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<インタビュー>GAKU-MCが「本」に宿した、輝きを秘めた言葉たち―― 選択肢を増やすことで広がる未来への一歩【WITH BOOKS】

Interview & Text: 森朋之
Photo: 辰巳隆二
ビルボードジャパンが、2025年11月6日に総合書籍チャート“Billboard JAPAN Book Charts”をローンチした。このチャートは、紙の書籍(書店/EC)と電子書籍の売上、サブスクリプション、図書館での貸し出しやSNSでのリアクションなどを合算した日本初の総合ブックチャートだ。
書籍や文筆と縁深いアーティスト、また音楽と縁深い作家へ、自身の書籍や音楽とのかかわりについて訊くインタビュー企画【WITH BOOKS】 今回は、日本のヒップホップの黎明期に活動をスタートさせ、日本人制作によるヒップホップ作品初のミリオンヒット「DA.YO.NE」を生み出したGAKU-MCが登場。桜井和寿(Mr.Children)とのユニット・ウカスカジーとしても活動するなど、30年に渡ってシーンの最前線で走り続けている。
今年2月には初のビジネス書『人生で後悔しないために読んでおきたい88の言葉』(すばる舎)を上梓。ミリオンセラー『人は話し方が9割』の著者・永松茂久をプロデューサーに迎えた本書は、本書が20代の読者に向けた“やる気”と“行動力”が沸いてくるメッセージを込めた一冊。実体験に裏打ちされた説得力がこの本の魅力だろう。
デビュー以来、言葉(歌詞)と真摯に向き合い続けたGAKU-MCに本書の執筆プロセスと本との付き合い方について聞いた。
歌詞には選ばれなかった言葉たちを
音楽以外の形で表現した
――『人生で後悔しないために読んでおきたい88の言葉』はGAKU-MCさんにとって初のビジネス書。やる気”“行動力”につながるメッセージを込めた書籍ですが、執筆のきっかけは?
GAKU-MC:ラッパーとして30年以上活動してきて、「次の曲」「次の歌詞」「次のネタ」というハイプレスをずっとかけてられているような生活を続けていて。本で読んだ一節、家族や仲間との会話、映画やドラマのセリフもそうですけど、「いいな」と思った言葉をメモする癖を長きにわたって続けているんですよ。そのリストはめちゃくちゃ膨大で、そこから歌詞になることも多いんですけど、一方で日の目を見ない言葉もあって。僕が好きなサッカーに例えると、代表に漏れた選手たちですよね。いい選手であっても、そのときの戦術に合わなければ選ばれないことも当然あるわけで。そんな言葉たちも、フィールドを変えればもっと輝ける、躍動できるはずだという思いがずっとあったんです。
――集めた言葉たちを音楽以外の形で表現できないか、と。
GAKU:はい。きっかけとしては、この本のプロデューサーを務めてくれた永松茂久さんとの出会いが大きいですね。永松さんの本が好きで、ラジオ(「WORDS FROM THE FIELD」/J-WAVE「~JK RADIO~TOKYO UNITED」内)にゲストとしてお呼びして対談させてもらって、すぐに意気投合して。彼の言葉に対するスタンスとか、すごく共感するところがあったんです。締め切りに追い込まれたときの奮闘だったり、言葉のチューニングのやり方だったり。
――言葉のチューニングというと?
GAKU:伝えたいこと、訴えたいことを受け手につなぐときの比重の置き方ですね。僕は音楽、彼は出版がメインのフィールドですけど、どうすれば伝わるか?だったり、これまでの成功体験を作品にどう生かすか?だったり。なぜ人は本やCDを手に取るのか、本屋やCDショップに足を運ぶのか?もそうですけど、そういうところをしっかり考えないと見えてこない景色があるんじゃないかなと。
――本書は「今すぐ動きたくなる言葉」(第1章)、「夢ややりたいことに挑戦したくなる言葉」(第2章)など、言葉をジャンル分けする形で構成されています。執筆のプロセスはどんな感じだったんでしょう?
