Special

井手綾香 『235/消えてなくなれ、夕暮れ』インタビュー

井手綾香 『235/消えてなくなれ、夕暮れ』 インタビュー

もうひとつのデビュー作と共に“第二期・井手綾香”スタート。

 ロングヘアーを切った理由、自ら作り上げた優等生イメージに苦しんだ日々を超え、生まれて235ヶ月目に到達した新境地『235/消えてなくなれ、夕暮れ』や、井手綾香プロデュースの井手綾香を見せていく“第二期”等について、赤裸々に語ってくれた。また、近年の女性シンガーソングライターシーン話にも華が咲き、阿部芙蓉美やNIKIIE等の魅力について語る一幕も。

私が思ったのは、厄が抜けたからじゃないかなって!

井手綾香/パンテーン 2013春 CMソング「235」Music Video
▲井手綾香/パンテーン 2013春 CMソング「235」Music Video

--自慢のロングヘアー、「235」のPVでバッサリ切られてましたね。ガチで「うぉー」「わー」って言っている感じが面白かったです。

井手綾香:(笑)。

--小学2年生からずっとロングヘアーだったんですよね。長い髪が好きだったの?

井手綾香:おばあちゃんから「若い頃は、髪は短くしておきなさい」と言われていたんですけど、すごく反発したくて。「いや、長い方が絶対可愛いでしょ」と思って、長い髪を貫いていたんですよ。何年間もずーっと。で、センター分けのロングストレートに落ち着いていたんですけど、落ち着きすぎちゃって……。私は高校生でデビューして、ロングヘアーに制服姿で歌っていて。

--ザッツお嬢様の印象でした。

井手綾香:そうですよね(笑)。田舎で暮らしてるハーフの女の子。歌う曲もすごく前向きで、純粋で、大きなテーマで歌っているものが多かったり、自然を表す言葉を多く作詞で用いてたりしてたんですけど、私はいろんなタイプのメロディーや歌詞の曲を実はそのときから作っていて。例えば、3コードしかない「うぉー!」とか「いぇー!」とかしか言わない、ロックっぽい曲も作っていたんですよ。でもそういう曲よりも「雲の向こう」だったり、「ヒカリ」だったり、その輝きをテーマにしている曲が私の中から一番表に出ていて。「あ、私はこういう曲を歌っていくべきなのかな」と。井手綾香と言えば、前向きで、明るくて、誰かの背中を押すような曲を書く人であるべきなんだって思って。

--実際、そうした曲を歌い続けてましたよね。

井手綾香:でもいつの間にか行き詰まって。

--そのスタイルに?

井手綾香:はい。私は、本当はもっといろんな音を使いたいし、もっとロックもやってみたいし、すごく音数の少ないアコースティックなものもやってみたいし。で、本当はすごく暗いメロディーが好きだったり、バラードが好きだったりする。だから「みんなに知ってもらえてる自分以外の自分もちゃんといるのに、それを殺しちゃってないかな?」って思って、自分が「ここから出ちゃダメだ」と勝手に作り上げてしまった殻を破りたいと思ったんですよ。髪もそうで、デビューしたときからのロングヘアーを貫かなきゃいけないとか、あの雰囲気をずっと残さなくちゃいけないとか、勝手に思っていたから、これを機に切りたいと思ったんです。

--「私はこれだけじゃない」という解放に向けた意思表示であると。

井手綾香:自分で勝手に縛ってたんですけどね。周りが言うことは100%正解だと思って、全部自分に取り込んでいたんですけど、そしたらワンパターンの自分になっていってしまってて。私は人のことばかり気にしてしまう性格らしく「みんなにこう思われたら嫌だな」って思うから、みんなが「こうしてほしい」と思うことはやらなきゃってなる。ただ、私が今までと違うことを歌って「嫌だ」って言われるかは分からないし、私が自らの足で動きだすことって、逆にみんな待ってるんじゃないかなって思えた。それで今回のシングルでは髪を切ったりとか、いろいろ挑戦してみたんです。

--「235」のPVって、言ってしまえば、ただ髪を切られてるだけのPVなんですけど、今の話がすべて集約されてますよね。自分ではどんな印象を?

