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スティング&ポール・サイモン 【On Stage Together】インタビュー
【On Stage Together】ツアーの一環として現在全米21都市を巡っているポール・サイモンとスティング。2月8日にテキサス・ヒューストンでキックオフしたツアー初日には、2時間45分に及ぶパフォーマンスで30曲を披露、うちの10曲はポール・サイモンとスティングによるコラボというファン涎垂のステージとなった。両者のバンド・メンバーが、お互いのセットに参加するという自由なスタイルで演奏することで、より“学ぶ”ことが多いと話す2人がこのツアーについてじっくり語ってくれた。
今夜もっと学ぶことがあるだろうし、その翌日にもう少し学ぶ。
まるで冒険しているみたいだね。(―スティング)
▲ Paul Simon & Sting On Tour Together
??2人はNYの同じビルでしばらく暮らしていたそうですが、一緒にツアーをしようとはこれまで思わなかったのですか?
ポール・サイモン:そうだね。でもお互いの音楽は聴き合っていたよ。
スティング:そう。ポールが自身のアルバムを聴かせてくれたり、僕もその時に作っていたものを彼に聴いてもらったり。
ポール・サイモン:私は、他のアーティストともさほどツアーはしていなからね。ボブ・ディラン、そしてブライアン・ウィルソンと一緒にツアーはしたことがあるが、あまり頻繁にやっていることではない。
スティング:でも僕とポールは、幅広いジャンルに対して音楽的な興味を持っている。ソングライティング―曲の伝わり方に関しても同じことが言えるね。共通点は多いんだ。
??では、このツアーはどのように形になったのですか?
スティング:2人ともロビン・フッド・ファウンデーション主催のイベントに別々に出演することが決まっていて、どうせなら何か一緒にやろうという話になった。そこで「The Boxer」と「Fields of Gold」を演奏したんだ。2人でステージに上がり、ハーモニーの原則に反するような歌いだしが始まった瞬間に観客から大きなどよめきの声が上がった。あれはグレイトだったね。
▲ Paul Simon & Sting Interview
??このツアーには、【On Stage Together】というまさに相応しいタイトルが付けられていますが、当初からここまでコラボレーションするという構想はあったのですか?
ポール・サイモン:最低でも8曲、大半は一緒にやらなくては、という風には最初から話していた。当初はありきたりに「一緒にライブをスタートして、どちらかのセットがあって、また2人で何曲かやって、もう一人がセットをやって、クロージング。」というような具合だ。そこから「そんな風に切り離さないで、何曲か一緒にやって、25分どちらかがやって、また2人で一緒にちょこっとやって、またどちらから25分やって、また2人でやって…」っていう話になった。デュエットを挟んで25~30分間隔で変化していく。そして各バンド・メンバーもお互いのセットに参加しながらステージが進む。それがこのツアー中ずっと続くはずだから、終わった頃にはよりタイトなユニットになっているはずだ―今でもかなりタイトだが。
スティング:観ていると、とても興味深いね。全員素晴らしいミュージシャンだし、お互いの演奏に影響を受け合っている。常に進化しているんだ。今夜もっと学ぶことがあるだろうし、その翌日にもう少し学ぶ。まるで冒険しているみたいだね。
??一緒にショーを作って行くうえで、驚いたこと、または気づいたことは?
スティング:まったく喧嘩をしなかったこと!
ポール・サイモン:私は喧嘩をするなんて思っていなかったよ。予想通りという感じだ。挑戦にはなると思っていて、それを2人とも楽しみながら進めていけるだろうと考えていた。ただ一つ気がかりだったのが、バンド・メンバーが私たちと同じようにエキサイトしてくれるかということだったが、楽しんでくれている。自分たちのバンドと1週間リハをして、もう1週間全員でリハをしたんだ。まだ色々動かしていて、定まっていない部分もあるから、取り組み中といったところだね。
??ツアー中はずっとそのような感じになりそうですか?
スティング:毎日サウンドチェックは行っているからね…。
ポール・サイモン:そうだね。私が思うに多分そうなりそうだね。
年齢で言えば、一世代、半世代離れているかもしれないが、
同じアート感覚を持っているんだ。(―ポール・サイモン)
??デュエット曲はどのように決めていったのですか?
