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CLIFF EDGE 『Diamond Stars』インタビュー
今年でメジャーデビュー5周年を迎え、初夏には初のベストアルバムをリリース。大きな節目を越えたCLIFF EDGEが、新たな第一歩を告げるコンセプトミニアルバム『Diamond Stars』をリリースした。
全ての楽曲に外部プロデューサーを起用する新たな試みに躍り出た3人に、これまでの活動や本作に挑むことになった経緯、そしてフィーチャリングに対する想いや、時に“ありがとうソング”ばかりだとも言われる現状にまで、真摯に言及してもらった。
僕はまず、自分を疑っている
▲THE BEST ~You're the only one~ / CLIFF EDGE
--昨年秋にセルフタイトルのオリジナルアルバム、5周年を迎えた今年は初のベストアルバムと、最近のCLIFF EDGEは節目が多いですね。
JUN:曲を作ったりライブで披露したりっていうのは、インディーズ時代から考えると5年以上になりますよね。その頃からのファンの人たちが今も多くいるんですけど、当時は「彼氏ができました」なんて言ってた子が、その人と結婚して子どもを連れてライブに来てくれたりとか。“人生を共にしている”っていうと大げさですけど、ヒシヒシと感じるものはありますよね。
SHIN:自分としては何かが変わったとも思わなかったですし、割と変わらずにやれている部分は大きいですね。ただ、確かにメジャーデビューして全国へ飛び立てたのは大きいと思います。
DJ GEORGIA:シンプルにやっているつもりなんですけど、人と会って話してみると時期によって変わりますよね。今、20代前半の子とかだと、学生時代に『BIRTH』を聴いてました、みたいな。メジャーになってからはもうちょっと年齢層が上がって、家族連れの方々がライブに来てくれたりとか。人と話すと気づける所は大きいですよね。
--若い頃の方ががむしゃらにやっていた所もありますか?
DJ GEORGIA:インディーズのときは、それこそクラブでどれだけ盛り上げられて、どれだけの人の目を惹けるかとか。より良いイベントに出るためにはどうするかとかを考えてやっていたので、活動のスタンスは全然違いますよね。今は嬉しいことに聴いてくれるっていう前提がありますし。
JUN:結局の所、人に好かれようと思ったから好かれるものではないと思いますし、それぞれに好みがあれば波長もある。例えばフィーチャリングというものを知ったとき、最初は「なんで自分たちの楽曲に他のアーティストのサビが乗るんだよ」って気持ちは正直ありました。それは僕らのエゴですよね。
でも、今となってはやってよかったと思います。やったことによって勉強や刺激になったし、何よりファンや知ってくれた子がたくさん増えた。そういう歴史を考えたときに確かに自分のエゴっていうのは沸々とあるものなんですけれども、僕はまず、自分を疑っているんですよ。
--疑っている?
JUN:「(良いと思ってるのは)俺だけなのかもしれない」からスタートにするようにしています。メンバーやスタッフさんと試聴会をよくやるんですけど、そういうときの意見が大切になってきます。デモとか最初の取っ掛かりからエゴなくキレイに収めようとすると、あまり良い物にならないんです。それぞれにやりたいことを感じながら、そこを丸くしていく作業は3人ともできるので、最初はまず……っていう気持ちはありますね。
ブラック音楽をルーツにポピュラリティを研究している
▲CLIFF EDGE/SA・YO・NA・RA ~君を忘れないよ~ ※AKB48 柏木由紀出演
SHIN:今、僕らのことを見てくれるファンって、歌詞の共有で好きになってくれることが多いと思うんですね。その歌詞についてはエゴ=CLIFF EDGEというか、歌詞のエゴを削りまくったら逆に響いてこなくなっちゃうんじゃないかって不安もあります。自分の意見とか過去の経験をどんどん入れることによって、みんなが凄く共感してくれたり、好きも嫌いもハッキリしてもらえるものさしになるんじゃないかと思っていて。
DJ GEORGIA:僕は立場上、間違いなく一番クラブのリアルが分かる。だからやりたいことを100%でやるんじゃなく、ちょっと分かりやすくして届けるというか。今流行っているものの奥に何があるかまで分かっているので、そういうものを落とし込むことを重視していますね。もちろん、もうちょっと出したい!っていうのはあるんですけど(笑)、そこはJUN君と同じでチームのバランスを信頼してます。
--また、サウンド面ではJUNさんは裏の拍を強調したラップやメロディが多いですよね。
JUN:忘れかけちゃうことはあるんですけど、僕らはブラックミュージックをルーツに、どんどんポピュラリティを研究していってるんですよ。だから今は、SHINの声という武器をしっかり立たせつつ、そこからメロディアスに変化していくようなアレンジとか。陰と陽じゃないですけど、JUNとSHINの色の違いは常に見せていきたいと思ってましたね。
--先ほどJUNさんからフィーチャリングの話が上がりましたが、CLIFF EDGEが今までにフィーチャリングしてきた方々を改めて振り返ってみると、けっこう凄いラインナップなんですよね。過去にはAKB48の柏木由紀さんが出演したミュージックビデオや、秋元順子さんを迎えた楽曲などもありました。そういう組み合わせの妙も楽しめている?