井手綾香:あのPVは何度観ても笑ってしまいます。自分の表情が本当に“素”でありすぎて。

--お芝居じゃないですよね。

井手綾香:完全に素です。髪切られてるときの表情とか。私が髪を切ろうと思った理由は前向きなものなので……まぁ似合わなかったらどうしよう?とか、そういう怖さはありましたけど(笑)、それにも増して「自分が変われるんだ」っていう嬉しさの方が大きくて。だから心の底から切られる喜びが表面に出てるし、自分で観てても笑っちゃうというか、楽しくなっちゃう。

--そもそもこの「235」という曲自体はどういう背景や想いから生まれたものなの?

井手綾香:髪を切る理由と重なるんですけど、私、去年の後半ぐらいからすごく落ち込み期に入って。自分が何をしたいのか、何故ここにいるのか、分からない。でも私は音楽が好きだし、ここに来たいと思って来てるから、絶対後戻りはしたくない。頑張りたいし、良い曲書きたい、歌いたいって思ってるのに、なかなかそれが形にならない……。

--簡単に言えば、スランプ?

井手綾香:そうですね。どんなに曲を書いても「あーなんか、前に描いたものと似てる」とか。だから今までのピアノで曲を作る形じゃなく、ギターを買ってそれで作曲してみたりもして。とにかく苦しんでましたね。「何の意味があるんだろう?」ぐらいまで思いましたし、誰かと自分を比べてしまって「自分はダメだ」と落ち込んだり。

--自分にないものばかり数え始めるパターンですね。

井手綾香:自分にはアレもコレもない、ないないない!って。自分の良いところを見てあげようともしなくて、そのときはいつもシャワー浴びながらワァー!って泣いてて。

--本当にヤバいモードだ(笑)。

井手綾香:いっつも落ちてました(笑)。でも落ちているところを人には見られたくないんですよ。いつも笑ってるイメージだと思うので、自分ひとりですべて抱え込んで、誰にも悩みは言わない。自分のやりたいことを伝えるのも怖くて、打ち合わせとかでも「自分がこれを言ったら、周りはなんて思うんだろう?」って不安になっちゃうんですよ。自信がないから。それで「こんな自分、嫌だ」って自分を責めたりしてたんです。……でも理由は分からないんですけど、今年に入った途端にそういうどよーんとした気持ちがスッと前向きになったんですよね。急に晴れやかになった。年明け、実家に帰ったからかもしれないし、私が思ったのは、厄が抜けたからじゃないかなって!

--いやいやいや。大体、こういう闇から抜け出していくストーリーって、何らかのドラマティックなキッカケがあり、「私、前より強くなった」的な未来へと突き進むことができて、「だからこそ今回の作品が出来たんですねー」ってインタビュアーが言って締まる訳ですけど、オチが「厄、抜けた」って(笑)。

井手綾香:きっかけを聞かれても本当に分からないんですよ! だから厄のせいにしてるんですけど。ほら、年が新しくなると、新しいページに立てるから。それで「ここからまた頑張ればいいじゃん!」って思えたんじゃないかなって。

NEXT PAGE
  1. < Prev
  2. 思い出もいっそのこと無くなっちゃえばいいのに!
  3. Next >

井手綾香「235/消えてなくなれ、夕暮れ」

235/消えてなくなれ、夕暮れ

2013/07/17 RELEASE
VICL-36796 ¥ 1,257(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.235
  2. 02.消えてなくなれ、夕暮れ
  3. 03.One More Step
  4. 04.A Natural Woman

関連キーワード

TAG

関連商品

A.I. ayaka ide
いであやか「A.I. ayaka ide」

2017/04/12

[CD]

¥2,970(税込)

A.I. ayaka ide
いであやか「A.I. ayaka ide」

2017/04/12

[CD]

¥3,520(税込)

ワタシプラス
井手綾香「ワタシプラス」

2014/04/16

[CD]

¥3,190(税込)

ワタシプラス
井手綾香「ワタシプラス」

2014/04/16

[CD]

¥3,740(税込)

235/消えてなくなれ、夕暮れ
井手綾香「235/消えてなくなれ、夕暮れ」

2013/07/17

[CD]

¥1,257(税込)

つばさ
井手綾香「つばさ」

2012/08/15

[CD]

¥1,257(税込)

A.I. ayaka ide
いであやか「A.I. ayaka ide」

2017/04/12

[CD]

¥2,970(税込)

A.I. ayaka ide
いであやか「A.I. ayaka ide」

2017/04/12

[CD]

¥3,520(税込)

ワタシプラス
井手綾香「ワタシプラス」

2014/04/16

[CD]

¥3,190(税込)