ポール・サイモン:以前チャリティ・イベントで演奏した「Fields of Gold」と「The Boxer」はいい出来だったから、その2曲から初めた。私は(スティングの)「Fragile」が好きだから、好きな曲を歌えるいい機会…多分これからもセットリストにいれて、歌うだろうね。だからこれはいいと思った。それからどのリズム・チューンをやるか、という話になって、スティングが「Boy in the Bubble」をやりたいと言ったんだ…。
スティング:「Boy in the Bubble」は大好きだよ。
ポール・サイモン:レゲエを探究した時期が2人ともあったから、レゲエもやってみようということでこの曲を選んだ。そうしたら私が「Every Breath」を歌えないのではと思った、彼は多分自分のセットで歌うのではと。それはそれで素晴らしいけど、2人で歌うことにしたんだ。後は「Late in the Evening」。でもこの2曲はある意味タフだ。多くの場合、リズム・チューンでは2人がヴォーカルをとることはないから、少し問題になった。それとグルーヴや特殊なフレージングが多い。バラードのようなシンプルなものの方が複数のヴォーカルがよくブレンドされるんだ。リズム・チューンは…2人のヴォーカリストが歌うために書かれたものではないので、どうにかして上手くいく方法を見つけなければならない。もちろん、ヴァースを交互に歌うことはできるがね。
スティング:そう、1ラインずつ歌ったり。サイモン&ガーファンクルのソングブックは2人のヴァ―カリストの為に書かれたものだから楽勝だ。僕は「America」をやるのが大好きだ、元々大好きな曲だから。
??このツアー内での若手として、サイモン&ガーファンクルやポールの音楽はミュージシャンとして成長していた頃のあなたにどのような影響を与えましたか?
スティング:大きな影響を与えたよ。学生時代に『Bridge Over Troubled Water』を買ったけれど、ポールの詞には魅了されたね。彼は教養がある、知的なソングライターだから。「僕もあぁ言う風になりたい、あぁいう風にいずれなりたい。」と思ったよ。フォーク・クラブなんかで、「I Wish I Was Richard Corey」をよく歌ったりした。だから曲は熟知していたんだ。いつかこの人の知り合いになり、同じステージで歌い、一緒にツアーをするなんて、まったく考えてもみなかった。空想の域を超えているね。彼は長年に渡って僕の先生でもあって、それは今でも変わらない。今でも彼から学んでいるよ。
??ではポールは、いつスティングの存在に気づいたのですか?
ポール・サイモン:すぐだったよ。アメリカでザ・ポリスの名が知れはじめた頃かな。バンドも、スティングも素晴らしいと思った。その頃彼がすべての曲を手掛けていると知らなくて。バンドを止めてから、どのようなキャリアを進むのか興味津々だった。ヒットを飛ばしたバンドやグループから離れ、ソロとしてやっていく彼の姿を追いたかった(笑みを浮かべる)。彼は教養あるミュージシャンだし、様々な音楽が好きだ。私が彼を訪ねていくと、「今練習しているバッハの作品を聴いてみて」と言ってバッハの曲を演奏してくれると、私は恥かしさに打ちひしがれて自分のアパートに戻っていたものだよ。君がリュートを習いながら弾こうとしている姿を見るだけで…
スティング:狂気のさただね(笑)!
ポール・サイモン:あぁ、なんて楽器なんだ。私はまだ6弦の楽器(ギター)と戦っているのに。私たちには似ているところがある。異国の文化へ興味、私たちが知っているミュージシャン―ピーター・ガブリエルもそうだし、デヴィッド・バーンも、一緒に演奏しているミュージシャンも様々なジャンルで活躍するメンバーばかりだ。(スティングは)素晴らしいジャズ・ミュージシャンたちと演奏していて、私はインドや北アフリカ、ザディコのドラマーたちを起用している。もちろん(『Graceland』の)アフリカのドラマーたちもそうだ。年齢で言えば、一世代、半世代離れているかもしれないが、同じアート感覚を持っているんだ。
??観客層も被っていると感じますか?
スティング:まだわからないかな。これらの曲をこのようなサイクルで演奏することによって新たな文脈で解釈することになる。僕を初めて観るポールのファン、そして彼を始めて観る僕のファンは、お互いが選んだ曲を比べることで新たな解釈が生まれる。こういったやり取りは観客にとっても楽しいと思うんだ。とても興味深いし。
??今後また一緒にツアーをすることはあると思いますか?
ポール・サイモン:そうだね。スティングは今年忙しいからね。(『The Last Ship』)の上演が6月にシカゴから始まるから、それが終わるまで動けない。でも、お互い生き続け、歌い続けていれば、是非またやりたいね。可能だ、ということが分かったから。
Q&A by Gary Graff / 2014年2月10日 Billboard.com掲載
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