JUN:何よりも楽曲が良ければいいし、MVなどでもその人のリスペクトしている部分が欲しくてオファーしているわけで。楽しませようという気持ちもありつつ、まずは曲がベースになってますね。
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Interviewer&Photo:杉岡祐樹
ジャケにキングコング 西野亮廣を起用した理由
▲Diamond Stars / CLIFF EDGE【60秒SPOT】
--今回のニューアルバム『Diamond Stars』のジャケットは、キングコングの西野亮廣さんが描き下ろしたアートワークになっています。
JUN:元々は映画『ホームレス中学生』の主題歌を担当させてもらったときにお会いしていたんですけど、それから深い交流があったわけではないんです。まず、今回は企画アルバムということもあるので、オリジナルアルバムとは違う見え方にしたい。そうして色んなプロデューサーさんとの楽曲ができてきたら、ジャケットはイラストにして誰かに頼みたくなって。それからみんなで探していたら「そういえば西野さんの絵って凄いよね」って話になって、頼んでみたっていう流れですね。
--今、西野さんを起用するというのは、なかなか思い切ったセレクトだと思いました。
JUN:西野さんに対して好き嫌いはないし、絵には何の罪もないですよね。面白い物を描いて欲しかったですし、……ただ、GEORGIAのアゴはそんなに長くないです(笑)。
--それを言ったらSHINさんはここまで丸くないです(笑)。
JUN:SHINはリアルです(笑)。この『Diamond Stars』のジャケットに関して言うなら、西野さんという方がいて、その方の表現物がとてもステキだった。そういう考え方をするタイプですね、僕は。
--そして『Diamond Stars』は、全ての楽曲に外部プロデューサーを起用していることが大きなコンセプトとなっている1枚です。
JUN:ベストアルバムの選曲で過去曲を色々聴いていたときに、「こんな歌詞あったね~」とか「例えばこの“5月20日”を掘り下げて1曲作ったら面白そうだね」とか、遊びレベルで盛り上がっていた部分があって。
ただ、確かに過去の楽曲には“エリカの花”とか“メメント・モリ”とか、色んなパンチラインはあったんですけど、それは自分たちの中に色濃いイメージがあるワードなので、自ら紐解いてもあんまり広がらなそうじゃないですか。
それよりも他の人だったらどう感じてどう表現してくれるのか。自分たちが全然意図していない方向にいくのも面白いし、他のプロデューサーさんにフラットに見てもらって、その人の解釈と僕らの原石の部分のコラボレーションになればいいなって。
--自身を掘り下げるよりも、広がりを求めたと?
JUN:どっぷり漬かりすぎちゃって内輪受けのアイテムにはしたくなくて。ただ、全プロデューサーさんが共通して、「CLIFF EDGEは今まで自分たちでやってきたから悩む」って言ってましたね。これは松尾潔さんが仰っていたことなんですけど、「過去をまったく否定するつもりはないし素晴らしいと思う。だけど僕とやるならどういうことをやるのか……」って。
この5年間で忘れていた部分を思い出そう
--これまで3人でやってきた作業の中にプロデューサーを加えることに対し、抵抗感はなかったのでしょうか?
