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<インタビュー>LEEVELLES “本音と建前”で書いた新曲「幸福のすゝめ」に隠された“自分にかける言葉”

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Text & Interview: 森朋之
Photos: 筒浦奨太

 4人組ロックバンド、LEEVELLES(リーベルス)が新曲「幸福のすゝめ」をリリースした。2023年8月にデジタルシングル「ヨルヲカケル」でメジャーデビュー。その後も「地獄の沙汰も愛次第」(ドラマ『トクメイ!警視庁特別会計係』オープニング・テーマ)、「明日は明日の風が吹く」(TVアニメ『姫様“拷問”の時間です』エンディング・テーマ)などの話題曲を次々とリリースしてきた彼ら。TVアニメ『カミエラビ GOD.app』シーズン2完結編のエンディング・テーマに起用された「幸福のすゝめ」はダークなバンドサウンドと“本音と建前”をテーマにした歌詞が一つになったアグレッシブな楽曲に仕上がっている。

 10月から11月にかけて初の全国ツアー【LEEVELLES Tour 2024 “音楽のすゝめ” 人の上で音を鳴らさず、人の下で音を鳴らさず】を開催する4人に、メジャーデビュー以降の変化、新曲の制作などについて聞いた。

左から:宮地正明(Ba.)、髙木皓平(Dr.)、小川紘輔(Vo.)、川﨑純(Gt.)

──メジャーデビューから1年以上が経過しました。この間のバンドの変化について、どう捉えていますか?

小川紘輔:環境が変わって、いろんな方と関わる機会も増えて、すごく刺激を受けながら制作できているし、音楽に対する向き合い方も変わってきたと思います。もちろん芯はあるんですけど、よりよい方向にメンバー全員で進めているのかなと。楽曲制作のことでいうと、アレンジャーの方と関わることがメジャーデビュー前はほとんどなかったんですよ。

川﨑純:そうだね。

小川:アレンジャーさんとやり取りさせてもらうこともそうだし、ステムデータ(ボーカルや楽器などの音源をきれいに整理、まとめたデータ)を送ってもらって、それぞれのパートがどう構成されているかも見させてもらって、すごく勉強になってます。

川﨑:ステムデータは宝物ですね。自主制作のときは自分たちで全部やっていたんですけど、知ってることしかできないじゃないですか。メジャーデビューしてからレコーディングの環境も変わったし、エンジニアさんと作業することで、自分たちが目指しているものに近づけている実感があって。耳もよくなったと思うし、音楽の聴き方も変わったんですよ。今後はそれをどう自分たちの音楽に取り入れていくか考えていきたいです。

宮地正明:ミュージック・ビデオにも関わってくださる方が増えて、どんどん理想に近づいてきて、やりたいことを実現できる環境にいるのはすごくありがたいですね。

髙木皓平:楽曲制作やMV、ライブの演出もそうだし、たくさんの方が力を貸してくれて、自分たちの解像度が上がったと思います。外部の方々とのコミュニケーションをしっかり取って、さらに高みに上がるためにはどうしたらいいかを考える時間が増えました。

──プレイヤーとして求められることも増えたのでは?

川﨑:増えまくりました(笑)。楽器隊もそれぞれチャレンジが続いていたし、紘輔の歌い方もすごく変わったと思います。

小川:“どう歌えば、どう聴こえるか”の道筋を立ててもらった感覚があって。リズムの取り方もそうだし、日本語を大事にして歌うこともそう。“こう届いてほしいから、こう歌う”ということを意識することで、説得力が生まれるんじゃないかなと。

──なるほど。LEEVELLESの楽曲はバラエティに富んでいて、音楽性も広いですが、みなさんの音楽的ルーツを教えてくれますか?

小川:近いところもあるけど、バラバラのところもあるというか(笑)。ここ3人(川﨑、宮地、髙木)はけっこう近いんじゃない?

