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楽園おんがく Vol.2:喜納昌吉&チャンプルーズ at 伊江島ゆり祭り
旅と音楽をこよなく愛する、沖縄在住のライター 栗本 斉による連載がスタート。Vol.2となる今回はゴールデン・ウィークに開催された「伊江島ゆり祭り」の模様をお届け。
沖縄は、4月になると海開き。とはいえ、今年は例年になく気温が低く、天気も不安定。だから、ゴールデン・ウィークもビーチで遊ぶのは難しい。そんななか見つけたのが、伊江島のゆり祭り。伊江島は沖縄本島の北部にある本部港からフェリーで30分。標高170mほどの岩山タッチューの景観で有名な小さな島だ。島の一角にはリリーフィールド公園があり、4月下旬になると100万輪のテッポウユリが満開となる。それに併せて、「伊江島ゆり祭り」が行われ、一気に賑わうのだ。さっそくフェリーと民宿を予約し、家族旅行を兼ねて祭りを観に行くことになった。
このゆり祭りは、たくさんのゆりの花を愛でながら、沖縄そばやサータアンダギーなどが並ぶ屋台で買い食いというのがいちばんの楽しみ方。いわゆる花見と考えてもらえればいいだろう。ただ、敷地が広大なので、人混みでイライラするということもない。また、独特の景観の海岸や岩場なども見学することができる。
そして、祭り会場では特設ステージが組まれており、期間中は様々なイベントが行われる。民謡ショーから地元ラジオの公開生放送、祭り太鼓の演奏からマジックショーまで、いわゆるローカルな雰囲気の漂う出し物がたっぷり。会場内も椅子ではなく、ビールケースの上に座布団を敷いたという簡素なもので、逆にそれが風情もあってなんだか楽しい。
僕がこの祭りに訪れた4月28日は、民謡サークルの発表会やカラオケ大会などが行われていたが、メイン・イベントは喜納昌吉&チャンプルーズのコンサート。もちろん誰もが観られるオープンのフリー・イベントだ。
喜納昌吉といえば、ウチナーポップ(沖縄のポップス)を代表するミュージシャンのひとり。1948年にコザ(現在の尾沖縄市)で生まれ、1976年にチャンプルーズを結成。「ハイサイおじさん」や「花~すべての人の心に花を~」など名曲を発表し続けている。最近では政治家としての一面でクローズアップされることも多い。
ライヴは、祭りだけにゆるやかに始まった。まずはチャンプルーズのメンバーだけがステージに上がり、民謡メドレーがスタート。場を暖めた後は、いよいよリーダーの喜納昌吉が登場。ヒゲを生やしているイメージがあったが、ステージ上の喜納はさっぱりしていてとても若々しい。まずは、強烈なメッセージ・ソング「金網のない島」からスタート。続いては、沖縄民謡を歌ってコントラストを付ける。
全体的に民謡をベースにしながらも、エレクトリックのバンドということもあり、かなり激しく音量も大きめ。ハード・ロックやプログレのエッセンスを取り入れるなど、斬新なアレンジで緩急を付けていく。とくに中盤で披露した三線ソロは、エレキギターや三板(サンバ。カスタネットのように小さな3枚の板を鳴らす楽器)のアンサンブルをバックに弾きまくるという、迫力のある演奏を展開してくれた。
また、MCでもメッセージを盛り込むことは忘れない。昨今の中国との関係を憂慮する発言をしてからしっとりと歌い上げた「花~すべての人の心に花を~」、“私の明るい魂をアメリカや中国に届けて戦争をやめさせましょう”と盛り上がった「ハイサイおじさん」。代表曲をただ歌うだけでない強い意志を伺うこともできた。伊江島は米軍基地の島ということもあり、観客もしんみりするシーンが多かった。
アンコールでは観客のリクエストに応えて、ユーモラスな「うわき節」を披露。続けて、「うちなーの島に風吹けよ、雨降れよ」とスケール感たっぷりに歌い上げる「火神 HINUKAMI」。気が付けば、観客もステージに上ってカチャーシーが始まっていた。そして、ダブル・アンコールとして再び「ハイサイおじさん」を演奏。さっきと違って三線ヴァージョンで歌い、盛大に終了した。
ローカルな祭りといえども、喜納昌吉は世界的に知られるミュージシャンだ。世界に発信する音楽が、フリーで観られるというのも、沖縄の魅力といってもいいだろう。まだちょっと早いが、来年のゴールデン・ウィークは、ぜひ伊江島のゆり祭りに!
栗本 斉 Hitoshi Kurimoto
旅と音楽をこよなく愛する旅人/旅&音楽ライター/選曲家。
2005年1月から2007年1月まで、知られざる音楽を求めて中南米へ。2年間で訪れた国は、ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイ、チリ、ボリビア、ペルー、エクアドル、コロンビア、ベネズエラ、トリニダード・トバゴ、パナマ、メキシコ、キューバの、合計14カ国。
帰国後は旅と音楽にこだわり、ラジオや機内放送の企画構成選曲、音楽&旅ライター、コンピレーションCD企画、ライナーノーツ執筆、講演やトークイベント、ビルボードライブのブッキング・コーディネーターなどで活動中。得意分野はアルゼンチン、ワールドミュージック、和モノ、中南米ラテン旅、世界遺産など。2013年2月より沖縄県糸満市在住。
ゴールデン☆ベスト 喜納昌吉&チャンプルーズ
2021/06/09 RELEASE
UPCY-9303 ¥ 1,046(税込)
Disc01
- 01.ジンジン (JING JING)
- 02.てぃんさぐぬ花
- 03.まぶやー まぶやー
- 04.愛は私の胸の中
- 05.泣くな かなしー小
- 06.月ぬ夜
- 07.うむしるむん
- 08.石笛のうた
- 09.未来へのノスタルジア
- 10.すべての人の心に花を (『火神』Version)
- 11.ハイサイおじさん (Live Version)
- 12.いちむし小ぬユンタク (Live Version)
- 13.島小 (Live Version)
- 14.ボーダーレス・ジンジン (Live Version)
- 15.花~すべての人の心に花を~
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