Special
<インタビュー>aiko 涙の記憶も恋の始まりも色褪せないメロディーに――シングル『Cry High Fly』

Interview & Text:森朋之
aikoから2026年第1弾シングル『Cry High Fly』が届けられた。
表題曲「Cry High Fly」は、aikoいわく「泣き過ぎてハイになった状態」をモチーフにした楽曲。感情の起伏と重なるようなメロディ、華やかなホーンの音色を活かしたアレンジが響き合い、リスナーの気持ちを高ぶらせる最高のラブソングだ。本作のリリース直後から、6月まで続く全国ツアーに臨むaiko。シングル『Cry High Fly』の制作を中心に、ライブが制作に与える影響、作詞に対するスタンスなどについて語ってもらった。
そういう経験があるから生きていけるような気もする
――2024年から2025年にかけて【Love Like Rock vol.10】を開催。夏には【MONSTER baSH 2025】、【SPACE SHOWER SWEET LOVE SHOWER】、【ROCK IN JAPAN】など初の夏フェスへの出演もありました。
aiko:ライブができること自体がすごくうれしいし、夏フェスについては、(デビューから)27年がんばってきたから出られたんだなと思っていて。ステージからの景色も本当に素敵だったし、ご褒美です。
――ライブやフェスでの経験は、制作にもフィードバックしますか? たとえば「ライブでこういう曲があったらいいな」とか。
aiko:それはめっちゃ思います。めっちゃ思うんですけど、思い通りにはならないんです。「こんな曲があったらいいな」というのは、ライブの後もそうだし、いろんなアーティストの方のCDを聴いたときも思うんですけど、どうしても思うような曲にならなくて。狙っても上手くいかなくて、やっぱり自分の感情とシンクロしてないとダメというか。本当に感じたこと、思っていることを曲にして、それをスタッフのみなさんに聴いてもらって、アレンジャーさんやバンドのみんなと一緒に形にして。そうやって作っていくしかないんだろうなと思ってます。
――ニューシングル『Cry High Fly』からも、aikoさんのリアルな感情が真っ直ぐに伝わってきました。表題曲「Cry High Fly」は、〈涙の波に映るいつまでも遠い月〉というフレーズが印象的なミディアムチューン。
aiko:この曲も歌詞が先です。Aメロから順番に書いていって、「Cry High Fly」という言葉が出てきて。このフレーズに引っ張られてメロディがどんどん動いた感じがします。いつも歌詞を読みながら曲にしているんですけど、この曲は「あ、気持ちいいのが出来た」という感じがあったので。
――この曲の主人公は、泣きまくってハイになってる状態なんですか?
aiko:そうです(笑)。メソメソ泣いてるんじゃなくて、泣き過ぎて、「もう全部なし!」みたいな気持ちになっています。1年のうちに何回か、そういう夜があるんですよね。泣きながら自分と向き合うんじゃなくて、「もういい!」に着地するっていう。「Cry High Fly」は、その感覚が曲になってるんだと思います。
――歌詞はすごく切ないんだけど、ホーンを活かしたアレンジによって解放される感じもあって。ボーカルのテンションも高いですよね。
aiko:まずキーが高くて。レコーディングのときも1回歌うたびに「やり切った!」ってスッキリしてたんですけど、続けては歌えないなって思って。「ライブどうします?」って島田さん(アレンジャーの島田昌典)に言ったら、「誰が作ったんですか?」って言われました(笑)。冗談ばっかり言って、楽しいレコーディングでした。
――〈大人になっても間違えて思い違いして溺れる〉というフレーズもいいですね。実際、こういうことってあるよなと……。
aiko:めっちゃありますね(笑)。何歳になっても、何に対しても、失敗したりぶつかったりすることはなくならなくて。しかも大人になってからの失敗って、子どもの頃よりダメージが大きいじゃないですか。この歌詞を書いているときも「本当に自分のことやな」と思ってました。誰かを好きになったときも、自分の思い違いだったときの恥ずかしさってすごいと思うんですよ、大人になると。
――確かに(笑)。人ってなかなか学習できないですからね……。
aiko:失敗すると「うわーっ!」ってなりますよね(笑)。でも、そういう経験があるから生きていけるような気もするんです。失敗するから、「次はこうしよう」と思えるし、止まらずにいられるのかなって。まあ、恥ずかしいことすると「自分、キモいな」って落ち込みながらお風呂入ってますけど(笑)。
――ちなみにaikoさんはどんなときにハイになりますか?
