2021/06/14 18:00
今年、イベント初となる「無観客ライブ配信」という形態で6月5日に開催された【MEET THE WORLD BEAT 2021】のライブレポートが到着した。
大阪の万博記念公園にて開催を予定していたが、政府による緊急事態宣言延長、緊急事態措置に基づく大阪府の要請を受け無観客でのライブ配信となったこのイベント。豪華ライブ音源は、6月25日21時から「FM802 MEET THE WORLD BEAT 2021 SPECIAL」と題した特番でオンエアされる。
また、残念ながら当日出演キャンセルとなった瑛人のスタジオ収録音源もオンエアされるとのこと。
◎オフィシャルライブレポート
レポート:黒田奈保子
6月5日、FM802が主催するフリーコンサート「MEET THE WORLD BEAT 2021(以下、MTWB)」が開催された。本イベントは大阪のラジオ局FM802が毎年夏に万博記念公園自然文化園で開催していた野外音楽フリーコンサートで、各番組を通じて応募された1万人を超えるリスナーを無料招待するなど、同局の一大イベントとして人気を集めていた。
今年の出演はSaucy Dog、ビッケブランカ、マカロニえんぴつ、秦基博、緑黄色社会、flumpool。そして、この日限りのスペシャルステージ『EXPO DREAM STAGE』にナオト・インティライミ、吉井和哉、スガシカオ、KANが登場。いずれも同局でのイベント出演やレギュラー番組を担当するなど、縁のあるアーティストばかりだ。なお、今年は万博記念公園に会場を移してから30年目となる節目の年だったが、緊急事態宣言の延長、緊急事態措置に基づく大阪府の要請をうけ、「無観客ライブ」という形態、さらに会場も大阪城ホールへと変更する形で開催することに。観覧当選者には限定でストリーミング配信を案内。SPACE SHOWER TVでは生中継を実施するなど、この状況下でも少しでも前向きな形でエンタテインメントを届けたいという思いがいたるところに配されていた。
イベントの幕開けを飾るオープニングアクトはSaucy Dog! 1曲目「結」から石原慎也(Vo&Gt)が柔らかな歌声で丁寧に言葉を紡いでいく。秋澤和貴(Ba)の軽快なグルーヴが体を揺らす「シーグラス」では、透明感のある石原の歌声が甘酸っぱい少年性をはらみ、胸をぎゅっと締め付けてくる。せとゆいか(Dr&Cho)の軽快なリズムも楽曲の爽やかさをより助長させていく。「お昼間だけど、テンション上げて観てもらえたら」と、この日がライブ初披露となる「週末グルーミー」では儚さや心に寄り添う歌声に心がぐっと引きこまれる。最後に「とっておきの愛の歌。恋愛でも家族でもなく、どれでもある。大切な人を思い浮かべて」と「sugar」を丁寧に歌い上げ、バンドの存在感をしかと打ち出していった。
サウンドチェックから異彩な音を鳴らし、期待値を高めていたのがビッケブランカだ。「Shekebon!」から早々に濃厚な世界観をぶつけていく彼。これぞライブ!という感情を大いに揺さぶるステージングに、画面越しにライブを観ている観客はきっとかぶりつくように画面に見入っていたはず。そんな画面越しの最前列でライブを観ているリスナーに思いをぶつけるように、続く「Slave of Love」ではハイトーンでエネルギッシュな歌声を届け、バンドサウンドはそれを追うようにより屈強な音を奏でていく。この日が久しぶりの生ライブとなった彼、「(リスナーと)同じように楽しめたら。良い日になれば」と、「Ca Va?」でフルスイングのパフォーマンスで魅せる。ステージ終盤、「心はもう晴れて、キラめき始めている。近いうちに直接音をぶつけられる日を楽しみにして」と、最新曲「ポニーテイル」へ。野外の広い会場を思わせるように、ステージに座り込み、遠くを見つめ優しく歌いあげる彼の姿が印象的だった。
