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全米・全英1位! エミネム 『ザ・マーシャル・マザーズLP2』リリース記念インタビュー
アルバムのワールド・セールス1億枚を誇る世界最強のラッパー、エミネム。半自伝的映画『8マイル』にあるように、幼少期から壮絶な人生を歩み、2000年の『ザ・マーシャル・マザーズLP』で世界的アーティストとなったにも関わらず、薬物依存との格闘、親友プルーフの死、元妻キムとの離婚騒動など、その成功の裏で様々な試練を乗り越えてきた彼。
約3年ぶりの新作となる『ザ・マーシャル・マザーズLP2』は、リリースから約13年を経た『ザ・マーシャル・マザーズLP』に再びスポットライトを当てた作品。先週発売(デジタル配信/輸入盤)となり、世界73か国のiTunes総合アルバム・チャートで1位を獲得し、米ビルボード・アルバム・チャートでは、2位との売上枚数の差を10倍以上つけ、堂々の1位に。そして過去にリリースされたベスト・アルバムを含む計8作もチャートイン。さらにイギリスのアルバム・チャートでも1位を獲得するなど、各国のチャートを席巻し、紛れもなく世界最強のラッパーであることを見せつけた。
いよいよ20日に日本でも発売となる『ザ・マーシャル・マザーズLP2』のリリースを記念して、1997年から彼の作品に携わり、共にシェイディ・レコーズを立ち上げた、彼に一番近い存在のマネージャーのポール・ローゼンバーグが、成功の要因ともなったアルバムのプロモーション、そしてエミネムがこのアルバムに託した想いなどについてBillboard.comに語った。
MTVがミュージック・ビデオを流さなくなったという
不平は多く聞くが、別に悪い事じゃないと思ってる
▲ 「Berzerk (Explicit)」 Music Video
??2000年に『ザ・マーシャル・マザーズLP』が発売された時、エミネムは(MTVの人気番組)『TRL』から夜のニュースまで、全米中を虜にしましたが、現在では、アーティストがあの時のように全国規模で注目されることは極めて稀です。一つ言えるのは、そういったプラットフォームがなくなりつつあるから。今回のアルバムのプロモーションでは、まったく違う、ブランドを中心としたプロモーションを行いましたね。
ポール・ローゼンバーグ:世界は変わった。とても大きくね。君が言ったように、これまではミュージック・ビデオをプレミア公開するには、MTVや民放、ケーブルTVに枠を持っている音楽パートナーと組まなければならなかった。でも今回は、まったく違う試みで勝負した。「Berzerk」のビデオを(ESPNのミシガン大学対ノートル・ダム大学の)フットボール戦にて解禁したんだ。
MTVがミュージック・ビデオを流さなくなったという不平は多く聞くが、別に悪い事じゃないと思ってる。今のキッズは、ずっとTVの前に座って、流れてくるものを何でも見る、という時代ではなくなった。好きな時に、好きなものを見たいんだ。それが可能になったから。そうなったら、ミュージック・ビデオをTVで流す意味はない。YouTubeやVevoで1000万回視聴されるのに比べ、MTVで1000万人見たからどうなんだ?俺からしてみれば、パソコンで見てるユーザーの方がアクティヴだ。彼らは自分が見たいものを見ているんだから。何が不満なのか、全く分からないね。
??エミネムの新曲をプレミアする際や彼を起用したキャンペーンなどはどのような基準で選んでいるのですか?
ポール:彼には様々な種類のファンがいるので、彼のメッセージや曲をより多くの人々に届けることが一番だ。その点を踏まえて、パートナーを選んでる。何か繋がりある部分が無くてはならない。明確な繋がりが無ければ、彼のファン層は理解できないと思う。でもそれは彼がずっとそういうアーティストだからだ。(2011年に携わった)クライスラーのCMがパワフルでうまくいったのは、彼とデトロイトには本物の繋がりがあって、それを人々が感じることが出来たからだ。すべてのマーケティング・キャンペーンにおいて、そう人々に感じてもらいたいと思っている。
▲ 「DJ Hero」 TV CM / Eminem & Jay-Z
??このアルバムでは、『Call of Duty: Ghosts』というビデオ・ゲームとパートナーシップを結んでいます。アルバムとゲームの発売日も同日で、ゲームには「Survival」が起用されていて、曲はゲームのプレミア・イベントで初公開されましたね。彼らと組むことが相応しいと思ったのは?
ポール:彼らとは以前『Black Ops』と『DJ Hero』というゲームでも組んでいる。実は去年、『Call of Duty: Ghosts』の前に作られたゲームと何かできないかという話を貰ったんだが、タイミングが悪くて、何も出来なかった。時間をかけて築き上げてきた関係性というのかな。一番最初にアプローチされたのは、ゲーム内で使用された楽曲の権利の為だった。2度目は、もっと携わり、彼らのイベントでパフォーマンスをした。今回は、早い段階からことを進めることが出来たから、もっと大きなことが可能になった。
そしたら彼らが、一緒にミュージック・ビデオを作ったら、自分たちが求めている相乗効果が生み出せ、このパートナーシップを有効なものに出来るのではないか、と提案してきた。そこに、ゲームストップ(アメリカに拠点を置く世界最大のビデオゲーム販売店)が加わり、お互いににとって意味のあるものになった。
あのようなゲームのトーンやそれに付随する怒り、そしてゲームに対する情熱というのは、俺たちにとっては好ましいリンクや連想だ。それにゲーム・ユーザーがどのようなアーティストの音楽を聴くのかというアンケートでは、必ずエミネムの名前が挙がる。だからお互いにとって、有益なパートナーシップなんだ。俺たちは、世界的に展開されている巨大なキャンペーンに参加することが可能になり、彼らにとって、俺たちはユーザーが情熱を持っていることにリンクする。それはエミネムのファンにも言えることで、彼らもゲームをする層だから。それと「Survival」はゲームのヴァイブに合ってるしね。
リリース情報
関連リンク
Original Text: Reggie Ugwu
仕事、友人としての彼との関係性において、
今が一番絆が強いと思っている
▲ Berzerk Explained: Behind The Scenes 1
??そして、ここ何年かでは、エミネムの私生活にも大きな変化が起こりました。
ポール:もう5年間シラフだから、色々な変化があるが、一番最初にリハビリに入った頃には、まるで初めて彼に会ったかのように感じたこともあった。凄まじい呪いから解かれたようで、彼らしくなかった。だが再び“今の彼”を知ることが出来た。意識のない、抜け殻のような彼と関係を築くのはとても難しかった。でも今はちゃんと現実世界にいるし、いいパートナーとなってくれている。作品も格段と良くなったし、創ることも楽しく感じるようになった。仕事、友人としての彼との関係性において、今が一番絆が強いと思っている。
??彼のように身近な人が、そのように苦しんでいるのを見て、どのように思いましたか?
