Special
<インタビュー>中島健人 「鬼事」がアニメと密にリンクする理由 アーティストとしてのプライドを注ぎ込んだ3rdシングル制作過程

Text & Interview: 高橋梓
Photos:Shintaro Oki (fort)
8月19日、中島健人が3rdシングル『鬼事/Fiction Love』をリリースした。同作は、TVアニメ『逃げ上手の若君』第二期オープニングテーマと、本人主演の映画『ラブ≠コメディ』の主題歌という、異なる魅力を持つ2曲が収録されており、さまざまな表情の中島を堪能できる。作品に込めたこだわりやクリエイティブについて話を聞くと、随所に“ケンティー節”が。彼らしい言葉で制作背景を語ってくれた。
──まずは、最近の振り返りからさせてください。【"IDOL1ST 中島健人" LIVE TOUR 2026】は、過去のツアーやライブと比べてどんな違いを感じていらっしゃいますか?
中島健人:去年よりもさらに一体感が増して、熱狂性を帯びていますね。実は去年、ライブ制作チームから「中島さん、まだまだお客さんの声が足りていないです」と言われたんです。僕は「え? 結構すごくなかった?」と思ったのですが、「まだイケます」と。そこからみんなさらに上を見るようになりました。僕、ライブの定義って「生きている感覚をU:nity(中島のファンの呼称)と一緒に掴むこと」だと思っていて。そのためには声を出したり、一体感を生み出したり、騒いだり、歌ったりすることだな、と。改めてそう思って臨んだところ、去年の【N / bias】ツアーよりも数倍、熱狂性が高まったと感じています。
──よりアツいライブになっているのですね。8月29日からは初のアジアツアーもスタートしますね。
中島:日本でのライブとまったく違うものになります。フルリフォーマットするわけではないですし、このツアーの物語の続きではありますが、大きく3つの違いを見せられると思っています。1つ目は、言語。僕は言語を大切にしているので、できる限りその国々の言葉で喋りたいんですよね。英語を活用しながら台北、バンコク、ソウルの言語を随所で使っていきたいと思っています。【MUSIC AWARDS JAPAN 2026】でサム・スミスさんとお話をした時に、言語を勉強していてよかったと思いました。それを今回も活かしていきたいので、言語を楽しみにしていてほしいです。2つ目は日本人らしさ。やはり和の要素をちゃんと連れていきたいな、と。和の要素と言ってもいろいろありますが、そのうちの一つはアニメ。僕はアニメの主題歌をいくつか歌わせてもらっているので、そういった曲も披露しようと思っています。そして3つ目は肉体の解放。ちょっとマッチョな中島健人も見せていけたらと思っています。
──以前、筋トレに励んでいるとお聞きしましたが、さらにパンプアップ中ですか?
中島:今はちょうどインターバル中なんです。でも、筋肉は小さくなっていなくて。筋肉という重りを背負って踊ってきたので、国内ツアーも余裕だったんでしょうね。自分の身体はコントロールできるという自覚があるので、アジアツアーでは国内ツアーでやらなかったこともしていこうかな、と。見ている女子たちがそそるような、周波数が繋がるようなテーマでいきます。「チューニング、俺に合わせとけよ」という感じですね。

──さすがです! 国内ツアーとアジアツアーの間には【SUMMER SONIC 2026】にもご出演されます(取材は7月下旬に実施)。フェスには慣れましたか?
中島:僕、猛暑の野外フェスに出たのが【ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2024】のみで、しかもGEMNとして1曲歌っただけなんです。中島健人としては【JAPAN JAM 2025】に出演しましたが、まだ5月でした。【サマソニ】は立秋を過ぎていますが、まだまだ夏。暑さに負けないステージにしたいですね。この世に太陽は2個もいらないから。「俺という太陽だけに照らされておけばいいよ」というレベルで、僕が一番熱くいたいです。
──キラーフレーズ、ありがとうございます……!
中島:でもね、熱中症には本当に気を付けてほしくて。手のひらを冷やすといいですよ。首や脇も大事ですが、冷却性が一番伝わるのは手のひら。だから、僕のライトスティックに巻くタイプの保冷剤を付けておくといいかも。かわいく保冷剤を持って、暑さを乗り切ってほしいです。
──では、3rdシングルのお話も聞かせてください。表題曲2曲はすでに先行配信されていますが、意外だった反応などはありましたか?
