Special
テイラー・マクファーリン 『アーリー・ライザー』 インタビュー
変幻自在に声を操り、もはやヴォーカリストという枠に収めることのできない天才ボビー・マクファーリンを父に持つサラブレッド、テイラー・マクファーリン。プロデューサー、作曲家、マルチ・インストゥルメンタリスト、DJとして活動し、新世代のジャズ・ムーヴメントを担うホセ・ジェイムズやロバート・グラスパーと共演するなど、デビュー前からその実力が高く評価される。
デビューEP『Broken Vibes』から約8年の月日を経て完成した渾身のデビュー・アルバム『アーリー・ライザー』には、ロバート・グラスパーをはじめ、天才ベーシストのサンダーキャット、気鋭ジャズ・ドラマーのマーカス・ギルモア、エミリー・キングなど若手注目株から父ボビー・マクファーリン、セザール・カマルゴ・マリアーなどの大御所が参加。来たる5月23日には、フライング・ロータスがキュレートする【BRAINFEEDER4】に出演する為に来日を果たすテイラーが、自身初となるソロ・アルバムについてじっくり語ってくれた。
これまで様々な音楽スタイルのバンドに所属してきたから、
特定のスタイルに縛られるのは嫌だった
??フル・アルバムのリリースおめでとうございます。デビューEP『Broken Vibes』から8年ほど経ち、「ついに」という感じがしますが、今回アルバムをリリースすることとなった経緯を教えてください。
テイラー・マクファーリン:『Broken Vibes』のリリースから、かなりたくさんの音楽を作ってきた。ブルックリンを拠点に活動しているMCのTKワンダーのプロデュースを手掛けたり、RAHJという―僕がドラムス、ブロケット・パーソンズがキーボード、そしてリード・シンガーRAHJによるトリオとしてアルバムをレコーディングして何年間か過ごした。他にも、長年のバンドメイトであるジェイソン・フラティチェリ がベース、ナイジェル・シファンタスがドラムを務めるザ・セル・セオリーというトリオとして活動していた。一時には、これらのプロジェクトや自分のソロ作品をリリースするレーベルを立ち上げようとも思っていたけど、中々上手くいかなくて。4年ぐらい前に、ソロ活動に専念しようと決意して、その時に「Place In My Heart」「Done For」「Awake To You」の3曲を収録したEPをリリースした。その後フル・アルバムは、1年ぐらいで完成するだろうと思っていたけれど、ライブ・パフォーマーとして世界をツアーするのに時間を費やしてしまって、スタジオ・ワークの焦点を失ってしまった。でもその間、常にスタジオ・トラックを蓄積してはいた。ここ1年間は、ツアー活動を休止して、1stフル・アルバムを完成されることに全力を注いでいたんだ。
??今回
テイラー:フライング・ロータスは、『Broken Vibes』EPをリリースした当初、MySpaceを通じて連絡してきた。その後も時々ツアー中に出くわしたりしていたんだ。2011年に行ったLAでのライブ後に、Facebookで「ライブに行きたかった」と連絡をくれて、その時の成り行きで3曲入りのEPを送った。彼がその曲を気に入ったことが、<ブレインフィーダー>の仲間にならないか、と誘うきっかけになったんだ。
??プロデューサー、作曲家、DJ、ミュージシャンとして多くのアーティストと活動してきた中で、どういったアルバムにしようと思ったのですか?
テイラー:これまで様々なバンドに所属してきたから、いざソロ作品を作るとなった時、10年以上に渡って培われてきた経験があった。ヒップホップ、ソウル、エレクトニック・ミュージック…これまで様々な音楽スタイルのバンドに所属してきたから、特定のスタイルに縛られるのは嫌だった。多様な音楽に触れ、その一部となり、それらすべてにインスパイアされてきた。このアルバムは、僕が2000年にニューヨークに移住してきてからのミュージシャンとしての経験を自分なりに表現したものなんだ。
??(資料の中に)「今まで作ってきたトラックの中から、良いと思うものや創造の瞬間だと思える物を探した」とありますが、これまでにどのくらいの楽曲を蓄えていたのでしょうか?また、その中から楽曲を選ぶ際の基準のようなものはあったのですか?
