Special
新・名盤探検隊
『あの名盤探検隊が再び未知への探検に出発しました。』
というコピーと共に、98年から00年にかけて、往年のポップス・ロックファンはもちろん、後追いのファンまで巻き込んで熱い注目を集めた、ワーナーの伝説の再発シリーズ『名盤探検隊』が帰ってきました。
当時発売された作品と世界または日本初の発売作まで織り交ぜてラインナップされ、2013年最新リマスター、最新書下ろしライナーノーツ、歌詞・対訳付きで、スペシャルプライス1200円(税込)!4月から続々リリースされます。
今回の特集では、名盤探検隊の4月の主な「成果」にスポットを当てて、70年代にアメリカはもとより、イギリスや日本まで巻き込んで様々な音楽ジャンルの源流となった、「古くて新しいアメリカン・ロック」を特集します。
●マッスル・ショールズの「成果」●
アメリカの古い音楽を新しい解釈で蘇らせる、このトレンドに大きな役割を果たしたのが、南部アラバマ北のマッスル・ショールズ・サウンド・スタジオです。ディープ・サウスならではの、ゴスペル、カントリー、ブルースやR&Bが混然一体となった、ごった煮ルーツ・サウンドに、アレサ・フランクリン、ウィルソン・ピケット、パーシー・スレッジ、キャンディ・ステイトン(つまりアトランティック・ソウルですね)などなど、数々のソウル名作が、まず生み出されました。
余談ですが、アトランティックの創設に加わった元ビルボード記者、ジェリー・ウェクスラーは、50年代後半「R&B」の名付け親でも有名ですが、このスタジオ、もっと言えばこのトレンドの隆盛にも大きく関わっていたとされています。
そして、当時流行のサイケやプログレに嫌気が差していた白人ロック/ポップスアーティストがこのサウンドに強く魅せられ、アラバマ詣でが始まります。ポール・サイモン、ローリング・ストーンズ、ロッド・スチュワート、ボブ・ディラン、ボズ・スキャッグス…。そこで起こった「アメリカ」を再び問い直すこと、それはベトナム戦争に疲弊した世相を色濃く反映した、世界的な潮流となったのです。
ジーニー・グリーン
『マリー・コールド・ジーニー・グリーン』
71年作品。マッスル・ショールズのエンジニアの嫁、ジーニー・グリーンによる唯一のソロ作。ゴスペル色の強いサウンドに負けない豪快なシャウトで、傑作スワンプアルバムを彩る、知る人ぞ知る名作。日本初CD化。
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ドニー・フリッツ
『プローン・トゥ・リーン』
74年作品。マッスル・ショールズといえば名の挙がる本作。トニー・ジョー・ホワイト、リタ・クーリッジが参加し、滋味豊かなサウンドがここに。
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バリー・ゴールドバーグ
『バリー・ゴールドバーグ』
75年作品。ボブ・ディランとジェリー・ウェクスラーのプロデュースによるマッスル・ショールズ・サウンド。レイドバックした中で熟練のバッキングが聴ける。日本初CD化。
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ルブラン&カー
『ミッドナイト・ライト』
77年作品。上記の二人がようやくデュオで発表した作品。ルブランのソロ作を推し進め、AORとルーツ・ロックが幸福なカップリングを果たす、稀有な作品。スマッシュ・ヒット「フォーリン」収録。
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レニー・ルブラン
『レニー・ルブラン』
76年作品。マッスル・ショールズで頭角を現したピート・カーが旧友をプロデュース。厳密にはマッスル・ショールズ・サウンド・スタジオでの録音ではないが、もちろんこれも誠実なアルバム。AORのトレンドに呼応したルーツ・ロック。世界初CD化。
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●西海岸の「成果」●
マッスル・ショールズでは、そこで作り出されるサウンドが主体となっていた一方で、西海岸の同時期、それぞれのプレイヤーにスポットが当たる形で、このトレンドに呼応した作品が多数生み出されました。
まずはダニー・コーチマー。ジェイムズ・テイラー、キャロル・キング、ジャクソン・ブラウンとの盟友として、またウェストコースト・サウンドを牽引するギタリストとして著名な彼ですが、彼もまた、R&Bを白人ならではのポップ感を加えて表現する点において、この文脈で語るべきアーティストです。
続いて、ドクター・ジョン。音楽の街ニュー・オリンズ出身の彼は、50年代からニュー・オリンズでソングライターとして活動、麻薬不法所持で60年代中頃に西海岸へ移住、ディープ・サウスなニュー・オリンズの音楽をポップに体現できる、まさにうってつけのアーティストとして、当時のシーンに登場しました。