中島:まず、楽曲に付随した映画の話なのですが、「Fiction Love」が主題歌になっている映画『ラブ≠コメディ』の評判がすごくよくて。「Filmarks」の満足度ランキングで1位を獲ったり、映画好きの方に深く刺さったりしていて、それは予想以上の反響でした。と同時に、「曲を全部、中島健人が書いているのがおもしろい」という口コミが嬉しかったです。19歳の頃から楽曲制作をしているので、自分の曲で映画を盛り上げられたのはアーティストとして大きな喜びを感じました。
──私も楽曲と映画のマッチ具合が素晴らしいという声を目にしました。
中島:「Fiction Love」っていうタイトル自体が、映画を見ていただくと意味がわかるものになっていて。ちょっとした裏話をすると、2ndアルバム『IDOL1ST』に収録されている「最初はキュン!」は、もともと『ラブ≠コメディ』の主題歌として書いていたんです。Aメロの〈雨に打たれても めげない君は強い〉は映画のヒロイン・南風美里が雨に打たれているシーンを想像して書いていて。ただ、制作サイドから「ちょっとかわいすぎるから、もう少し大人っぽいラブソングがいい」と言われて、「Fiction Love」が誕生しました。なので、僕の中では「Fiction Love」が長女、「最初はキュン!」が次女、劇中歌になっている「ストロベリー」が三女。さらに挿入歌の「愛してTonight」が加わって、“『ラブ≠コメディ』ユニバース”が作れたというか。めちゃくちゃ楽しかったです。

──楽曲たちは撮影後に作ったのですか?
中島:「ストロベリー」、「愛してTonight」、「最初はキュン!」は撮影前に作っていました。各曲クランクアップ後に2番を書き足しているのですが、なんだか演じる前に書けちゃって。今回、全部1番だけを映画に提供しているので、骨組みは映画前に出来上がっていましたね。去年の夏くらいかな。
──それこそ中島さんが作詞作曲された「Fiction Love」には、主演映画だからこそ出てきたワードやメロディーもあるのではないでしょうか。
中島:たとえば〈鋭い視線が交わるドラマ〉、〈予想外の展開だって〉、〈君はアドリブがある〉など、山程ありますね。俳優の堺雅人さんが「すべては準備。ふざけるための準備をしないといけない」とおっしゃっていましたけど、アドリブに対応するためにはアドリブに対応する準備が必要なんです。でも、僕が演じた神崎麗司はちゃんと準備しない人だったから、南風美里の本当に恋をしているような表情に負けてしまった。それを自分で演じたからこそ思い浮かぶ情景を歌詞にできました。あと、〈愛じゃないよ。愛じゃないの?〉は神崎と美里の会話。ヒロインが「愛じゃないよ」、神崎が「愛じゃないの?」と言っている。それは君と僕とのフィクションラブだからね、という意味なんですよ。
──なるほど。一聴しただけでは気付きにくい仕掛けがあるんですね。
中島:そうですね。「Fiction Love」は映画の本質を突く作品になればいいなと思っていました。それと、期待してほしいのは『ラブ≠コメディ』三姉妹の三女「ストロベリー」。みんな好きだと思うので、早くリリースしたいです。
──個人的に「Fiction Love」のメロディーやサウンド感もかなり好みで。どういう流れで作られたのでしょうか。
中島:僕、曲の作り方が2パターンあって。1つ目はアレンジャーさんがパソコンの前に、僕は鍵盤の前かソファーに座って作るパターン。僕がメロディーを出して、アレンジャーさんと一緒にサビのコード進行、BPM、キックやスネア、アルペジオをつけてスケッチを書く流れです。もう1つは、鼻歌だけで作るパターン。(歌いながら)タラタラターラン♪なら、母音がaの言葉から始まったほうがいいな、ツィツィツィツィ♪なら母音はiの言葉が歌詞にハマるんだろうなと決めていくんです。「Fiction Love」は後者で、「ストロベリー」と「愛してTonight」は前者のパターンで作りました。
──その作り方の違いはどう決めるのですか?