続いてはマカロニえんぴつ。ライブ直前には無観客&フロアライブという異例のステージに、同局でレギュラー番組を担当するはっとり(Vo&Gt)が「何ですか!? この異様な感じは!」と嘆きの言葉を漏らし、FM802のDJ陣から励ましの声がかけられるシーンも。それでも「はしりがき」でバンドがドカンと音を鳴らし、田辺由明(Gt&Cho)がギターを力強くかき鳴らせば、いつものハイなテンションに♪ 実はライブ前日、高野賢也(Ba&Cho)が体調不良で緊急入院し、イベントを欠席することに。それでも、無事に快方に向かっていることからメンバーは笑いにかえて場を和ませ、新曲「八月の陽炎」「恋人ごっこ」と、心のど真ん中を突くロックサウンドを届けていく。長谷川大喜(Key&Cho)のロマンティックなメロにも胸キュンが止まらない♪ はっとりは「(配信でも)繋がれている事実が愛おしい。でも、この伝え方に慣れるなよ。会いたいよ、直接」と、音楽に懸けるまっすぐな思いを語る。そして「悲観的にならず、真っ当に音楽を届けます。当たり前に信じたことをやっていきます。そんな音楽を続けていきたい」と、この日のために歌いたかったと、ラスト「ミスター・ブルースカイ」へ。次こそは彼らのライブを生で観たい、感じたいとそう思わずにはいられないエモーショナルなステージ、画面越しでもきっと彼らの思いは届いたに違いない。
「ひまわりの約束」、珠玉の名曲の弾き語りから始まった秦 基博のステージ。弾き語りツアーの真っ最中ということもあり、この日はアコギ1本でのライブに。優しく心に触れるギターの旋律、漏れる吐息すら感情に訴えかける唯一無二の歌声に心震わされる。MTWBにはこれまでに5度、福耳での出演も併せると7度も出演している彼は「(FM802に)すごく可愛がってもらってる、秦を。その思いをステージに込めたい」と、「Tell me,Tell me」「恋の奴隷」へと繋ぐ。淡い恋心を歌った世界から、「僕を恋の奴隷にしてください」と衝撃的な言葉を歌うディープな色香漂う世界まで、形の異なる恋や愛の歌を届けていく。ステージはその後、ループマシンで音を重ねてぐっと深みを増した世界観を描く「Raspberry Lover」、MTWBではお馴染みの楽曲となっている「鱗(うろこ)」まで。多彩なラブソングに思いを重ね、独自の世界観を披露してくれた。
1曲目「sabotage」のドラムカウントから一気に壮大なロックサウンドを打ち鳴らしたのが緑黄色社会だ。長屋晴子(Gt&Vo)の凛とした歌声が響くなか、「たとえたとえ」「Shout Baby」とライブ感満載な楽曲陣が続いていく。晴天の野外ならどれだけ気持ち良かったんだろうと想像せずにはいられないし、長屋の歌声は楽曲が進むごとに強靭さを増していて、その迫力に映像カメラマンもついつい前のめりにカメラを寄せていくのもいい。無観客でのライブに心配はあったものの、「(リスナーの存在を)すごく身近に感じられるのはMTWBの力、良い一日にしましょう」と笑顔を見せる4人。新曲「ずっとずっとずっと」では穴見真吾(Ba&Cho)のグルーヴがバンドの骨太さを伝え、ステージの加速度がさらに上昇。メンバー間でももっと盛り上がれ!と鼓舞しあった「Mela!」では、ダイナミックなロックサウンドにpeppe(Key&Cho)の華やかなメロが際立つ。ラスト「夏を生きる」まで、一瞬の隙もなく掛け進んだステージはあっという間に終わりを迎えてしまった。最後に言葉をかけた「楽しい夏を諦めないで絶対にまた会いましょう」、その言葉を信じたい。
地元大阪出身のflumpoolは1曲目「ちいさな日々」から開放感高まるロックチューンで盛り上げていく。次曲「夏よ止めないで」でも、阪井一生(Gt)が紡ぐグッドメロディは聴けば聴くほどに気持ちが高ぶっていく。MCでは山村がFM802でレギュラー番組を持っていたこともあり、ラジオさながらのトークを展開。しかもそこにメンバーのボケツッコミも炸裂! あまりのアットホームさにSNSでも"さすが!!"の声が飛び出すほどだ。ライブ後半には、バンドの新たな一面を感じる新曲「ディスタンス」を披露。コロナ禍をきっかけに大切な人との心の距離が縮まったと語る、そのポジティブな詞世界に心温まる。続く「two of us」、尼川元気(Ba)、小倉誠司(Dr)の鼓動にも似たリズムがじわじわと心に染みていく。彼らの音はいつだって浸透圧高く、聴くほどに耳から離れなくなる。ラストは「画面越しでも伝わると信じて」と、名曲「君に届け」を披露。山村の優しく包容力豊かな歌声が気持ちを和らげてくれる。上昇感高まるロックチューン、きっと全国にいるリスナーの思いもしっかりと昇華してくれたに違いない。