テイラー:100曲以上の未完成の選択肢があったよ。単なるスケッチもあったし、80~95%完成していたものもあった。ある時点で、音楽から一歩離れて、一貫したアルバムとして成立すると感じた曲を選んで行った。さらに、僕自身の物語の一部だ、と感じた曲を選ぶことを心がけた―まるで日記やフォトアルバムのエントリーのように。
リリース情報
トラックリスト01. Postpartum
02. Degrees of Light
03. The Antidote feat. Nai Palm
04. Florasia
05. 4 AM
06. Stepps
07. Already There feat. Robert Glasper & Thundercat
08. Decisions feat. Emily King
09. Blind Aesthetics
10. Place in My Heart feat. Ryat
11. Invisible/Visible feat. Bobby Mcferrin & Cesar Camargo Mariano
12. PLS DNT LSTN
13. My Queen feat. Vincent Parker (Bonus Track for Japan) ※日本盤ボーナス・トラック
来日公演情報
テイラー・マクファーリンも出演!
【BRAINFEEDER 4】
日程:5月23日(金)会場:新木場 ageHa
ARENA [メイン・ステージ]
FLYING LOTUS
CAPTAIN MURPHY
THUNDERCAT, TEEBS
TAYLOR MCFERRIN, MONO/POLY SIMI LAB, SEIHO
[WATER : BRAINFEEDER DJs ステージ] TBA
[BOX: JAPANESE DJs ステージ] curated by BRAINFEEDER
GOTH TRAD, QUARTA 330, OKADADA, DJ SARASA
前売チケット絶賛発売中!
INFO:BEATINK http://www.beatink.com/Events/Brainfeeder4/
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ライブ・パフォーマーとしての活動に
しばらく専念して良かったと思ってる
▲ Taylor McFerrin and Bobby McFerrin
??本作はエレクトロニックな要素が強く感じられる一方、ソウル、ジャズの要素も感じられますが、ご自身の音楽のルーツはなんでしょうか?やはり父ボビー・マクファーリンの影響も多くあるのでしょうか?
テイラー:父には大きな影響を受けている―特にライブ・パフォーマンスでのインプロヴィゼージョンの面で。ここ何年もの間、ライブはほぼすべてインプロで行ってるんだ。ゼロからループを作り上げ、自分や観客の要望を音楽が導いていく。エレクトロニックな要素は、これまで普通の楽器よりビート・マシーンやコンピューターで音楽を作ってきたことから派生している。ジャズやソウルのライブ的要素に焦点を置いたのは、ビート・マシーンを使い始めて何年も経ってからだよ。
??また、今回のエレクトロニックな傾向は<ブレインフィーダー>からのリリースを意識してのサウンドでしょうか?ビート・ボックスもされていないと思いますが。
テイラー:いや、それはまったく関係ないね。16歳の時からビートを作ってきた。元々の関心、そして夢はビートメイカーになることだった。ニューヨークで暮らし、自然とライブ志向のプロジェクトに参加することでライブ・パフォーマーへとシフトしていった。でもライブ・パフォーマーとしての活動にしばらく専念して良かったと思ってる。何故なら、キーボードを演奏する技術の幅が広がったし、音楽力が培われ、いざプロダクション面に焦点を戻した時に、より糧となる経験になったから。
??タイトル『アーリー・ライザー』に込めた意図はなんでしょうか?
テイラー:一日の“魔法の時間”を連想させてくれる―太陽が昇りはじめた時、または沈む直前の瞬間。あと、アルバム制作にこんなにも時間がかかってしまったことにもかけてるんだ。
??「Decisions」でフィーチャーリングしているエミリー・キング、「Place In My Heart」でフィーチャリングしているRYAT、アルバムの中でもかなりの存在感がありますね。この二人は最初からフィーチャリングしようと思っていたのですか?
テイラー:僕とRYATは昔からの友人なんだ。もう何年も一緒に何かやりたいと思っていて、「Place In My Heart」のインストゥルメンタルを作った時に、彼女にピッタリな曲だと即座に思った。エミリーに関しては、長年ファンで、ほんの6か月ぐらい前にアルバムに参加してくれないか打診したんだ。過去に何度か一緒にライブをやったことを通じて仲良くなって、参加してくれないか訊いたら、すごく興奮してた。彼女のことを考えながら、元々は違う曲を作ったんだけれど、最終的に彼女は「Decisions」のビートに合わせて歌いたがったんだ。でもそっちを選んでくれて良かったと思ってる。まったく違うトラックに仕上がったからね。トラック自体は、多分3年前ぐらいのものだけど、彼女のヴォーカルが加わることによって新たな息が吹きこまれ、再び新鮮に感じるようになり、アメイジングだよ。
▲ 「Packt Like Sardines In A Crushd Tin Box (1 Mic 1 Take)」
??ロバート・グラスパーとサンダーキャットをフィーチャリングした「Already」はもともと彼らとは親交があったのですか?また、制作はどのような形で行われたのでしょうか?
