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Club Jazz Goes on ~J-Club Jazz特集~
80年代のレア・グルーヴやアシッド・ジャズのムーヴメントを受け継ぐ形で生まれたクラブ・ジャズ。日本では90年代から徐々に浸透し始め、いまやれっきとした一ジャンルとしてカテゴライズされるまでになった。1990年代から2000年代に絶頂期を迎え、成熟期となった現在、次々と新しいアーティストが台頭してきている。そんなシーンを育て、作り上げていったアーティスト、そして新しい潮流を生み出しているアーティストを紹介。日本クラブ・ジャズシーンを紐解いていく。
J-クラブ・ジャズ黎明期
▲Kyoto Jazz Massive『SPIRIT OF THE SUN』
沖野修也、好洋による兄弟ユニットKYOTO JAZZ MASSIVEは日本クラブ・ジャズ黎明期から現在までもっとも大きな影響を与えてきた。結成からDJ活動やコンピレーションへの楽曲提供を行い、10年を経て2002年にオリジナル・アルバム『ECLIPSE』を全世界でリリース。ジャズ、ソウル、ラテン、ボサ・ノヴァをクロス・オーヴァーさせたクラブ・ジャズの真骨頂とも言える内容。修也氏は渋谷の老舗クラブThe Roomのプロデューサーとして、好洋氏は大阪のESPECIAL RECORDSのレーベル/ショップ・オーナーとしてもシーン普及の立役者となっている。
▲MONDOGROSSO『MG4』
いまやトップDJ、そして名プロデューサーとして名高い大沢伸一のバンド(のちにソロ・プロジェクトとなる)Mondo Grossoは、2000年に『MG4』を発表。いまでこそテクノ寄りのイメージもあるが、当時は生音と打ち込みを絶妙に融合させたサウンドで高い人気を誇っていた。birdをフィーチャリングした「Life」がスマッシュヒットし、クラブ・ジャズをさらに世に知らしめることとなった名盤中の名盤。
▲United Future Organization『United Future Organization』
矢部直、ラファエル・セバーグ、松浦俊夫によって結成されたUnited Future Organizationは、アシッド・ジャズを基盤にラテンやファンク、ソウルをバランスよく織り交ぜ、黎明期の中でもかなり早く世界に進出し、ジャイルス・ピーターソンが主宰するレーベル『Talkin' Loud』や名門『Verve』からリリースを重ねてきた。
▲SLEEP WALKER『SLEEP WALKER』
2003年に登場し、絶大な人気を誇ったバンドが、元MONDO GROSSOのメンバーだった中村雅人、吉澤はじめを中心に結成されたSLEEP WALKER。2001年に12インチ・シングルを発表したのち2003年に『SLEEP WALKER』でアルバム・デビュー。一曲目の「Ai-no-kawa」の衝撃は、レコードショップでなんとなく試聴してみたライト・リスナーたちの心をがっちり掴み、クラブ・ジャズ人気を一気に高めることとなった。2ndアルバム『Voyage』ではタイトル・トラックの「Voyage」でファラオ・サンダースと共演。12分以上に及ぶ超大作を作り上げた。以後SLEEP WALKERとしての活動はなくなってしまったが、復活を待望する声は絶えない。
若手の台頭。そして飛躍
▲SOIL&PIMP SESSIONS『"X" Chronicle of SOIL&"PIMP"SESSIONS』
SLEEP WALKERは活動を休止してしまったが、現在のシーンを形作ってきたいくつかのバンドを紹介していこう。まず筆頭と言えるのはSOIL&PIMP SESSIONS。個性的なメンバーのプレイに社長のアジテーションが加わり、しばしば爆音ジャズやデス・ジャズとも称されるスタイルはこれまでのオシャレなクラブ・ジャズのイメージをガラリと変え、クラブ・ジャズを一気にメインストリームに押し上げていった。昨年結成10周年を迎え、各メンバーも様々なアーティストのバンドやプロジェクトに参加している。現在のところ最も名の売れているジャズ・バンドの一つであろう。
▲quasimode『My Favorite Songs』
SOIL&PIMP SESSIONS のデビュー後に彗星のごとく現れたのがQUASIMODE。1stアルバム『oneself ? LIKENESS』の「Down in the village」で衝撃的なデビューを果たした。続けざまにリリースされた2ndアルバム「The Land of Freedom」はジャズ・シーンにおいて最も影響力のあるDJ/プロデューサー、ジャイルズ・ピーターソンにもピックアップされるなど、日本国内のみならず、一気にその名を世界にまで轟かせた。2009年にはBLUE NOTEレーベルと契約を果たし、日本を代表するジャズ・バンドとしての地位を不動のものとした。ヨーロピアン・ジャズに通ずる洗練されたメロディと、絶妙なオシャレさは『クラブ・ジャズ』の持つイメージに最も近いと言える。4月にはカヴァー・アルバム『My Favorite Songs』を発表。セロニアス・モンク、レディオ・ヘッド、ボビー・コールドウェルなどメンバーが愛する名曲を彼ら流に解釈した意欲作で、6月からのリリースツアーにも期待が高まっている。