GAKU:“言葉集”みたいなイメージで、まずは伝えたい言葉を書き出して。そこからまとめ始めたんですけが、どんどんダメ出しされるんですよ。「GAKUさんの言葉はすごくいいし、尖っているけど、重きを置くのはここじゃない」みたいな。「俺だって何年もラップをやってるんだし、これでいい」と言うこともできたんですけど、ここは一端“永松塾”に入ってみようという思いになりまして。永松さんとお話をさせてもらいながら、読み手の気持ちになりながら、自分のなかにある言葉を精査して。もちろん以前から僕が感じていたこと、思っていたことばかりなんですが、装飾の仕方をすごく教わった気がしています。
――パンチラインと言葉のリズムのバランスも絶妙だと思いました。これはやっぱりラッパーとしての経験が生きているのかな、と。
GAKU:ありがとうございます。レコーディングと一緒というか、書きながらいちいち声に出してたんですよ。家族に「うるさい」って言われてましたけど(笑)、そこでリズムを作っていたところもあるのかなと。現存する歌詞や曲名をそのまま使ってる文章もあるんですよ。
――「昨日のNo,明日のYes」とか。
GAKU:そうそう。あとは「こういう考え方を持っていたら、俺もあんなに苦労しなくて済んだんじゃないかな」という感じもありました。だいぶ遠回りしてきたと思うんですよ、振り返ってみると。遠回りが良く働くこともあったんですけど、「あれは必要なかったな」ということもあるので。その頃の自分を思い浮かべながら言葉を選んだところもありますね。

――“社会に出たばかりの20代に向ける”というテーマとも重なっていますね。
GAKU:特定の読者をイメージするのも大事ですからね。「あのときはだらしなかったな」みたいなことも激しく思い出しました(笑)。
――令和を生きる若者に対しては、どんなイメージがありますか?
GAKU:一概には言えないですけど、「これで絶対大丈夫」というゆるぎない信念を持っている人は少ないと思うんです。みんなどこかで悩んでるだろうし、幸せになりたいだろうし、精一杯生きていきたいと思っていても、それを上手く表現できないというか。この本のなかでも書きましたけど、やっぱりいろんなことに挑戦しながら「こういう自分になりたいんだな」と気づいてほしいなと思いますね。これだけで情報が溢れているなかで、「こうなりたい」というものを見つけるのはすごく難しいと思いますけどーーこの本を書きながら気づいたことでもあるんですがーー自分から手に取ったもの、自分から堀りに行って見つけたアドバイスって、すごく大きいと思うんです。僕らが若い頃にラップのレコードを探しまくって、「見つけた!」みたいなことって、やっぱり大きかったんですよね。本を手に取ってもらうのが難しい時代だからこそ、余計にそういう気持ちになってるのかもしれないけど(笑)。
――体験に基づいた言葉は身体に入っているし、忘れないですからね。
GAKU:そうだと思います。もちろん上手くいかないこともあるでしょうけど、この本を読んでもらって「こういう受け止め方や考え方があるんだな」と知ってもらえたらなと。悩んだときの選択肢を増やしておくことも大事だと思うんですよね。
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やりたいことがあるんだったら、やったらいいんじゃない?
――タイトルに“後悔しないために”という言葉が入っているのも印象的で。後悔しないで生きている人はいないと思いますが、だからこそ刺さるんだろうなと。
GAKU:タイトルに関してはいくつか候補があって、永松さん、編集担当の方と喧々諤々しながら決めました。大人になったなと思いましたね、自分で(笑)。以前だったら「タイトルは一字一句、自分で決めないと気が済まない」という感じだったと思うんですけど、今は「それ、いいね」というものがあればすぐ採用できるようになったので。すごく腑に落ちるタイトルだし、仰るように、後悔はいっぱいありますから。「あんなこと言わなきゃよかった」「こうすればよかった」みたいなことばっかりですからね、本当に。
――後悔をリカバリーするときのコツは?
