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安室奈美恵 【namie amuro BEST FICTION tour 2008-2009】
2009.05.02(SAT)at 国立代々木競技場第一体育館|セットリスト
安室奈美恵の名のもとに発信したい音楽。それを追求し続けた長い旅を賞賛するかのように、昨年リリースされたベストアルバム『BEST FICTION』、彼女の戦いの軌跡をそのまま収録した作品がメガヒットを記録。今作を引っ提げた全国ツアー【namie amuro BEST FICTION tour 2008-2009】も23都市60公演で約45万人(アジア公演も加えると64会場で約50万人)を動員するという前代未聞の記録を樹立し、安室奈美恵は名実共に新たな全盛期を迎えた。この日観たライブでは、そんな何人(なんびと)も到達したことのない領域へ自らの存在を置いた彼女の、過去最高にエモーショナルなステージを堪能することができた。
時をカチカチカチカチ……と刻みだした空間で歓喜の声を上げる、あらゆる年齢層のファンたち。スクリーンの女の子がひとつの疑問を投げかけると、ステージを覆う真っ赤なカーテンに“BEST FICTION”の文字が浮かび上がり、その前でリボンやバトンを持って華麗に踊る2人のダンサー。爆音でバンドサウンドと誰もが待ち侘びたアノ声が響き渡り、開いた幕の向こう側には、ファンシーで煌びやかな映像とダンサーに囲まれる形で“女王の座”とも言うべき椅子の上で歌う安室の姿が!客席を真っ直ぐに見据えてゆっくりと歩き出した彼女は、その小さな体から沸々と湧き上がる熱を放出しながら、客席の中に設置されたステージへと歩みを進め、狂喜乱舞するオーディエンスに軽く笑みを浮かべて「ここはSpecial Dreamin'World」と歌い叫ぶ。あまりに衝撃的なステージングにオープニング曲『Do Me More』を聴き終えた客席は大いにどよめていた。 スクリーンの中の少女がとってもキュートで大きなハイヒールを見つけて喜んでいると、なんと現実にそのハイヒールが姿を見せ、そこで腰を掛けたりステップを踏んだりしながら『NEW LOOK』を可愛らしく歌い上げていく安室。彼女の表情が変化する度に湧き立つ僕ら。ウィンクなんて飛ばされた瞬間には、一体この会場でどれだけの人間が恋に落ちたことか(笑)!このブロックでは攻撃的な序盤と打って変わってポップでガーリーなナンバーが中心に披露されたのだが、その中でも際立って大きな盛り上がりを見せたのが『GIRL TALK』である。とてもフレンドリーな笑顔で、舞い降るハートをバックにファン1人1人と会話をしているかのように歌い踊る彼女。その姿につられて共に踊るみんな。安室奈美恵の人気の理由をそのまま物語るような光景が目の前に広がっていた。
そして続く『shine more』から彼女のボーカルが更にとんでもない熱量を放ち出す。ほとんどシャウトのような声をソウルフルに響かせ、その後もシンガー泣かせの歌唱難易度Sクラスの楽曲を用意していたのだが、安室は肉体の全てを使って、高揚と鼓舞を目的としたような強烈なダンスミュージックを畳み掛けていく。魂の爆発、No.1エンターテイナーとしてのプライドをひしひしと感じさせられた。そんな彼女がようやく落ち着いて優しい表情を覗かせたのは、三日月に腰を掛けての披露となった『Wishing On The Same Star』。最近は多くは聴けなくなった彼女のバラード歌唱とあって、その目をうるうるさせている人も少なくない。穏やかな時間。が、次の瞬間には、再び魂の塊のようなボーカルとダンスでもって、ゴキゲンなパーティーチューンを熱唱する彼女。その姿に呼応するようにオーディエンスのレスポンスも明らかに熱を帯びていく。 この辺りから安室は、あらゆるネガティブ要素、例えば不安だったり、戸惑い、プレッシャーを完全に振り切ったパワーと輝きを見せる。この日のライブは高いクオリティを誇りながらも、過去最長ツアーという前代未聞のハードワークには、恐らくプレッシャーもあったであろう。が、中盤、曲で言えば『FUNKY TOWN』『No』『Say the word』といったオーディエンスとの一体感をどれだけ生めるか?が重要なセクションにおいて、彼女はこの日一番とも言える伸びのある声を響かせ、キレのある動きを見せ、更に何段階も上の熱量を体感させたのである。想いが肉体を凌駕した瞬間。