中島:時間があるかないか……(笑)。時間が限られてくると出先で曲を作らなくちゃいけないので、最近パソコンを持ち歩くようになったんです。でも、あんまり好きじゃないんですよね。鍵盤がないと無理。キタニティー(キタニタツヤ)やAyase(YOASOBI)はパソコンで曲を作るプロフェッショナルだから、今度2人から教わろうと思います。
──「Fiction Love」のコレオも中島さんが担当されていて、真似したくなる振りが満載です。
中島:自分の顔に対して「L」を作るのですが、ちょっと小顔ダンスっぽくなるかなと思って作りました。それと同時にネイルも見せられるという。さらに言うと、〈FICTION LOVE, FICTION LOVE〉の部分はドラマの画角を表現していると同時に、「F」になっていて。そこから指を動かして「L」になる。つまり「“F”iction “L”ove」になっている、と。「最初はキュン!」のちょっとおしゃれなバージョンにしたいという考えでした。
意外と難しいんですよ、これ。「最初はキュン!」の〈じゃんけん恋!〉ができたらできると思うので、どっちも練習してみてください。これまでも自分でコレオを作った曲はありますが、その中でも一番「Fiction Love」が踊っていて。ダンスブレイク部分があるので、しっかり時間をかけて作りました。
──そのダンスも見られるMVもかわいいですよね。中島さんがお得意なテイストだなと思いながら拝見していました。
中島:仰るとおり! 実はソニーに来てから1回もキラキラ系をやっていなかったので、いいタイミングで出せたなと思っています。U:nityの皆さんはああいうのが好きですし、僕もSTARTOの一員としてDNAレベルで刻まれているから。僕は事務所の中でクリエイティブ性に一番特化していたいので、そこにかわいさが掛け合わさるとどうなるのかの実験でもありました。

──もう1曲の「鬼事」は、アニメファンにもU:nityにも刺さる歌詞です。制作はどう進められたのでしょうか。
中島:一緒に制作したsabioくんがもともと僕のファンだったみたいで。今年1月に行われた【ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピックTEAM JAPAN壮行会】の合間にリモートで初めて打ち合わせをしたんです。最初はストイックな感じで話されていたので、「粛々とやる方なんだな」と思っていたのですが、終わり際に「好きです。グループの時からの推しです」と突然言われて(笑)。彼が作るメロディーは僕のことをとてもわかってくれているものでしたし、アニメにも即していました。歌詞の世界観も一緒に作ったのですが、さすがでしたね。〈命短し、歌えや踊れ。〉というフレーズが最後だけ〈命短し、恋せよ乙女。〉となっているのですが、これもsabioくんのアイデア。お互いのプライドと個性を持ちつつ、いいものを作るためにパズルを入れ替えてピースをはめていくという作業をして完成させました。
──いいクリエイティブだったんですね。
中島:そうですね。「最初はキュン!」を書く前から、伝承遊びを音楽に落とし込んだらおもしろそうと思っていて。今回も伝承遊び系の歌詞を書けてよかったです。「Fiction Love」とはまた違って、大衆性が強い楽曲なので幅を広げるという意味でもいい曲ができたと思います。ちなみに、sabioくんが最初に持ってきてくれたのが89秒のアニメサイズだったんですね。つまり、頭がサビからスタート。でも、リリース版は最初にフックとなる〈鬼さんこちら、手の鳴る方へ。〉から始めたくて。リリース版とアニメ版で楽曲の姿が変わっているというギミカルなことを実はやっています。“ギミごと”ですね(笑)。
──ギミごと(笑)。歌詞の内容もいいなと思いました。中島さんのアティチュードとアニメの内容がリンクしているというか。
中島:マジでそうです。アニメは南北朝、つまり誰が政権を取るかという動乱の時代のお話。そして僕自身も常に動乱の時代を生きているんですよね。3年前くらいに自分の未来をすごく考えました。どう動いていけばいいのか、どういう人と繋がるのがいいのか、常に考えながら生きてきて。その中で、立ち向かうだけではなく「これはやらなくていい」と判断したこともありました。僕は生きるための逃げはアリだと思っているんですね。アニメでも逃げ上手と言われるくらいの若様が鎌倉にあった大切なものを取り戻しに行きますよね。僕もこの数年で失ったものを取り戻しに行っている。そう考えると僕と若様の生き方が似ているんだと思います。
──たしかに。
中島:僕は『ターミネーター2』に出てくるT-1000のように何発撃たれても死なないですが、やっぱり辛い時期はあって。「ピカレスク」を書いていた頃はきつかったし、逆風でしたが、取り戻さなきゃいけない愛や希望、目標、夢がありました。若様が足利高氏から鎌倉幕府を奪還しようとするのと似ているんだと思います。だからこそ、自分の歌としても歌えているんでしょうね。以前も話したかもしれませんが、僕は運命的なものはあると思っていて。でも抗うのが人間らしい。だからこそ〈運命塗り替えてゆけ 君を抱き 業に抗い〉という歌詞が書けたんだと思います。

──自分事として書くことで、自ずとアニメに重なっていくんですね。さらに、MVでは鬼の衣装の中島さんが妖艶でした。
中島:長野で撮影しました。アニメにも長野が登場するので、運命的ですよね。しかも、天気予報では撮影日が土砂降りと言われていたのに、蓋を開けたら、激晴れ!
