シカゴへの移住～十代から音楽活動をスタート

　1936年にアメリカ・ミシシッピ州に生まれたシル・ジョンソンは、8歳の時に家族とともにシカゴに移住。シカゴ・ブルース界きっての名ギタリストであるマジック・サムとは家が近所という親しい関係で、サムにギターを教えたのはシル・ジョンソンなのだという。そんな環境もあり、十代の頃からマジック・サムやハウリン・ウルフらとともに音楽活動をスタート、その後、スタジオギタリストとしてその名を轟かせていく。

　そして、1959年にオハイオ州シンシナティに拠点を置くレコード・レーベル[フェデラル]よりソロ・デビュー。60年代半ば頃からは、シカゴのレーベル [トワイライト/トワイナイト]でもレコーディングをスタートし、1967年に「カム・オン・ソック・イット・トゥ・ミー」、「ディファレント・ストロークス」がヒットを記録、瞬く間に同レーベルの看板アーティストとなった。そして、1969年発表の「イズ・イット・ビコーズ・アイム・ブラック」では、アフリカ系アメリカ人のアイデンティティをテーマとした強烈なメッセージを歌いあげ、当時R＆Bチャート11位を記録している。

ハイ・レコード移籍～キャリア最盛期へ

▲ハイ移籍作となる『バック・フォー・ア・テイスト・オブ・ユア・ラヴ』

　70年代に入るとレーベル・プロデューサーのウィリー・ミッチェルからの誘いを受けてテネシー州メンフィスのレーベル[ハイ・レコード]と契約。当時、同レーベル所属のアル・グリーンがちょうど全盛期を迎えている頃だった。1973年には、ハイ移籍ファースト・アルバム『バック・フォー・ア・テイスト・オブ・ユア・ラヴ』をリリースし、翌年には『ダイアモンド・イン・ザ・ラフ』、1975年には『トータル・エクスプロージョン』から、アル・グリーンとティニー・ホッジスによる「テイク・ミー・トゥ・ザ・リヴァー」がR＆Bチャート7位を記録。

　同曲はアル自身が歌うバージョンもヒットを記録しているほか、イギリスのブルース・ロック・バンド、フォガットやレヴォン・ヘルム、ブライアン・フェリーなど多くのアーティストがカヴァーしている。また、1979年、ブライアン・イーノのプロデュースによるトーキングヘッズの同曲カヴァーが全米ビルボードチャート26位に輝くリバイバル・ヒットを記録している。

半引退～次世代に刺激されカムバック

　しかし、1980年代の半ばに入るとジョンソンは音楽シーンから遠ざかってしまう。魚料理のレストランを経営し、たまにブルース・クラブに顔を出して歌う程度の活動のみとなってしまった。だが、そんなジョンソンを再びシーンへと返り咲かせたのは、1990年代を席巻した次世代のアーティストたちだった。

▲元ネタとして多数使用されている「ディファレント・ストロークス」のパフォーマンス映像（2012）

　ウータン・クランを筆頭に、数多くのHIP-HOPアーティストたちの作品に自身のナンバー「ディファレント・ストロークス」や「イズ・イット・ビコーズ・アイム・ブラック」がサンプリングされていることを知ったジョンソンは、音楽シーンにカムバックすることを決意。1994年に再び[ハイ・レコード]のリズム・セクションを従えアルバム『バック・イン・ザ・ゲーム』を発表し、見事シーンへの復活を遂げる。ちなみに、この作品には、彼の娘でシンガーのシリーナ・ジョンソンも参加している。

約17年ぶりの来日、旧友との豪華共演も

　復帰後はコンスタントにアルバムのリリースとライブ活動を継続しているシル・ジョンソン。1997年以来約17年ぶりとなる今回の来日は、ビルボードライブ東京で行われる単独公演のほか、【FUJI ROCK FESTIVAL'14】に、ボビー・ラッシュ、ラヴェル・ホワイトとともに[Soul Music Legends]として出演することも決定している。なかでも大ベテラン、1950年代からレコーディング音源を残しているブルース・シンガーのラヴェル・ホワイトは、なんと御年85歳にしての初来日！正真正銘のソウル・ミュージック・レジェンド3人による奇跡の共演も見逃せないところだ。