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楽園おんがく Vol.5:夏の終わりにぴったりの“楽園おんがく”ガイド
旅と音楽をこよなく愛する、沖縄在住のライター 栗本 斉による連載企画。今回は夏の終わりにぴったりの、ちょっぴりせつない“楽園おんがく”をセレクト。
まだまだ猛暑が続くなあと思っていたら、気が付くと秋の気配が忍び寄ってくる今日この頃。
あれだけ暑さから逃れようとしていたのに、季節が変わりそうになると急に名残り惜しく感じるもの。今回は、そんな夏の終わりにぴったりの、ちょっぴりせつない“楽園おんがく”を紹介しよう。
アントニオ・カルロス・ジョビン
『波』
まずはブラジルから。ボサノヴァの代名詞でもあるアントニオ・カルロス・ジョビンが、米国のミュージシャンたちと録音したオール・インストゥルメンタルの傑作。クラウス・オガーマンによる美しいストリングスに彩られたピアノの音色が、遠い海の彼方に溶け込んでいく。
■Official Site■
カールトン&ザ・シューズ
『ディス・ハート・イズ・マイン』
カリブの島国ジャマイカは、レゲエもいいけど、もっとゆるゆるなロックステディも捨てがたい。まったりとしたスカのリズムに乗せてソウルフルな男声コーラスが絡み合えば、それだけでマジック。風呂上がりのビール片手にごろ寝しながら聴くには最高の一枚。
マテオ・ストーンマン
『マイ・ビューティフル・ハバナ』
キューバに取り憑かれたアメリカ人による、キューバ人よりキューバらしい音楽を奏でる吟遊詩人。フィーリンと呼ばれるメロウなオールド・スタイルのサウンドをベースに、限りなくソフトな声で愛を囁くヴォーカル・アルバム。ハバナの旧市街が目に浮かんできそうだ。
マイティ・スパロウ
『ファースト・フライト』
カリプソの王様によるレアな初期音源集。スウィングするリズムに身体を揺らしながら、ユーモラスで脱力気味のメロディを口ずさめば誰もが楽園気分。トリニダード・トバゴの目が覚めるような紺碧の海を思い浮かべながら、陽気な気分で楽しみたい。
■Official Site■
ピエール・マイゼロワ
『ピエール・マイゼロワ』
フレンチ・カリビアンの島マルティニークは、音楽も他の島国に比べるとオシャレ度も高い。ラテンとブラック・コンテンポラリーが合体したようなサウンドと、ダンディなヴォーカルが織りなす大人の世界。まだまだ夏が続きそうだなと思ったら引っ張り出そう。
アウレリオ・マルティネス
『ガリフーナ・ソウル』
中米のホンジュラスからベリーズにかけて、ガリフーナ族といわれるアフリカ系の民族が住んでいる。そんな彼らが編み出したソウル・ミュージックは、土着的な太鼓から叩き出されるリズムと絶妙にブレンド。まだまだ暑い日差しは続きそうだ。
■Official Site(myspace)■
ウィリー・ボボ
『トゥモロー・イズ・ヒア』
パーカッションの名手がブルーノート・レーベルに残した、限りなくメロウでファンキーなラテン・ジャズ。コンガやボンゴが繰り出すリズムと、フェンダー・ローズやホーン・セクションが優しく絡み合うアダルトな世界。涼風が吹き始めた晩夏の夕暮れに。
ケオラ・ビーマー
『モエウハネ・キカ~優しきハワイの風~』
太平洋を飛び越えて、誰もが大好きなハワイへ。スラックキー・ギターという独特のチューニングを施したギターの名手が作り出した極上のヒーリング・ミュージック。弦と弦のあいだから、ホワイト・サンドの眩しい輝きや爽快なオーシャン・ブリーズが感じられる。
■Official Site■
ブライアン・イーノ
『アンビエント1/ミュージック・フォー・エアポート』
アイランド・ホッピングを続けていると、どうしても空港にいる時間が多くなる。そんな空港をテーマにしたアンビエントの金字塔も夏に聴きたい一枚。なんのドラマも起こらない静かな音世界は、誰もいない冷房の効いたロビーでまったりとしている気分。
■Official Site■
琉球アンダーグラウンド
『ウムイ』
最後は沖縄から。島在住のアメリカ人とイギリス人ユニットによるダウンテンポなエレクトロニカ。オリエンタルな沖縄音階も素朴な三線の響きも、彼らの手にかかれば極上のチル・アウト。青い海と白い砂浜が恋しくなった時に聴いて、夏はまた来年までお預け。
■Official Site■
栗本 斉 Hitoshi Kurimoto
旅と音楽をこよなく愛する旅人/旅&音楽ライター/選曲家。
2005年1月から2007年1月まで、知られざる音楽を求めて中南米へ。2年間で訪れた国は、ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイ、チリ、ボリビア、ペルー、エクアドル、コロンビア、ベネズエラ、トリニダード・トバゴ、パナマ、メキシコ、キューバの、合計14カ国。
帰国後は旅と音楽にこだわり、ラジオや機内放送の企画構成選曲、音楽&旅ライター、コンピレーションCD企画、ライナーノーツ執筆、講演やトークイベント、ビルボードライブのブッキング・コーディネーターなどで活動中。得意分野はアルゼンチン、ワールドミュージック、和モノ、中南米ラテン旅、世界遺産など。2013年2月より沖縄県糸満市在住。
Information
『アルゼンチン音楽手帖 / Organic Music of Argentina』
監修・著:栗本 斉
世界初!21世紀以降の「新しいアルゼンチン音楽」を紹介するディスクガイド。
フォルクローレ、ジャズから、タンゴ、音響派、エレクトロニカにいたるまで、洗練されたセレクトで、ジャンルを超えたラインナップ約250枚を厳選。
旅行、料理、ファッションなどのコラムも挿入し、多角的にアルゼンチンとその新しい音楽を浮き彫りにする、アルゼンチン音楽入門書。
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