そして、ジム・クエスキン。20年代のジャグ・ミュージックを60年代に蘇らせたボストン出身のジム・クエスキン・ジャグ・バンドを率いた彼もまた、スウィング・ジャズからカントリー、ブルースをごった煮にして、ポップに蘇らせた存在として、アメリカン・ミュージック史にその名を残すアーティストです。
このように、マッスル・ショールズとは趣が異なるものの、同時代多発的なトレンドとして、西海岸でも、豊穣な「アメリカン・ミュージック」としか表現出来ない音楽が生まれていたことは、40年以上の時が隔てた私たちから見ると、「探検」するに相応しい、音楽が繋ぐ奇跡を垣間見る出来事と言えます。
ジョー・ママ
『ジョー・ママ』
70年作品。ダニー・コーチマーが、ジェイムズ・テイラー、キャロル・キングとの共演を経て、旧知のプレイヤーを集めて結成したバンドによる、アーシーとポップ感を両立させた名作。
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ドクター・ジョン
『ガンボ』
72年作品。ジェリー・ウェクスラーを迎え、ニュー・オリンズに残る名曲の数々をカバー、その完成度の高さから、今もニュー・オリンズの決定盤として名高い傑作。
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ドクター・ジョン
『イン・ザ・ライト・プレイス』
73年作品。名盤『ガンボ』の勢いそのまま、ミーターズによるサポートと、アラン・トゥーサンのプロデュースにより、ルーツを生かして作られた、新しいニュー・オリンズ・ミュージックがそこに。
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ジム・クエスキン・ジャグ・バンド
『ガーデン・オブ・ジョイ』
67年作品。60年代東海岸で勃興したジャグ・ミュージック・リヴァイヴァルの旗手による、ラスト・アルバムにして文句無しの名作。ジェフ&マリア・マルダーが在籍し、当バンド解散後に結婚、ウッドストックで傑作を生み出すのはまた別の話。
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ジム・クエスキン
『アメリカ』
71年作品。上記バンドを解散し、ジャグ・ミュージックを封印して、ルーツ・ミュージックと向き合った、スピリチュアルな傑作。古き良きアメリカン・ヒーローをコラージュしたジャケット同様、古き良きフォーク・ソングをカバーした、まさにこのシーンを牽引したアーティストならではの自覚的な作品。
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●ビルボードライブの「成果」●
ビルボードライブでは、このシーン所縁のアーティストが来日公演を行います。ここでは、それらのアーティストをご紹介します。
ボビー・ウーマック
60年代からソウルマンとして、シーンに君臨し続ける彼は、70年初頭では、スライやデラニー&ボニーとの交流を深め、71年『コミュニケーション』では、マッスル・ショールズで録音、ジェームス・テイラーやカーペンターズのカバーを収録、などなど、このシーンと呼応しつつも、唯一無二のアーティスト性も並立する作品をリリースしています。
レオン・ラッセル
オクラホマ出身、50年代後半からロサンゼルスで活躍した彼は、前述のマッスル・ショールズ人脈、西海岸プレイヤー人脈、英国アーティストを繋ぐキー・パーソンとして、LAスワンプの立役者となりました。意外と遅かったソロ・デビュー作の70年『レオン・ラッセル」、セカンドの71年『レオン・ラッセル・アンド・ザ・シェルター・ピープル」は、デラニー&ボニー、エリック・クラプトン、ジョー・コッカー、ジョージ・ハリスン、ジェシ・デイヴィス、ジム・ケルトナーなどなど、決定盤的な作品となっています。現在も意欲的な活動を続け、10年にはエルトン・ジョンとの共演作、『ザ・ユニオン』をリリースし、注目を集めました。
ディッキー・ベッツ & グレイト・サザン
フロリダ出身。マッスル・ショールズで活動していたデュアン・オールマンとともに69年にオールマン・ブラザース・バンドを結成、ソング・ライター兼ツイン・リード・ギタリストとして、サザン・ロックを牽引、デュアン死後の73年にリリースさ`れた名盤『Brothers And Sisters』(ビルボード1位)収録の「Ramblin’ Man」は、オールマン最大のヒット曲(ビルボード2位)で、彼のボーカル曲。76年解散後、グレイト・サザンを結成、オールマンから続くスライドギターの名手として、ツイン・ドラムのサザン・ロックのスタイルを守り続けています。
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