川﨑:僕の場合は音楽のルーツとバンド、ギタリストとしてのルーツが違っていて。音楽の入りは父親が聴いていたザ・ビートルズなんですけど、自分がバンドをやりたいと思ったときに聴き始めたのは、ちょっと世代が違うんですけど、X JAPANとかELLEGARDENで。マニアックに掘り下げるより、王道のバンドを一通り聴いてきたのかなと。

宮地:僕もELLEGARDENを知って、「バンドやりてえ!」って思いました。その世代のバンドが好きなんですよ。ASIAN KUNG-FU GENERATION、ストレイテナー、BUMP OF CHICKENとか。海外のパワーポップやグランジも好きですね。

髙木:僕はドラム教室に通っていたので、課題曲がルーツですね(笑)。aikoさんとか、ユーミンさんとか。バンドではHi-STANDARD。メロコアにどっぷりハマった時期もありました。

──やはりバンドが中心なんですね。小川さんは?

小川:僕は小さい頃からクラシックピアノをずっとやっていて、女子十二楽坊のコンサートに連れていってもらってから、インストやサウンドトラックに興味を持つようになりました。親の影響でTOTOやコールドプレイを聴いていたのですが、あまり日本のバンドシーンの音楽は聴いてこなかったんです。今はメンバーの影響で聴くようになりました。

──では、新曲「幸福のすゝめ」について。ダークで激しい曲ですが、制作はどんなふうに行ったのですか?

小川:(『カミエラビ GOD.app』)シーズン1を全部観て、シーズン2の資料や台本を拝見しながら「どういう曲が似合うだろう?」というところから始まりました。LEEVELLESは“バンド内コンペ”をやるんですよ。一つの枠に対して全員が曲を書いて、そのなかから選ぶコンペをメジャーデビュー当時から続けていて。

宮地:みんなライバルです(笑)。

小川:基本的に“ゼロイチ”を作ったメンバーがその曲の責任者になり、ある程度、指揮をとりながら、全員で選んだ曲をブラッシュアップしていくのが僕らのスタイルです。

──「幸福のすゝめ」の場合は?

小川:僕のものが選ばれました。『カミエラビ』は過激めなアニメだと思っていて、ダークな感じにしたいと思っていたんですよ。ミステリアスな怖さ、メランコリックな感じではなく、カッコいいダークさを表現したくて。冒頭のギターリフが最初にできて、そこから組み上げていきました。いろんな要素を盛り込みたいという気持ちもありました。ここまで何度も転調する曲は今までなかったし、Aメロ、Bメロ、サビによって主人公のキャラクターや感情を変化させていて。

──確かに展開が激しい曲ですよね。

宮地:楽曲を作るたびに新しいチャレンジがあるんですけど、「幸福のすゝめ」では「スラップベースでいく」という比較的わかりやすいオーダーがあったんです。ただ、これまでスラップをあまりやったことがなかったんですよ。嫌いとかではなくて、チャレンジする機会がなくて。なので「幸福のすゝめ」のレコーディングの前に、フリー(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)やマーカス・ミラー、ルイス・ジョンソン、ラリー・グラハムなど聴いて。

──スラップベースが上手いベーシストを聴きまくって(笑)。

宮地:そうです(笑)。スタジオミュージシャンの友達にも「どんなふうにやってる?」って聞いて、とにかく一から全部やってレコーディングに臨みました。


──小川さんは「スラップをやってないのは知ってるけど、この曲には必要だからやってください」と?

小川:はい(笑)。

川﨑:メンバーができるかどうかは関係なくて、曲をよくするためにやるっていう。

小川:そうしないと(新しい表現を)開拓できないので。

川﨑:プレイヤーが足を引っ張ってはいけないので、ギターもめちゃくちゃ練習しました。さっき紘輔が言ったようにギターのリフが印象的なので、安定感というか、しっかりリフレインしている感じを出しつつ、そのなかに雑味というか、人間らしさを出せたらなと。デモの段階ではあまり転調してなかったんですけど、アレンジが進むにつれて転調の回数が増えて、それに対応するのは大変でしたけど(笑)、弾いていて楽しい曲ですね。

小川:イントロの時点で3回転調してるからね。

髙木:それも音楽の面白みですね(笑)。ドラムに関しては“キメ”も多いし、アグレッシブでありつつも繊細なプレーを求められる曲なんですよ。【イナズマロック フェス 2024】で初めて披露したんですけど、野外ロックフェス自体が初めてだったので、とても緊張しました。

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後から「本当はこう思ってたんだけど……」って言うのはナシで!

