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【FUJI ROCK FESTIVAL '14】総力レポート
7月25~27日から新潟県・苗場スキー場で行われた日本最大級の野外音楽フェスティバル【FUJI ROCK FESTIVAL '14】。ヘッドライナーにフランツ・フェルディナンド、アーケイド・ファイア、ジャック・ジョンソンを迎え、200組以上の海外・日本人出演アーティストによる白熱のパフォーマンスに約10万人のフジロッカー達が熱狂した。3日目のにわか雨以外は晴天に恵まれた18目の開催となった今年のフジロック。既に来年7月24日~26日にかけて開催されることが発表済みとなっている【FUJI ROCK FESTIVAL '15】へ想いを馳せながら、苗場の大自然の中で行われた音楽の祭典をBillboard JAPAN編集部が総括レポート!
11:00~

文句なしの快晴。3日にわたる夢の扉をこじ開けるのは、毎年恒例ROUTE 17 Rock’n’Roll ORCHESTRAだ。強力なバンド陣と日本のロック・シーンを代表するフロントマンによる、とびきり豪華なロックンロール・ショー・タイム。今年はなんとTOSHI-LOWがスライ&ザ・ファミリー・ストーン「アイ・ウォント・トゥ・テイク・ユー・ハイヤー」で口火を切るという、なんとも意表を突いた幕開けとなった。非常に彼らしい、気合の入ったMCでオーディエンスを煽ると、自身の思い入れの深い一曲だという、THE ROOSTERSの「レザー・ブーツ」で畳み掛ける。いきなりエモーション全開、灼熱の太陽に負けないホットないステージを引き継いだ2番手は、ド派手なスーツをバシッと決めたトータス松本。「オー・プリティ・ウーマン」「シェイク・ユア・マネーメイカー」とスタンダード2曲をしっかりと聴かせ、最高のエンターテイナーぶりを発揮、観客をおおいに沸かせる。そして、こちらも恒例のMIKUNI?DOLLSによるキュートな「VACATION」のパフォーマンスから一転、甲本ヒロトがステージへと飛び出て来る。「アナーキー・イン・ザ・UK」の日本語バージョンに続いて、「みんなの大好きな忌野清志郎が歌った曲。」「もしここに、CHABOみたいにギターのうまいやつがいてくれたらなぁ!」という、若干白々しい(笑)煽りとともに仲井戸“CHABO”麗市を呼び込むと、RCバージョンの「上を向いて歩こう」に突入!もちろんステージとオーディエンス全員が一体となり、最高の盛り上がりを見せる。その後、バトンを渡されたCHABOがブルース・スプリングスティーンの「ハングリー・バード」をしっとりと日本語で聴かせた後に弾き出したイントロは、「雨上がりの夜空に」。もちろんオーディエンスは大合唱で答え、ショーはクライマックスへと。全出演者が再びステージに戻り、ザ・ポーグスの「フィエスタ」をひたすら“アイルランド”という言葉のみで歌いまくる、最高に陽気なお祭り騒ぎで夢のようなロックン・ロール・ショーは締めくくられた。
13:20~

一日で最も暑い時間帯に差し掛かったオレンジ・コート。堀江博久含むサポートメンバー2人とともにステージに姿を現し、「メイク・ビリーブ」が奏でられ始めると、灼熱のオレンジ・コートにひとときの清涼がもたらされる。この日は、スマパン時代のナンバーから「ブルー・アウェイ」、そして名曲「マヨネーズ」、さらに自身の1stアルバムから「カントリー・ガール」「ビー・ストロング・ナウ」と、ファンにとって非常に嬉しいナンバーが並んだセットリスト。これらの曲のイントロが爪弾かれる度に、オーディエンスからはため息にも似た歓声があがっていた。優しく繊細なメロディーと暖かみのあるサウンドが、刺すような日差しに身構える体をリラックスさせてくれる。最後に披露された“お楽しみ”のカヴァー・ナンバーは、ローリング・ストーンズの「地の塩」。ドラマティックなバラードを歌い終えると、イハは自然な笑顔を浮かべながら、静かにステージを去っていった。
14:50~

ちょうどスロウダイヴと被っていたこともあり、観客はやや少なめだが、軒並み高評価な最新作『Present Tense』収録の「Mecca」からライブがスタート。ハイセンスか否か、ダブルデニムな装いで登場したヘイデン・ソープの甘美なファルセット・ヴォイスと緻密なシンセサイザーの音色がホワイト・ステージをゆっくりと包み込む。思わず聴き惚れてしまう優艶なサウンドスケープに加え、やはりWBの醍醐味は、ストイックで洗練されたヘイデンとまさに“獣”のように粗々しいバリトン・ヴォイスで攻めるトム・フレミングによる対照的なツイン・ヴォーカルだろう。2009年の名盤『Two Dancers』からUK本国でのブレイクのきっかけとなった「Hooting & Howling」のイントロが奏でられた瞬間に大きな歓声が沸き上がったのには、彼らの来日を心待ちにしていた日本のファン達の心情が伺える。1時間弱のセットタイムということもあり、新曲中心だったのが唯一残念だったが、「これぞUKアート・ロックを担う中堅の実力!」を見せつけてくれた初来日ステージとなった。
16:30~