ポール:最悪だった。様々な面で困難だった。彼がそのような状況に陥っているのを見るのは、心が痛んだ。何よりも、彼の体のことが一番大事だからね。一緒に築き上げてきたブランドにとって重要なパートナーがいなくなって、貢献してくれないにも関わらず、ブランドを維持し続けなければならないのは、とても難しいことだった。でも、それ以上に彼の健康や幸せが一番心配だったね。
▲ 「The Monster ft. Rihanna」 (Audio)
??リアーナとの「The Monster」は、ヒット曲確実と言う感じですが、昔から彼はシングルに関しては慎重で、幅広いリスナー層にリーチされようと気配っていますよね。
ポール:もちろん彼はラジオの影響力を気にしている。彼はラジオ・エアプレイやラジオ媒体に支えられているアーティストなので、「そんなことは気にしてない。」と言えば、嘘になってしまう。それに「The Monster」のようなコーラスを持つ曲が送られてくれば、その可能性を無視することは出来ない。でも、それは彼にとってある意味挑戦なんだ。彼は自分のことを第一にラッパーだと思っている。だから、彼にとって一番楽しいのは、スタジオに入り、思いっきりラップをすることだし、それが彼の好きなことでもあるから、そこに情熱をかけている。だからそれ以外のことは、彼にとって少し難しいタスクでもある。もちろん楽しめるタスクだが、「ラップしてくるぜ。」と言うことのように100%自然なことではなくなってくる。
『ザ・マーシャル・マザーズLP』
??伝説的な作品である『ザ・マーシャル・マザーズLP』の功績に再び触れるような作品を作るのは困難でしたか?
ポール:彼が最初に私にそのアイディアを投げかけて来た時に、大胆なアイディアだと思い、その後何度が話し合いを重ねた。でも最終的に彼は「人に何を言われようとかまわない。これが俺がやりたいプロジェクトなんだ。これは再論だ。まだ語り尽くせてないテーマやトピックが残っているから、それについて語りたい。もし、人があのアルバムと比較したいんだったら、別にそうすればいい。」と言ったんだ。
それに彼は「あぁ、あのアルバムは素晴らしい出来だった。ヒップホップ作品の金字塔だ。」なんて、口が裂けても言うような人間じゃない。自分のことをそんな風に見てないんだ。もちろんあのアルバムが人々から崇拝されているのは理解しているし、アルバムの好みは人それぞれだ。だから、あのアルバムが自分の作品の中のスタンダードだなんて思うはずない。彼にとっては、あれも単なるプロジェクトなんだ。
でも彼の頭の中で、まだグラグラしてる部分があったから、あのアルバムのテーマで取り上げたトピックを再考する必然性を彼は感じた。それとあのそれとアルバムを振り返って、その影響が彼自身、そして彼の周りの人々にどのような影響を及ぼしたかを語る機会にもなったから、彼はそれを利用したんだ。
??ではこの2枚のアルバムが競合することは?
ポール:俺にとって、彼が自分自身と競合することはありえないと思う。あれは今とは違う時期に作られた、今作とは異なるアルバムで、彼自身も昔とは違う。じゃあ、どのように競合するんだ?もっと売れるか、どうかか?音楽業界はあの頃に比べ、ほぼ半分のサイズになってしまったから、それが可能だとは、俺には思えない。だから競合ではない。彼みたいなクリエイティヴで素晴らしいアーティストが、タスクに真正面から向かっていくのを見れるだけで、ラッキーだと思う。それも12~13年も経ってからだ。彼がまだそれをやりきろうと思っているのは、スゴイ事だと思うね。
2013年11月12日 Billboard.com掲載
リリース情報
関連リンク
Original Text: Reggie Ugwu
ザ・マーシャル・マザーズLP2
2013/11/20 RELEASE
UICS-1278 ¥ 2,409(税込)
Disc01
- 01.バッド・ガイ
- 02.パーキング・ロット (スキット)
- 03.ライム・オア・リーズン
- 04.ソー・マッチ・ベター
- 05.サバイバル
- 06.レガシー
- 07.**ホール feat.スカイラー・グレイ
- 08.バザーク
- 09.ラップ・ゴッド
- 10.ブレインレス
- 11.ストロンガー・ザン・アイ・ワズ
- 12.ザ・モンスター feat.リアーナ
- 13.ソー・ファー・・・
- 14.ラヴ・ゲーム feat.ケンドリック・ラマー
- 15.ヘッドライツ feat.ネイト・ルース
- 16.イーヴル・ツイン
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