていう緊張感を表していて、家族や恋愛といった人間関係や音楽のキャリアについて、先の見えない不安やそこで感じる弱さを表すメタファーになっている」とのことだ。自身が作詞作曲からプロデュースまでを手掛けたというタイトル曲「One Foot In Front Of The Other」にしても、「大人になるにつれて、肉体的にも精神的にも傷を癒すことがずっと難しくなると思っていて。失恋したり挫折したりすると、自分が子供に戻ったような気分になるんです。また一から歩き方を覚えなきゃいけないみたいな」とコメントしている。




 若者ならではの繊細な感情の揺らぎ、友情や恋愛、家族の大切さなどにまつわる様々なテーマと向き合い、それらを「Black Hole」や「Earl Grey」といったユニークなモチーフで表現している点も特徴的だ。<心を失くして、真っ黒な穴が開いた/要らないもので埋めようと必死だったけど/そんなの上手くいかない、簡単じゃない(And I tried my best to fill it up with things I don't need/There's a big black hole where my heart used to be/It don't work like that, no, it's not easy)>と歌う「Black Hole」については、「失恋にスポットを当てた曲だけど、そこにユーモアも入っていて。実際にはハートがあったところにブラックホールなんてないですから。その状態を抱きしめてあげながら、ポジティブに乗り切るっていう曲です」、そして「人生のプライオリティについての曲」だという「Earl Grey」については、「仕事を優先しすぎる人もいれば、健康を優先しすぎる人もいて、誰にでもそういう面があると思う。私の父はガンになることをすごく怖がっていて、色々試してるんです。それで『アールグレイ・ティーがいいって聞いた』と言っていて。人は誰もが間違ったことを優先してしまうことがあって、それが自分の親しい人だったりするという話にしました」と語っている。

 「(作詞をするときには)これまで耳にしたことのないような曲になるよう意識しています。ラブソングを書くときも、“愛してる”って感情を何度も書き換えて、新鮮な言い方にするのがソングライターの仕事だと思っていて。失恋の感情を『ブラックホールがある』と言った人を聞いたことがなかったから、そうやって普遍的な概念をパーソナルな物語に感じられるように変えて、オリジナルの曲を書こうとしています」

 日本について「一番行ってみたい場所なんです、都市も地方も景色が綺麗ですよね。それに日本のファッション・スタイルは素晴らしいから大好きです。食べ物もきっと最高だろうなって思ってます」と印象を語る彼女。今後の目標について尋ねられると、「大勢の人たちに影響を与えるような、タイムレスな曲を作っていきたい。私がこの世にいなくなった後も残り続けて、人々が一緒に歌ったり踊ったり、泣いたりしてくれる曲を書きたいです」と意気込みを語った。


◎リリース情報
ミックステープ『One Foot In Front Of The Other』
2021/6/18 RELEASE
<収録曲>
1. Black Hole
2. One Night
3. Shade Of Yellow
4. One Foot In Front Of The Other
5. Dreams
6. Earl Grey
7. Walk