JUN:例えば「雨降る5月20日」をプロデュースしてもらった3rd Productionsさんには、「5月20日って実はこんなことがあって……」とSHINから話して、自由に作っちゃってくださいとお願いしました。歌詞もより良い表現があるなら言って欲しいし、そこまで言ってもらわないと困る。初めからそういうスタンスでしたね。
SHIN:3rd Productionsさんはのっけから「この娘はどこ出身で、どんな見た目で、どんな癖のある子なの? 歳は何歳? 名前は?」って全部書いて欲しいと。それを小説のように書いてからリリックに変えていくスタートだったので、「雨降る5月20日」が小説風になった大きな一歩はそこだと思います。自分の中での新しいポエトリーラップになったというか、新しい扉を開けた一例だと思いますね。
「エリカの花」のNAOKI-Tさんとも、ずっと一緒にパソコンをパチパチやってたんですけど、僕らの中にあったルールみたいな物をまったく知らない人と話していると全然違う所からボールが飛んでくるんですよ。その球をキャッチして投げ返すだけでも、新しい引き出しができているというか。「そこにも引き出しあるよ?」と作業の中で広げてもらった感じですね。
--松尾潔さんが参加された「Diamond Days」は、今作の中でもっともCLIFF EDGEのイメージと違うサウンドですよね。
DJ GEORGIA:それこそ松尾さんが言いたかったのはアーバンというか、「この5年間で忘れていた部分を思い出そう」みたいな所があったような気がしますね。例えばこの曲のビートは、田中直さんという方が持ってきてくださったLinn Drum(リンドラム)というビンテージの機材で作っているんですよ。
僕は機材とかにこだわりがあるんですけど、そういう意味でも妥協なく突き詰める。ちゃんと歴史を知っていて、プロダクションを構築した上でしっかり結果を出している。そういう人たちに出会えたのは初めてかもしれないですし、凄く勉強になりましたね。
JUN:こういう曲って、CLIFF EDGEも元々作ってはいたんですよ。だから「ブラックミュージックが根源でやってきたじゃん、君たちは。そこを忘れてない?」っていう、松尾さんからのメッセージをビシバシ感じた曲ですね。
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Interviewer&Photo:杉岡祐樹
第一線にいる人はなにかしらを持ってる
--また、「メメント・モリ」はガッツリ盛り上げるパーティーチューンになっていますが、タイトルは“死を忘れるな”という意味のラテン語で、死生観を含めた警句になっています。パーティチューンにこうした言葉を合わせることで、面白いバランスの楽曲になりましたよね。
JUN:死をテーマにバラードで歌い上げるような形にはしたくなくて、奇妙な曲にしたかったんですよ。この曲をプロデュースしてくれたgirl next doorの鈴木大輔さんは、AAAなども手がけていますけど、曲の途中でいきなり世界観が変わるようなアレンジを得意としていますよね。そういうポイントが欲しいとか、リクエストをそのまま形にしてくれたのが鈴木さんです。
DJ GEORGIA:僕はDJとして現場に立ってますけど、逆にそうではない人が捉えたダンサブルな楽曲という意味で、めちゃくちゃ面白いです。「メメント・モリ」のビートや和音は、俺には絶対に選べないものなので、鈴木さんにやっていただいて良かったですね。
今回、参加していただいたプロデューサーの方々はほとんどがオリコン1位を獲ったことがある人たちなんですけど、やっぱり第一線にいる人はなにかしらを持ってるんだって思えました。そして“だったら俺の武器は何だ?”って気持ちは強くなりましたし、その武器に関してはまったく負ける気もしないです。
JUN:CLIFF EDGEにはこうして尖ったDJ GEORGIAがいて、よく分からないことを言ってるJUNがいて、もっと分からないSHINがいる(笑)。そういう風に、外側から眺めることができましたね。
--そんな作品の最後に収録されている「ナポリタンとスーパーカー」は、メジャーデビューアルバムに収録の「DAYS~You're the only one Pt.3~ feat.MAY'S」の歌詞に出てきた言葉を基に、母への感謝を綴った1曲です。ただ、感謝を告げる“ありがとうソング”を批判、揶揄する人は少なくないですし、そうした声は皆さんの耳にも入っていると思います。
