Billboard JAPAN


Special

リカレントルール導入でチャートはどう変わった? 2025年下半期を振り返る

コラムバナー

 ビルボードジャパンが、2025年下半期より総合ソングチャート<JAPAN Hot 100>および総合アルバムチャート<Hot Albums>にリカレントルールを導入した。

 リカレントルールは、チャートの新陳代謝を促すことを目的とした制度だ。近年、ストリーミングの存在感が増すなかで、同じ楽曲が長期間にわたり上位にチャートインし続けるケースが目立つようになっていた。その結果、新曲や新たなアーティストがチャート上位に登場しにくくなり、ヒットチャート本来の役割が見えにくくなっていた。

 こうした状況を背景に、2025年6月4日発表分(下半期第1週)から、Hot 100は通算52週、Hot Albumsは26週チャートインした作品に対して、ストリーミングポイントを減算するリカレントルールが導入された。本記事では、このルールによってチャートがどのように変化したのかを、2025年下半期の動向をもとに振り返っていく。

チャートはどう変わった?

 リカレントルールの導入によって、チャートにはどのような変化が見られたのだろうか。以下は、直近3年間のHot 100における半期ごとのトップ30をまとめたものだ。楽曲はリリース時期ごとに、当期、前期、前々期以前の3区分で色分けしている。

分布

 リカレントルール導入後の2025年下半期では、当期リリース楽曲が12曲、前期リリース楽曲が11曲と、2025年度内にリリースされた楽曲がトップ30の大半を占めた。これは、2023年下半期および2024年下半期と比較しても多い水準であり、特にトップ10のうち9曲が年度内リリース楽曲となった点は、直近3年間で最も多い。こうした結果から、ルールの導入によって新曲に出会いやすい環境が整ったことがうかがえる。

 また、リカレントルールの適用対象となったMrs. GREEN APPLE「ライラック」が、2025年下半期においても7位にチャートインしている点も注目される。ルール導入時にはその影響を懸念する声も見られたが、直近3年間におけるMrs. GREEN APPLEのトップ30圏内楽曲数の推移を見ると、2025年上半期からは減少しているものの、2024年上半期以前と比べると依然として高い水準をキープしている。

 なお「ライラック」と「ケセラセラ」を除く6曲は、いずれも2025年度内に初めてHot 100にチャートインした楽曲であり、リカレントルールの対象外である。こうした構成から、ルール導入後のチャートでは、新曲と過去曲の双方で支持を集めるMrs. GREEN APPLEの動きが、より把握しやすくなった。

▲Mrs. GREEN APPLE「クスシキ」

ルール導入で可視化された、さまざまなヒットのかたち

 2025年下半期のトップ30には、年度外リリースの楽曲も複数チャートインしている。清水翔太「PUZZLE」(16位)は、2024年10月リリースの楽曲だが、2025年春頃からショート動画プラットフォームをきっかけに注目を集め、自身最速でストリーミング累計再生数1億回を突破した。

 「PUZZLE」のほかにも、オーディション『No No Girls』最終審査で披露され話題を集めたちゃんみな「SAD SONG」(24位)、“平成あるある”を詰め込んだ新MVをきっかけにリバイバルヒットを果たしたORANGE RANGE「イケナイ太陽」(25位)など、キャリアを重ねたアーティストの楽曲が存在感を示した。

▲清水翔太「PUZZLE」

 また、2025年は女性アーティストの活躍も印象的だった。4月にデビューした7人組グループHANAは、下半期トップ30に5曲を送り込み、アイナ・ジ・エンドは「革命道中」で6位をマークしている。19位にチャートインしたCANDY TUNE「倍倍FIGHT!」は、2024年リリースの楽曲ながら、2025年に入ってからショート動画をきっかけに再注目され、3月にはMVを公開。バズを起点とした迅速なプロモーション展開が、ヒットの拡大につながった。

▲CANDY TUNE「倍倍FIGHT!」

 こうした動向を見ていくと、リカレントルールの導入によって、さまざまなアーティストの最新動向がチャート上で浮かび上がるようになったことがわかる。ルール導入後のチャートでは、アーティストのキャリアやリリース時期の異なる楽曲が並ぶかたちとなり、多様なヒットの広がりがより捉えやすくなった。

ヒットチャートは、リスナーとともに

 リカレントルールの導入によって、「今、まさに流行している楽曲」がチャート上位に登場しやすくなり、音楽シーンの新しい流れがこれまで以上にチャートに反映されるようになった。ヒットチャートとして、現在進行形のヒットを把握する「地図」としての役割が、いっそう明確になったと言える。とはいえ、ユーザー動向の変化に応じて、リカレントルールそのものについても、ヒットチャート本来の役割を踏まえながら柔軟に見直していく必要があるだろう。

 ビルボードジャパンは、2026年も新しい楽曲やアーティストとの出会いを届けながらブラッシュアップを続け、音楽をより身近に、そしてより楽しめるチャートを発表していく。

Text:Mika Fuchii(Billboard JAPAN)

関連キーワード

TAG