──中島さんは太陽ですから。
中島:そう(笑)。ドローン撮影のシーンなんかは、眩しくて目が開けられなくらいでした。なぜか、自然の摂理には強いんですよね〜。しかも、『ちるらん 新撰組鎮魂歌』に出演した後だったので自分の中で歴史ブームが来ていて。振付師のMacotoくんも大河ドラマを見ていたみたいで、2人で歴史について語り合いながら撮影をしました。めっちゃ盛り上がりながら作ったMVなので、キレがあると思います。それと、ワンちゃん。僕のそばにいたワンちゃんがカメラを横切ってカットアウトするシーンがあるのですが、リハーサルでは何度やってもうまくいかなかったのに、本番は一発で上手くいって。あまりにもタイミングがバッチリすぎて拍手喝采でした。助演「犬」優賞です。あとは、和装ね。
──そのお話もお聞きしようと思っていて。和装でめちゃくちゃ踊っていますよね。
中島:意外と踊りやすかったです。Macotoくんが踊りやすい振付にしてくれましたし、「和装したいな」という気持ちが高まっていた時期だったので、何一つストレスはありませんでした。ただ、袴でハイキックだけは難しかったです。でも、「Fiction Love」と比べると「鬼事」のダンスは楽かも。僕が作る振りってすごく細かくて、脳トレみたいって言われるんですよ。その点、「鬼事」はさすがRHT.メンバーが作る振りだなと。今までにも数曲、振りを作っていただいていますけど、みんな本当にすごいです。
──ほかの収録曲「ストロベリー」、「愛してTonight」、「Hey!! Summer Honey(ver 2.0)」の聴きどころも教えてください。
中島:じゃあ、まず「Hey!! Summer Honey(ver 2.0)」から。これは僕が大学2年生、約10年前に作った楽曲です。あの頃は声が高かったので、サビのキーがめちゃくちゃ高いんです。今回、頑張って歌ったので、サビの歌声を聴いてほしいですね。「ストロベリー」もサビがポイントかな。カラオケで好きな人に向けて歌ってみてほしい。高校生とか、カラオケに行くときは集団で行くじゃない? その時に好きな人を見つめて歌ってごらん。相手は気付きますから。〈ドンドン好きになっていった〉の部分で相手が好きになっていくはず。この曲って、王道というか、“ストロベリーメロディー”なんですよ。僕は甘酸っぱいメロディーを作るのが得意なんだと改めて感じた曲でもあって。「XTC」や「SOL1ST」のような曲も好きですが、得意で言ったら「ストロベリー」。
「愛してTonight」は、令和にはいない90年代のスターの曲を作ろうとイメージしたのですが、メロや歌詞、アレンジが終わったらすごくかっこいい曲になりました。僕の宝物のような楽曲である「RUN」(Sexy Zone)を作ってくださった渡辺拓也さんにアレンジをお願いして、今後の自分の味方になる曲になりました。聴きどころは、2番の〈テーブルの下で シッ まだだよ〉という部分。要は俗に言う「under the table」というやつで、何が起きているかわからない。もしかしたらテーブルの下で手を繋いでるかもしれない。でも、この曲は執事とお嬢様のお話だから、そんなことをしちゃいけないわけで。でも、お嬢様は執事の手を握ろうとするから、「シッ まだだよ」と執事がお嬢様を躾けているようで、実は逆という。そういう妄想で書いた「少女漫画エロティック」な曲です。
──どの曲も歌詞とともに聴くのが楽しみです。では最後に1つ。「鬼事」=クールでストイック、「Fiction Love」=甘くてロマンチックとした場合、今の中島さんの「鬼事」と「Fiction Love」の割合は何対何になりますか?
中島:パブリックイメージ的にはすごくキラキラだと思われますが、「鬼事」が8、「Fiction Love」が2ですね。もともとがスポ根みたいな性格なんですよ。
──最近、「自分はストイックだな」と思ったコトはありましたか?
中島:8日間で5都市リリイベをしたことかな。しかも全部日帰り。映画のプロモーションとほかにもいろいろやることがあったので、途中で頭がおかしくなりそうでした(笑)。よくネットでSTARTOの中の多忙な人ランキングみたいなものがありますが、僕、入ってないんですよ。絶対、僕が1位のはず! せめて2位くらいに入れてほしい。この話は絶対に使ってください(笑)。そんな感じでめっちゃ忙しいですが、アーティストとしてストイックにいい音楽を生み出し続けます。
リリース情報

『鬼事/Fiction Love』
2026/8/19 RELEASE
<TVアニメ「逃げ上手の若君」盤(初回限定盤A)[BD/DVD]>
SECN41-42/43-44 2,750円(tax in.)
<映画「ラブ≠コメディ」盤(初回限定盤B)[BD/DVD]>
SECN45-46/47-48 2,750円(tax in.)
<通常盤(CD only)>
SECN49 1,650円(tax in.)
<期間生産限定盤:「逃げ上手の若君」アニメジャケット盤(BD)>
SECN50-51 2,200円(tax in.)
購入はこちら
関連リンク
中島健人 公式サイト
中島健人 公式YouTube
中島健人 スタッフ公式X
中島健人 公式Instagram
中島健人 公式TikTok
関連商品



