JUN:そうですね。現場によってもそれぞれの意見があるから、初めの頃は迷ったりすることもありました。でも今は“これは聞くべき雑音”、“それは聞いても意味がない雑音”と、すぐに判断ができるようになっているかもしれないです。
俺は、そのありがとうが好きなんですよ
▲CLIFF EDGE/Dear... feat. MAY'S
SHIN:僕は逆に良い部分だと思っていて、「CLIFF EDGEってありがとうグループだよね?」って言われたら、「それが僕らのエゴやエッジだと感じてるんで」ってことですよね。
それに俺は、そのありがとうが好きなんですよ。昔、俺とJUNは同じ予備校に通ってたんですけど、そこの仲間たちとやった誕生日会が凄かったんですよ。一人ずつ手紙を書いてきて感謝を告げて、涙々のバースデーをやって、見ていた店員さんまで泣いちゃうっていう(笑)。
しかもその店員さんが後になってたまたまクラブで俺たちのライブを見て、「あの時のあの人たちですよね?」って話しかけてくれたりとか。そういう素敵さを感じて生きているので、雑音というよりは正解だと思いますよ。
JUN:例えば「DAYS ~You're the only one Pt.3~ feat.MAY'S」の頃は恋人同士だった2人が結婚して、今は親の立場になっているファンも多いんですよ。自分たちも親になったからこそ、その偉大さが見えてくる所はあるだろうし、当時とは違った切り口で家族について書こうと思った曲が「ナポリタンとスーパーカー」ですね。
--ただ、そうした批判も受け止めながら活動していく苦しさというのは、決して小さいものではないと思うのですが?
JUN:例えばフィーチャリングに関してもそうで、本当にその人とやりたいと思った音源があっても、「でもこれでまた“フィーチャリングばっかり”って言われるんだろうな……」とか、そういうことは頭をよぎります。
ただ、そうした雑音がないと中身の絆はできてこない。ぬるま湯でやっていくと繁栄には繋がらないと思うから、もっとキュッキュと締めて欲しいんですよ。“言われない=注目されていない”ってことになっちゃうし、これからの活動では“嫌いな人は嫌いでも……”っていう所も出していきたいと思ってるんですよね。
--そういう先入観から敬遠してきた人にも、今一度聴いてみて欲しいのが『Diamond Stars』ですよね。
SHIN:例えば、「ろくでなしメモリーズ」はmiyakeくんのプロデュースですけど、mihimaru GTの楽曲にあるめちゃめちゃ良いメロディとか、CLIFF EDGEでやったらどうなるんだろうと。そう思っていたからこそ、この曲が来た瞬間は「めちゃめちゃいいじゃん!」って手ごたえがあって(笑)。
で、これをJUNが歌うんなら、俺のラップはガチガチにした方がいいと思ったんですよ。韻を踏んでガッチリとラップする。miyakeくんの超キャッチーなトラックにハーコーなラップが乗ったらどうなるのか、っていうアプローチにしました。そこを聴いてもらってラップのかっこよさを感じてもらえたら嬉しいですね。
--CLIFF EDGEの第2章を告げるのろしのような1枚になりましたね。
JUN:5年を経て色々と沈殿してきた物があったし、溶けている物もあった。それらがかき混ざって甦ったところがこのアルバムにはあって、今は制作がとても充実しているんですよ。甦ってきた何かや新たに気づいた引き出しが、これから1曲1曲、形になっていくんだと。
でも、できることは限られているので真髄の部分が変わることはないと思います。音楽って理由があって好きになるものではないと思うので、「……何か良いね!」って思ってもらえる感じをもっともっと届けられるんじゃないかなって。
Music Video
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Interviewer&Photo:杉岡祐樹
Diamond Stars
2013/10/02 RELEASE
KIZC-217/8 ¥ 1,885(税込)
Disc01
- 01.ろくでなしメモリーズ
- 02.エリカの花
- 03.雨降る5月20日
- 04.メメント・モリ
- 05.Diamond Days
- 06.ナポリタンとスーパーカー
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