テイラー:グラスパーは、ここ何年か僕のヒーローで、サンダーキャットは、フライング・ロータスを追いかけていたことがきっかけで知ったんだ。2人とも友人として、それにこれまで何度か一緒に行ったパフォーマンスを通じて、知ることができて幸運だと思ってる。でも彼らが曲に参加してくれた本当の理由は、ドラマーのマーカス・ギルモアと仲が良いからなんだ。彼らはマーカスのことが大好きだから、彼の参加によって、2人もレコーディングをたやすく引き受けてくれた。元々僕とマーカスだけで演奏しているバージョンがあったんだ―僕がピアノとシンセ、そしてマーカスがドラムで。ある日グラスパーがやってきて、シンセ・パートはそのままでピアノを省き、フェンダー・ローズでまったく新しいパートを作り上げ、それを全て45分ぐらいでレコーディングした。そして<ブレインフィーダー>にアルバムを提出する同じ週にLAのサンダーキャットの家に行った。その曲がアルバムの為にレコーディングした最後のトラックだった。みんなで一緒にレコーディングしたように聴こえるように、色々な要素を編集し、ミックスするのは、すごいチャレンジだったけれど、最終的にみんなのヴァイヴがうまく音楽的に纏まったのはすごく気に入ってる。
??「Invisible / Visible」では、父であるボビー・マクファーリンと共演されていますね。どういったアプローチで共演に至ったのですか?また、ボビーと普段から音楽的な交流はあるのですか?
テイラー:大体の場合、父とはライブでしかコラボしないんだ。ステージに呼ばれ、彼が歌っている間にビートボックスする。たまに、僕のライブに参加して一緒にキーボードを演奏することもある。アルバムでオフィシャルにコラボするのは、実は3度目。10年ぐらい前に、彼のアルバムに収録された曲にビートボックスしているのと、『Broken Vibes』EPの「Georgia」という曲でヴォーカルを務めてる。クレジットには、“コズミック・ジョーンズ”と記載されているけれどね。
??ご自身でプロデュース、演奏、プログラミングまでできるマルチな才能をお持ちですが、今回自分のアルバムを作る上で、難しいと感じた部分はありますか?
テイラー:単に完成させることかな。ここ何年も、ライブ・パフォーマーとしてインプロヴィゼーションに頼ることが大きかったから、僕にとって曲を完成させるのが難しいことになってしまった。毎年、毎年、すべてを捨て、アルバムを一から作り直そうと思った。でも、しっかりやり遂げ、アルバム完成させることができて良かったと思っている。ずっと縋り付いているよりは、全然いい気分だからね!
??5月23日に【BRAINFEEDER 4】で来日されますね。ライブの見どころは?また、日本オーディエンス、音楽シーンに対する印象を教えてください。
テイラー:これまでに2度パフォーマーとして日本を訪れているけど、いつもクレイジーな時間を過ごしてるよ。東京は、僕が訪れた中で最も素晴らしい都市の一つだから、今回もベストを尽くしたいと思ってる。『アーリー・ライザー』の曲、古い曲、そして今取り掛かっている曲、それとインプロヴィゼーションも沢山聴けると思うよ。『アーリー・ライザー』に収録されている多くの曲に参加しているドラマーのマーカス・ギルモアも一緒に行くよ。みんなに彼の生演奏を聴いてもらうのが待ちきれないよ、彼は本当に特別なミュージシャンで、度肝を抜かれると思うよ!そして今後日本で行う、数々のライブの幕開けとなるライブになることを願っているよ。
リリース情報
トラックリスト01. Postpartum
02. Degrees of Light
03. The Antidote feat. Nai Palm
04. Florasia
05. 4 AM
06. Stepps
07. Already There feat. Robert Glasper & Thundercat
08. Decisions feat. Emily King
09. Blind Aesthetics
10. Place in My Heart feat. Ryat
11. Invisible/Visible feat. Bobby Mcferrin & Cesar Camargo Mariano
12. PLS DNT LSTN
13. My Queen feat. Vincent Parker (Bonus Track for Japan) ※日本盤ボーナス・トラック
来日公演情報
テイラー・マクファーリンも出演!
【BRAINFEEDER 4】
日程:5月23日(金)会場:新木場 ageHa
ARENA [メイン・ステージ]
FLYING LOTUS
CAPTAIN MURPHY
THUNDERCAT, TEEBS
TAYLOR MCFERRIN, MONO/POLY SIMI LAB, SEIHO
[WATER : BRAINFEEDER DJs ステージ] TBA
[BOX: JAPANESE DJs ステージ] curated by BRAINFEEDER
GOTH TRAD, QUARTA 330, OKADADA, DJ SARASA
前売チケット絶賛発売中!
INFO:BEATINK http://www.beatink.com/Events/Brainfeeder4/
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