──ラップを交えた攻撃的なボーカルも印象的ですね。

小川:ラップもこれまではあまり取り入れてなかったんですよね。あとはパートごとのテンション感。さきほど言ったように主人公のキャラが変わるので、Aメロはちょっと気だるい感じで、Bメロはメンバーのコーラスに任せて、サビでは力強い意志を表現しました。これだけ情緒不安定な曲は初めてかも。

川﨑:間違いないね(笑)。

小川:演じるように歌うのも楽しいです。歌詞に関しても、メンバーそれぞれがワンコーラス書いていて、そのなかから一つを選んで、全員で話し合いながら組み上げていったんです。4人いれば脳も4つあるわけで(笑)、言葉選びやモノの捉え方も違うので、いろんな表現が出てきました。そのなかから一番伝わる言葉、いい雰囲気になる言葉を選べるのはすごくいいと思ってます。

──〈ぶっちゃけ嘘をつく方が楽だって/誰も彼もが本音塗りかえて〉もそうですが、歌詞にはかなりシニカルな表現もありますね。

宮地:テーマは“本音と建前”です。主人公にも本音があって、周りの意見に対して思うことがある様子、悩んでいる感じをしっかり表現できたと思っています。

小川:僕自身、建前をかなり使っちゃうところがあるんですけど、それはよくないなって思っていて。

川﨑:現代社会を生き抜く術だけどね(笑)。

小川:あまり自信を持てない人生だったというか、自分の意見をはっきり言えないことが多かったんです。ある意味、世渡り上手と言えるかもしれないけど(笑)、それだけだと有象無象の一つにしかならない。特にメジャーデビューしてからは、“自分がどうしたいか”がすごく大事になってくると気づき始めて、変わらなくちゃダメだなとも思いました。「幸福のすゝめ」の歌詞は自分に向けて言っているところもあるというか、フィクションとノンフィクションが上手く組み合わさってできたかな、と。

──メンバーのなかでも、しっかり本音を言い合えてる?

川﨑:もともと意見を言い合うバンドではあったんですけど、確かに紘輔は、最初の頃はそんなに言ってなかった気がしますね。

小川:「俺はこう思ってるけど、みんなに合わせるよ」みたいな感じだったかも。

川﨑:今はしっかり話をしているし、紘輔が一番変わったかもしれないですね。作品作りもそうですけど、「後から『本当はこう思ってたんだけど……』って言うのはナシで!」って言ってるので(笑)。

小川:マスタリングのときも細かいところで意見が分かれたりするんだけど、そうやって突き詰めることが大事なのかなと。お互いにリスペクトがあるからできることでもありますね。

──今後の進化にも期待してます! 最後に、この後の活動のビジョンを教えてもらえますか?

小川:まずはツアーですね。LEEVELLESとして初めてのツアーだし、自分たちらしいエンタメを作っていけたらな、と。個人的には、もっといろんなジャンルの音楽を作りたいと思ってます。季節にまつわる曲もあまり作ってないし、ジャンルの掛け合わせ方もいろいろあるので、そうやっていろんなLEEVELLESを世に見せていけたらいいなと思っています。

川﨑:LEEVELLESの音楽を聴いてくれる皆さんと共有して、ライブで一緒に楽しみたいという気持ちも強くて。その輪を広げていきたいですね。

小川:どっちが上とか下ではなくて、(ファンや観客と)イーブンな関係でいたいんですよね。音楽というツールを使ってみんなでコミュニケーションを取って、それをエンタメに繋げていきたいです。

髙木:自主企画ライブ【CROWN Fes.】もそうですけど、音楽があるから繋がれた人たち、わかり合える感情もあって。その輪を広げるのはもちろん、音楽を通して、それぞれの世界が広がってくれたらいいなと思ってるんですよね。それがツアータイトルに込めた思いです。もっと先のことで言えば、「テーマパークみたいなライブをやりたい」とずっと話していて。規模の大きさもそうだし、その場所に行くだけで没入感を味わえるような空間を作りたいんです。

宮地:楽曲もライブもそうですけど、いろんなものを掛け算することでリスナーを驚かせたいし、僕たち自身も驚いて、楽しみたくて。それをやり続けるのが、LEEVELLESのエンタメなんだと思います。

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