▲indigo jam unit『Milestone』
J-CLUB JAZZシーンの中でも独自の存在感を放ち続けているのがindigo jam unitだ。大阪を拠点に活動し、ツイン・ドラムで繰り広げられるライブの圧倒的な迫力とメンバー4人の異なるルーツから紡ぎだされる楽曲で瞬く間に全国区に躍り出る。2006年のデビュー以降、実に9枚のアルバムをリリースしており、そのすべてが一発録音という「ストリート感」もindigo jam unitの特筆すべき点と言える。
▲Jazztronik『SET FREE』
このほかにも、侍ジャズと称され海外でも多くの公演行い、春には3週間で都内13か所を回るマラソン・ライブを決行するなど、ライブに定評のあるPE’Z、須永辰緒氏に見いだされたTRI4TH、メンバーにDJを取り入れ(現在は脱退)若い世代を中心に人気を博しているJABBERLOOP、2000年代以降多くの実力派バンドが登場したことによって『クラブ・ジャズ』というジャンルが世に浸透。バンドではなくアーティストで見てみるとJazztronikやINO hidefumiも独自の音楽センスでシーンに大きな影響を与えた。
さらに、沖野修也氏を発起人とした大規模なクラブ・ジャズフェスティバル『Tokyo Crossover/Jazz Festival』は2003年からこれまでに、Kyoto Jazz MassiveのバンドセットやSleepwalker、Quasimode、SOIL&"PIMP"SESSIONSなどの国内勢や海外からReel People、KOOP、Gilles Peterson、MARK DE CLIVE-LOWE、CHRISTIAN PROMMER'S DRUM LESSONなど名だたるアーティストが出演を果たし、まさにシーンの隆盛の象徴と言えるフェスにのし上がっていった。
公演情報
quasimode
~Plays “My Favorite Songs”~
日時:2014年6月17日(火)
会場:ビルボードライブ大阪
⇒詳細はこちら
日時:2014年6月30日(月)
会場:ビルボードライブ東京
⇒詳細はこちら
リリース情報
My Favorite Songs
- quasimode
- 2014/4/23 RELEASE
- ユニバーサルミュージック
- [TYCJ-89001 定価:¥3,564(tax in.)]
- 詳細・購入はこちらから>>
関連リンク
2014年―新たな潮流
▲fox capture plan『BRIDGE』
そして近年、新たな潮流が産み出されつつある。2012年に設立されたPlaywrightは若手の新世代を次々と世に浸透させている気鋭のレーベル。その中の筆頭株と言えるのがJABBERLOOP、Immigrant's Bossa Band、nhhmbaseのメンバーによって結成されたピアノトリオFOX CAPTURE PLAN。CDショップ大賞2014のジャズ部門賞を受賞し、昨年スプリットアルバムをリリースしたbohemianvoodooとともに、今もっとも勢いのあるジャズ・バンドと言える。
▲HEX『HEX』
さらには90年代にUnited Future Organizationとしてシーンを牽引してきた松浦俊夫が、現在進行形のジャズを発信するプロジェクト"HEX"をブルーノートレーベルで始動。OVALLなどを輩出しているorigami productionsから新作をリリースしたKan Sano(佐野観)をはじめとする指折りのミュージシャンとレコーディング・エンジニアのzAkをメンバーに据え、テクノやダブ、ラテン、アンビエントなど様々な要素が絡み合った「ジャズであってジャズではない」というを新たな世界観を提示した。
▲黒田卓也『RISING SON』
クラブ・ジャズが浸透してきた2003年に渡米した気鋭トランペッター黒田卓也が、今年日本人として初めてUSブルーノートと契約を果たした。アルバムのリリースに先駆けて、各音楽雑誌やWEB媒体で大きく扱われ、注目度の高さを見せつけた。そして5月にホセ・ジェイムズ全編プロデュースのもと、自身のルーツであるファンクやソウルをクロスオーバーさせたアルバム『ライジング・サン』を携えて日本に凱旋する。
シーンを牽引し続け、円熟味を増した2000年代のバンドから、活きのいい若手を輩出し、CDショップでもパワープッシュされる新レーベル、90年代の活躍から新たな動きを見せる大御所、そしてUSブルーノートから逆輸入されるアーティストまで、日本のクラブ・ジャズシーンに大きな注目が集まっている。Jazztronik ~「Cinematic」Release Live~
1st STAGE 「Cinematic」Special Live Set
2nd STAGE All Time Best
日時:2014年6月30日(月)
会場:ビルボードライブ大阪
⇒詳細はこちら
日時:2014年7月2日(水)
会場:ビルボードライブ東京
⇒詳細はこちら
リリース情報
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