イベントはいよいよ大トリ、そしてMTWBの節目の年を飾る『EXPO DREAM STAGE』へ。この日のために結成されたスペシャルバンド、シンガーにはKAN、スガシカオ、ナオト・インティライミ、秦 基博、吉井和哉が。バンドメンバーにトオミヨウ(Key)、浜口高知(Gt)、安達貴史(Ba)、比田井修(Dr)が出演。ラジオで何度と聴いてきた至極の名曲陣をこの日だけの特別編成で披露されるとあって大きな注目を集めてきたステージだ。まずはナオト・インティライミが「タカラモノ」で、エネルギッシュな歌声を会場いっぱいに届ける。「1曲目から感極まって、鳥肌が…」と、歌える喜び、聴いてくれる人の存在に改めて感謝の気持ちを伝える彼。伝える言葉ひとつひとつに熱い思いを乗せ、最後はお祭り男の名にふさわしい「カーニバる?」へ。まるで太陽を呼び込むような、ご機嫌なステージで楽しませてくれた。
続いて登場したのはソロではMTWB初出演となる吉井和哉。心の底から沸々と燃え上がる感情に音を繋いでいく「CALL ME」。バンド編成ながら、ステージ中央で刻々と歌い上げる姿に心震わされる。続いて披露したのは「Don't Look Back In Anger」。OASISの楽曲に自身の解釈で訳詞をつけたものだが、名曲のメロディーはそのままに、日本語詞で綴られた世界観は今の時代に驚くほどびしりとハマっている。たった2曲とはいえ、彼の独自の世界観に惹き込まれた人は多いだろう。
MTWB最多出演のスガシカオのステージ、まずは至極のファンクナンバー「午後のパレード」から。オリジナルとは違う、この日だけのスペシャルなアレンジも最高にご機嫌だ♪ 「コロナ禍で音楽が止まることが怖い。音楽はパワーや勇気がもらえるもの。生活のなかから音楽を消さず、愛してほしい」と、この日のイベントへの思い、音楽への思いを語り「Progress」へ繋いでいく。この曲も何度となく聴いてきた名曲。「あと一歩だけ 前に進もう」、この言葉が時代や環境の変化でまた大きく心に刺さっていく。音楽が身近にあることの幸せ、いつだって音楽に支えられてきたことを改めて思い知らされる瞬間だった。
再びの登場となった秦基博はトオミヨウとアレンジしたという「泣き笑いのエピソード」を披露。バンドセットでの歌唱では歌声はもちろん、ポップセンスやソングライティングなど、また違った彼の魅力に気づかされ、たった1曲でも大きな印象を残していく。
イベントを締めくくるのは23年ぶり、3度目のMTWB出演となるKANだ。サンバのカーニバルや宝塚歌劇団もびっくりな巨大な羽を背負っての登場は会場はもちろん、画面の向こう側のSNSも大いに沸きあがっていたようだ。1989年7月にFM802でヘビーローテーションとなった「REGRETS」で、今も変わらぬ卓越したポップセンスで魅了すると、最後は「愛は勝つ」! これまでの彼のアーティスト活動を体現する名曲だが、これもまた1990年8月のヘビーローテーションに選ばれた楽曲だ。今も色褪せない名曲、あまりの多幸感ぷりに思わず涙がこぼれてしまう。最後には会場に集まっていたDJ陣もみな総立ちに。最後に愛は勝つ。この言葉通り、音楽への愛にあふれた1日がこれにて終幕。来年こそは万博記念公園のあの大きな会場で、MTWBのステージを生で体感できることを祈りたい。
なお、この日のイベントの模様は後日、FM802の特別番組「FM802 MEET THE WORLD BEAT 2021 SPECIAL」にて放送が予定されている。ライブ音源はもちろん、イベント当日に収録されたインタビューなども放送されるとのことなので、ぜひともチェックを!
◎イベント情報
【FM802 MEET THE WORLD BEAT 2021】
日時:2021年6月5日(土)
会場:大阪城ホール(無観客配信ライブとして開催)
出演:Saucy Dog / 秦 基博 / ビッケブランカ / flumpool / マカロニえんぴつ / 緑黄色社会 / EXPO DREAM STAGE(<シンガー> 瑛人 / KAN / スガ シカオ / ナオト・インティライミ / 秦 基博 / 吉井和哉 / <バンドメンバー>Key:トオミヨウ/ Guitar:浜口高知/ Guitar:設楽博臣/Bass:安達貴史/ Drums:比田井修/Manipulator:高木久)
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