おじさん受けするバンドやアーティストが続々と登場しているUK勢。そんな中でも飛びぬけて古臭い(褒め言葉)のがテンプルズだ。昨年11月の【Hostess Club Weekender】ではアルバムデビュー前に日本でも多くのファンを獲得し、リリース後の単独公演は大盛況。そして早くもフジロックで再来日を果たした。本人たちがサウンドチェックしたこともあり、RED MARQUEEは開演前から多くのファンで賑わっている。改めてメンバーがステージに現れ、「サン・ストラクチャーズ」からスタート。リリースからライブを繰り返してきたであろうデビュー作の楽曲たちは脂がのって聴きごたえ抜群だ。元々鳴らす音がはっきりしていた彼らだが、ヴィンテージなサイケサウンドは変わらず、深みを増しており明確に聴くものを突き刺す力を付けているのが分かる。だって熱気ムンムンのRED MARQUEEでもフロントマンのジェームスは革ジャンだから。
17:30~

デビュー作『トーチズ』から「パンプト・アップ・キックス」の大ヒットで世界的ブレイクを果たしたフォスター・ザ・ピープル。過去には来日公演もソールドさせ凄まじい人気を誇る彼らだが、最近なんだか日本での扱いが悪い気がしていた。開演前のGREEN STAGEも最前列は熱狂的なファンで埋め尽くされているものの、集客はまばら。「やっぱりこんなもんなのね」と日本のファンたちの扱いにちょっぴりがっかりしながらメンバーが登場。お手並み拝見と1曲披露し、会場の温度を図り、続けて「パンプト・アップ・キックス」へ突入する頃には会場はかなりの人数に。大歓声でメンバーのパフォーマンスに応えるオーディエンスは皆さん3月リリースの新作もしっかり聴きこんでおられるよう。「あぁ、WHITEでファースト・エイド・キットの美人っぷりを満喫してたからちょっと遅れたのね。」と勝手な納得をして盛り上がる日本のファンたちに心の中で謝った。
18:20~

これまでボンベイ・バイシクル・クラブが、飛びぬけた才能を持ったバンドだと思ったことはなかったが、久しぶりに観た彼らは明らかに進化していたし、垢抜けていた。ソングライター、そしてフロントマンとして貫録を増したジャック・ステッドマンを中心にタイトな演奏で脇を固めるバンド、「Home By Now」や「Come To」などの最新作『So Long, See You Tomorrow』からの楽曲での(ヘソだしルックが超絶キュートな)リズ・ローレンスとのヴォーカルの掛け合いもバッチリだし、キャッチーなシングアロング・ナンバー「Shuffle」や「Evening/Morning」などのヒット曲も織り交ぜたセットリストも申し分ない。バンド・サウンドを軸とした良質なインディー・ミュージックを紡ぐUKバンドが減少傾向にある現在、彼らのような存在は貴重なものになりつつあるのが身に染みるパフォーマンスだった。
21:30~

これまでに計4回の出演経験を持ち、そのうち3度ヘッドライナーとして【FUJI ROCK FESTIVAL】を盛り上げてきたフランツ・フェルディナンド。そんな彼らが再びヘッドライナー務めた初日のグリーン・ステージ。メンバー全員モノトーンの衣装を身に纏い、初っ端の「No You Girls」から新旧ヒット曲を惜しみなく投下し、観客のヴォルテージをどんどん上げていく。華麗なステップ、ポージングを決め、詞に“フジロック”という単語を入れ観客を煽るアレックス・カプラノスの完璧なフロントマンっぷりも去ることながら、後半に差し掛かり、「Take Me Out」のイントロが流れると「待ってました~!」と言わんばかりに、集まったフジロッカー達が一丸となって大合唱、グリーン・ステージを歓喜の嵐へ。アンコールの「Goodbye Lovers & Friends」では少し感傷深くなりつつも、ラストの「This Fire」で再び観客を熱狂の渦に巻き込み、盛り上げ番長フランツらしくステージを締めてくれた。2004年の初出演から10年…節目の年となった記念すべきパフォーマンスの一瞬、一瞬を噛みしめながら、また次に苗場で会える日を心待ちにしたい。
21:30~

パンパンに膨れ上がったホワイト・ステージ。エキセントリックな虹色装束に身を包んだ2人組がステージに姿を現すと、彼らに“踊らされたい”オーディエンスからは、早くも奇声にも近い大歓声があがった。「コン・ニ・チ・ワ…」というロボット音声による“ご挨拶”をきっかけに、派手なダンス・ビートが夜の森を包む。女性ヴォーカルがステージに登場すると、大ヒット・チューン「グッド・ラック」を皮切りに、「レッド・アラート」「ロメオ」などの定番曲から、8月20日リリース予定の最新作『Junto』収録ナンバーまで、息つく間もなく立て続けに披露。シンガー、ダンサーがクルクルと目まぐるしく入れ替わる、とにかくカラフルで豪華絢爛なステージングに、思わずこの空間ごとどこか別世界に飛んで行ってしまったのではないか、というような錯覚に陥ってしまう。そんな現実離れしたステージのフィナーレには、シンガー、ダンサーのみならずゴリラや子供まで入り乱れる、まさに“おもちゃ箱をひっくり返したような”という言葉がぴったりの状態に。それらをも全て包括する摩訶不思議なムードは、彼らがステージを降りた後も、しばらくの間フワフワとオーディエンスの隙間を漂っていた。
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