GAKU:これも本に書きましたけど、「遅すぎることはない」ということですね。僕は10代のときにラップを始めたんですけど、ずっと楽器が出来ないことがコンプレックスだったんです。ギターを手に取ったのは36歳のときでした。あのとき「もう36歳だし、ラッパーがギターなんか持ってどうするんだ?」と諦めていたら何も変わっていなかったし、ギターを弾き始めたからこそ、今もラッパーを続けられていると思っていて。コロナの時期に始めたトランペットもそう。もともとは「ラッパーがラッパ吹いたらカッコよくない?」というダジャレがきっかけだったんですけど(笑)、トランペットを吹いたことで間違いなくラップが上手くなったんです。そういう経験があるからこそ、「やりたいことがあるんだったら、やったらいいんじゃない?」という考え方になったんだと思います。

――本を書くこともGAKUさんにとっては新しい経験ですよね。
GAKU:そうですね。締め切りもあるし、そもそも文章を書くって大変だし、めんどくさいじゃないですか(笑)。それも全部、音楽に反映できると思っていて。実際、この本のテーマ曲を作って、さっそく出版記念イベントで披露しました。それもいずれリリースすることになると思うし、やったことは全部音楽に返ってくるんですよね。
――普段の本との付き合い方についても教えてもらえますか?
GAKU:いちばん多いのは、ジョギングや運転中のAudibleですね。よく聴いている作家さんは、中山七里さん。医療ミステリーで知られてますけど、「え、この人が死んじゃうの?」という展開がすごくて、5kmのジョギングが10kmに伸びたりするので助かってます(笑)。早見和真さんも好きですね。ウカスカジーの相方の桜井和寿もAudibleを使っていて、「何が良かった?」って聞いたら、早見さんの「アルプス席の母」を教えてくれて。それがすごく良くて、次に聴いたのが「店長がバカすぎて」でした。ここ数年でいちばん笑ったし、シリーズ(「新!店長がバカすぎて」、「さらば!店長がバカすぎて」)も全部読んで。本屋の話なんですけど、舞台が吉祥寺なんですよ。僕は学生のころに吉祥寺のサンロードを出たところのラーメン屋でバイトしていたので、「わかる!」という楽しさもあって。今日は車のなかで早見さんの「ザ・ロイヤルファミリー」を聴いてました。
――印象に残っている言葉や台詞はありますか?
GAKU:Kindleのハイライト機能(重要な箇所や気になる部分を蛍光ペンでマークするように強調できる機能)で「いいな」と思ったところをチェックしていて。後で見直すこともあるし、自分にとっては財産になってますね。『店長がバカすぎて』で言えば「売れない本なんてない。届けるべき人に、まだ届いてないだけなんだ」。在庫の山を前にしても、絶望的なまでにポジティブなのが山本店長なんですよ。本への絶対的な信頼が好きです。朝井リョウさんの『何者』にあった“星座”の一節もすごくよくて。
――「まるで星と星を繋いでいくように、俺はスーパーの中を慌ただしく動く。俺が歩いたところを線で繋いでいけば、「ひとり暮らし」という星座ができそうだ。」。
GAKU:上手い“たとえ”が好きなんですよね。重松清さんの『その日のまえに』の「「以下同文」と端折られてしまうような毎日が、ときどき怖くなる。」もすごいなと思いました。あとはやっぱり夏目漱石が言ったとされる「月が綺麗です」。素敵なたとえだなと思い、GAKU-MCとして(「月が綺麗です」を)リリースさせてもらいました。

――「Billboard JAPAN Book Charts」についての感想も聞かせてもらえますか?
GAKU:「Heisei Books」(平成に発行された書籍を対象にしたチャート)、「Showa Books」(昭和に発行された書籍を対象にしたチャート)が興味深かったです。「この本、読んだなあ」って思い出したり。「Heisei Chart」(2026/03/05公開)に入ってた『本日は、お日柄もよく』(著:原田マハ)がめちゃくちゃ好きなんです。政治家のスピーチライターのお話なんですけど、本当に面白くて、ラジオのゲストとして来ていただいて。この本の一節をタイトルにして曲を作ったんです。『Master of Ceremonies』というアルバムに入ってる「いますぐにまっすぐに」なんですけど、ぜひ聴いてみてください。
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