そんな絶好のタイミングで、おそらく安室奈美恵史上最大のチャレンジで、多くのクリエーターの才能を結集したプロダクトともなった新曲、ダンスミュージック界の『ボヘミアン・ラプソディ』とも言うべき『Dr.』が披露される。ジャパニメーションを世界に広めた精鋭達と生み出したミュージックビデオをバックに、今自分が世に最も響かせたいナンバーを、神々しいまでの存在感を放ちながら歌い踊る彼女。で、次も同じくニューシングルから『WILD』が披露された際に思い出したのが、この人は明確な熱気やテンションの上昇を見せると、立ち止まれなくなってしまうということ。本日2曲目となるバラード『White Light』では、(クリスマスの)プレゼントボックスのデコレーションの一部になったかのようなキュートな衣装もさることながら、この曲の幻想的な美しさを見事にその声でも表現し、その後の『Hide&Seek』の行進を皮切りにスタートしたクライマックスの畳み掛けでは、キラーチューンと呼べるナンバーのみを驚愕の7連発。安室奈美恵の変革とも冒険とも呼べる旅の中で打ち出してきた、先進的かつその後のシーンに多大な影響を与えたであろう勝負作ばかりが立て続けに披露される。1曲1曲を見ても全身全霊を要するナンバーをノンストップで展開していく彼女の表情はまさに満身創痍。が、新たなイントロダクションが鳴り響く度に自らを奮い立たせてパフォーマンスを続けるその姿には、胸も打たれたが、それ以上に尊敬の念を抱いた。
再び幕を開けたステージ。安室はボンボンを右手に、マイクを左手に、長い髪をポニーテールに縛って『WoWa』を披露。愛すべき仲間である、ダンサーたちそれぞれのキャラクター溢れるパフォーマンスに笑みを浮かべ、オーディエンスの歓声を力に換えて、その手のタオルをブンブン振り回しながら『CAN'T SLEEP,CAN'T EAT,I'M SICK』を歌う彼女。そんなみんなの温もりを心の深いところまで染み込ませて、今夜最後に安室奈美恵が歌った『Baby Don't Cry』は、いつもと同様に僕らの心を優しく包み込んで、そして彼女自身が明日へと再び走り出すための歌にもなったことだろう。ラスト、みんなの「ベイビードントクライ!」という声を聴いてくしゃくしゃの笑顔を見せた彼女は「今日はみんなありがとうございました」と、今日初めてのMCを展開。バンドメンバーとダンサーメンバーを1人1人大声で紹介してからステージを後にしたのだが、その去り際、幕が締まる瞬間に彼女が見せた満面の笑みでのピースマークは、僕らの脳裏に一生焼き付いて離れないんじゃないかと思うぐらい、眩くて愛くるしかった。
セットリスト
【namie amuro BEST FICTION tour 2008-2009】
2009.05.02(SAT)at 国立代々木競技場第一体育館
- 01.Do Me More
- 02.Violet Sauce(SPICY)
- 03.ALARM
- 04.So Crazy
- 05.NEW LOOK
- 06.Hello
- 07.GIRL TALK
- 08.shine more
- 09.Full Moon
- 10.Luvotomy
- 11.Put'Em Up
- 12.It's all about you
- 13.Wishing On The Same Star
- 14.ROCK STEADY
- 15.FUNKY TOWN
- 16.No
- 17.Say the word
- 18.Dr.
- 19.WILD
- 20.White Light
- 21.Hide&Seek
- 22.Queen of Hip-Pop
- 23.Sexy Girl
- 24.WANT ME,WANT ME
- 25.Top Secret
- 26.BLACK DIAMOND
- 27.WHAT A FEELING
- En1.WoWa
- En2.CAN'T SLEEP,CAN'T EAT,I'M SICK
- En3.Baby Don't Cry
Writer:平賀哲雄
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