aiko:やっぱりライブのときですね。でも私、けっこういつもハイなんですよ(笑)。スタッフの皆さんやバンドメンバーの皆さんもそうなんですけど、好きな人たちと一緒にいると楽しいし、気分も上がるので。もうちょっと抑えたいんですけど(笑)。家に1人でいるときはときどき落ち込みますけど、すごく落ちるのは年に何回かですね。楽しいって大事だなって、年齢を重ねるにつれて思うようになりました。10代、20代の頃は「辛い、でもがんばってる」というのが美徳だったというか。寝てない、もうムリ、でもいける……って自分を追い込んでたところがあったんです。でも、そんな追い込まなくてもいいし、「楽しくやって乗り越えられたら、いちばんハッピーちゃう?」って。そういう環境にいさせてもらえることが幸せですね。
――2曲目の「大切だった人」も切ないですね。一緒にいられなくなった人に対して〈思い出してる頃だといいな〉と思っているという……。
aiko:ちょっと女々しいですよね(笑)。女々しいって男の人に使う言葉じゃないですか。この歌詞は私のことなんですけど、主人公を〈僕〉にして曲にしてみようかなと。自分のことを思い出してくれてるといいな、泣き止んでるといいなって。「どんな目線で言ってるの?」という話なんですけど(笑)、これも〈思い違いして溺れる〉という感じかもしれないです。
――別れた相手に対して、もしかしたら自分のことを思ってるかも……と想像してしまうのは誰にでもあることだと思います。
aiko:男の人と女の人で、過去の恋愛の思い出フォルダーが違うっていうじゃないですか。女の人は一つのフォルダーに上書きしていくんだけど、男の人は一人一人フォルダーを残しているっていう。私は全部残ってるのかもしれないですね。
――そういう記憶がふと蘇って、曲につながることもありそうですね。キャリアを重ねるなかで、歌詞の書き方に変化はありますか?
aiko:どうだろう……。歌詞って、書こう書こうとするとよくなくて。自分に指示するように書くと私が共感できなくなるというか。CDになってる曲は全部、私の心の中から出てきた曲です。いつも夜中に「書きたい」と思って、言葉が浮かんできて、バーッと書いて、とりあえずパソコンに保存して。半年くらい経って、「なんじゃこりゃ」って捨てたり、また新しく書いたり。“過去の自分と向き合う”みたいなことなんですけど、そういうことを繰り返しながら「この歌詞を歌にしてみたいな」と思ったら曲になっていくという感じです。ただ、すごく昔の曲のなかには「なんでこんな歌詞を書いたんだろう?」というフレーズもあって。あなたが好き、好き好き、大好き、パワー全開!みたいな歌詞があるんですけど、ライブのときに「今聴くと、強いなーって思う」みたいなことを言ったら、ファンの人にちょっと怒られたんです。「好きな曲なのに、私の過去を否定しないでください」って。そのときは「ごめんなさい」って思いました(笑)。
――シングルの3曲目「消しゴム」の〈消しゴムの角を使って良いのは あなただけ〉という歌詞もすごく個性的で。aikoさんにしか書けないフレーズだと思います。
aiko:ありがとうございます。小学生の頃、友達に消しゴムを貸して、角のキレイなところを使われたら「あ……」みたいになってたんですよ(笑)。でも、好きな人に使われたら嬉しくて。あのときの感覚って、人を好きになったり、恋をするときの気持ちの始まりだったのかなって気がして、この歌詞を書きました。
――〈秘密をちょうだい〉でいきなり大人の恋愛っぽくなるのもいですね。
aiko:本当に誰にも言えない秘密を共有したいですよね(笑)。私はすぐ話しちゃうんですけどね。秘密があっても、信用してる人には言っちゃいます(笑)。
――(笑)。ライブ感のあるサウンドもこの曲の魅力だと思います。“せーの”で録った雰囲気があるというか。
aiko:そうですね。バンドの皆さんのレコーディングは1回か2回くらいのテイクで終わった気がします。「消しゴム」はノリの良さを大事にしたくて。
――ライブでもぜひ聴きたいです。1月からは全国ツアー【Love Like Pop vol.25】がスタート。6月まで続くロングツアーですね。
aiko:うれしいです。最近はツアー先のホテルで歌詞を書くことも結構あって。今回も大切なツアーにしたいです。
関連商品




























